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2006年11月の30件の記事

2006年11月30日 (木)

団塊スカイライン

今日のブログは、昨日の最後に「LED第二弾を書く」と書いたのですが、諸般の事情により明日以降にします。H兄い、お読みいただいていたらごめんなさい。

【勝手にアドバイス Vol.78 団塊スカイライン
代わりのテーマは『団塊スカイライン』。先ごろ日産スカイラインがフルモデルチェンジをした。受注は好調という。ところがどっこい、販売ターゲティングはアテが外れたという話があって関心をもった。ケンとメリーはもう団塊のお年頃なのである。

【ターゲットがあてはずれ】
スカイラインは発売後1週間の受注が4144台と、好調な出足となった。日産の志賀俊之COOは発表の席上、国内では年度内に「何とか1万台を販売したい」と表明していたが、そのラインは突破できる勢いだ。
顧客ターゲットについては「40代後半を中心に幅広い層」を狙っていくと話していた。

http://response.jp/issue/2006/1129/article88824_1.html

129305  スポーティ高級車というイデタチ。

それが受注分析からは次の通りの結果である。

29歳以下   1.9%
30歳~39歳 19.3%
40歳~49歳 18.0%
50歳~59歳 24.8%
60歳以上   36.0%

60歳以上が主力、ついで50代、この二つの世代合計で60%を超えた。スカイラインのメイン・ユーザーも年を取ったという指摘ができることと、もうひとつ、40代にはスカイラインがウケていない(30代よりも購買者シェアが小さい)という事実が重要である。

【団塊になったケンとメリー】
Wikiの日産スカイラインの記事によれば、ケンメリ・スカイラインと呼ばれたC110型のスカイラインは、1972年-1977年の生産・発売である。この車は2ドアハードトップと4ドアセダンがあったが、人気があったのは断然2ドアハードトップ。確かに良く売れた。

129307実車。 09 こっちはグリコのおまけ。

この写真(グリコのおまけ)にあるように、若い世代/カップルでも何とか背が届く価格帯であった。ちなみにこのモデルには2000GT-Rがあり、200台弱しか作られなかった。だから幻のモデルといわれる。このときのGT-Rのイメージが、走りのスカイラインというイメージの確立に貢献した。

当時、20代後半~30代前半が中心購買世代だとすると、今彼らは立派に60代。スカイラインの黄金時代の世代が、そのままスライドした。だからこそ今、彼らが中心的な購買世代であるというのは偶然の一致であろうか?

【ブランドは年を取る】
今日、ランチに行くのでエレベータで降りたら、途中階から若い女性が3名乗ってきた。話の筋はわからなかったが、こんな感じの会話だった。「ワンレンて何?」「あのね、昔の言葉でね、ワンレングスといって前も後ろも同じ長さに髪を揃えることなのよ」「へぇ~~。ふ~ん」「最近わたしね、古い言葉に凝っているの

古い言葉で悪かったな。その言葉に馴染み深い年齢で悪かっな。ワンレン、ボディコンはバブル時代の産物で、イカす(もっと死語)女性の一般的な表現だった。言葉や商品や味は、あるとき「なつかしい!」というイメージで、突然復活することもある。

4331509052  その時代の申し子、ゆっこさん。合掌。

一方、同じ世代の中で熟成してしまって、そのまま年を取ってゆくモノもある

ブランドも年を取れば、ブランドを評価する人も年を取る。トヨタは古びたブランドになったコロナを廃止し、残したマークⅡの販売では苦戦している。ホンダもアコードを米国向けにデカくしたら国内で売れなくなり、国内向けにサイズを小さくしても後の祭だった。スカイラインも世代の若返りをねらってあれこれ試行してきたが、成功はしていない。

顧客をひとつのブランドに囲い込んでおくことはたいていはむつかしい。ところが喜ぶべきか、悲しむべきか、スカイラインは購買者が一緒に年を取ってくれている。だからケンメリやハコスカといった昔のスカイライン・イメージにこだわりをもつ世代が団塊である。

【悲しき若づくり派の団塊世代】
また、団塊世代は若づくりを追求し、実践する世代でもある。アイコン例はミック・ジャガーであり、鮎川誠である。スカイラインの買い手の団塊も、「俺はまだ年寄りではない」と考えて、スポーツカーを買っている(気になっている)。一方団塊よりも若い世代はスカイラインに幻想などない。せいぜい「昔のスポーツブランド」、へたすれば「ファミリー・スポーツセダン」というイメージ。

60srock 俺、団塊。いつまでも不良。

スカイラインは長寿命ゆえ、世代間のブランド錯視という現象が起きているわけだ。

前にこのブログで三菱 i が、開発陣がターゲットとしていた若い女性世代に売れないわけを書いた。開発者は、一生懸命女性向けに車をチューニングしてしまったが、女性が必要としている車は「わたしを綺麗に見せる車」なのであり、綺麗なデザインの車ではないというギャップについてだった。

スカイラインには開発陣とユーザーにギャップはなく、むしろぴったりしすぎているので、他の世代の入る余地が無いのである。スカイライン・ブランドは、このモデルチェンジで恐らく終わりだろう。なにしろ書い手が、どんどんあの世にゆくのだから。

【それでも進型スカイラインが売れたわけ】
団塊世代評論家の三浦展氏がその著書『団塊世代を総括する』で指摘しているが、団塊世代の最大の特徴はその名前の由来どおり、他の世代よりも「数が多い」のである。

団塊は戦後もっとも人口が多い世代で、アメリカナイズされ、ケンメリ・スカイラインで育ち、高度成長時代の若手ホープであり、消費世代をリードした。数の多い彼らが、スカイラインらしさがもどったといわれる新型を評価したのである。だから多数の購入者が出現して、とりあえずヒットとなった。とても単純な構図である。

【勝手にアドバイス:40代後半世代の自動車ニーズ】
高度成長期の公害まきちらし時代に育った団塊世代と、71年~72年のオイルショック後のホンダ・シビックやシティで洗礼を受けた40代、つまり新人類世代とでは、そもそも車に対する思い入れは違うと思う。

車という商品に思い入れや幻想はあるとはいえ、車で主張することは野暮だと感じている。車は主役というより、自分のテイストと同調すべきもの、という意識が近い。

だから主張する車はうざい、と思う。

車という商品自体の成熟化とともに、ユーザーの思い入れが固定化してしまう。それを払拭するメーカーの思い入れが、過剰&余計であると判断されると、強力なブランドさえ受け入れられなくなる。コーラが良い事例だろう。

Crsm0000000 わたしゃスカイラインのお尻には思い入れはなし。

自分と商品のバランス感覚が、団塊前(=商品を消費する)と、団塊以後(=商品はアイコン)では違うのである。だからこそユーザーの思い入れが強いブランドであればあるほど、ヒットがむつかしくなりつつある。

もうひとつは、環境保全意識が40代は高いという仮説がある(30代は逆に低いようだ)。ガソリン撒き散らし=青春という団塊世代にはないセンシティビティを、40代は持っている。40代にとっては、環境や安全性能が車以外のモノも含め、商品選択の高順位要素であると思う。

だからスカイラインでがんがん走るというのはありえない。ましてシルビアとか論外である。排気量で悠々を誇示する50代をさげすみ、車を改造する20代ニートのやることにはトテモ付き合えないヨ、が本音。

小さくて、環境に負荷が小さく、テイストがある車。それが1960~1965年生まれのニーズ。40代に車をもっと売りたいなら、ダテにフォーカス・インタビューなぞしなくても、わたしを呼んでください!日産さん。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月29日 (水)

香る加湿器

そろそろ寒くなりました。ルビコン川をええい!とばかりに渡る思いから始めたブログは、かれこれ初夏の頃だった。それがもう初冬。季節の移り変わりほどにブログで自分は変わっただろうか?

それはそれとして、寒くなると風邪予防がたいせつ。先々週インフルエンザの予防接種もすっぽかしたわたしなので、今日は加湿器を取り上げて対策準備をしてみたい。

【勝手にアドバイス Vol.77 香る加湿器
野心的なマイコン加湿器を発売しているタイガー魔法瓶のサイトにはこうある。『近年、美容と健康への関心の高まりから加湿器の需要は上昇傾向にあり、2005年度は業界全体で140万台を超える市場規模にまで発展しました』 

加湿器を十把ひとからげにとらえるようではマーケター失格である。市場規模の拡大とともに、デザイン、機能、技術の各面で多様化が進んでいる市場なのである。さらに需要もどんどん細分化している。代表的な商品をとりあげてみよう。

【±0 プラスマイナスゼロ/加湿器Ver.3 】
工業デザイナー深澤直人氏ファンのわたしが、この加湿器を欲しいと思ったことがないわけではない。だが価格が加湿器のラインをはるかに超越しており、部屋のオブジェとしてのプライシングになっているのが難。だが惹かれる。

Pmztopcp061128  約15000円。

VICKS(ヴィックス) Model V165C】
世界の加湿器市場で最大シェアを占めているとされるKAZ社の製品にVICKSの喉薬剤資源をプラスした、信頼性が高いイメージのある商品。加湿器として伝統的な基本機能が満足できる商品。

Murauchi_1923_101686450  子供の頃塗ったヴェポラップの味を。

【タイガー ハイブリッド式マイコン加湿器 ASQ-A500/ASU-A300】
「プラズマで除菌」と「マイナスイオン」でお部屋の空気をきれいに保つハイブリッド式マイコン加湿器なのである。加湿機能にプラスして、除菌、そしてマイナスイオンも放出してくれるのだ。これ以上、あなたは加湿器に何を求めるのだろうか?その原理は次の通り。

Pr_img_61006_04   ばい菌退治。

製品説明は次の通り。『プラズマで除菌」は太陽光の除菌作用と同じOHラジカルを発生させて、空気中に浮遊する菌の活動を抑制。「マイナスイオン」は健康を害するといわれる空気中のプラスイオンと中和させてお部屋の空気をリフレッシュします

Pr_img_61006_05  きわめて機能的なデザイン。

【アロマ水 加湿器でリラクゼーション】
加湿器の数あるラインナップの中で、わたしがもっとも気になったのは「香り」である。グレープフルーツ、ラベンダー、ローズ、ユーカリペパーミント、ベルガモットオレンジの各香りを、加湿器に入れるだけで楽しめる。OAZO地下のnatulaboで香りを試したが、わたしはローズが良かった。店舗に行くとサンプルがあるので試してほしい

Img_serene01 香りいろいろ。

【加湿器の多様性をまとめてみると】
以上に取り上げた商品を代表的なものして分類をした。分類に沿って勝手にアドバイスをしてみたい。

①デザイン・オブジェというアプローチ (±0 プラスマイナスゼロ)
②王道型の健康維持アプローチ (ヴィックス)
③超・加湿器アプローチ (タイガー魔法瓶など)
④リラクゼーション・アプローチ (アロマ水)

①はかなりマニアックとも言えるが、逆にヴィックスあたりの加湿器にはデザインってあるの?というレベル。部屋の目立つ場所におくものなので、他社の加湿器も含め、もっとデザイン性を取り入れてほしい。たとえば加湿器を「花瓶にしてしまう」。オブジェとしても実用性もある。花も蒸気で元気になるかもしれないし♪

Pic01 鏡付きの加湿器もある。

②のアプローチは「風邪予防レベルの薄い液」「風邪ひいちゃったから濃い液」など、水に溶かす液のレベルを調整したい。ヴィックスでは加湿器に投入する透明の「ヴィックス・リフレッシュ液」を販売しているが、濃さを表すために、ぜひ色を付けてもらいたい。風邪気味なら濃い色、予防なら薄い色というような調整ができる。

③超機能アプローチは、一見して申し分ないのだが、あまり売れないと思う。ここまでの機能ならエアコンに搭載したい。むしろユニットにしてエアコンメーカーとタイアップしたらどうだろうか。

あるいはタイガー魔法瓶らしく、「プラズマ除菌付き電気ポット」という複合製品がよさそう。電気ポットって、沸かすときに加湿もしていますよね♪

香りというリラクゼーション・アプローチにわたしは可能性を最も感じる。もっと流行ると思う。健康と香りというパッケージはセットになって受け容れやすいからである。

ペットボトルを逆さにして使う加湿器もあるが、『午後の紅茶』を差し込むと「紅茶の香り」がするのだろうか?コーヒー飲料を挿し込むとカフェインで眠気も醒めるのだろうか? コーラを逆さにするとスカッとさわやか になるのだろうか?などと考えると可能性をもっと感じてしまう。

故郷を思い出すアプローチもいいだろう。故郷の味噌の香りをブレンドするのだ。加湿しながらオフクロを想う、というのも温故知新である。類似で、喉を温める ねぎ味噌アプローチという手もある。

かなりふざけを書いたが、香りには可能性があるというポジティブな思いから。今日はこんな香りにしよう!という楽しみが、入浴剤のようにあってもいいだろう

【勝手にアドバイス おまけ】
狭いオフィスや電車の中での風邪引きの咳き込みは暴力に等しい。われわれコンサルの仕事では「プロジェクトルーム」常駐というケースもある。5名ぐらいのプロジェクトチームの詰め所(会議室サイズ)で、だれかが咳をするとすぐに伝播して欠勤者が出る。プロジェクト運営に支障をきたす。

だからポータブルな加湿器が欲しい。手の平サイズでエビアンのお水を入れて、コンセントに挿す。5分後にぽこぽこしだす。デスクや自宅の机に邪魔にならないサイズと可愛いデザイン。

それを多用途で使えるように設計してもらいたい。たとえば自動車電源でもOKにする。自家用車に搭載するだけでなく、タクシーに乗ったとき「運転手さん、MY加湿器を持っているんだけど、乗っている間これ挿してくれません?」とか。これぞ携帯加湿器のメリット。

売られた喧嘩は真正面から買う、ブログへの要望は受けて立つ、これがわたしの信条です。加湿器なんてどお?とヒントをくれたのは相棒Cherryさん。ありがとう。ナナオのモニターのことを書いたら、H兄いが「LED第二弾」を書けと指令?が飛んできたので、それも書いてみたい。挑戦、受けます♪

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月28日 (火)

手帳とは変化への挑戦グッズ

手帳を買いに丸善OAZO店に行った。いつもMeadのMarble MEMOやシステム手帳リフィルや、掘り出しモノやレアモノを買うお店である。OAZOの4階の文具売場はカラリングからして落ち着くし、珍しい文具がたくさんある。レジ・スタッフは親切かつてきぱきで、文具好きのわたしには目下のところNo.1の売場である。

それはそれとして、わたしは昨日手帳を買いに行った。丸善OAZOならきっと迷うほどあるだろう。ことしは手帳をがらりと変えたいという野望があった。『ゆれる』だけでなく、手帳にも揺らされたいと思ったかどうかは別にして、今日の勝手にアドバイスのテーマは季節がら、手帳を取り上げてみたい。

Bungu2  Shohin_shaoku1 丸善。祖父の代からのお付き合い。

【勝手にアドバイス Vol.76 手帳とは変化への挑戦グッズ
手帳の悩みは人生の悩みに通じる。

最初から格言めいて恐縮だが、わたしは手帳に長年のウンチクがある。恥ずかしくも披露させてもらうが、お金をつぎ込んでいるし、自分なりに工夫も改善もしてきた。逆に言えば手帳に関しては浮気者である。他の浮気はここでは披露できない(笑)。きっとみなさんも、自分に合った手帳を探してこられたものと思う。

自分の手帳の浮気とウンチクを思ったとき、実は手帳変更の変遷に自分の仕事人生の軌跡もぎゅっとしていると思った。

【わたしの手帳の変遷】
①社会人なりたて。
SD手帳を購入した。くわしくはこちらだが、日本で最初のシステム手帳で確か8穴だった。今のシステム手帳のミニサイズよりもちょっと大きめ。自分の選択でリフィルをチョイスできるのが選択のポイントだった。

いやむしろ、会社という枠にはまったが、SD手帳=自由なリフィルという先端的商品だと思った、自分なりの社会への抵抗だったのかもしれない。いずれにせよ3年ぐらいはこれに付き合ったと思う。

Sd2  システム草分け。SD手帳。

②バイブルサイズのシステム手帳に移行した。
社会人も板についてきて、もうちょっとカッコつけたかった年頃になったのか、背伸びしてシステム手帳を購入した。いやアウトレットみたいなもので半額だったから買った。はまった。SD手帳を脱皮した。

奈良研究所(SD手帳の発売元の元の名前)のリフィルよりも、世界標準のシステム手帳だから、リフィルが多くなりそう(当時はまだリフィルが輸入品主体で高価だった)と思ったのも動機。

③薄いシステム手帳に移行した。
バイブルサイズの薄手のシステム手帳に移行した。携帯がしやすいだろうと思った。だが、携帯するにはちとサイズは大きかった。後年、主に日本市場向けにミニ・システム手帳が開発された。

④結局②と③で3~4年使った。
だから社会人になった後7年間、わたしはシステム手帳派だった。思えばわたしの手帳に関する悩みは、「スケジュール」「社内の事象」「自分の仕事」「プライベートなこと」「アイデア」、これらをひとつで整理できないかというものであった。

⑤最初の転職後もシステム手帳を使った。
転職と手帳に直接の関係はなかった。バイブルサイズのシステム手帳を使い続けた。転職後は何とか転職先のニーズにミートした、いや凌駕した仕事をしたいと思ったので、システム手帳にも、調査や取材をするノートにもかなり工夫をした時期である。1990年のバブル時代へ向かう時代。5年ぐらい使い続けた。だが手帳とノートに一体感がなかった。

⑥郷に入れば郷に従え。
米国駐在という期間があり、この間は米国標準のおおぶりのROLODEXのシステム手帳を使った。国が大きいと手帳も大きいものだと思った。ただ、根が小国なせいか、あまりなじめなかった。2年間ぐらいの間柄だった。

当時の勤め先のタコ社長が、どこかのセミナーで「マンダラ手帳」が凄い!と聞いてきて、それを社員統一の手帳にしよう!と吼えた。仕方ないので全社員が自腹を切ったが、多くの社員が使わなかった。マンダラ手帳自体は(人によれば)良い手帳だろうが、手帳は人に強制されて使うものではないと確信した。

⑦帰国後、なんとあの「超整理手帳」にはまった。
しばらくは大ぶりを使っていたが、リフィルをきどって輸入物を扱う丸善に買い足すのが面倒になったこともあり、野口悠紀夫氏の「超整理手帳」を使い出した。長期の視点で日々の課業を扱うというコンセプトは良いと思った。だが蛇腹が使いやすいとは思えない。

Top_photo  蛇腹。

⑧A5のシステム手帳時代に突入。
超システム手帳で管理できるのは「タスク」だけなのである。自分のライフ(人生)管理や、大きな視点のワーク管理(仕事をどう帰るか)には向いていない。超整理手帳の蛇腹の反動なのか、自分の仕事や人生の全体像を管理したいという思いに包み込まれた。

