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2006年10月16日 (月)

『オー・レフ!』

ぷろこんエッセイ 『オー・レフ!』

お風呂の水を抜いたときに起こる水の渦巻きは、日本では左巻きだけど、南半球
のオーストラリアのシドニーあたりでは右巻きである。魚やカニや、カタツムリにも
左ききや左巻きがいる。英語のオーライ(All right)ということばは、右きき優先の
思想から生まれたものである、というユニークなエピソードの中から、私たちが
いかに理由のない偏見を持って生きているかということを思い知らされるすてきな
本なのです。

                                                  「国語辞典」 『眠る杯』 向田邦子著 

       @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

わたしは若い頃、オーストラリアを放浪の旅をした経験がある。

そのときオンボロのMINIで無謀なオーストラリア一周旅行を試みた。ちなみに
旅の方向は右巻きだった。ブリスベンを振り出しに、シドニー、メルボルン、パースと
いう順序であった。右巻きの法則に沿ったのが良かったのか、ブレーキとバッテリー
とセル・スターターの故障と、3回ぐらいのタイヤのパンクのみで、無事振り出し地点
ブリズベンにたどりついた。

トイレの水の渦については思い出がないが、ネットで調べると物理法則で「コリオリ
の力」という、地球の自転の力で、投じられたボールなどが曲がる力が働く作用と
いうものがある。それがために、南半球では北半球では、渦の向きが逆になると
いうものである。トイレの水やシンクに貯めたぐらいの水では、右も左もないという
話もあるが、プールの水を干すぐらいなら、きっと北半球では左巻き、南半球では
右巻きなのであろう。

右・左はともかく、わたしがオーストラリアを放浪しようと思った影響のひとつに、
小学生の頃に祖父から受けた英語のレッスンがある。世界中を旅したことのあった
祖父いわく、オーストラリアは別世界だ、というのである。英語が堪能であった彼の
発音はキングス・イングリッシュであった。ブリズベンは「ブリズベーン」、シドニーは
「シ、ッドニー」、メルボルンは「メーボルン」であった。

その発音を真似すると日本人離れしてしまう。小学生だから恥ずかしいのだが、
この発音が脳裏にしみついた。大げさに言えば、このときわたしは日本の英語教育
を疑いはじめ、また世間の一般常識に対しても、ちょっとまてよと距離を置くように
なった。画一主義的な思想とも距離を置くようになり、アウトローに敬意を表する
るようになった。それも放浪をしたことに影響していたのだろう。

1年近く続いたわたしの放浪の旅も、結局は世間一般に引き戻されて、反抗的な
地点まで到達はしきれなかった。だが「右向け、右!」と言われて左を向こうという
性格は、少なくとも帰国後しばらくの間、磨きがかかっていたことを覚えている。

       @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

「コピーレフト」という言葉を造語した人がいる。英語のコピーライト(著作権)を
もじったものである。

それはオープンソース運動の生みの親とも言われるリチャード・ストールマン氏
である。氏はGeneral Public Licenseというフリーソフトウエアのライセンス体系を
作ったことで知られ、当然ながらコピーライトの帝王ビル・ゲイツの仇でもある。

「コピーレフト」は彼の活動を象徴するキーワードであり、コピーライトの濫用こそ
独占事業を強化し、人類のためにならないと彼は主張している。世間の常識では、
海賊版の流通のせいで正規版の売上が減少して、著作者に損害を与えるという
ものであるが、コピーレフト派はそれに異議を唱える。海賊版の流通は正規版の
販売にも寄与するし(たとえば音楽ファンなら、正規版も海賊版も買うだろう)、
海賊版が粗悪な品質であれば、ほどなく淘汰される。実際、彼の活動の成果も
あって、Linuxをはじめとしたオープン系ソフトウェアは、大手企業でも導入される
ようになっており、無視できない一大市場を形成しつつある。

むしろ著作権という権利をタテに独占することが、その作品や技術に関する進化
を損ない、人類のためになっていないと主張する。彼は「右向け、右!」に対する
へそ曲がりなだけではなく、人類のためを考えて活動している。

