« 男を磨くマーケット | トップページ | 『Z』という雑誌(ジィさん_笑)、こういう爺さん雑誌はなかった。 »

2006年10月30日 (月)

『タダコピというマーケティング・モデル』

メルマガ ぷろこんエッセイからの転載 
タダコピというマーケティング・モデル

わたしが最近「もっともしてやられた」と、痛いほどヒザを叩いたアイデアが「タダコピ」である。

首都圏の5人の大学生が、コピー用紙の裏面に企業広告を載せることで、コピー代をタダにするという、まことに単純なアイデアでベンチャーを起業した。え、それだけなの?という感じなのだが、コロンブスのタマゴ発想というべきだろう。

大学生が、最初はたったひとつのアイデア、「コピー紙に地元商店街の広告を載せて5円コピーを可能にする」を基に2005年11月に起業家コンテストで優勝、すぐさま運営企業のオーシャナイズを設立し、2006年4月から慶応大学から「タダコピ」を設置開始した。コピー機に広告付きの用紙を入れ、コピーすると広告面が上になって出てくる。

Tky200610230262  裏面のコピー例

「タダコピ」を設置している大学は現在、慶応大学の三田、日吉、湘南藤沢の各キャンパス、早稲田大学の西早稲田、富山キャンパス、法政大、東大、学芸大、成城大、一ツ橋大、千葉大、横浜国立大であり、社長さんのブログなどを見ると、東洋大学で講演など載っているので、まだまだ進撃が続きそうである。今年度中にも関西系大学への進出も行う計画という。

ビジネスモデルは単純だが、ずらりと並ぶ広告企業の名前を見るとタダ者ではない。大学生協、富士ゼロックス、NTTデータ、NTTドコモ、グッドウィル、学習研究社、三陽商会、TIS、東芝、テンプスタッフ、東京電力、日本経済新聞社、ベネッセ、USEN、ライオン、ワイキューブ、ワークスなどそうそうたる取引先リストである。利益が出ているのかどうかわからないが、これらの企業もきっとヒザを打ったに違いない。

         ◆◆◆◆◇◆◆◆◆◇◆◆◆◆◆◆◆◇◇◆◆◆◆◇

ヒザ打ちの理由は、起業に必要な2つの普遍的なニーズがしっかりマッチしているからだ。

まず利用者である学生のニーズとは、試験に備えて本や授業のノートをコピーしたい、あるいは卒論やゼミの研究活動でも大量にコピーがしたい。大量にコピーすると、お金に不自由する大学生なら「タダだったらいいのに」と思う。

そして広告主のニーズとは明確なターゲットに広告・販促活動を高い確率で打つということである。タダコピの場合、「その大学に在学する学生」という極めて明確なターゲットが存在している。しかも学生業とコピーとは切っても切り離せない関係がある(ちょっとおかしいか?笑)。

この二つのニーズ周辺からこのビジネスの特徴を考えてみた。

①訴求ターゲットが大学生であること
②広告出稿量が際限ないこと(ちと大げさだが)
③リーチが自動化されていること
④広告スペースがA4サイズであること
⑤広告だけで独立していること
⑥環境にやさしいこと
⑦マーケティング企画を販売することが可能なこと
⑧コピーマシン、コピー用紙企業との提携

①の訴求ターゲットが大学生に絞られていることで、まず大学周辺の商店やサービスの広告出稿が見込める。それだけでなく流行発信世代としてトレンド商品のPR、就職活動をにらんだ企業広告も打つことができる。東大や慶応大など一流大学生相手には一流企業、三流大学にはそれなりの企業広告となるかどうか差別的なことはいえないが、女子大には女子大生、短大には短大生、専門学校に専門学校生というきめ細かな広告企画が検討できる。

②の出稿量であるが、コピー機1台あたり月間数千枚は堅い。際限ないとはいえないが、ボリュームとしては相当稼げる。他の広告媒体と比較して相当数のリーチ(広告訴求対象への到達)があると広告主に訴えることができる。またコピー機のカウンターでリーチ数が確認できることは広告主に対して誠実である。ただ、コピー機の稼動率が低いと、広告の鮮度が低下することもありうるのがデメリット。

③のリーチの自動化もメリットである。フリーペーパーの「Hotpepper」はリーチ数を広告主に約束しているため、駅頭で人手で配布をしている。「R25」や「ぱど」は駅構内設置の無人配布型メディアであるが、R25ほどの圧倒的知名度が無いかぎり、配布数が限られる。ところがタダコピはコピー用紙の補充という、従来のプロセスが広告プロセスに変わる。広告コピー用紙の配達は従来のコピー用紙販売チャネルを活用することができるのである。