そこでチョイスしたのがA5のシステム手帳。言うまでもなくA4の半分、大きいサイズだが、これははまった。厚手、薄手、中頃厚さの革カバー、数千円から万するカバーを4つぐらい購入した。浮気の代償は大きかった

書いたり、考えたりするには、理想的にはこのサイズであるが、使い続けるとその重さが気になる。それがずっと不満であったが、その間に浮気した『電子手帳 Newton(英語版だった)』、『カシオの電子手帳(型番不明)』も長続きしなかった。特にNewtonは識字率がサイテーで、二日と使用がもたなかった商品。リファンドしてくれと思ったが、Appleの壮大な失敗と思って、記念にとっておくことした。

⑨バイブルサイズのシステム手帳に戻した。
A5時代は自分にしてはステイブルで、5年ぐらいあっただろうか。その後のチョイスは哲学なしで恐縮だが、バイブルサイズのシステム手帳をある人から頂いた。男は弱いよ。で、それを2年ぐらい使用していた。

⑩今年のチョイスは自己否定がテーマ。
生まれてほぼ初めて「システム手帳リフィル」を脱皮してみた。その理由は後で書くが、システム手帳以外の手帳を年間通して使ったことは今までない。超整理手帳もある意味ではシステム手帳である。

だから、昨日買った手帳も年間通して使うかどうか怪しいのだが。A6変形の、ちょいとおしゃれな手帳を買った。ほぼサイズとカバーデザインで決めた。今年の挑戦は自分への(浮気への?)挑戦でもある。
http://www.marks.jp/Products/Schedule_stationery/images/PDF/MarkSchedule06.pdf

Photo_1
画像がコピれなかった。私のチョイスはこの画像に近い花柄。

【わたしの手帳浮気心分析】
自分の浮気心を分析してみた。

①自由な構成で、自分だけの手帳をつくりたい。
②情報の獲得/受領と、思考と計画をひとつの手帳にまとめたい。
③携帯したい。
④会社の仕事という殻を破りたい。
⑤手書きにこだわりたい。

①の思いは、ずっとシステム手帳を選んできたというところに表れている。世界でひとつの自分の手帳というニーズに応えるにはシステム化がいいのである。だがその代償は持ち運びがしにくいことや、厚さが可変ではないこと

②情報をひとまとめにしたい、というニーズは強い。わたしも「あのブログのネタ、手帳か、メモか」よく混乱している。だから「スケジューラー」兼「記録帳」兼「発想帳」兼「ID情報」など、どんどん厚くなる。厚くなりすぎて、重くなって薄くなる、というアコーディオン的なゆきつもどりつがある。

③携帯ニーズは「どう持つか」というところに帰着する。ジャケットに入れるか抱えるか、置くか。女性は最初からバッグ・インだからいいが。

④結局、分の手帳といいつつ「会社の仕事のスケジュール管理帳」じゃないか。この反省が、昨今の「夢づくり手帳」につながる、会社隷属の否定路線手帳である。

⑤電子手帳が手帳ぐらい愛着がもてるものとは、どうしても思えない。

【わたしは手帳という小物で、何に挑戦するのか】
わたしの来年の挑戦は、「1年間」という期間である。

この期間で自分をどこまで変化させられるか。今年変えられたこと、変えられなかったことを受け止め、来年はさらに変える・変わることを、あえてこれまで使ったことのなかった「一年使いきり手帳」ではっきりさせようと思った。リフィルだけを変えるシステム手帳の使用をあえて止め、かといって能率手帳のような無味乾燥なカバーは嫌なので、デザインに妙のある手帳に絞った。

手帳浮気心分析の内、どこに力を入れているかといえば④プラス③である。会社に所属していようといまいが、会社で仕事受けるという心を捨てて、仕事は自分個人が受けていると心に(もっと)シフトさせる。いつもその思いを胸のポケットに持ち、仕事を深め広げる。それがわたしの来年の手帳テーマである。

【勝手にアドバイス】
ひとつだけ「こんな手帳が欲しい」というアイデア。口さんの蛇腹の超整理手帳のシステム手帳版である。それは週間ないし月間ダイアリー分が、自由な位置カットできる破線で、54週分つながっている。54週では相当長いので12週分ずつでもいい。好きなところでパリパリ切り取れる。

世の中には3週間単位のPJを働いている人もいれば、8週間単位のPJで働く人もいる。そういう人は予定を一覧したい。矢印をぐいっと横に、3週間や8週間分、伸ばして書くことができる。PJの無いヒマな週は1週間ずつちぎることもできる。これぞ自由自在手帳?

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月27日 (月)

浦和レッズのエモーショナル・ドメイン

今日は隔週で書いている ぷろこんエッセイからの転載です。

△○○○○△○○●○●○△●○○△○△○○●○○○○△●○●○

手が早いと自称するわたし(PC操作のことです)にしては珍しく、先週は仕事が
立て混んでいた。だから11月23日のJリーグ第32節の浦和レッズvsヴァンフォ
ーレ甲府
戦は、横目でちらちら見るのが精一杯だった。

それでも前半、FWのワシントンが2発もペナルティ・キックを外したのが視界に
入ってきた。2発もPKを外したのである。わたしの記憶が正しければ、試合中の
PKで2発連続で外すJリーガーは見たことがない。これで前半は0-0である。

ヴァンフォーレ甲府のゴールキーパーが神のような俊敏性と予測力を持って
いるなら納得もできるが、横目チェックのわたしには、ワシントン選手はなぜか
「びびっていた」ように見えた。大事に決めようと考えすぎて力の無いボールを
蹴ったように見えた。チームトップの得点をゲットしているだけではなく、今季の
Jリーグ得点王のワシントンである。びびるはずはないのだが。

わき道にそれるが、JリーガーでPKの最多得点を記録しているのは、同じ浦和
レッズの福田正博(元)選手である。J1在籍10シーズンで34本のPKをけり、
そのうち26本を成功させた。決定率は76.5%。なるほど名手でも1/4は外すの
である。
参考サイト http://sports.biglobe.ne.jp/soccerclick/column/column024-1.html

カタルシス(PK失敗の鬱積からの解放)は後半に訪れた。後半開始早々、MF
山田からのクロスに反応、遂にワシントンはヘディングでゴールを右隅に決めた。
喜びの表情。はずんだ。歓喜の瞬間。

061124st20061124011_mde00143g061123t 正面。  20061123e000y40023 側面。

だがレッズ・サポーターにカタルシスをもたらせたのは、ゴールそのものより、
ワシントンの元に殺到したチームメイトの手荒く、だがやさしい祝福だった。

キーパーを除く全員が来たのではないかと思ったほど多くの選手がワシントン
に飛びかかってきた。山田、闘莉王、三都主、長谷部、鈴木、ポンテらが殺到し、
抱きつき、乗りかかり、頭をなで、しがみつき、からだをたたき合い、その得点を
たたえた。普段の1点のたたえかたではなかった。いつまで続くのかと思われた
とても長い手荒い祝福だった。遅延行為でイエローカードが切られる!とさえ
思った。

その1点が浦和レッズにとってJリーグ初制覇につながるという重い1点だという
意識もあっただろう。だがわたしは、それよりも、2発もPKを外していたエースへ
の祝福であり、「落ち込まず良くがんばったな!」という仲間へのおもいやり
だと感じた。

目的の高さ、明確さ、個々の技術、選手起用、攻撃と守りの遂行力、ゲーム
コントロールとその戦略、そして運。チーム力を構成する要素はさまざまである。
だがわたしがもっとも大切だと思うのはたったひとつのことである。それを
ワシントンのゴールへの仲間の祝福に観た。

良い仕事は良い仲間から生まれる。こう言い換えてもいい。良い仕事は良い
仲間との協働からしか生まれない。

△○○○○△○○●○●○△●○○△○△○○●○○○○△●○●○

先日聴講したセミナーで「エモーショナル・ドメイン」という言葉を聴いた。

セミナーの講師(リッツカールトン日本支社長の高野登さん)は、「心の立ち
位置」と表現されていたが、その人がどういう心の立ち位置の人なのかという
意味だそうだ。

おもてなしの品質で有名なホテル、リッツカールトンはサービス業である。
サービス業は人間が財産である。そんなことは誰にでもわかることだが、
では財産は育てるものなのか、恵まれるものなのか。どちらなのであろうか。

高野さんは「良い人材はギフトである」と言っていた。もうハタチにもなる人
の性格は教育でも訓練でも訓話でも変えられない。だから雇う時点でギフト
を見分けるしかないのだ。

その見分け方が「エモーショナル・ドメイン」である。高野さんは二つ、三つ
例を挙げていた。ひとつの例は電車の中での振舞い。優先席の前に立った
とき、座っていた人が降りた。自分は年をとってもおらず障害を持っている
わけでもない。座るか座らないか。携帯電話を持っている。電源を切る人か。
電源を切らないまでもマナーモードで使用しないでいる人か、どうか。

雨の日、傘をさす。その道は工事が行われていて、歩道が狭くなっている。
行き交うにはかなり狭いので傘を傾ける必要がある。すれ違いざまに傘を
どちらに傾けるか。すれ違う人の方に傾けるか、それとも反対側に(外側)に
傾けるか。すれ違う人の方、つまり道路の内側に傾けると、自分は濡れない
が、相手に傘からしたたり落ちる水を浴びせることになる。外側に傾けると、
自分は濡れるが、相手には水をかけない。

ギフトとは、どちらの立ち位置に立つ人か簡単に見分けられる。

△○○○○△○○●○●○△●○○△○△○○●○○○○△●○●○

わたしの仕事の師匠は、最近人材評価に凝っていて、「社員が高い業績を上げる
ためには、職種と組織の双方に対する適合性が必要」であると言っている。
職種に対する適合とは「仕事に対する向き・不向き」であり、組織に対する適合
とは「組織の中での役割(ミスマッチ)」「上司・同僚・部下との「人間関係(相性)」
である。

いくつかの分析項目があるのだが、師匠が変えられないものとするのはまず
「性格」であり、次いで変えにくいのが「組織適合度」としている。他のもの、
スキルや知識やコミュニケーション力、交渉力などは変えられる。教育や訓練
でなんとかなるのである。性格や組織適合は見抜くしかないのである。

わたしの仕事上の人材評価ポイントはこうだ。「この人と一緒に仕事ができるか
どうか」、言い換えれば「この人と二度(以上)仕事をしたいか」。メンバー判断の
ポイントはこれだけだ。これだけで充分だ。

(今季の浦和レッズの勝敗)
△○○○○△○○●○●○△●○○△○△○○●○○○○△●○●○

サッカー日本代表は、2006年のワールドカップでは一次予選で敗退して
本選に進めなかった。サッカー一流国とはまだ技術力、体力、ゲームコント
ロール、さまざまな差があることは認めよう。だがドイツにだってひと泡吹か
せた日本チームなのである。優勝はできなくても予選突破はできたはずだ。

敗退した深層に、日本代表にエモーショナル・ドメインが不足していたから
ではないだろうか。

中田英寿対その他の選手という構図があったと伝えられた。だが、その他の
選手たちも決して一枚岩ではなかった。ワールドカップ後に代表離脱選手が
続出したのは、あのときの共通したドメインの不足、精神的な不完全燃焼
ゆえに疲弊したからだと思う。

そのときの監督にくらべて派手さがない「無名の選手起用」をする新監督の
オシム。名の通ったスター選手を呼ばないので、テレビ視聴率が上がらないと
いう声もある。だがオシム監督は、選手起用を名声やスキルや経験からではなく、
「エモーショナルな立ち位置が同じ選手」を集めて、時間をかけてしっかりした
チームづくりをしようとしているように思えるのだが、どうだろうか。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

All_come_together00  優勝祈願!

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2006年11月26日 (日)

西川美和さんにゆらされて。

邦画に関して景気の良い話が伝えられた。『今年の興業収入、邦画復権で洋画と逆転も』という記事。1985年以来、邦画は洋画に押されてずっと低迷していた。ところが今年は興行収入で洋・邦が逆転するのではないかと予想されている。

もちろん「ゲド戦記」(興行収入76億円)や「海猿」(70億円)といったヒット作に恵まれたからなのだが、邦画と洋画のシェア逆転に若い人の日本化を見るか(それもあるだろう)、才能の開花を見るか。

わたしは大きな才能に注目した。日本映画の系譜をたどる、人間の深層を描く才能である。それは『ゆれる』の原作・脚本・監督の西川美和さん である。

【勝手にアドバイス Vol.75 西川美和さんにゆらされて】
前から雑誌などでその存在がずっと気になっていたのが西川美和さんである。ぱっと見は「かわいい女の子(32歳にみえない)」だが、2006年7月に公開して いまだロングラン公開中の映画『ゆれる』の原作、脚本、監督を務めた(11月26日現在、都内では渋谷でレイトショウしかない)。

なぜ気になっていたかはっきりしないが、何か凄い人だという直感が働いた。実はわたしはまだ映画を観ていない。片手落ちもいいところだが、原作本読者からの視点という点でご容赦ください。

Note_sim_060627_19  西川監督

目にしたいくつかの記事やエッセイの、彼女の見た目の女性ぽさと、人間の深層を斬る才能にギャップがあるという話ゆえなのか。ずっと気になっていたが、先日『ゆれる』には書き下ろし小説があると知ったその日に本屋に行き、見つけて買った。一気に読んだ。ゆらされた。とてつもない才能だと思った。今年の芥川賞が誰だったか知らないが、メジャーな賞はいかに才能を見出せないものかと思った。2年ほど前の舌がスプリットする話はつまらなかったが、『ゆれる』の原作は心を揺さぶるには、映画の主演のオダギリジョーに「監督の才能に嫉妬する」と言わしめたが、そのものだった。

30歳の女性が、人間の心の闇、ゆれをここまで描けるのか。これなら日本映画が復権しないわけがない、そう思った。

【『ゆれる』のざっくりあらすじ】
主人公は、オダギリジョー扮する、故郷を離れ都会でカメラマンとして成功した弟・猛と、香川照之扮する、地方で実家の商売を継いだ実直な兄・稔。この対照的なタイプの兄弟の関係が、幼なじみの智恵子の死を契機に形を変えてゆく。その過程が、深く鋭い洞察力をもって描かれているのだ。
Movie Noteより。 http://www.cybercrea.net/culture/note_060627_01.htm

とてもざっくりだが、これ以上はやめておこう。書き下ろしは8章だてで、各章が登場人物の語りという形式で物語の経緯、推移を描いている。映画のフラッシュバックが積み重ねられる構成である。わたしが特にゆらされた部分を原作から書き出してみたい。

<第一章 猛の語り>
洗面器から顔を上げた母は、棒立ちになっている俺の姿に気づいた途端、嘔吐の息苦しさとはまた別の赤みをその頬にぱっと浮かべて、ごまかすようにえへへと笑ってみせた。遣り切れない時に限って笑って見せる。そんなのばかりを見て育ったような気がする。

兄の方は俺のことを、いつもどこかで羨んで、眩しそうに見つめてくれているものと思っていたし、それを望んでいた。永遠に。けれど、もう兄は、兄のサイズに合った牙城を築き、その中で、本心から満ち足りて、ていねいに暮らしているのだ。

<第二章 智恵子の語り>
うそです。実を言えば、誘ったのは私の方なのです。蜘蛛のようにかしこい罠を張って、おびきよせたのです。(猛を)

(稔を見て)この人は、私だ。おとなしい驢馬のような顔をして、こころに鬼を飼っている。

<第四章 猛の叔父の修の語り>
彼女(再婚相手の妻)は立派な奥さんになる気なんてさらさらないらしく、外食や店屋物もしょっちゅうだし、僕の仕事の話もほとんど聞いては来ない。(中略) でも不思議なことに、彼女が「よく出来たお嫁さん」でいてくれないお陰で、僕は自分の家庭を顧みる男になった。

猛はやはり、僕と同種の人間なのかもしれない。信じるものがあるのではなく、欲することがあるだけだ。そして時に立ち止まることがあると、僕らはそんな自分に戸惑うのだ。

<第五章 猛の語り>
でも暴発した火種は悪意や狂気ではなく、兄本来の誠実さなのだ。恐れるに足らない。けれどまた同時に、それだけの爆発力を持つほど、その誠実さは厄介なものだということだ。

兄の中で暴発したのは実直さや誠実さなんかじゃなかった。そんなのは、俺の希望に過ぎなかったんだ。看板の裏側にあったものは、紛れもない怒りだ。マグマのように、何千度にもなるまで煮え続けた俺に対する怒りが、濁り、よどみ、悪意を生んでしまった。

Note_sim_060627_02  ゆれる兄弟。

わたしには兄がある。性格は『ゆれる』ほどかどうかわからないが、職業・経歴も含めてかなり違う。最近久しぶりに会ったときに、兄のある世慣れた行動を知り、いくつになっても世慣れない自分との隔たりを感じた。性格の違いだから、と言って済ますこともできるが、むしろ人間が中年まで生きたときの変化とは、残酷なものであると思った。

だからなのだろうか。西川美和さんに余計に揺らされたような気がしたのは。

【西川さんの物語を創る動機】
西川さんの凄さは、自分の心を追い詰め、生の人間を描こうとするところだ。この映画のストーリーのベースは、西川さんが見た悪夢だったそうである。

「自分が見た悪夢を、自分の中で何回か咀嚼してみて『これはネタになる』と感じました。それで忘れないように頭の中で反復して、その晩、腰を落ち着けて書いてみようと思ったんです」
引用元(同上)

別のところで西川さんはこう語っている。「物語を作ろうというきっかけは、自分自身の裏側から出てくるものです」。
http://www.campusnavi.com/jcfmovie/jcfmovie_7th/intv/7th/06/06_nishikawa.html

人間誰でも「自分はこうありたい」という面を普段は出している。ところがあるきっかけから、そうした自分ではない嫌な自分の部分が露わになる。深いところにはそうした自分があることは薄々感じていたが、あるきっかけで(『ゆれる』の場合は兄からの一本の電話から)どぉっと奔流のように出てしまう。制御できなくなる。自分と露わになった自分が混濁する。そこが西川さんの人間表現の核になっているようだ。

【西川さんの立ち位置】
学生時代はひねくれ者だったそうで、大学の自主映画サークルにも入らず、ひとりでできることを探していたという。それが写真だった。写真なら撮影して、プリントするまで一貫して自分の表現ができる。ところが写真は言葉を持たない芸術だから、もともと言葉を綴ることにこだわりがあった西川さんは好きだった映画の道に入ろうと思った。そして大学在学中に是枝裕和監督の映画(『ワンダフルライフ』)のスタッフとして参加した。