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保護や有料であることが時代の趨勢に合わないことは、ソフトウエアの世界に
限らず、すでにいろいろなところで表れている。

たとえばリクルートのR25に代表されるフリーペーパー。1200誌以上、年間
2億部も発行されており、消費者に無料で提供されている。もちろん、一般雑誌
から広告出稿を得ているし、消費者だって記事や広告に関連して消費をする
のであるから、厳密な意味では無料ではない。

またPodcastingyoutubeからは無料の音楽や画像があふれている。中には
コピーライトを明白に侵害しているものもあるが、画像の投稿の奔流を抑える
ことが間に合わない。世界各地からの投稿が抑えきれないので、大手メディア
も白旗を掲げ、youtubeと提携を図るというのが時代の趨勢である。もちろん、
この無料のダウンロードがきっかけになって、有料の曲を買おう、DVDを買い
たいという効果もあるとされる。

まだまだある。無料の携帯電話機、無料の通話、雑誌の立ち読み無料など、
インターネット上では有料のものを探す方がむつかしいくらいである。このメル
マガも無料なら(有料なほどの価値もないし笑)、ブログやSNSに寄稿・参加
することもたった今から無料でできる。

Googleのアカウントを持てば、ネット上に無料ハードディスクを持てる時代に、
同じものがリアルのお店では数千円で販売されている。情報の保存元への
信用性や漏洩の問題があるにせよ、数千円対無料では勝負は見えている。

保護したり独占したりという商売のやり方は、法律上も実態上もほころびを
みせている。漏れるものは漏れるし、最初の段階からお金を取らないビジネス
モデルが増えている。むしろネタや技術を漏らして、巻き込んでから、商売に
どうつなぐかが主題になっている感がある。

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「保護と有料」対「フリーで無料」の意味するものは何か。従来型の市場経済
が、保護や規制によって成立していたことに対するカウンター、いやむしろ
まったく別のビジネス・コンセプト、ビジネス倫理が発生しつつあると考えた
方が正しいのであろう。

従来の「保護と有料の経済」の下では、ビジネスプロセスは企画・仕入・製造・
販売・代金回収というテンプレートで成立していた。あるいはマイケル・ポーター
が示した5大要因モデル、「供給企業の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業
間の敵対関係」という3つの内的要因と、「新規参入業者の脅威」「代替品の
脅威」の2つの外的要因という、戦略構築を整理する切り口で市場を分析する
ことができた。

だが「フリーで無料の経済」の下では、ビジネスプロセスには「オープン企画」
「オープン仕入」「無料頒布」などのプロセスが必要であり、5大要因モデルも
「競争企業間のオープンな連携」「新規参入者のネットワークビジネスへの
誘引」「無数のセグメントが絶えず生まれる買い手」など、キーワードをがらり
と変える必要が出てきている。

従来のマーケティング理論も有料モデルがベースであり、無料マーケティング
というコンセプトに基づいていない。先週のブログのテーマ「関連購買」にしても、
「関連づける」というプロセス技術は、当然ながら旧来型のマーケティング教科
書には載っていない。

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向田邦子さんの書くように、われわれは基本的に「偏見の中に生きている」
のである。いやしくもビジネスを替えようとするのなら、従来のビジネスモデルを
「偏見」と言い切るぐらいでなければ新しいことは始められない。

All right、右きき優先、回れ右!の従来型経済の思想から脱却するためには
どうすればいいか。常識に対するへそ曲がりの発想を豊かに持つことに尽きる。

南半球に立ったつもりで、ビジネスを左に回すことが大切だろう。どんなビジ
ネスでも商品でも、「フリーで無料」の方向に回転させてみること。それが
All Left!(オー・レフ)というスローガンである。

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隔週で書いてきた「ぷろこんエッセイ」(http://www2.gol.com/users/gowild/
からの転載です。毎日のブログは面倒、でもエッセイぐらいは読んでもいいや、
という方は、まぐまぐへ( http://www.mag2.com/m/0000096057.htm

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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