④現在タダコピのサービスはA4サイズに限定している。広告スペースとしてA4というたっぷりサイズは魅力的である。多くのフリーペーパーではなかなか望みにくいサイズ。A4=定型サイズという点も、既存の広告の刷版を流用できるので広告主には助かる。

広告が一枚ずつ独立しているという点がユニーク。いろんな広告がランダムに出てくるのは楽しいし、一枚ずつ広告を持ち歩いてくれるというメディアがこれまで存在しただろうか。

両面を用いる点で地球環境にもやさしい。デメリットは裏面をメモにも使えないし、切り取り型のクーポン広告はむつかしいでしょうね。

⑦大学祭など学内イベント、スポーツ大会、地域イベントなどとタイアップをしてマーケティング企画を自主的に立案・作成し、関連する商品やサービスの広告主を募ることもできるだろう。

⑧最後にコピーマシン、コピー用紙企業との提携は、既存コピー・チャネルの活用という点で必要だろう。裏面に広告を印刷するビジネス受注も得られるので、コピー企業にもメリットがある。

このように近頃のネット起業にはない、痛快かつ合理的なビジネスモデルがある。競合は出るだろうが(ビジネスモデル特許は申請中)がんばってもらいたい。

         ◆◆◆◆◇◆◆◆◆◇◆◆◆◆◆◆◆◇◇◆◆◆◆◇

このビジネスに関連して3つのことを考えた。

ひとつはインターネットで展開されている多くのビジネスが、「表面で利益を取らず、裏面やロングテールで利益を取る」というビジネスモデルになってきている。

「表面で利益を取らず裏面で」というのは、検索やSNS、さらに動画配信やブログ、ネットビジネスの現在の主流は「利用はタダ」、その代わり広告がつきます、広告が収入源という意味である。

ロングテールで利益を取るというのは、たくさんの小さな収入源から少しずつ稼ぐという意味である。従来型の会社では、たいていは大口顧客に頼っている。上位2割の顧客から8割の売上ないし利益を得ている会社が多いのが実態である。ところがロングテールビジネスは「少しずつたくさんいただく」ので、実は従来型企業より経営基盤は安定的なのだ。

つまりタダコピはネットビジネスではないが、その発想にはネットビジネスのコアモデルがある。コピーでは料金を頂かない。散在する需要(コピーマシン一台一台)ごとに収益を上げる。

         ◆◆◆◆◇◆◆◆◆◇◆◆◆◆◆◆◆◇◇◆◆◆◆◇

2つ目は、コピー+タダというアイデアの発想について。わたしの想像なのだが、もしも出発点が「コピーを安くするには」という命題だったら、コピー裏面に広告というアイデアには到達しなかったのではないだろうか。コピー用紙の価格の引下げ、コピーマシンの導入方法の変更、デポジット制度・・・などアイデアはきっと従来の延長線上、つまり「改善」にとどまっていた。

そこで彼らはこう考えたのかもしれない。そのユーザーの究極のありがたさは何なのか。「コピーがタダだったらいいのに、だよね」と。その生のニーズを中心に置いて、自由な発想をしなおしたのではないだろうか。

生のニーズは従来からのビジネスモデルあるいは「常識」というコロモをまとっているため、見えるようで見えない。タダコピの大学生の最初の発想も「コピー代を半額にできないか」であった。最初から素晴らしいアイデアはでない。「半額にするには」からとりあえずスタートして、アイデアをたくさん出す。アイデアが出尽くしたら、最初の命題に帰り、常識というコロモを思い切りひきはがす勇気を持つ

多くの場合、アイデアはだいたい第一段階で出尽くしている。それをより優れたアイデアに成長させるために、それがほんとうに「生のニーズなのだろうか?」と自問する。そして最初の命題をリセットし、そしてより深いニーズから最初のアイデアを眺めてみる。そこで「裏面が白い!」ということに気づけるかどうかが、ヒザ打ちと相づちの差になるのだろう。

         ◆◆◆◆◇◆◆◆◆◇◆◆◆◆◆◆◆◇◇◆◆◆◆◇

3つ目は、うらやましいなと思うのだが、若き取締役たちのブログを読むと、毎日ゲーム感覚で「勝った、負けた!」という楽しくビジネス創りをしている雰囲気がある。そのブログもLivedoorだったりアメブロだったり統率がない(笑)。変な会社に入って、時代遅れの人間関係に巻き込まれずに仕事にまい進できるという、得がたい経験を彼らはしている。すばらしい。感心しました。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

|

« 男を磨くマーケット | トップページ | 『Z』という雑誌(ジィさん_笑)、こういう爺さん雑誌はなかった。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/158074/4008333