助監督をしても、自主制作映画さえ撮ったことがないので、業界の専門用語も段取りもわからない。

映画監督はすごく大変な仕事で、40人も50人ものひとつの組の長であり、作家であり、芸術家でありつつ、人とのコミュニケーションをとっていかなければいけない。これは自分には荷が大きすぎるし、自分は演出家じゃないなと思いました。というのは、これまでにつかせて頂いた監督の演出の方法を見ていても、いいとも悪いとも、あまりピンともこないし、文句も出てこない。文句が浮かばないってことは、監督としての才能がないのかもしれない、やっぱり向いてないなって思ったんですよ。
引用 同上

だがこれは謙遜。クランクインの1年近くも前に、オダギリジョーさんに脚本を渡して、早川猛像をどう演じるか考えさせるところは演出家としての計算を感じる。

434_1  兄弟と脚本家兼監督。
オダギリジョーは素敵である。

そんな彼女だったが、「唯一脚本を読む時だけは、なんでこういう下手なト書きの書き方しかできないんだろう、なんでこんなリアリティのないセリフを書くんだろうっていう文句が浮かぶんです。そこに我が出るということは、私はそこに向いているんじゃないかって」思った。

西川さんの立ち位置は「脚本」である。「セリフ」なのである。どおりで『ゆれる』の語りに凄みがある。わたしが映画『ゆれる』をまだ見ていない言い訳ではないです。

【邦画の興隆の予感】
80年代後半から90年代にかけては洋画の大作、話題作の時代だったが、ここ数年、西川さん以外にも日本人の若手監督が出てきた。シネコンだけでなくミニシアターも増えてきた。映画という表現メディアの復活とともに恐るべき才能が集まりつつある。邦画はようやく氷河期を抜けた、そう思った。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月25日 (土)

LED照明は異業種参入で成長する

LEDランプがこれから熱くなる。いやLEDランプ自体は発熱が少なくて熱くならないのだ。マーケットが熱くなる兆候が出てきたのである。まだ白熱電球や蛍光灯に較べて高価だと思われているが、価格も低下してきてこれから成長期を迎える。

今日の勝手にアドバイスは、環境にもやさしいLED照明が普及するマーケティングを考えてみたい。

【勝手にアドバイス Vol.74 LED照明は異業種参入で成長する
LED照明とは、「消費電力が少ない(経済的、コストダウン)」「発熱が少ない(安全、温暖化防止)」「寿命が長い(メンテナンスフリー)」「自然発光(色つきレンズ不要、はっきり見える)」という特徴を備えた照明である。(朝日電器株式会社のサイトを参考)

照明として電球や蛍光灯との違いは、熱くならないこと、コンパクトであること、防水・防滴構造が作りやすいので、さまざまなデザイン応用がきくところである。たとえばこんな用途もある。

Pavelight  
台湾のショッピングモールでの道路用照明(LED照明推進委員会サイトより)

電球で同じ装飾をするより埋め込み構造が単純化され、イルミネーションとしてさまざまな演出も可能。

103_1 昼と、 103_2 夜。

ラスベガス フリーモント通り アーケード 世界最大の1200万個のLED作品といわれる。

【身近にはこんな用途も】
クリスマスシーズンを迎えて、Tea Lightというデザインもある(ELPA製)。 
キャンドルのような揺らめく明かりで癒し空間を演出。 炎や煙も出ませんので、お子様やお年寄りがいる部屋でも安心して使用できます。 防滴仕様ですので、水に浮かべて使用することもできます。(シリコンカバー装着時) 電池式なので設置場所を選びません。

Elpa14411  Elpa14415

お水に浮かべられるライト!「わたしをお風呂に連れてって!」。う~ん・・・想像たくましくすればロマンチックなシーンもあるなぁ。

【LEDならではの活用】
LED照明を特別養護老人ホームに導入した事例がある。電気だと倒す、割れる、熱いなどがあるが、LED照明を埋め込み型にすることで、痴呆老人にも危険防止になる。図などは参考サイトをごらんください。

一般住宅でも床や階段にLEDランプを埋め込んで、夜はほんのりと照らす誘導路にもなる。また京都の宇治川沿いのお宅では虫除けに黄色のLEDを外壁に埋め込んだ(半導体会社の社長宅というからなるほど)。

Images 階段に。 Osk200611090045  虫除けにLED。

「床」「階段」「壁」に埋め込むことで、今までと異なる照明・用途が生まれる。手すりや床に埋め込む誘導灯なら災害時に光れば助かる。クロゼットや食器棚の内部を照らすライトをつくっても便利である。やさしい机の表面でぼんやり光るLEDランプもいい。わたしならLEDコースターを作りたい(光るウィスキー)。

【LED普及阻害要因のNo.1は価格】
白熱電球と蛍光灯との価格や料金の比較はむつかしいが、仮定としてはこんなものだろう。

60Wクラスの白熱電球=12Wクラスの蛍光灯=2.5WクラスのLED(おおむね同クラス)。
商品価格: 100円、700円、4000円
年間電気代: 3,500円、700円、500円
寿命: 2,000時間、10,000時間、50,000時間

つまり今の高価といわれる販売価格でも、LEDはランニングを含めればかなりお得なのである。LEDスタンドではどうだろうか。写真は松下電工製のLED電気スタンド。仕様は白色LEDで1.2W、7000円~10000円で販売されている。

Led  

ELPAでは1Wの白色LEDで5000円弱でスタンドを販売するという記事があった。この値段まで下がれば価格面での阻害要因もなくなったと言ってもいいだろう。

【マーケティング面からの課題】
2、3年前からLEDを使った信号灯が目立ってきた。2006年は白色LEDの量産化元年とも言われる節目の年えある。だから来年は大流行する!というのはちと早計である。普及に障害となるのは「既存勢力」だろう。青色ダイオードの開発者中村修二さんは発明対価を元の職場と争ったが、白色ランプでは、「既存勢力」対「新興勢力」の構図ができそうなのである。既存の照明企業とLED企業では本質的な違いがあるからだ

LEDの基本的な特徴とは、言うまでもなく「半導体」である。電球や蛍光灯は「照明器具」である。同じ灯りでもこのふたつにはアナログとデジタルぐらいの差がある。照明企業は100年かけてランプやソケット、電気器具を自社生産ないしグループ調達をして、器具の標準化も進めて業界として安定収益基盤を築いてきた。成熟産業と言ってもいい。

一方LEDは半導体であり、特に白色LEDはまだ新しい生産技術である。照明とは違う電子回路設計も伴う。LEDの用途も器具、デザインもまだ標準化されていない。製造から流通、販売、設置、取替え・リサイクルまで、電気器具・製品の物流チャネル、修理技術など異なる。当然コスト配分も違う。

つまり照明器具製造企業の従来の事業モデルとは明らかに異なる。だから照明企業は「LEDは夢の照明」と言う一方で、既存の収益基盤、ビジネスモデルではLED対応がしにくいため(少なくとも一時的には)守りに入るだろう。

【勝手にアドバイス】
「非」照明企業にとってLEDは、照明産業という成熟産業に斬りこむ千載一隅のチャンスである。従来の照明ビジネスモデルを否定して、新ビジネスモデルを創る大チャンスなのである。LED照明の専門カンパニーを創るのは、既存勢力ではなく、異業種参入であると考えられる。明日の照明トップメーカーは「住宅建材メーカー」「カーテン・壁紙メーカー」「家具メーカー」などかもしれない。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

【2006年12月9日追加】
光るスケート靴で滑走…横浜赤レンガ倉庫広場にリンク

Mm20061208214747326m0 LED+スケート靴というアイデア。

発光ダイオード(LED)を装着した光るスケート靴が貸し出され、リンクは多彩な光が交錯した(記事より)。http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061208i514.htm

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2006年11月24日 (金)

行列マーケティング 5.行列の科学: 顧客の心の中に高順位をつくる。

行列マーケティング5回目は「5.行列の科学: 顧客の心の中に高順位をつくる」である。

4回にわたり行列あれこれを書いてみると、雨にも負けず、肌寒さにも負けず行列をする人の行列を作らせるテクニックや手順は存在していることがよくわかった。テクニックがあるということは、並ぶ心や行列の長さを法則によって操作することができるという意味である。それは行列を科学することの入口、いや行列に並んだことにもなる。

そこで行列マーケティングの最終回は、「科学する」というテーマで行列あれこれを締めくくりたい。

1715ap2006 PS3のためにSonyニューヨークに最初に並んだ人々。

【再び行列ポジショニング】
このブログの第一回(11月20日)に行列ポジショニングを「エンタメ度」と「レア度」で斬ってみた。再び行列ポジショニングをしたい。「科学する」というタテマエ上、数値化までせずともそれに近いことを示す必要もあるので、今度は「行列時間」と「行列キュー対応」にて、各行列要素をポジショニングしてみたい。

22   

この図はヨコ軸が行列時間、長いか短いか、長さを感覚的に示せば、最も長いものをPS3としてみた。日本では24時間、米国では100時間ぐらいだったと思ってほしい。真ん中のDL(ディズニーランド)、パチ(パチンコ、スロットの開店前行列)、小児(小児科医への行列)、だいたい1~2時間としたい。もっとも左の「短い」のは15分~2分ぐらい。

タテ軸の「行列キュー対応」とは、行列をどう解消するか、すなわち受付=一気に解消型もあれば(PS3)、バッチ的に順次解消していくもの(ディズニーのアトラクション、30~50名/1回など)、随時解消していくもの(ひとりずつないし2~5名ずつなどのレジ対応)を示している。

行列を伸ばすのはいいが、どう解消するのか。PS3など話題の商品は行列すること自体がイベントなので、一気に解消する必要がある。一気に解消することがカタルシスがある。バッチでやると緊張感が切れる。

ランチや宝くじ、ATMは、随時に行列解消されることが理想であり、そのため宝くじやATM受付の数をいくつにするかが読みどころ。

問題は小児科医のポジションである。一定に長く、しかも随時にしか解消されない。その随時という時間はだいたい規則的であり(10分程度)、「次の方」となる。同じ時間間隔は、行列をする側にとってもっとも時間を長く感じるとされる、単調かつ一定の刺激なのである。病院の行列には、大道芸人のようなエンターテイメントを盛り込むこともできないため(当たり前か)、行列心理を柔らぐのがもっともむつかしいと思われる。

以下、いくつかの心理学的な視点に触れたい。

【同調行動】
行列するひとつの動機に「同調行動」があるとされる。同調行動とは心理学用語であるが、話題のお店への行列はおおむねこれで説明がつく。

①追従心理
誰それに気にいられたいため、自分の気持ちをまげてでも、誰それに同調する。自分はグルメではないが、グルメの誰それが美味しいといっているなら、そうするという心理。
②同一視する心理
並ぶことで、並ぶ人々やグルメと価値観が似ている、同じようなことをすることで自分と彼らを同一視をする心理である。
③内面化
人に釣られて並んだだけだったけど、本当は自分はこれがしたかったんだ!と自分をだまし、だましが嵩じて本当になるという心理。

上記のポジショニングで示すとDタイプがこれにあたる。

【小耳にはさんだ効果】
「小耳に挟む」、たとえば「あのお店、XXXXがとっても美味しいのよね。美味とはアレよ」という行列している人の言葉が、つい耳に入ってしまって並んでしまうといもの。社会心理学用語で盗み聞き効果(overheard communication effect)というそうだが、行列現場での口コミ行列促進と言っていいだろう。実際に並んでいる人がいて、囁くのである。これはかなり強力。フラ~と行かない方がおかしいのかも知れない。

余談だが、百貨店の「新春 お年玉袋」なる販売の現場では店員が囁いていた。「奥さん、あの袋にはXXXのドレス・ウォッチが入っているんですよ。あの袋だけ、あとひとつだけなんです」。あれは汚い手だと思った。

Isetan  ちなみに伊勢丹では。

2006年に創業120周年を迎える伊勢丹新宿店では、1月2日と1月4日に「新春祭」と称して魅力的なお年玉袋が約47,000点販売になります。なかでもオススメは、1月2日(月)限りで販売になる化粧品<クラランス><ジバンシィ>のお年玉袋。価格:各5,000円 ※数量には限りがありますので、品切れの節はご容赦ください。

だそうです。ネット耳を使って予告して並ばせる。もう始まってます。

【行列時間】
これについてはアインシュタインの言葉を引いて少し触れた。行列をしていることを短く感じさせるためには、五感の刺激、アトラクション(大道芸人など)、差し入れ、匂い、職人の手さばき、など変化を付けることが大切である。何か起きれば気が紛れる。

待ち行列理論」というものがある。実務では主に情報システムのトランザクションタイムを計ることに使われるもので、小児科医に並んだママが「あとどのくらい並べばいいのだろう」というときに効果を発揮する。

一般的な式や計算方法などはネットで調べてもらいたいが、「窓口の数」「到着時間分布」「サービスの時間分布」など式を変形して仮説を立てることができる。もちろん、待ち時間データがなければ計算できないわけだが。業種やケースによりさまざまな仮説を立てて計算することは大規模店などでは必要となる。

【行列のかたち】
最後に行列にもかたちがあるという指摘をして終わりたい。もっとも皆さんも目にしてきたのは、ディズニーランドの非日常空間の行列である。ディズニーのアトラクションの行列のポイントは「行列が直線でないこと」にある。あのクネクネと折り曲がって進ませる行列のカタチにもアトラクションがある。

クネクネと曲がれば、景色が変わる。屋外のアトラクションだったら、行列する向きが変わることで景色が変わる。あ、あんなアトラクション、楽しそう!さらに他の待っている人の顔が見える。同じ目的で並ぶ人の表情が見えて、相憐れみ意識がもたげる。

物理的かつ時間面の制約はあるが、行列を固定化させないこと、行列のかたちを変えることも、行列時間をもてなす工夫のひとつである。

以上です。一週間お付き合いいただきありがとうございました。明日からまた「勝手にアドバイス」を書きます。
ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月23日 (木)

行列マーケティング 4.行列づくりのテクニック: 悪魔のテクニックはお奨めできない

行列マーケティング4回目は「4.行列づくりのテクニック: 悪魔のテクニックはお奨めできない」である。

3回にわたり行列について書いてきたが、そもそも「なぜ人は行列するのか」という根源的な問いかけを少し考えてみたい。

【なぜ人は行列するのか】
衝動的な行列への参加の場合、この答えは至極単純である。「人が並んでいるからオレも並ぶ」のである。

「お時間と御用の無い方、ちょいと足を止めてください。どうぞ見ていってください!」に釣られて並ぶ。これはわかりやすいし、行列嫌いなわたしも1度ぐらいなら経験はある。横並び意識、ベストセラーを購入するフォロワー行動、スケベ心か強欲な心を出してしまって、つい並ぶ。余談だが、近未来通信のあの新聞広告で、嘘を見ぬけないほど欲ぼけになってはまずい。ちょっとインターネットで調べるだけでIP業界の掟(安いものが勝つ=出資損はまぬかれない)はわかりそうなもの。

PS3にせよ、Wiiにせよ、昨年行列ができたいW-ZERO3にせよ、行列には「行列トリガー」が仕組まれている。「行列トリガー」とはわたしの造語であるが、「並ばなきゃ、先を越される」「並ぶことがおもしろそう」「並ばないと手に入らない」など、いわゆるティーザー(じらし)キャンペーンが何らかの情報で仕込まれている状態である。

多いのは供給を絞らざるを得ません、今回の生産はこれ限りです、という在庫不足情報である。少ないとか無いとなると、人は方々を回って探そうとする。インターネットの無い昔であれば、テクテクとこの店、あの店を探すが、電話をかけまくって探す。ネット時代の今では、サーチをしまくる。

こういう陽動作戦も口コミ・ネットコミで伝わり、ナーバス(そわそわ)キャンペーンをユーザーに展開させることをマーケターは画策する。

ちなみにCherryさんたちは千疋屋の月一回しかない、デザート食べ放題(だったか)への予約に電話行列をしているが、なかなか成功していない。これも「月一回」という絞込みがミソであろう。

Logo_2
舞浜イクスピアリ店では、大人気のフルーツ食べ放題をクリスマス企画といたしまして、12月20日に特別開催することとなりました。皆様のご予約お待ち申し上げます。 
(ゴメン、もう満席)

千疋屋に毎月電話している女性たちは(かなりいるそうだが)、すでに心に行列がインプットされている。つまり心の中で「行列トランス状態」(大げさですね笑)であり、ナーバス・キャンペーンが効いている。マーケターであれば、こういう心で並ばせる仕掛けこそ編み出したい。さすがは千疋屋です。

余談だが行列でゲットした物品をすぐ「ヤフオク」で横流しにする人々は例外である。彼らは行列マニアではなく、オークションマニアに過ぎない。

【どこまでの情報を出すべきか】
そこで問題になるのが「並ばせるためにどこまでの情報を出すべきか」。これは時と場合とモノによって異なるが、PS3とWiiの場合、どうだったのだろうか。

(2004年)
・2003~2005年度で投じる半導体投資額は5000億円。うち2000億円がプロセッサCELLの製造にあてると発表。
・PS3本体の発売は開発が順調に進めば2005年末~2006年春ごろ
・2005年春ごろに正式発表会を開催(する予定)

(2005年)
・ISSCC2005(2005年2月開催の半導体技術者向け展示会)で、CELLの製造プロセス、トランジスタ数、浮動小数点演算性能、消費電力など詳細を発表。
・5月17日、PS3の概要をプレスリリース。仕様だけではなく、主要なゲーム開発メーカー社長のコメントも掲載している。2006年の春発売予定、とだけ記された。

(2006年)
・3月になりPS3の発売を11月上旬に延期。BD規格のライセンスの遅れが公式理由とした。
・この時点では「月産100万台の生産体制を早期に実現させ、発売日までには100万台以上を用意」としていたが、未だ日本で10万台、米国で40万台だけである。
・5月時点で、11月11日(土)=大安を発売日にし、正式な(価格59,800円)を発表(後に引き下げ)。
・北米欧の発売日は11月17日とした(が欧州は2007年に延期)
・9月6日になり、欧州の発売延期を発表
・9月22日、PS3を49,980円に値下げを発表。HDMI出力端子付きとした。

参考サイト http://ps2.unisord.com/ とても詳しい。

とまあ、じらすことじらすこと。Sonyの生産計画の大幅な遅れが原因とは言え、Sonyはマイクロソフトを狼少年とはもはや言えない。 久夛良木社長のSony本社への苦言を呈したこともあった。あのSonyが右往左往したサマを見せられた。PS3の場合、情報開示にはあまり戦略性が感じられなかった。

Wiiの場合はこんなじらしだった。

(2004年)
・6月9日、任天堂経営方針説明会で「レボリューション」開発を発表(後にWiiになる)

(2005年)
・3月10日、GDC (Game Developers Conference) 2005で概要発表
・9月16日、東京ゲームショウ2005の基調講演で、コントローラ公開(本体はまだ隠している)

(2006年)
・4月28日、深夜1時、全世界同時に任天堂公式サイトで正式名称「Wii」が発表された。
・5月11日、任天堂より発売される最新ゲーム機「Wii」向けソフトを開発するメーカーが発表された。
・5月25日、連結決算短針発表の場で、「25,000円以上は考えていない」という回答を出し、具体的な価格や発売日については、後日発表」とした。
・9月14日、任天堂より発売される新型ゲーム機「Wii」の発売日と価格が決定した。発売日は12月2日、価格は25000円。さらに販売の計画についても(全世界合計で)年度内に600万台、年内に400万台を目指したい、としている。

こちらはWikiを参考にした。http://ja.wikipedia.org/wiki/Wii

Wii04_1  もうあと少し。

任天堂は、もともと情報開示には定評がある。Wiiについても、いつどこで何を、どこまで言うべきか、かなり議論をして決めているように推察できる。

PS3にしてもWiiにしても、情報開示は業界のプロ向け、次いでコアファン向け、株主向け、そして一般向けと、時間の経過と共に開示情報内容を順序づけている様子が伺える。ティーザー情報開示とは、ターゲットを口コミ力でセグメントに分け、それぞれの影響力と口コミでの伝達内容を想定した上で行うのである。

「よくわからないが凄い開発が進んでいるらしい」「そのコア部品はこんならしい」「仕様がわかってきた」「競合との情報戦がおもしろい」「価格はだいたい・・・」「販売計画はXXX売る」「正式なネーミング発表」「確定仕様、価格、発売日発表」、そして行列をしていただけるのを待つ。

PS3でまことしやかに言われた「あまりに性能がスゴいのでゲーム開発業者がついてこれない」のは嘘も方便であった。開発コストがかかりすぎるので開発業者が逃げそうになるのを抑えるために、自社の技術力を誇示して一般ユーザーの声という行列(世論)を誘導し、開発業者の尻をたたいたのであった。Sonyさんもなかなかやるのである。

【悪魔の行列テクニック】
店舗などでは行列をつくるテクニックは、意外なほど簡単である。

作業をゆっくりすればいいのである。調理時間、サーブ時間、レジ時間・・・。デパ地下の焼きたて行列の類は、だいたいこのテクニックが応用されている。焼きたてが美味しいというメッセージ。焼くまでのオーブンや調理を見せる。焼けてきた匂いもする。並ぶ人が現れる。焼けるまでにもうちょっと時間がかかる。行列が長くなる。「焼きたてですよ~♪」。実に単純。

だがわたしがこれを「悪魔のテクニック」と呼ぶのは、美味しくないとすぐにバレる。あくまで本業に自信がなければ逆効果になるからである。並んで失望した客は二度と来なくなる。特に客さばきや包装などが遅いせいもあって行列が長くなるお店は、怒りの行列になる。口コミで店が殺される。

ディスカウントストアなどで駐車場が足りず、ずらっと公道上を駐車待ちの車が並ぶ店舗もある。故意に駐車場が少ない店舗施設設計をしたわけではなくても、「いつも並んでいるから止めよう」という心理も働くので、やがてガラ空きになる。これも悪魔のテクニックである。

さして美味しくなくても、行列している間の対応が丁寧であれば「並んでも気持ちがいい」ので、また並びに来るのである。悪魔に誠実さを売り渡してはならない。本業を離れた行列づくりというテクニックは存在しない。

ふと思い出したのは人形町のたい焼き屋「柳屋」である。尻尾まで餡子が入っていて、かりっとしたたい焼きで有名が、わたしは焼き金具でひとつひとつたい焼きを焼き上げる、おじさんの手さばきに見とれてしまう。あれを見るだけで行列する価値がある。

Img_4119_1 1枚ずつ、 Img_323889_3091962_0_1 焼いてます。

今日は以上です。今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月22日 (水)

行列マーケティング 3.行列ホスピタリティ: 行列をもてなす。

行列マーケティング3回目は「3.行列ホスピタリティ: 行列をもてなす」である。

【PS3:「犯罪現場じゃありません」 ニューヨークの行列】

061118ps3ny04
  警官出動。

061118ps3ny05  これなら警官も出るって。
http://www.gizmodo.jp/2006/11/ps3_11.html

写真のクレジットがはまっているのでおもしろい。でもまあアメリカにはPS3のために1週間前から並んでいた群集がいたとは。ごくろうさま。このテント設営もそれぞれでテキトーにやっていたので、隙間ができて、折りしもかなり雨も降ったので、隣のテントシートの傾斜から水がじゃんじゃんかかってきたという話もあった。それに、アメリカは「歩道が広いから泊まれる」という観察もできる。

余談ですが、10年ほど前ですが、カリフォルニア州を車でぐるぐる走ってつくづく思ったは、近所の道路のようなフツーの道路でさえ、真ん中にある中央分離帯が日本なら何軒も家が建ちそうな広さがあります。それを思い出して、行列にさえ、国土の広さ、豊かさの差を感じてしまった。やはり戦争する相手ではなかった。

【人は行列が好きなのか、嫌いなのか】
心理学的にも、人は並んでいるときの時間は長く感じるものだという。こむつかしい理論だと、単調な刺激(ドット刺激という)が長いと余計に長く感じる。たとえば「並んでください~! 通行の邪魔になりますから3列整列にご協力くださ~い!」というような文句をアルバイトに連呼させているが、同じ情報を連呼されると、並んでいる時間を余計に長く感じさせる。

「あと○○分です」「今現在○○人までお渡しができます」「あと○○分かかる予定です」と、嘘はダメだが、許容範囲内の見込みを具体的に伝えさせることで、待ち時間の感覚は柔らぐのである

順不同であるが、並んだ時間が長く感じるケースを列挙してみた。

 嫌なことは長く感じる。
 反復行動(ATMのような日常行動)だと長く感じる。
 情報が無い(少ない)と長く感じる。
 管理者/店舗から無視されると長く感じる。
 アンフェアなときは長く感じる。(Cheatingですね)

【好きな長い時間もあります】

人は好きな長い時間と嫌いな長い時間がある。それをアインシュタインはこう説明している。

熱いストーブの上に一分間手を載せてみてください。まるで一時間ぐらいに感じられるでしょう。かわいい女の子と一緒に一時間座っていても、それは一分間ぐらいにしか感じられない。それが相対性というものです。

なるほど。わかるなぁ。素敵な女性たちとのランチの時間が短く感じられる理由が。思い出しました!連休狭間の明後日の楽しいランチをセットしなくちゃ。そういうのはセットする時間からして楽しい

つまり、行列をする前の準備時間さえ、行列を(予定)する人々にはインプットされていて愉しんでいる。特にPS3やWiiのように待ち望んだ商品であればあるほど、すでに心の中では行列をしているのである

【年齢と待ち時間の反比例の法則】
年齢と待ち時間が反比例する法則についても心理学者のさまざまな見解がありますが、次の記述にはなるほどと思いました。引用させていただきます。

実際にある心理学者の調査によると、時間の感覚は、その人の実際の年齢に反比例するという結果が出ています。こう聞くと小難しいですが、つまり、同じ1日であっても、例えば1歳の人にとってはこれまで生きてきた時間の365分の1であるのに対して50歳の人にとってはこれまでの人生のたった18250分の1でしかないわけであり、その分短く感じるようになるのは当たり前といえば当たり前のことです。 そう考えると、この世に生まれての第1日目は本当に長かったのでしょうね。
引用元 http://homepage2.nifty.com/osiete/s699.htm

年取ると時間間隔が薄まる。新しいこと/知らないことに素直に驚くこと、自己(経験)否定すること、美には素直に美しいと口に出すこと、つまりカサカサにならずに日々感動することが大切でしょう。ちと脱線しました。

【行列に優しい店舗になろう!】
さて、ニューヨークのPS3販売前のソニーの状況を伝える写真で、わたしが注目したのは「珈琲」である。

Picture005  無料の珈琲。

どうやらソニーの店舗が「並ぶのもたいへんでしょう。何もおかまいすることができませんが、せめてコーヒーをどうぞ」と振舞ったらしい。これは低コストで気が利いている。たかがコーヒー、されどコーヒー。雨の降る寒かった夜、そのコーヒーの味は忘れられない。

つまり好きで並んでいる行列なのだからこそ、低コストのちょっとしたもてなしでも心理的に最大の効果を発揮する。思いやりのような小さなサービスでほっとするのである。それがあるだけで、暴徒になるか、店舗クルーと仲間意識に包まれるか、分かれ目になり店舗の評判に影響する。

店長さんは、行列に対して「小さなサービスをしてあげましょう」と店舗クルーに実施させることが大切である。最初はマニュアルないしプログラム化するのでもいいでしょう。できれば、店舗の正社員のみならず派遣さんも「もてなしましょう」と率先して実行するような店舗になれば、素晴らしいと思います。

並ぶ人々はその店舗の取扱商品のコアなファンなので、行列に優しい店舗というイメージは、固定客作りにもなる。積極的にお店のトイレも使わせてあげて、ちゃっかり行列キット(髭剃り、使い捨てタオル、下着、コンタクト液、タオル等々)を販売するものいいでしょう。

【たわいない思いつき=行列をもてなす】
行列をもてなすためにいくつか思いつきを書いて、締まらなくて今日のブログの締めにします。

・大道芸人を呼んで行列をもてなす。(PS3を1台差し上げるギャラでやって来ますって)
・音楽家を呼ぶ(どんな音楽が良いか、考えどころ)
・クイズやビンゴをして、受賞者に特典を与える
・フード屋台を呼ぶ(情報を流すだけ)
・冬ならトン汁を振舞う(トン汁なら食中毒もないでしょ)

Performer  芸。 505_indiacurry  食。

大切なことは「行列の目的に関する事実/情報を伝える」「行列していること以外の刺激をする(単調にならないように)」「行列者はコア・ファンであるという認識をパートまで浸透させること」である。

行列のできる飲食店では、行列ひと口ワイン、ひと口ビールを振舞うと、高いランチを注文するンです。Cherryさんやわたしはそうですね(笑)。

明日は逆に「どう並ばせるか」というテーマについて考えます。今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月21日 (火)

行列マーケティング 2.顧客不満足度を増す行列マネジメント

行列マーケティング2回目は「2.顧客不満足度を増す行列マネジメント:管理するという間違い」である。

【整然と並ばない人たち】
ナッツベリーファーム(ロスアンジェルスのテーマパーク)でのことである。ここはディズニーランドよりも体感型の遊戯施設がある遊園地である。ディズニー並みに混雑もすることが多い。気持ちよく濡れるウォーターライドの遊戯施設ではズラリと行列が出来ていた。わたしは子供と行儀良く行列の末尾に付いた。そのウチにもどんどん行列は伸びていった。行列は金属の棒の柵で仕切られていた。列に並んで10分もすればライドができるのだ。

ところがそこで柵を乗り越える奴がいた。どう見てもメキシコ人だった。しかも子供に「くぐれ」と指示をして柵をくぐらせるのである。彼らに向かって「you are cheating! と叫んだわたしだが、聞こえなかったフリか、英語がわからないフリをされた(発音は悪かったよスマン)。

人種差別的な発言はいけないが、どうも彼らに「並ぶ」という感性が乏しいという光景にはファストフードや店舗での振舞いで何度も見かけた。お国柄なのだろうと思った。

【整然と並ばない人たちも日本にいる】
先日のPS3の販売時(有楽町ビックカメラ)の行列の説明にこうある。

混乱の原因のひとつには、客のかなり大きな割合を占めた、外国人と店側のコミュニケーションが上手くとれていなかった点がある。店側では十分な数の在庫が確保できている点、落ち着いて整列を行なって欲しいという指示を再三にわたって出していたが、これらのアナウンスが効果的に伝わっていたとは考えにくい。作法の違いからか、我先にと列に割り込む客も多く、これが混乱に拍車をかけた。
引用元 http://blog.so-net.ne.jp/kazufumi_my-sony/2006-11-11

Thumb320x213images824869 向こうの列かしら。
Thumb320x234images824864  こういう掲示もあったが(こちらの列では・・・)。

ここで言う外国人は中国系の人たちである。わたしの乏しい中国体験からも、彼らにもまた「並ぶ」という意識が低いと思う。行列する民族としない民族があるのは事実である。

日本人は相対的にかなりマナーがいいが、最近目につくのが中年男性のマナーの悪さ。コンビニではフォーク型の行列をしない。歩いていて避けない。歩きタバコをする。おとーさんたちのマナーは悪化している!余談であった。

【タイプA「パブリシティ行列」の心理変化】
行列をきちんとマネジメントできるかどうかは情報提供力次第である。再びPS3の発売日の状況から。ビックカメラの店員が、歩道から車道にあふれた群集に警告を与え、整理を促している際だった。その店員は2つに分かれた群集から混乱なく列を作るために、店舗裏手と公道側の群集を別々に誘導していこうと意図していた。しかし、その考えが裏目に出てしまった。
メガホンで叫ぶ店員は「ここにいるお客様には十分な数の在庫が確保できている」と前置きした上で、「向こうの(裏手側の)人たちから先に誘導します」とうっかり叫んでしまったのだ。この時点で、列待ちの群集の多くは、1000人近い数にふくれあがった全員に商品が行き届くとは考えていなかった。

引用元 http://ascii24.com/news/i/topi/article/2006/11/11/665782-000.html

口を滑らせたのはうっかりミスだが、ヘタをすれば暴動であった。そもそも2つに分かれた列をマネジメントしきれなかった店側のミスであり、さらに「何人に何台行き渡るか」「どのように行き渡らせるか」それが「何時からなのか」、臨時に行列マネージャなる人をおいて、情報を繰り返し繰り返し伝えるべきであった。

20061111_1906981 ビック。  F2cd61796c3a82bbafm ヨドバシ。

これに対してヨドバシ アキバ店では地下4~5階の駐車場に集められて夜を過ごしたお客さんが多かったという。こちらにも中国人や中東人の人もいたが、混乱は無かった。店舗施設(の余裕)や環境の違いとだけとは言えないと思う。

行列という物理コントロールは、並ぶ人の心理コントロール次第なのである。2001年の明石花火大会歩道橋事故でも行列の誘導ができなかったのが主因だった。明確なことばで、情報を伝えきるという基本を忘れてはならない。

【ヘルス・エンジェルスという悲劇】
昔の話で恐縮ですが1969年、通称オルタモントの悲劇と呼ばれるコンサート会場で殺人事件が起きたのだが、それはヘルス・エンジェルスという警備担当に雇われた暴走族によるものだった。
参考サイト http://nagoya.cool.ne.jp/b0y/1969.html

それをもじって「行列エンジェル」なる行列をマネジメントする女性の専門集団をつくって派遣するというのはどうだろうか。女性がいいのは柔らかな対応で暴徒も治まりやすいから。さまざまなイベントで需要があると思うのだが。

【タイプD「怒りの行列」の行列マネジメント】
タイプDはATMやコンビニ、スーパーなどであるが、このタイプの行列マネジメントは標準化、ルールづくりとその運用が必要である。

ところがコンビニエンス・ストアやスーパーでは、店舗什器の配列/配置によってまちまちの運用がなされている。チェーンとして統一されたマニュアルがあるはずだが、それが運用されていないときもある。。XXXチェーンならどこの店舗に行っても同じ設備とサービスを訴求するなら、行列マネジメントの標準化もまた重要なはずである。実際には教育などの問題もあるのでむつかしいだろうが。

ある米国のスーパーでは「three is crowd」というサービスをしていた。レジにお客さんが3人並んだら、閉めているブースを即座に開ける、さらには割引もするという店側のルールである。three is crowdというのはことわざで(2人だと仲間だが3人寄れば分裂する)、ようするに「長い行列をつくらない」というわかりやすい合言葉という、アメリカ的な発想。

  

パートやアルバイト、派遣さん、さらには外国人(だけ)で運営する日本のサービス業では、こうした米国並みの「わかりやすい合言葉」という標準化が必要になっている。合言葉の良いところは、店側の管理だけでなく、お客様にも「あのお店の行列マネジメント・ポリシーはこれこれである」というイメージを植えつけられるところにある。

日本の銀行のATMでは30人並んでいても「お並びください」と言うばかりである。ATMの外にまで行列が出来ていても放置されている。まさしく「Time is Money」なのに、お客さんのTimeにどう気を配るかポリシーが感じられない。

【顧客は管理する対象ではない】
行列させるのは「ほんとうは申し訳ない」が基本である。行列させて話題づくりは本末転倒である。だが種々の事情でそれが致し方ないときもある。そういう思いからスタートしてほしい。

「行列を管理する」のではなく、「行列に育てられる」と思って仕事をすべきだろう

今日は以上です。明日は「行列をもてなす」をテーマにたわいないテーマを書いてみたい。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月20日 (月)

行列マーケティング/旬ネタ 【1.行列ポジショニング】

米国全土では、11月17日の某商品発売までの数日間、各地で凄いことになっていた。1週間も前から並ぶヒマ人(失礼)が多数出て、マンハッタンでは大々的にテントが張られ、警官も出動し、コネチカット州のウォルマート裏では発砲事件まで発生した。その商品の発売を先行させた日本では、11月10日夕刻から11日未明にかけて、やはり徹夜行列組がたくさん出て、一部の行列は混乱した。

それはソニーPS3での行列騒ぎ。国内外で生産が追いつかず、発売時の初期供給数を絞り込んだのが原因といわれるが、それにしてもたかがゲーム、されどゲームなのだろうか。

対抗馬の任天堂Wiiは19日、全米で先行発売され、40万台を売り切った模様である。こちらでも行列ができたが、需給バランスが整ったせいか(それが良いのか悪いのか)それほどの混乱は報道されていない。12月2日の日本での発売を前に、熱心なファンはいつから並ぶのだろうか。

何を隠そうわたしはゲーマーじゃない。単なるマーケターもどき。だからゲームよりも「行列」に興味がわいた。行列とは予備購買行動であるだけでなく、行列を見る人には購買促進行動でもあり、見られることは購買完結エネルギーである。並ぶ何とかに見る何とか(というのか?)、とどのつまり、行列は商売繁盛の基本である。

年末に向かって並ぼうぜ!という行列も増えそうなので、今週の旬ネタは「行列マーケティング」を取りあげる。ネタ予定は次の通りである。

*********************************************************
1.行列ポジショニング: エンタメ度とレア度で斬る行列特性
2.顧客不満足度を増す行列マネジメント:管理するという間違い。 
3.行列ホスピタリティ: 行列をもてなす。
4.行列づくりのテクニック: 悪魔のテクニックはお奨めできない
5.行列の科学: 顧客の心の中に高順位をつくる。
*********************************************************