この記事へのトラックバック一覧です: 『タダコピというマーケティング・モデル』:

» 「タダコピ」大学で人気 用紙の裏、広告で無料 [ニュースの時間。]
『首都圏の大学で、無料で利用できるコピー機「タダコピ」が人気を 集めている。仕掛 [続きを読む]

受信: 2006年10月30日 (月) 21時45分

» 究極のファイナルビジネス誕生! [金運向上]
【アポ取りなし】【物売り無し】【セミナーなし】【リピート購入なし】 究極のファイナルビジネス誕生! [続きを読む]

受信: 2006年10月31日 (火) 09時00分

» メーリングリスト [副業在宅【公務員・サラリーマンの在宅副業ビジネス】]
メーリングリスト [続きを読む]

受信: 2006年10月31日 (火) 09時30分

» 人生ファーストクラスを目指す■平凡パパの成功スパイラル術〜【10年後も使えるネットビジネス完全攻略バイブル】DVD版 [人生ファーストクラスを目指す■平凡パパの成功スパイラル術〜【10年後も使えるネットビジネス完全攻略バイブル】DVD版]
毎月の収入を安定させ継続させ大きくする■右肩上がりのビジネス■の秘密を伝授します! [続きを読む]

受信: 2006年10月31日 (火) 11時20分

» ■人生ファーストクラスを目指す■平凡パパの成功スパイラル術〜【10年後も使えるネットビジネス完全攻略バイブル】Web-TV版 [■人生ファーストクラスを目指す■平凡パパの成功スパイラル術〜【10年後も使えるネットビジネス完全攻略バイブル】Web-TV版]
毎月の収入を安定させ継続させ大きくする■右肩上がりのビジネス■の秘密を伝授します! [続きを読む]

受信: 2006年10月31日 (火) 11時58分

» ホームセンター ラオウ [ホームセンター ラオウ]
アイデア商品〜雑貨、日用品、収納、食器、書棚、本棚、工具など欲しいものが手に入る便利なセレクトショップ【ホームセンター ラオウ】 [続きを読む]

受信: 2006年11月 3日 (金) 02時32分

» 売上がグングンあがるメルマガ・Eメール虎の巻 |羽田 寛 /小出 匡範 [副業在宅【公務員・サラリーマンの在宅副業ビジネス】]
メルマガさえ流していれば万事OKという時代は過ぎ去りました。「メルマガ会員50万人」と大々的に謳っていても.... [続きを読む]

受信: 2006年11月 8日 (水) 15時49分

» タダコピ。 [Beauty]
タダコピ。コピー用紙裏面を使った新しい情報媒体です。 大学キャンパス内において、 コピー用紙裏面を協賛企業向けに情報発信スペースとして提供します。 協賛企業によって、大学生が従来10円/1枚で利用してきた コピーサービスを完全無料化して提供するという学生支... [続きを読む]

受信: 2006年11月 9日 (木) 13時05分

» 大学生の性交体験率:調査結果 [いくらがんばっても彼ったら(笑]
新入生と4年生では、かなりの差がありそうです^^;しかし、30年前からすると、とんでもない上昇ですね。 対象の女子大生は、何年でしょうか? [続きを読む]

受信: 2006年11月11日 (土) 15時33分

» 仕事は自主的、自発的に。 [☆いろんな職業(仕事の職種)情報館☆]
仕事をするには、自主的な力がなければならない。あるいは・・・ [続きを読む]

受信: 2006年11月11日 (土) 19時26分

» 初心者でもOK メルマガアフィリで儲けるためのノウハウを惜しげもなく公開 [無料レポート大学 ~ 無料レポート大学では有益な無料レポートを紹介します]
メルマガアフィリエイトで稼ぐノウハウを惜しげもなく公開しています。 メルマガアフィリエイトをこれから始めたい方、始めてはみたがなかなか売上 が上がらない方は是非参考にしてみて下さい。 きっとお役に立てると思います。 [続きを読む]

受信: 2006年11月13日 (月) 23時53分

» 副業にぴったり!為替トレード必勝法を無料プレゼント中です。 [誰でも勝てる!外国為替証拠金取引(FXトレード)必勝法]
初心者必見!今話題の外国為替証拠金取引(FXトレード)の必勝法を無料で差し上げます。これを知れば、もうトレードは怖くない! [続きを読む]

受信: 2006年12月 4日 (月) 17時23分

» 三陽商会 [三陽商会]
三陽商会 [続きを読む]

受信: 2006年12月 5日 (火) 10時32分

« 男を磨くマーケット | トップページ | 『Z』という雑誌(ジィさん_笑)、こういう爺さん雑誌はなかった。 »