【1.行列ポジショニング : エンタメ度とレア度で斬る行列特性】
ひとくちに行列といってもさまざまな種類がある。楽しい行列、嫌々立つ行列、一刻を争う行列、生活のための行列・・・・そこでまず、行列をポジショニングしてみよう。




4



この図ではタテ軸をならんで求める商品やサービスの稀少性から「レア度」、ヨコ軸をエンターテイメント性の高低を示す「エンタメ度」とした。二本の軸に仕切られて、A・B・C・Dの4つのタイプができる。

【タイプAとB エンタメ度高し】
まずタイプAは「パブリシティ行列」と呼んでみたい。PS3やWiiなど話題の商品の行列に代表される、購買やエンタメ目的の行列である。行列する時間も、行列の長さも、一定限度長いほうが並び手にとって並びがいがある。それがパブリシティにもなる。

ポイントは「もしかしたら、行列しても目的が達成されない(買えない、予約できない)かも知れない」という心理的な圧迫である。この圧迫があまりに強すぎると供給者への不満になる。圧迫が小さいと行列が短くなる。情報をいかに漏らしていくか。ティーザー=じらしのさじ加減が重要である。

次にタイプBである。これを「劇場型行列」と呼びたい。ディズニーランドの人気アトラクション、ゲームショウでの新発売ゲーム、コスチュームまできめて並ぶ「スターウォーズ」といった話題の映画、死亡事故も起きた花火会場での行列などがここに入る。エンターテイメント度は高いのだが、並べばいずれ乗れる/プレイができる/観れるので、実はレア度は高くないのである。

余談だが、わたしは中学1年生の頃だったか、リンダ・ブレア主演の恐怖映画『エクソシスト』の封切りでの行列を思い出す。劇場をとりまいて並んでいたが、行列づくりもマナーも悪く、オシクラ饅頭になってケガ人も出た。押されたわたしはいつの間にか映画館の中にいた。前売券だった。ところがやっとたどり着いたのは2階席の後ろ、立ち見だった。

この映画の有名なシーンのひとつに、悪魔にとり憑かれた少女の頭が、ぐるりと360度回転するシーンがある。だが小学生だったわたしはまだ背が低く、立ち見で前の人の頭しか見えなかった。ひどい。あれほど混雑していた映画を観たのは、後にも先にもエクソシストだけである。話題の映画は観ないというアマノジャクになった機会でもある。あのとき世間は、オカルト・ブームにとり憑かれていた。あほらしい。

Amffzizti  ニフティ/ココログのシステムがおかしくて表示が。。。。

【タイプCとD エンタメより怨嗟】
タイプCは「ご指名型行列」と呼びたい。わたしの家の近所の行列のできる小児科医がその事例である。その『はやしXXXクリニック』では、早朝から整理券を求める人でにぎわう。パパが車で乗り付けて、整理券をピックして、申し込みはママが8時頃からだ。子供の熱とあらば仕方ないのだろうが。

このタイプは主にサービス業であり、供給が絞られているので需要期にあふれてしまう。行列のできる法律相談もこの口である。販売促進型に近い面もあるが、エンタメ度は低い(病を治す、税金を減らす、資産を増やすetc.)。

最後に「怒りの行列」はDタイプ。日常的な反復行動なので行列をしたくないのにしているというもの。代表的な事例はATMの行列である。東京三菱UFJの支店はどこも混雑しているが、特に新橋店はディズニーランドのアトラクション施設のように、人の腸のようにくねった行列をつくらせているほどだ。いつも大混雑。ところがチェリーさんは静脈認証のブースへ、すらすらだそうです(いいね!)。

JRのチケット発券、コンビニでのレジ行列もここに分類される。必需品を買うので無駄な時間をすごしたくない。お腹がすいているランチ時は怒りが先に立つ。支払が遅い客は、「レジの遅い列」でも作ってほしいとさえ思う。

真ん中にはランチの行列。だいたい美味しい店なのでエンタメ性はそこそこ高い。だが行列にそそられて、実は調理や接客力に難があった、という事例も多く、わたしはこれを「悪魔のテクニック」と呼んでいる。

なおパチ(ンコ、スロ)を象限Bに置いたが、プレイの上がりに生活を賭している場合は、そのスポット(台)が欲しいという切実な行列なのである。ゆえにエンタメ度は低い。象限Dに入ることがある。

【タイプによって行列づくり・マネジメントの対処が違う】
A~Dのタイプ別に見て、供給側として行列が好ましいのはA、B、C。好ましくないのはDである。

自明のようであるが、この違いは案外重要である。たとえば行列へのもてなしが効果的なのはAとB、特にBである。Aはもてなさなくても並ぶが、Bはもてなすことで次回にまた並んでもらえる。そして顧客ロイヤルティが高まる。

だがCへはもてなしは効かず、「早くしてほしい!」と懇願されるDへのもてなしは逆に顧客の怒りを誘発し、顧客不満足度を上げることになる。

Aには「無関心」を装いつつ事故が起きないように気をつける。Bは行列をもてなすことで行列(顧客ロイヤルティ)を育成する。Cはサービス効率性をアップさせて満足度を高める。Dはサービス・マネジメントを抜本的に見直し、標準化も進める。

そもそも行列(させること)は是なのか非なのか? 行列(すること)は満足なのか不満足なのか? 疑問はたくさんあるのである。

Thumb203x152images824874   こんなお迎えなら並びたい?

今週は行列という不可思議な現象を、やわらかく、ランチ時には自ら並びながら考察してみたいと思います。
明日は「顧客不満足度を増す行列マネジメント」の予定です。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月19日 (日)

レクサスLS460という日本カー・オブ・ザ・イヤーの選択

2006年11月18日、「06~07 日本カー・オブ・ザ・イヤー」発表され、トヨタ自動車の高級ブランド「レクサス」の最上級セダン「LS460」が選ばれた。一方、先行して11月14日に発表された、もうひとつのカー・オブ・ザ・イヤー、「RJCカーオブザイヤー」は三菱アイ、輸入車にはメルセデス・ベンツ Eクラス 320CDI 、その搭載エンジン「コモンレール・ディーゼルターボエンジン」を技術賞に選んだ。

Car_of_the_year_logo  栄えある賞。

【勝手にアドバイス vol.73 レクサスLS460という日本カー・オブ・ザ・イヤーの選択
このふたつの賞のありかた、環境への考え方がよくわかる選択であった。レクサスは日本の代表車であり、車にケチをつける気は毛頭ない。だが「賞にはどこか権威主義的の匂いがする」というフレーズがよく似合うと思った。

1118 動くのね。

原油価格が55ドル台にまで下がり、円安で輸出企業に利益が出て、景気も回復で高いものが売れ、だからか地球温暖化問題をストンと忘れがちである。今日の勝手にアドバイスは、カー・オブ・ザ・イヤーという窓から見える範囲の環境問題をのぞいてみたい。

LS460の受賞理由
日本人の持つ繊細な造形技術と最新テクノロジーを駆使したプレミアムブランドカーとして、世界の高級車市場に発信。最先端の安全装備と高性能、環境性能を持つフラッグシップカー。8速オートマチックトランスミッションなどの最新デバイスによる質の高い快適な走行性能と乗り心地のよさは、世界トップレベルであると評価。

まさにその通りなのでしょう。だがなぜわざわざ最高級車を選ぶのだろうか。日本カー・オブ・ザ・イヤーの選定は、自動車好きのモーター・ジャーナリスト、元レーサー、現レーサー、評論家らの投票で決まる。無報酬で運営。選考委員(60名ぐらい)のうち、女性は二人、外国人はひとり。車好きが多いのが特徴である。

メルセデス・ベンツ Eクラス 320CDIの受賞理由
日本の厳しい排出ガス規制に適合し、クリーン性能、低燃費、ハイパフォーマンスを実現した新開発の3.0L・V6コモンレールディーゼルターボエンジンを搭載。Eクラスのスポーティなハンドリング性能、5Lガソリンエンジンに匹敵するトルクフルな動力性能に加え、これまでのディーゼルの常識を打ち破る高い静粛性やすぐれた快適性が評価された。

Mitsubishi アイ。 Mb_engine  エンジン。

IMPORTカー部門はメルセデスだが、その搭載エンジンも「RJCテクノロジーオブザイヤー」を受賞した。

新世代3.0L・V6コモンレールディーゼルターボエンジン
 ガソリンエンジンよりも排出ガスのクリーンなエンジンを目指して開発された、DOHC4バルブV6ターボディーゼル。(中略)エンジン音の低減と排ガス浄化を実現した。またすぐれた燃費性能によりCO2排出を低減するだけでなく、触媒技術とともに現在最もクリーンなディーゼルとして、いち早く日本への輸入をはじめた
。 

RJCの選考委員は学歴の高い人や学者が多い。交通問題評論家、旅ライターという肩書き、さらに女性も多く、社長もいる。業界全体に対して見識が広い人が集まっている。

【地球温暖化という視点で見れば】
日本カー・オブ・ザ・イヤーは1980年から賞を発表している権威のある団体。RJCはカー・オブ・ザ・イヤーの選考に反発して別組織をつくり、1992年から独自に賞を発表している。片方の選択はレクサス(4600CC)、片方の選択はアイ(660CC)。エンジン排気量では7倍ぐらいある。個人的にはどちらかと言われれば、狭い日本、資源輸入国民としてアイを推したい。

RJCの方で特筆すべきは、ディーゼル・エンジンを受賞させたことである。

日本では「うるさい」「排ガスが汚い」などのマイナスイメージが強いディーゼル・エンジン。イメージのせいか、すべての登録車両におけるディーゼル・エンジン比率はたったの3.7%なのである。環境規制のきついヨーロッパでは、ディーゼルエンジン車のシェアは非常に高い。なんと新車販売の半分がディーゼルの国もある。「98年と02年を比較するとドイツは17.6%→37.9%、イギリス15.3%→23.5%、フランス40.2%→63.2%」だそうだ。
出典 http://www.niigata-inet.or.jp/ryokawa-j/KOUCHYOU/bosot3.htm

E_07  日本は遅れている。

ディーゼル車は地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量がガソリン車よりも少ない。しかもコモンレール・システムという技術によって排ガスの浄化も実現している。NOxやPMといった環境に悪い物質の放出量は欧州の厳しい規制値をクリアしている。カラカラという騒音振動も低減し燃費も向上している。それでもディーゼルが売れない国はどこかおかしい。国策としてディーゼルに予算をシフトしないことにも疑問がある。まさかトヨタが、ディーゼルで出遅れているからではないだろうが。

賞は販売を動かす効果があるが、すでに受注残をたっぷり抱えるレクサスには勲章に過ぎない。著名な賞の選考には、世論や政治を動かす思想をもっとこめてもいいと思う。

【ピーク・オイル・パニック】
出版社で編集をしている友人から『ピーク・オイル・パニック』という本を贈ってもらった。ありがとう。読んだぜ。この書によると、「ピーク・オイル(資源埋蔵量としての石油の半分が消費されるポイント)は2005年であった。石油と天然ガスのピークポイントは2015年前後とされている。すでに折り返し地点を過ぎているという主張なのである。

これは資源としての埋蔵量のピークであり、実際に採掘できるかどうかは別である。技術面とコスト面からの制約で、埋蔵量の35%しか採掘できないというのが業界の通説だという。つまりピークポイントの後は、なだらかな曲線とは限らない。がくんと採掘量が減る可能性もある。05年から06年にかけての原油の高騰はその序曲であり、1バレル100ドルも近い将来の現実であろう。

これが嘘かどうか、ぜひ本を購入して研究してもらいたいが、OAZOの丸善あたりでは、商社マンとおぼしき制服組が、ごっそりとまとめ買いをしたという。ガソリンを求めて戦うメル・ギブソンの映画『マッドマックス』は、もはや荒唐無稽な物語と言えないのである。

それなのにハマーSUVというリッター4Kmしか走らない車に乗る人(キムタクシュワルツネッガー)には疑問符がつくし、レクサスLSは9kmとまだ燃費がいいとしても、のほほんと4.6リッターの高級車を拝む時代ではない。

300pxhummer_h2  ごっつい。

【勝手にアドバイス】
レクサスを褒め称えるなら、ぜひ欧州で先行発売されたIS220d(コモンレール・ディーゼル・エンジン搭載)を表彰してほしい。販売も好調だということだし、車に厳しい欧州マーケットでも商品評価も高いそうだ。

自動車業界では世界のリーダーである以上、環境面でもリーダーでなくてはならない。賞の選考にも、世界に望まれるリーダーシップ・オピニオンを持つべきだ

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月18日 (土)

高橋尚子さんのバランスシート

高橋尚子選手が、自宅兼練習場の米コロラド州ボルダーから帰国して、明日(2006年11月19日)の東京国際女子マラソンに出場する。

わたしは生の高橋選手を一度だけ見たことがある。2003年11月16日の、どこか生温かい風が吹く日。あの因縁の代表選考レース、東京国際女子マラソンである。あれからオリンピックをはさんで丸3年が経った。

彼女の競技に賭ける姿勢、行動、キャラクターには注目すべきところがたくさんある。そこで今日の勝手にアドバイスは「高橋尚子さんのバランスシート」がテーマ。

Tkm2005_1  これは2005年東京国際女子マラソン。

【勝手にアドバイス vol.72 高橋尚子さんのバランスシート
ウィキペディアにはこうある
アテネオリンピックの女子マラソン代表選考レースだった、2003年11月16日の東京国際女子マラソンでは、中間点を過ぎてから独走となったが、30Km辺りからスタミナ切れを起こして急激に失速。優勝したエチオピアのエルフェネッシュ・アレムに39Km地点で抜かれ、まさかの2位に沈む。ちなみに、五輪代表を目指す多くの有力選手が、高橋を警戒してこの大会を回避しており、高橋以外の有力日本人選手は皆無といっていい状況であった。そのレースで高橋が失速したことは何とも皮肉である。

あの日のコンディションづくりはむつかしかっただろう11月なのにばかに暑い風が吹いていた。わたしは日曜なのに出社して委員会活動に励んでいたが、ちょうどお昼過ぎ、日比谷国際ビルの前の補導にはTV中継車、警察官、太古たたき、上空には何機ものヘリコプター、そして大勢の人がたむろしていた。それにまぎれて高橋選手の疾走する姿を見た。きれいな背筋と、「すごい!」という形容がぴったりの筋肉質の脚が印象的だった。

この時点では当然トップであったが、その後の状況はご存知の通り、五輪代表から漏れた

【いつも礼儀正しい】
高橋尚子さんが先週帰国したときは、成田に50人ほど集まった報道陣に向かって、深々と頭を下げたという。「本当にありがとうございます」と45度のおじぎ。セレブなどの取材には「ちょっとこっち向いて!」「XXXXはどうですか?」のような怒声が飛び交うのが普通の光景だが、きちんと頭を下げられてはうるさいメディアも黙ってしまったという

Kfullflash20061109036_m  時差ぼけも、 Osp11101803ns  笑顔で。

アスリートとメディアの関係は必ずしも良いケースばかりではない。質問もしていないのに憶測で記事を書く記者もいる。あるいは陸連とソリが合わない選手もいる。だが高橋さんはいつも礼儀正しい

【チーム・マネジメント】
2005年に小出監督とリクルート時代からの10年に及ぶ師弟関係を解消、チームQを結成した。そして11月の東京国際女子では雪辱を晴らして優勝。そして北京をにらんで、資産を切り崩して米国に家を購入した。

もちろんスポンサー契約(ファイテン)などはあるが、金メダルを取った後のCMやパブリシティの勢いはないから、収入は減少しているだろう。

自分だけの結果、走ることだけに専念できない。自分のアスリート生命もマネジメントしなくてはならないし、練習パートナーやトレーナーも必要である。チームの運営や収入も考えるようになった。今の高橋さんは「選手兼、監督兼、マネージャー」なのである。

【高橋尚子にとっての監督とは】
10年に及んだ小出監督との師弟関係、高橋さんにとっての監督とはなんなのだろう。先日、帰国後のインタビューではこう語る高橋だが。

──今の高橋さんは、監督としての自分と選手の自分とどっちがアクセルでブレーキか
高橋 走るときだけではなく、メニューを決めるときは監督のところ、天使と悪魔が入れ替わり立ち代り襲ってくる。これをやりたくない、でもやらなきゃ、というのが両方来ます。でも始めてしまうと、やらないと嫌なタイプなんで、どうしても追い込んで終わらないと気がすまないタイプです。甘えもなく、無理もなく、いいところでお互いが出てきていて練習できていると思う。
(インタビューは『増島スタジアム』より引用)

自著『風になった日』には、「自分は人形なんだ」とつぶやきながら走った日々のことが書かれていた。「人形になれ、自分を人形にしろ」と。監督の言うとおり走ればいいんだ、と。

その小出監督はシドニー五輪の前、知人にこう話している。「生身の人間だから最後まで計算できないものもある。しかし、金メダルは取れる。あとはこぼさないようにすることだ。どういう取り方をするかなのだ」

そんな有能な監督の教えもあって金メダルを取った。ひたすら決めた監督と決めたメニューを走りこんで。監督とは高橋さんにとってどういうものだったか。

自分自身を監督するということを「天使と悪魔の入れ替わり」と表現している。ということは小出監督、やっぱり悪魔だったのだろう(笑)。だがそういう自分を、今は突き放して見れるようになった。2005年を境に、人形からひとまわり大きな人間になる成長があったのだと思う。金メダルを取り、国民栄誉賞も受賞したセレブなのだが、高橋さん個人としては「初めての自立」だったのだろう。

【走ることで何を伝えたいか】
(帰国後の会見で、走ることで何を伝えたいか、と聞かれ) 
マラソンで勝ちたいとか、私が一番とか、そういうことを求めて走れなくなってきました。オリンピックで勝って、世界記録を作って、自分だけが強い、ということだけを動機にして走れなくなってきてから、もっと何かを伝えたいという気持ちで走ろうと思ってきた。自分が走れているということは多くのみなさんの力を借りて走っていけるということ、それを踏まえて感謝を伝えたい
(『増島スタジアム』より)

伝えたいのは「感謝」。

だからなのか、最近練習方法も変わった。以前はメニューを決めたらそれをひたすらこなしてケガもしてきた。今はチームメンバーと話し合って、最も良い方法を取り入れようというコミュニケーションがあるという。だから嫌いなトラックでのスピード練習も積んできた。

「走らせていただいてる」というコメントに表れているが、勝つことだけを目標にするのではなく、心のバランスが取れてきたのではないだろうか。

Tky200611140301  腕の筋肉も見事。

【高橋尚子さんのバランスシート】
企業会計のバランスシートにたとえると、人形だった頃は自己資本も無く、自分の資産をすり減らし、自分への配当もなかったのだと思う。資本金は企業や監督の出資によって成り立っていて、自分なのに自分の経営がなかった。

今のチームQのバランスシートは、金メダルを取ったころと比較して金額(資産)は小さくなった。だが自己資本比率は高く、自分の考えでチームQをどうバランスさせるか決めることができる、自分の経営者になれたのではないだろうか。だから今は充実しているに違いない。

【勝手にアドバイス】
引退後の中田英寿さんが世界各地をまわってサッカー教室や講演をしているように、チームQも走ることで運動の素晴らしさを世界各地で伝道し、少年少女のアスリートを育成してもらいたい。

さらに民間出身のスポーツ振興大臣として起用していただき、教育をダメにする文部科学省に乗り込んで、スポーツから教育振興をしてもらいたい。実績も海外での知名度も抜群なのだから。そうして感謝をかたちにしてほしい

もちろん北京に出場してからで結構であるが。

Im20061117ssxkf04131711200613  結果は明日。

では明日の号砲を。今日は以上です。Click on tomorrow!

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2006年11月17日 (金)

EIZO/ナナオの脱皮戦略に学ぶ

ブログを書き始めてそろそろ4ヶ月以上になるが、時折「読んでますよ」というメールが知人から飛んでくる。前職で同僚だったH兄いもその一人である。ふと、ひとつの光景が思い出された。もう10年近く前になるが、技術者でシステム担当のH兄いは、「これ買ったんだよ」と嬉しそうに20インチのPCモニタをなでていた。

それはナナオのPCモニタであった。もちろん液晶ではなくCRT。10年ほど前、14インチが主流の時代、20インチというサイズも法外だった。しかも高精度で明るくて、ちっちゃな文字もくっきりみえた。ナナオは当時はまだ知る人ぞ知るというブランドで高価だった。

今ではEIZOというブランドで有名になりつつあるナナオは、単なるマニア向けのモニタ屋ではない。その事業戦略にはかねて興味があった。で、今日の勝手にアドバイスは「EIZO/ナナオの脱皮戦略に学ぶ」。

【勝手にアドバイス vol.71 EIZO/ナナオの脱皮戦略に学ぶ】
ナナオグループは、コンピュータ用モニターをはじめとする映像機器の開発プロセスを通じてさまざまな要素技術を蓄積し、コアコンピタンスを築いてまいりました。今後も、最先端テクノロジーの融合とビジネスユニット相互のシナジー効果により、常に優位性を確立できる独自のビジネスモデルを展開してまいります。
出典同社HP http://www.eizo.co.jp/company/domain/index.html

たかがモニタ、されどモニタである。だがコンピュータ・モニタは単独で完成品として販売されるより、メーカでセット売りが一般的。今やノートPCが主流になって、デスクトップ・モニター単品売りはますます隅に追いやられている感あり。それでは付加価値が出ない。単品メーカーでは台湾企業との価格競争に埋没してしまう、のが一般現象である。

性能の良いマニアな単品会社だったナナオは、どっこい売上高も拡大し(910億~850億円)、営業利益率は15%純利益はなんと8%と、総合電機メーカーを遠く寄せ付けない水準なのである。石川県の会社に何が起きているのだろうか?

24 いずれEIZO(株)なのであろう。

【商品、売り方、プロセスがそろい踏みの事業戦略】
同社の中期計画を見ると「100%国内生産」「100%自社開発」、そして「圧倒的な差別化」という文字が目に入る。生産の効率化を目指して海外に生産工場を移し、苦労して低利益率に甘んじる会社が多い中、国内生産+自社開発で15%の利益率を達成しているのである。

情報を集めると、ナナオの戦略の源流に「FlexScan」というH兄いも買ったCRTディスプレイがあった。高精度な製品で他社を圧倒した。その解像度の高いモニターで培った基盤技術が原点なのだ。

<商品>
①CRTやLCDの「制御設計技術」を自社の強みと位置づけた
まず基盤技術=制御技術を同社の強みを規定した。それは「ディスプレイ」という表面的な切り口ではなく、ディスプレイを「制御する技術」にあるとしたのがミソである。

もっとも根っこの部分にある企業の本質は何か?同社の場合は制御設計技術であった。その技術をコアにしてプロ用途、一般用途、さらに液晶から動画対応まで拡張してきた。基盤技術から技術&製品ツリーを構想した。

②市場の変化を想定した
変化をひとことで言えば「静止画のスペシャリスト・ナナオの動画への挑戦」。静止画ディスプレイだけでは喰えないし、市場は動画へ大きくシフトする。ならばそれに挑戦しよう。その挑戦はゲームマシン向けのディスプレイ、携帯FOMAの動画技術、さらにDVD搭載TVへと展開している。

Mk_foris_main  美しい。Mk_foris_drive  DVDはこんな感じ。

③単品でも高付加価値路線を追求した
ディスプレイ単品としても、医用画像装置、ゲーム画像装置、プロデザイナー向けディスプレイなどプロ仕様に注力する一方、汎用品も大画面サイズ、自在に動くフレーム、デュアルディスプレイなどEIZOならではというアイデアを盛り込んで単品指名買いを目指した

<売り方>
①法人も個人も直接販売を基本路線
製造・開発が自社なら販売も自社にこだわる姿勢がある。販売まで一貫にするのは、商品の技術や仕様、イメージを伝えきるにはダイレクトが最良だと判断したこと、DELLのダイレクトモデルにならってカスタマイズ&製品在庫の縮減で高利益率をねらうためである。

②ショールーム販売
EIZOはAppleストアのようなイメージで、「EIZOガレリア」と名づけた体験&直販を行っている。現在、仙台、銀座、大阪、福岡の4ヶ所を展開。

17v  19 う~ん、提案型。

イメージ戦略であるとともに、さまざまな提案と技術支援を行うスペースでもある。

③インターネット販売
個人ダイレクト」「法人ダイレクト」がある。その中でもおもしろいのは「MyStyle112」。液晶モニターを画面サイズ(現在17インチ、19インチの2種)、用途(文字作業、写真やCG、動画・ゲーム、CAD)から選定ができる。その選択肢が112種類あるというもの。基本製品を選んだあとも「高視野角」「スピーカー」「スタンド」「カラー」などが選択できる。

<プロセス>
プロ向けのカラーマネジメントなど、ユーザー教育セミナーをバンバン実施している。サポート拠点も自前で、全国6ヶ所に置いている。同社の組織などの情報が無いためこれは想像だが、このような売り方を実現するためには、石川県の製造屋から、組織や人材は大きく脱皮しなければできなかったはずである。

社長の実盛(じつもり)さんは村田製作所入社、ムラタヨーロッパ副社長となり、94年にナナオに常務として入社。専務、副社長を経て2001年から社長を務めている。この方が戦略キーマンと想像した。

【脱皮戦略の好事例】
ナナオは世間をあっと唸らせるプロジェクトXが派手に展開されているわけではない。イメージ戦略にしてもDELLやAppleの二番煎じと言われる部分もある。だが、わたしはこの事業脱皮戦略を高く評価する。

Photo01 ナナオの戦略図。

理想的な事業(再生)戦略とは、商品(ナナオの場合はコア技術)、売り方(同、直販)、プロセス(同、変化を実現する組織のかたち)の三拍子がそろっている。ひとつでも欠けてはだめだ。また順序もこの通り実施するのが基本である。ナナオは優れた単品会社から、高付加価値な機能会社に脱皮する上でセオリーをまっとうしている。

【経営コンサルティングとは】
わたしのいるコンサルティング業界とは、浸れば浸るほど狭い了見になりがちなのである

流行の熟語(CRM、SFA、SEO、SNS、BSC、EA、などなど)で仕事が取れると錯覚する人はようやく減ってきたが、いまだそういう提案をする人もいる。法律変化に乗じてのボタモチ需要もたくさんある。

その多くは狭い了見である。顧客はそんなものに目を奪われるほど狭くない。もっと大所高所から部門や事業機能を串刺しにして、あるべき姿を創ることを求めている。あるコンサルタントの方は「商品・売り方・プロセス」を創ることと表現された。ナナオがEIZOになるために競争力を再構築したプロセスを支援することが、本来のコンサルティングという仕事である。

わたしの今週は「リッツ・カールトン」に始まり、「商品・売り方・プロセス」を経て、「ナナオ」で終わった。良い仕事をしようと思った。今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月16日 (木)

ストレス解消 for 総務部

仕事で総務/人事の方々と接する機会もあります。インタビューでお会いしたある人事部ウーマンは、のっけから「肩が凝って凝って、もうビョーキ状態」とのたまうので、インタビューそっちのけ、肩こり解消とかヨガ体操の話、果ては歯周病まで話が脱線してしまった。でもおもしろかったです。

【勝手にアドバイス vol.70 ストレス解消 for 総務部】
自分の勤め先の総務部や社長室の方々のお顔も思うと、あぁ・・・きっと日中はストレス一杯でしょう!現業の方々は「人事部、総務部なの、楽でいいね~♪」なんて言うでしょうが、実態はまさに正反対。ストレスが凝縮しているのが人事・総務である。

で今日の勝手にアドバイスは、「ストレス解消 for 総務部」。マーケティング色はほのかに。

【トイレにこもる女性たち】
「トイレにこもる女性たち」 11月14日付け日経新聞夕刊が伝えるところでは、オフィスのトイレにこもるワーキング・ウーマンが増えている。

・平均トイレ滞留時間、男性は2分46秒。これに対して女性は倍の4分50秒。
こんなに長い時間、トイレで用を足す以外に何をするのか? 

 「身だしなみの確認 60%」
 「メーク直し 44%」
 「リラックスする 28%」
 「眠気をさます 24%」 などとなっている。(%はだいたいの読み取り値)

もちろん時間帯によって滞在目的は違う(はずと勝手な想像)。午前中は「がんばるぞ詣で」、お昼の後はリラックス、3時はメーク直しと香水タイム、5時にはメーク「し」直し。

だが主因はストレスである。身だしなみもメークもストレス解消ともなるし、「リラックスする」というのは個室に入って「だぁ~っ」とした顔をするのであろう。ストレスがたまればたまるほど、5分が7分になり10分になる。こういう意識調査は、ぜひ部門別ないし職種別に実施してほしい。きっと内勤ほど長いと思う。

【人事・総務部のストレスの源泉】
わたしの観察では総務や人事部のストレスの源泉には3つの要素がある。

1.反復性の業務(だが力仕事)
2.裏方意識
3.上司

この部門は反復性の強い業務が特徴である。たとえば人事だけをとっても、概ね100以上もの業務プロセスがある。月単位、四半期単位、年単位、随時単位と反復サイクルはさまざま。業務マニュアルがあるもの、まったく無いもの、自前で工夫してつくるもの、その場で労基署や社労士に確認する対応など、実は定型的だが非定型の対応を強いられるのである。従業員規模が大きければ力仕事も相当である。

ちょうど今ごろ実施している年末調整の作業、1000名規模の会社でどんなにたいへんか、現場には想像できませんよね。かく言うわたしは今年、出遅れて社長室のHY嬢に迷惑をかけた。ブログからごめんなさい。

総務・人事はまた問い合わせの多い部署でもある。「ここから先は現場でやってください」と突き放すと、「(裏方なんだから)やってくれてもいいじゃない!」という不満の火の粉が現場から上がる。マニュアル対応は危険だが、請負すぎると墓穴を掘る。こなしてもこなしても10時に帰れない日々が続く。現場には総務は「定型業務」「裏方さんだろ」という優越意識があり、総務・人事には「わかってるわよ」「やりますから」という日陰者意識がある。これもストレスの源泉である。

3つめ。上司こそストレスの中心的要素である。ここは女性が多い職場である。上司が男性というだけで緊張する。それが有能な上司であれば「失敗しないか」とびびりでストレスがたまり、無能な上司であれば「誰のおかげで部長ヅラができてるのよ!」と、やはりストレスになるのである。

【総務・人事をターゲティングしよう!】
以上のように総務・人事部門は、明確にストレスを持つ方が非常に多い市場である。これをターゲティングしない手はない。

ところがワーキング・ウーマンのストレス市場というと、帰宅途中のストレス発散ネイルケア岩盤浴ボクササイズリフレクソロジーなどなど)、自宅でのストレス発散(バスタイム、テレビ、SNS、読書、化粧(基礎固め)、料理、お酒などなど)市場が一般的である。どうも企画職や営業職の女性にフォーカスしているように思う。

むしろ、あのし~んと静まりかえった人事・総務のオフィスにこそマーケット機会がある。内向きのストレス市場がある。ごろんと寝てしまう家での時間より、もっと長い時間滞在するオフィスの中で、どれだけストレスを発散できるか、そこに商機がある。商品開発者なら、彼女らを(少数派の男性もいるが)ターゲットにするストレス発散こそ、むつかしいが大きな需要のあるテーマでありチャレンジしたい。

【勝手にアドバイス】
わたしのアイデアはくだらないので読み飛ばしてください♪

①握り締めたい!
シンキング・パテという、カラフルな粘土。「夜光る」「ちぎると粒になる」「丸めてほうると跳ねる」「粉々に砕ける」・・・自在に変化する特性を持つ物質がある。気軽に外出できない部門なので、ストレス発散の基本は指運動である。昼間は握り潰して遊び、退社時にはマウスの形をつくって帰宅すると、電気を消したときに一斉に光だすので、小さなイタズラもできる。

 Christmas05main   Puttyworld_1920_3256217 暗闇で光る。

②噛み締めたい!
噛み締める行為がストレス発散になることは科学的に証明されている。だからマウスピースがいい!と思って探したが、美容整形用や噛み合わせ矯正用はあるが、ストレス発散用は見つからなかった。開発の余地があると思う。ガムだとくちゃくちゃして人事部長に怒られるが、噛み合わせ矯正用&ストレス発散(かつフェイスリフト効果もあり)だとぐっと愚痴もかみ締められる。

③踏み締めたい!
アゴがダメならアシがある。ちょっと女工哀史グッズぽい室内用多機能サンダルでぺこぺこするのは気持ちが良いという。アシのツボを刺激して肩こりも解消する。たしかに足でリズムをとると仕事もはかどるので、試してみてもいいだろう。だが貧乏ゆすりと言われても当局はいっさい関知しない。

Ida165a  立ち上がっているところがペコペコできる。

④叫びたい!
やっぱ叫びたいよね。これはむつかしいのですが、高層ビルなら階段の踊り場で叫んでもいいけど通報されるのが怖い。これはどうだろう。大声ストレス解消!防音マイク「ミュート」部門に一台?(笑)

65051s01  モデルは笑ってるが、ガァ~!と叫びたい!

⑤目をつむりたい!
見たくないものは見たくないのが人情である。アイピローも必須グッズである。これはラベンダーとローズマリーをブレンドした香りを内部に浸み込ませたアイピロー。「パソコン利用時に、キーボードを打つ手の下に敷いて疲れを緩和させる“ハンドレスト”として利用」できるのもいい。

Ge0096500000048_main  ひとつ欲しい。

⑥ストレッサー部長をなんとかしたい!
「くしゃみをさせよう!」という、ある総務ウーマン方から教わった手(?)である。いたって簡単。あなたの普段の香水をじゃんじゃんつけるだけです。そうすると、近くのオジサン上司はたまらずくしゃみをする。それだけで「ザマミロ」だし、「あなたの臭いが嫌い」という間接的なメッセージが伝われば目的も達成される。

⑦おもしろいコンサルタントを雇おう。
わたしのコンサルの師匠は常々「コンサルタントってのは面白くなきゃダメだ!」と言っている。何かのはずみで間違って「会計六法」や「内部統制大全」など堅めの本を読んでコチコチになってはまずい。そのときは落語のCDを聴いてほぐせと言っていた。

お客さんに「郷さん(わたし)はおもしろい」と言ってくれる人事ウーマンもいたし、わたしとのPJは「波乱万丈でおもしろい」と言ってくれた同僚の女性コンサルタントもいた。だがこれは褒め言葉だろうか?

いつでも寄席コンサルティングしまっす。今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月15日 (水)

サマンサ・タバサのWWCITYという問題提起

サマンサ・タバサというブランドは、中年男性には無縁ともいえるのであるが、そのネーミングの卓抜さから惹かれていた。この秋、メンズも発売するという。

【勝手にアドバイス Vol.69 サマンサ・タバサのWWCITYという問題提起】
そのサマンサ・タバサが2006年8月以来試験導入をしてきたオンラインショッピングシティ「WWCITY & Communications(ダブルダブリューシティ&コミュニケーションズ)」が12月から正式にオープンする。話題になっている理由は、寺田社長の問題提起とヤッパというベンチャーの技術を使った3D検索ビューアである。今日の勝手にアドバイスは、サマンサ・タバサのWWCITYをめぐる問題提起としたい。

【寺田社長の切り口】
なんとこのサイトを立ち上げるまで、社内では4年も喧々囂々(けんけんごうごう)してきたという。

これまでリアル店舗がネットに進出してこなかった背景には「ネットの便利さがブランド価値を毀損する」(寺田氏)という要因がある。“いつでも”“どこでも”“安く”という手軽さを実現してきたインターネットビジネスは、ブランドの価値と相反するものであると同氏は指摘する。またもう一つの問題点として、「ネットは偽者と本物が混じっているモラルのない世界」とも断じた。
http://japan.internet.com/busnews/20060714/5.html

4年前のネットの状況と今を較べると、ず~っと昔のような気がしてしまう。だがこの「ネットの便利さがブランド価値を毀損する」「ホンモノとニセモノが混在」「“いつでも”“どこでも”“安く”という手軽さ」を否定したいという言葉に惹かれた。

【街を立ち上げる】
寺田氏はこのサイトのコンセプトを次のように説明している。

WWCITY&Communication のコンセプトはインターネット上に“街を新しく立ち上げる”というもの。ファッションブランドをはじめ、インテリア、美容室、レストラン、銀行、映画館など、リアルの街に存在するショップをオンラインに持ち込む。 「ショッピングとコミュニケーションが一体化した新感覚の EC サイトを目指す」

060713_samantha2  こんな感じ。

まずWWCITYのコンセプトは「」でありき。実際、テストサイトを歩いてみると、サマンサ・タバサは街の中のひとつのブランドに過ぎない。新宿では丸井があり、ルミネがあり、伊勢丹がある。画面上からそれぞれの建物に入りお買物ができる。外には人も歩き、自動車が走っている。

ただし、街といっても現在WWCITYが提携をしている店舗に限られているわけだから、ほんとうの街ではない。
楽天やヤフーのショッピングモールはすべてがバーチャルであるのに対して、WWCITYでは入口がリアルであり、中身は(どこまで商品を一致させるのか不明瞭だが)リアル店舗とコラボするショッピングモールということが特徴である。

【ネットの便利さを否定する】
「“いつでも”“どこでも“安く”という手軽さ」で売ってきたインターネット・モールを否定するところから入るという反逆。確かにファッションとは希少性を売るもの。それが「いつでも・どこからでも」というネットの特性とは相反するものがある。それは納得できる。

わたしたちはネット・ショッピング・モールに入ってすることは、楽しむというよりは「探す」「較べる」「その場で購入する」消費行動パターンである。わたしたちはなるべくお手軽に、早く、正確にできることがインターネットでは重要だと思ってきた。

ネットの黎明期(95年~2000年ぐらい)には、ショップによっては画像は重くて遅い、他のサイトと較べることがむつかしい、買おうとしても銀行振り込みか代引きしかない、信用できるのか不安であるなど、数々のハードルがあった。

それをネット・マーチャントたちはひとつずつ解決をしてきた。解決策はブロードバンドであり、サイトの保証であり、支払保証であり、画像処理技術であり、在庫管理技術である。さまざまな努力があって、ポピュラーな商品だけでなく、ロングテールな供給と需要がマッチするという機会を提供してきた。これはマーケティング上、大きな貢献であった。それをあえて否定するのが、WWCITYというコンセプトである。

【ネットがブランド価値を毀損するか】
インターネットがブランドが毀損しているか。モノによってYESでありNOであるので、答えづらいがこう考えてみてはどうだろうか。

ネットショッピングが普及して、消費者購買モデルがAIDMA(注意、興味、欲望、記憶、購買)というモデルから、AISAS(注意、興味、検索、購買、情報共有)というモデルに変化しつつあるというのは、多くの論者の指摘するところ。

それをもじるとブランド品ショッピングとは本来AIDAA(アイダア?)であるべきか。注意、興味、欲望、購買までは同じで、最後のAはADDICTION、つまりそのブランド中毒、という囲い込み状態をつくること。最後のAを創ることと、ネットのお手軽・お気軽・身軽な消費行動とは、確かに相容れないものがある。

サマンサ・タバサがいう「インターネットがブランドを毀損する」というのは、「お手軽に知ったかぶりをされては困る」という売り手の思いなのかも知れない。あるいは画像としてブランド・イメージを形成する手法として、あっちこっちにクリックされて自らコントロールしにくいということでもあるだろう。

その意味ではブランド価値を毀損するとは言えないが、ネットはまだブランドを創るメディアとしての方法論未満である、ということは指摘できるだろう。

【3D画像がショッピングに便利か】
このWWCITYの特徴のひとつにヤッパの技術、3D画像を使うという点がある。

Img_ferrari  ヤッパではフェラーリも手がけている。

店内は各ブランドごとにカスタマイズされており、一点一点の商品も商品画像が羅列するだけの従来のオンラインショッピングサイトとは大きく印象が異なる。また店舗内には株式会社ヤッパの「3D 検索ビューアー」を採用することで、商品データを奥行きのある立体空間に表示することが可能となった。また個別の商品詳細ページには「Web3D」を採用、商品をグルグル廻しながら自分の好きな視点で吟味することができるようになっている。

ヤッパという3Dベンチャーの技術を用いて、商品の羅列展示ではなく、あたかも歩いてショッピングするような感覚をもたせたいのである。だがちょっと歩いてみた感じでは、まだそんなイリュージョンに浸ることができないのが正直なところである

【3D=リアルな購買体験ではない】
サマンサ・タバサを買うような女性のリアルな購買体験は、「今日は似合うものあるかな」「これもいいな、あれもいいな」「あったぁ!」「どきどきするけど」「今のシーズンだと」「ちょっと待てよ、ワードローブを思い起こそう」「う~ん、あれにしか合わない」「ちょっと気を静めよう」・・・で、2Fの紅茶ショップに入って一服する。

こういうことはネットではできないし、それと同じじゃなくてもいいが、立体画像が購買心まで立体にするかといえばNOである

つぶさに見えるところはいい。ヤッパの3D技術は、商品を右左、上下、表裏まで見せるようなことができるとされる(Hondaのサイトには同社の技術が取り入れられている)。アクセサリー、ファッション、靴、帽子、下着などファッション・アイテムにはマッチする。いずれフラッシュのように、ネットの定番になることもありうる

【勝手にアドバイス】
楽天もヤフーショッピングも「街」ではない。サーチ対象のウェブサイト集である。サマンサのそこから抜け出して、「街」を創る、街の中の旬なブランドでいたいというコンセプトは高く評価したい。

だが商品だけを軸にするのはそもそも限界があると思う。銀行やサービス業や役所など商品以外の街要素と契約するということだが、わたしならファッションアイテムに絞ってみたい。マーケターの方々ならみんな欲しい情報をお客さんに提供してしまう。

それはWWCITYの来店者の動線情報、商品チェック情報である。どこの入口/店舗から入って、どの商品を手にとり、どのようにコーディネートしようとして、買ったか買わなかったか。その来街者の動線情報をまとめて、訪れる来街者(消費者)にそれをリアルタイムに伝えるのである

一目瞭然でどのお店のどのアイテムが流行っているかわかる、そのアイテムをチェックするお客さんが次にどこに行ったのかわかる。シロウトには参考にもなるし、クロウトには仮説が立てられる。買い手ににも納得、売り手にも納得の情報を同時に伝えることができる。ネットだからこそ、その手の情報が瞬時に、さまざまな統計分析もリアルタイムに提供できるじゃないですか。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月14日 (火)

リッツ・カールトンというおもてなし

11月13日に、『東京ビジネス・サミット2006』でリッツ・カールトン・ホテル・カンパニー日本支社長の高野登氏のご講演を聴講しました。題は「リッツ・カールトンに学ぶおもてなしの極意」。

高野さんの温かい口調にもほだされましたが、「おもてなしを極める」ことがたいへん心にしみこんだので、自分のために聴講の記録も兼ねて、今日の勝手にアドバイスでは、そのいくらかを共有させていただきたいと思います。

【勝手にアドバイス Vol.68 リッツ・カールトンというおもてなし】
リッツ・カールトンには2つの源流がある。19世紀後半、ホテル王といわれるスイス人のセザール・リッツが、パリにホテル・リッツの源流となる「ホテル・リッツ」を開業した。これが一代目。高野さんは「二代目」と表現されていましたが、1983年米国に進出したリッツ・カールトンは、アトランタから今日のリッツ・カールトンの流れをつくりました。

【おもてなしとは現状否定/発想の制約解除から】
おもてなしイコール・サービスと直接的に思いがちですが、リッツ・カールトンのおもてなしのDNAは、セザール・リッツ氏の「発想の制約を外す、現状否定をする」というものに端を発するという。

リッツ氏は数々の現状否定を実現してきた。19世紀から20世紀にかけて(つまり今から100年前)、シャンデリアの明るさを変えたのもひとつ。現代のように調光機能など当然にあるわけもなく、そのような考え方自体が存在しなかった。リッツ氏はただ「女性をもっとも美しく見せること」から発想したという。あるいはホテルの全室にシャワー室を備えるのもパリのリッツからだったそうです。それまではシャワー室に行くのが当然でした。

Go beyond Nine Dots/発想の制約をとる】
現代のリッツ・カールトンの営業研修では、いわゆる「ナイン・ドット」をやる。それこそ「脳がびしょびしょになるほど」考え抜かされるという。

謎々好きの方はナイン・ドットはご存知だろう。「4本の直線で9つの点をすべてたどる」というアタマの体操である。すぐ種明かしだが、9つの「枠」の中だけではできないのだ。「9つの点の外にはみだす」直線を考えなければできない。つまり「まだあなたは枠の中で考えていないか?」という問いかけをするものである。

Ninedots

http://britton.disted.camosun.bc.ca/ninedots/ninedots.gif

ドットには意味をもたせることも重要である。「施設の制約」「設備の制約」「コストの制約」「人材の制約」「自分の経験」「過去の成功体験」「エリアの制限」など、制限や制約を書き込んでみて、それを飛び越えないとほんとうの商品戦略改革、事業戦略改革はありえない。
お好きな方はこちらでスタディしてください。
http://www.nine-dots.org/programs/share/index.asp?P=64&L=2&SNID=1&ICID=18&

【10万円のオムレツ】
大阪のリッツカールトンでは「10万円のオムレツ」を1日2名のカップルにだけサーブするキャンペーンをした。その企画に対して、最初営業担当からは「10万円も払ってオムレツを食べる人はいないよ」とさんざんだったが、フタを開けてみると予約が殺到した。

なぜか。10万円のオムレツはオムレツだけでなく、リッツでテーブルマナーや料理のウンチクまで学べる場であったことが評価された。その企画を否定した営業担当は「自分の年収」「自分の価値観」「自分の経験則」など、ナイン・ドットの中でしか発想していなかったというわけだ。10万円の価値を認める人の年収、価値観、経験したいことに思いをめぐらせることができなかった。

高野さんの話はこれで終わらなかった。

ひとつの仮説に過ぎなかったオムレツにニーズがあった。リッツ・カールトンの社員に「制約ははずさなくてはならない」という認識をもたせた。これが第一章。

そして第二章は、「いろんなことを試してもいいんだ」という意識転換である。「制約を越える」ことで大切なのは、「考えたことを実行してもいいんだ」「実行できるんだ」という企業風土である。だから考えることがおもてなしにつながるという意識が生まれ、それから「考えさせる技術」「考えさせるプロセス」を業務に組みこんでゆく。手法やプロセスが先ではない。社員が本気になること。こっちからだ。

今朝の社内ミーティングでもこんな会話があった。自分の業界内の掟で考えるのはたいした発想がでない。せいぜい改善どまりである。業界の枠は取っ払うこと。なぜならお客様は業界を選択してお金を払うのではなく、あなたの会社、あなたのサービスに対してお金を払うのだか

【わたしのリッツ体験】
わたしは一度だけリッツ・カールトンに宿泊したことがある。それはサンフランシスコだった。前職で社長のカバン持ちをしていたとき、物見遊山兼お仕事で社長とその夫人と共に宿泊した。その厳粛な概観はもちろん、部屋の広さ(わたしはシングルルームだったがかなり広かった)、調度品の素晴らしさなど、ハードウェアはもちろん素晴らしかった。

Ritzcarlton_sanfrancisco   素晴らしい。

だがもっとも感銘したのは、一歩踏み入れたロビーから始まっていた、独特なあたたかいおもてなしの雰囲気であった。高い料金を取るホテルだと、わたしなど随行員は気後れをしてしまいがちだが、リッツ・カールトンは違った。ホテリアは実に温かかった。ロビーで奏でるハーブやピアノの音も心地よかった。社長にソソウがあってはこっちのクビが飛ぶ、という緊張感をひと時忘れさせてくれた。随行員は社長以上にのんびりとリッツを愉しんだ。お世辞ではなく、あのとき以上のホテル体験はその後ない

すでに時効だから白状するが、そのときリッツのハンドタオルを1枚失敬した。厚手でとても感触がいいのだ。長らく家で使っていたが、今はどうなっているだろう。

さらに余談だが、先日食事をしていて「今度リッツ・カールトンのセミナーに行くんだ」と話したとき、同僚のMK嬢が「わたしはリッツ・カールトンのタオルを持ち帰ったことがある、アハハハ」と笑っていた。「実はボクも」とはタイミングを逸したので言えなかった。だからここで白状しました。

Untitled  おもてなしだけでなくタオルも分厚い。

【成功を共有させることは】
もうひとつ心に残ったのが、リッツはお客様のクレームに備えて最高2000ドルの決済権が従業員に与えられているのは有名だが、高野さんが紹介したうちのひとつの事例。

ドバイのリッツ・カールトンで、あるお客様が病気になった。そのお客様は宗教上の信仰から、一般の病院には行くことができない。恐らく血液がらみだろう。ドバイ・リッツのドアマンは尽力をして病院を探し当て、お客様を送った。お客様から感謝が寄せられた。協力した従業員も人事評価された。よかった。翌週の月曜日の会議で、世界中のリッツ・カールトンにこの話が伝えられた。拍手。

これで終わらないところがすごい。

朝礼では「わがリッツ・カールトンで同じことが起きたならどうするのか?」という問いかけがなされる。大阪市内ならどこの病院ならOKなのか、コンシェルジェに調べさせるのだ。さらに調べた結果は、周辺の同業者(ホテルのコンシェルジェ)と共有したのだ。

だからリッツは温かいのだ。

立派な理念があってもこういうことはできない。唱和するだけではできない。トップから本気にならないとできない。そして本気になれる温かい心を持つ人材が集まらないとできない。おもてなしとは何かを考え続ける気持ちが共通しているからできるのだ。大阪のリッツを立ち上げた高野さんは「大阪では6ヶ月かかった」と言われていた。理念の共有は一晩ではできない。だがそれは、ある瞬間から堰を切るように「リッツ・カールトンになる」のだという。

自分に勝手にアドバイス】
他にも良い話がたくさんあったが、1日のブログの容量を超えているのでおしまい。セミナーに行けなかったチェリーさん、もったいなかったよ。代わりにエスコート?させていただいたKSYさん、良い話でしたね。

もうひとつ白状するが、わたしは知らず知らずの内に、お客様へのサービスで制約(時間、コスト、効率、作業難度など)を設けてしまうことがある。自戒。高野さんの話を思い出して、おもてなしには制約をもたないようにしようと思った。心が洗われました。高野さん、ありがとうございました。今日は自分へのアドバイス。

ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月13日 (月)

ケータイというデザイン

今日は隔週の月曜日に、別途発行しているメルマガ(ぷろこんエッセイ)を転載します。先週書いた「孫氏の戦略の『外伝』だと思ってお読みくだされば幸いです。

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(坂井氏は)「携帯電話で通話している時間は、携帯電話と関わっている時間から
すると非常に小さい比率だ」と指摘する。また深澤氏は、日本では“ながら”という、
何かをしながら別のことができるのが非常に重要なファクターだと付け加えていた。

日本のケータイは世界的に見ればサブカルチャー
                             ─深澤氏が語るINFOBAR 2

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わたしの携帯はauinfobarである。機能でもなく、通話料金でもなく、本体価格
でもなく(流通在庫を0円で買った_まことにすみません)、携帯キャリアでもなく
(その前はTukaだった)、まぎれもなく「デザインだけ」で購入した。番号も変えた。

       18   わたしのはイチマツ。

infobarの発売は2003年10月だから、丸3年前である。そのときまだ世の中には
「デザイン・ケータイ」という概念はなかった
。携帯は電話であり、二つに折りたたむ
ことができること(ピッチ以外には折りたたまない携帯はほとんどなかった)、あとは
せいぜい光ったり薄かったりすることが商品の条件であった。

そんなデザインが無い携帯電話ばかりの中で発売されたinfobarは、「え!携帯にも
デザインがあったんだ!
」という新鮮な驚きで迎えられた。当時一気に60万台を
売ったという。DoCoMoやVodafone(当時)ら携帯キャリアの競争軸に「デザイン」が
追加されたきっかけとなった。

そのinfobarを開発したプロダクト・デザイナー深澤直人氏とコンセプター坂井直樹
氏の公開対談では、こんなくだりがあった。「『デザインケータイ』というのはよく考え
たら面白い言葉ですよね。『デザインファッション』って言わないし、『デザインカー』
とは言いませんよね」。

なるほど、プロダクトとして未成熟な商品は、デザインがあとからやってくるという
わけか。わざわざ「デザインケータイ」というカテゴリーがあることは、商品として
機能優先で開発がなされ、まだデザイン面では未成熟であるということを示して
いる。逆に言えば、デザイン・ナニガシというワードが通用しそうであれば、デザイン
がこれから差別化になりそうだということだ。

デザインから見て、商品は「デザイン未満」と「デザイン以上」に分かれるのである。

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そういう目で自分の部屋や世の中を見回してみるとおもしろい。

デザインPCってあるだろうか(微妙だ。Macならデザインを感じるが、レノボには
あまり感じない)。デザイン・ノート(コクヨのスリムB5はデザインがある)。デザイ
ン・ピアノ(キース・リチャーズのギター・コレクションにはデザインを感じるが)。
デザイン・トースター(輸入モノにはデザインが香る)。デザイン・キッチンエイド
チェリーさんによるとあるらしい)。デザイン・ハンガー(カッペリーニにブラシ付き
のハンガーという永久保存のミュージアム・デザインがあるが、ウチのはタダモノ
ばかり)。

Imgca93d7acli074c  this is a kitchen aid ちとデザイン不足か。

デザイン電車ってあるだろうか(通勤電車にはあまりないが、隔離してほしい人を
まとめるデザインがほしい)。デザイン自転車はある。デザイン・バギーもある。
デザイン道路ってあるだろうか(街灯、街路樹、建物、舗装素材、マンホール・・・
あるなあ。デザイン道路がある街に住みたい)。デザイン・オフィス、ありますよね。
ワークデザインがしっかりしたオフィスは生産性やコラボレーションが高まるという
リサーチもあります。WPC TOKYO 2006で見たウィンドウズ・ビスタのユーザ・
インターフェースにはデザインを感じた。

とすると、まだまだデザインが少ないものがたくさんあることに気づかされる。

デザイン以上に達している商品分野で勝負することは、競合がひしめくので、相当
新しい切り口やプロフェッショナリズムが要求される。逆にデザイン未満の分野で
勝負することは無風地帯なので参入は容易だが、開拓者としてなかなか認めら
れない辛苦が伴う。

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わたしの前職はヘルスケア分野の新規事業企画、開発、実行だった。あるサービ
ス開発をする中で「サービス・ロゴ」のデザイン、消耗品の商品デザインなどを担当
したことがある。裏紙をつかって、またホワイトボードをつかって、毎日毎晩ネーミング
やロゴをあ~でもない、こ~でもないと考えた。パッケージのデザインでは、機構
や素材まで検討して、ダンボール屋や紙器メーカーに通った。

中小企業のたった3名の商品開発チームなので、デザインでも何でも自前でやらなく
てはならなかったのだ。だが斬ったり貼ったり、あれこれネーミングを考えるのは
好きなので苦痛ではなかった。粘り強い課長のおかげで毎晩遅かったが、しか
った
。成果は、実用新案登録、意匠登録となったのはむしろおまけだった。

わたしの新商品開発の経験はまさに「デザイン未満」だった。だから社内的にもデザ
インには無風だったので、稟議もなく通ってしまった。自分の描いたロゴがパッケージ
や車両の脇にプリントされたときには、嬉しさよりも恥ずかしさが先に立った。読者に
おかれても、勤め先が中小企業ならずとも、自分でデザインをしなくてならないことも
あるだろう。ホームページを制作しなさいといわれることもあるだろう。たいへんなこと
に相成るのである。

「デザイン未満」企業が、「デザイン以上」企業になるとき、マネジメントの「デザイン
化」も必要になってくる

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それはデザインを競争軸にした商品開発戦略の立案だけでなく、顧客セグメント、
価格決定、サプライヤー選定、プロモーションやチャネル戦略、さらには人事や
組織設計にまで及ぶ一貫した経営モデル改革が必要となってくる。

以下、デザイン・マネジメントを一貫させるのチェックリストの一例である。

【商品戦略】
 デザインというポジショニング軸で製品ポートフォリオを作成する。
 先端デザインから陳腐化までのシナリオを開発プロセスに盛り込む。
 商品デザインと企業(ブランド)イメージの形成は表裏一体であるという、経営
 認識を持つ

【商品開発業務】
 デザインから新機能・新用途を誘発する。
 右脳(発想)と左脳(市場性チェック)の関係を開発サイクルに盛り込む。
 経営陣が最終デザインに責任を持つ。

【人間工学】
 身体、視覚、聴覚、触覚など人間工学からデザインを考慮する。
 だれに対しても公平なデザイン(ユニバーサル・デザイン)と、コアのターゲット
 にアピールするデザインのバランスをとる。
 情報デザイン観点から、理解と利用の関係を整理する。

【サプライヤー選定】
 デザイン案を実現できる素材を探索/選定する。
 デザイン案を開発できるサプライヤーを探索/選定する。
 製品デザインを大きく変更しうる部品・材料を供給するサプライヤーを探索/
 選定する。 

【顧客セグメンテーション】
 顧客をセグメントする要素としてデザインをつかう。
 デザインと関わりあいが深い変数(国や地域、年齢や性別、収入や支出、
 学歴や職業、性格やライフスタイルetc.)を選定する。
 デザインを購買決定プロセスにどのように位置づけるか判断する。 

【プライシング/価格決定】
 デザインの付加価値=コスト・プラスとプライス・プラスを検討する。
 デザインのもつ心理的価格設定を考慮する。
 ブランド価値とデザイン価値の関係を価格で表現する。

【プロモーション】
 デザインにマッチしたネーミング・コピーをつくる。
 デザインにマッチしたキャラクターを選定する。
 プロダクト・デザイナーにウンチクを語らせる。

【チャネル戦略】
 デザインにマッチした流通チャネルを開発/選定する。
 デザイン希少性によって流通量をコントロールする。
 顧客のデザイン評価を収集し、販売最前線に伝える。

【人事・組織戦略】
 プロダクト・デザイナーを雇う、内部育成する、コンペさせる。
 マーケティング部門にデザインを理解する人を起用する。
 デザイン力を研ぎ澄ませる仕事環境をデザインする。

デザインを商品の競争軸に置く場合、一貫したマネジメントの変更や改革
必要になる。一貫していないと、デザインもデザイナーも(マーケターも)不幸である。

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デザインケータイを手にしてわたしが思うのは、毎日、これだけ長時間肌身離さず
持ち歩き、しかもいじって楽しんだり、考えたりする商品はない
ということである。
携帯はとてもユニークな商品である。

だからデザインケータイという用語がおかしいというより、ケータイはさまざまな
デザインが込められる可能性がある、とてもユニークな商品である、というほうが
正しいと思う。

 携帯は手の一部としてデザインされる商品。
 携帯は眼の一部としてデザインされる商品。
 携帯は人(外部)とのつながりをデザインする商品。
 携帯は言葉や思考までをデザインする商品。
 携帯は個性やライフスタイルをデザインする商品。

インターフェイス/操作、視覚、思考、言葉/音声/コミュニケーション、個性やライフ
スタイルの変換。報デザインのほぼすべての要素を兼ねそろえている。

開発側のマネジメントも変えれば、顧客のライフスタイルまで変える商品、ケータイ
に注目しない手はない。ケータイを「デザイン未満」商品として商品開発やサービス
開発をベンチマークして(つまりぱくって)、自分が担当するデザイン未満の商品
戦略の参考にすることは価値がある

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初代infobarの持ち手として、コンセプトモデルinfobar2は魅力的である。今度は流通
在庫を買うなどデザイナーを冒涜(ぼうとく)するようなことはいたしません。早期の
発売を祈ろう!

04   スリーク07

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月12日 (日)

がんばれ!東急ハンズ

東急ハンズが業績悪化にあえいでいる。わたしは池袋育ち、ハンズにはたいへんお世話になった。それもあって渋谷店の資産売却はショックな記事であった。しかも創業店も閉鎖するという。そこで、今日の勝手にアドバイスは「がんばれ!東急ハンズ!」である。

Head_logo_1  おなじみ。

【勝手にアドバイスVol.67 がんばれ!東急ハンズ】
東急ハンズ本格再建へ渋谷店の資産売却
旗艦の渋谷店(東京・渋谷)が入居する西渋谷東急ビルの土地・建物を不動産投資ファンドに譲渡し、売却益を事業再構築の原資に充てる。年内に不採算の藤沢店(神奈川県藤沢市)を閉鎖する一方、2007年春までに2店舗を開く。他の事業部門が好調な中で、小売部門のてこ入れが課題になっていた。

首都圏を中心に不動産業は回復してきたが、不動産に入居する小売業の業績はまだら模様である。大手家電量販店は好調、百貨店は弱肉強食、スーパーはそこそこ、ドラッグストアは峠を越した感あり、高級ブランド店はすこぶる好調。量販店でも日本に本格オープンしたIKEAは好調だが、バラエティストアの草分け、急ハンズはここ数年、業績は下降の一途をたどっている。

Gaiyou  ピークは2002年。

業績悪化の理由は、この記事中には郊外の安売りホームセンターやインターネット販売に押されたと書いてあるが、確かに昔は「ハンズにしかなかった」モノが多かった、ネットを探せばハンズに無いモノも多い。わたしもブログネタを漁るため(昼間でした、すみません)東急ハンズ新宿店に立ち寄って、ある品物を探したが取り扱っていなかった。「そんなバカな。ネットにはかなり流通しているのに!」

【30年ひと昔】
わたしの中では東急ハンズ本店=渋谷店なのだが、実はちょうど30年前(76年11月)に藤沢店がオープンしたのが創業だった。2店舗目は二子玉川店、3店舗目が渋谷店で78年9月にオープンした。

地元(実家)池袋で東急ハンズの池袋店オープン(86年11月)にはわくわくした。忘れられないのは、競合相手でもある西武百貨店池袋店は、開店初日に店舗の前面に大きな垂れ幕をかけた。そこには「祝開店 東急ハンズ池袋店」と書かれていた。粋なエールを送るもんだと思った。池袋というB級エンタメエリアが、東急ハンズ出店でバリュー・アップするという、西武なりの感謝の表現だったのだろう。

創業30年の節目に創業店舗藤沢店を閉鎖する。店舗は街の盛衰とともにスクラップ&ビルドをするものであり、人の流れの変化、街の重心の郊外化、駐車場が少ない、店舗自体の耐震構造が低いなど、さまざまなことで閉店する。理由はいろいろだが、好調なら閉店はしない。

【田舎と都会の狭間に】
ある流通業の人が「田舎と都会の違いとは、そこに東急ハンズがあるかないか」と言っていた。象徴的な言葉だと思う。

都会立地=ハンズあり」という公式は、ターミナル立地+巨大店舗で、圧倒的な集客力をベースに、「手」に関する素材だけでなく、ありとあらゆる生活創造グッズを取り揃えるというモデルである。渋谷、池袋、横浜、新宿、町田がこのパターンである。これらは店舗面積6000㎡~1万㎡の店舗である。

ところが流通業の定めで、この公式はどこかに飽和点があり、ハンズも近年は「郊外拠点立地=ぎりぎりの都会にハンズあり」になってきた。それが川崎、北千住、先月オープンの豊洲の2000㎡クラスの店舗である。これらはいわば「ミニ・東急ハンズ」である。品揃えはまあまあで、「我慢するか、近所だから」というのが率直な感想である。都会と田舎の境界線とは品ぞろえ上の「我慢」なのである

【バラエティ量販からバラエティ専門店化へ】
ハンズは専門店出店もトライしている。家具やインテリアを主体とする「homeyroomy」、家庭用品専門店「HANDS Select」、バッグ&トラベル「outparts」、ヘルス&ビューティの「natulabo」の4つの専門業態を開発している。

わたしは丸の内OAZOで、natulabo(ヘアケア、ボディケア、ヘルスケア、フィットネス用品)とoutparts(バッグ、トラベル用品、雑貨)を見たが、ひとことでいうと、そこには「手の復権」はない。「手が入る余地がない」。雑貨販売店であった。そもそもそういうコンセプトなのだろうが、わたしは手持ち無沙汰で何も買わずに帰った。

homeyroomyを巨大化したようなIKEAは、好調な集客を続けているのを見ると、途半端な規模の出店では逆に個性が出ていないと言わざるを得ない。都会立地の圧倒的な量で、ユニークな品揃えのホームセンター兼バラエティストア、そこにハンズの価値があったと思う。(余談だが、米国駐在時にはよくIKEAに通った。何も買わなくても楽しかった)。

【手の復権】
手の復権をテーマに、一人ひとりの生活を豊かに創造するための素材を幅広く取り揃え、お客様とモノとの出会いの場を提供するため、東急ハンズは誕生しました。(中略)「楽しい」「驚きがある」「お役に立てる」という企業アイデンティティを基に、手のぬくもりの大切さを忘れることなく、お客様と共に成長していきたいと考えています。同社HPより。 http://www.tokyu-hands.co.jp/company/index.ht

ハンズのコンセプトは「」である。わたしは手づくり大好き派なので、木材、樹脂、包装材、皮、紐、布、金具・金物、工具、靴の補修材料を山ほどハンズで買ってきた。ハンズにしかない素材があった。だからハンズのアイデンティティは「手」であり「素材」である。売上高に占める素材の割合は知らないが、素材を購入するファンともに成長してきたといえるだろう。

Top_01  手ですよ、手。

【ハンズの店員力が発揮されているのだろうか?】
商品情報はあり余るほどネットに流通しているし、最近はアフィリエイトという仕組みで、プロシューマーが商品の品定めもしてくれる。完成品のどれがいいかは、お客さんの方がよく知るところになってしまった。複雑なAV家電やPCの家庭内ネットワーク構築などならまだアドバイスが必要だが、単純なアクセやバラエティ、健康機器ならば、お手伝いは要らないのである。

ハンズの品ぞろえのよさのひとつに、フロアの店員に調達がまかされてきたことがあった。狭くて深い専門的な知識を持つ販売員自ら品定めの上仕入れる。だから相談にのってくれるというコミュニケーションができる。それが廃れたかどうかわからないが、少なくても2000㎡クラスの店では、相談しようにも品ぞろえも少ない、そんな店員もいないのではないか(と思う)。

【手の復権=個性の復権】
わたしは手の復権とは個性の復権だと思う。人とはひと味違うモノを持ちたい。自分の好みのインテリアにしたい。料理で自分なりの工夫をするのと同じである。だからこそ出来合いの(普通の)モノに満足せず、少し何かを継ぎ足したり、色を変えたりして変化をつける。それには手が関わる。手が変化をつける。

大量な情報がインターネットで瞬時に伝わるから時代だからこそ、ますますロングテールな商品も売れる。ハンズはその点、良いポジションにいると思うのだが。

【勝手にアドバイス】
①「My○○○」を演出する素材の充実。
自分だけのモノ」へのこだわりは、かつてないほど高まっている。ノートPCの天板デザイン、携帯のデコレーション、バッグやバッグにつけるアクセ、めがね、ブックカバー、ヘアバンド、机や椅子やソファ、インテリア(チェリーさんは壁いっぱいのワインセラーが夢)。ゼロから作るのではなく、ちょっとした個性を演出できる改造といレベルの品ぞろえ。

②店員の個性化、プロフェッショナル化。
お奨めの素材で個性化をするというテーマで、定員さんにブログを書いてもらえないだろうか。加えて、もっと尖がった個性的な店員さんがいてもいいように思う。ハンズのお店は人が財産だから

③手づくりイベント・サポーターの設置
学園祭やマンション管理組合をメインターゲットにして、イベントの道具やユニフォーム、材料のコンサルティングを行う担当者を設置する。メール相談受けます!でもいいだろう。草の根から手づくりファンづくり。

④ものづくり体験ツアーの企画。
机、椅子、カバン、陶器、靴、帽子、時計、パソコン、ハム燻製、何でもいいが、作家を呼んでくるより顧客に足を運ばせたい。体験記をブログにでも書いてもらえれば(リンクを張る)尚いいトップツアー(前東急観光)とタイアップしよう。

⑤2000㎡クラスの出店の中止
ハンズのコンセプトが「手の復権」なのであれば、2000㎡ではその個性が出せない思う。これは余計な老婆心。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

Top_02  ハンズでもっとお買物しましょう!

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2006年11月11日 (土)

MNP/孫氏の戦略 【6.漁夫の利:出だしの混乱は「想定の範囲内」、漁夫の利をねらうPHS陣営】

『MNP/孫子の戦略』の6回目は、これまでの5回分のまとめをかねて『6.漁夫の利: 出だしの混乱は「想定の範囲内」、漁夫の利をねらうPHS陣営』をテーマにしたい。

書いてきたポイントを10個にまとめてみよう。

1.MNP制度による顧客流動化:最近は500万人で推移しており、これを600~700万人にとどめるとDoCoMo、auの勝利、1000万人まで流動化できればソフトバンクの勝利。

2.予想外割の奇襲に対して、DoCoMo陣営は殴ってきた相手に対して卑怯じゃないか!と吼えた。au陣営は事実を伝えるという大人の対応をした。

3.予想外割は景表法違反を問われる可能性があるが、戦略的な効果は法違反のマイナスをはるかに超え、孫子の戦略「敵を驕りたかぶらせる」という定石を打った孫氏に分があった。

4.目玉として登場した「ゴールドプラン」は、実は利益源となる仕組みが盛り込まれている(くせものであり、決して安くない)。ここに顧客を呼び込むことがソフトバンクの増収となる。ゆえに「0円」予想外割の広告宣伝は奇襲というよりも、それしかない選択肢だった

5.インセンティブ制度を破壊することはDoCoMoとauの利益の源泉を断ち切るだけでなく、「ケータイ業界おかしいよ」をアピールし、ソフトバンクの割賦販売を正当化するねらいがある。

6.その背景には、携帯機器メーカーからソフトバンクへの携帯の卸価格がDoCoMoやauより高い(推定)という事情があり、その不利を逆手に取る戦略である。

7.ソフトバンクの全面広告はインパクトがあったが、本来訴求したいイメージ(キャメロン・ディアスが使うようなスマートな携帯)とアグレッシブなソフトバンク戦略イメージ(よくも悪くもソフトバンクのNo.1戦略)が混在して、ブランド・イメージ確立の障害になる可能性がある。

8.携帯のコンテンツの主流はメディア型のコンテンツ提供サービス」から、SNSやブログに代表される「オープン型のコンテンツ創造支援サービス」に移ってゆく。その布石をauもソフトバンクも打ってきたが、世界最大手との提携と、日本二番手との提携という差異がある。

9.ケータイ民族のニーズはおおむね「お得」「便利」「カッコイイ」の三つのニーズに集約され、ソフトバンクは「お得」「便利」で優位なポジションに立つ戦略を打ってきた。

10.MNP緒戦の1週間の成果は「au 10万2000件増」「DoCoMo 7万3000件減」「ソフトバンク 2万3900台減」と想定の範囲内。ソフトバンクは草刈場となることを防いだ

【10のポイントを概観して】
せんじつめれば、業界の秩序を守りたいか、壊したいがDoCoMo・au陣営とソフトバンク陣営の価値観の違いとなって現れた。攻守をめぐる人の血は争えないものである。ただ率直な疑問は、DoCoMoが守りに入るのはわかるが、auまで大人を装っていていいのだろうか?という点であった。

KDDという通信キャリアを出発点とするauは、そのビジネス・ネーミングの変更、デザインケータイの導入など、マーケティング力は素晴らしい。だが総合力のあるDoCoMoやコンテンツに強みのあるソフトバンクに比べて、イメージ戦略だけでは時代遅れになる可能性さえある。「カッコイイ」路線だけで対抗できるのだろうか?市場の争点が変われば、草刈場になるのはauなのではないだろうか。そんな疑問ももった。

Nakama_up2_v  だが可愛い。

Web1.0から2.0への移行については、携帯では多くのユーザーが「それ何?」というレベルである。だが、携帯をネット経由のリモートコントロール・デバイスと考えれば、すでにいくつかの2.0的なサービスもある。大量の広告を打ち出しているNavitimeもある意味2.0の要素がある。iPodのようにPCと携帯を連動させるいうシステムを想定すれば、もっとたくさんのアプリケーションが開発できるはずだ。

【漁夫の利をねらうウィルコム
孫氏の戦略を軸にMNP商戦が動く前に、ウィルコム間の通話かけ放題の定額プランをPHS間にまで拡大するサービスでのろしを上げた。しかしPHS間といっても、他のPHSはほぼDoCoMoしかなく、それも全国で57万9300件に過ぎないので、サービスアップと言えるか疑問である。

それよりも注目は新オプションプラン「070以外もお得な通話パック」である。「ウィルコム定額プラン」にプラスして、月額1050円を支払うことで、最大1,260円分の無料通話が可能。固定電話なら最大60分、携帯電話なら最大48分、アメリカへの通話なら最大40分。これはお得だと思う。データ定額1050円(10万パケット)を足すと合計5000円になるが、携帯各社より実質的に安いはずだ。「ウィルコムはおトクのことを真剣に考えています」という説明は妥当である。

そのウィルコムの2006年10月末現在の契約者数は425万5,400件。前月(9月)にくらべて37,700件の純増。8月末は約7万件増、7月末は11万件、6月末は6万件とずっと伸びている。10月のMNPで成長が鈍化したが、ほんとうに料金面からのおトクはウィルコムだという認識が広がり、「PHSって悪くない」というイメージも構築されつつある。

またPHSの特徴=音声が良質という利点がある。携帯各社の基地局設置はマクロセル方式と呼ばれ、大出力の基地をエリアにひとつ設置するもの。これだと同時通話ユーザー数が増えると、通話品質を落として音声サービスを提供する。これに対してウィルコムはマイクロセル方式という出力の小さい基地局をエリア内にたくさん置く方式である。ひとつの基地局の回線がいっぱいになったら、すぐ隣の基地局で受信できるため音声品質を維持できる。

Page2_voice  ちゃんとやってます。

こうしたまじめな取り組みも評価されてきた。お得を追求するならPHSだろう。

【携帯は成熟商品か、成長商品か】
だが携帯電話ってお得だけじゃないだろう?携帯のことをいろいろ考えていると、まだ疑問がわいてくる。携帯電話機は9800万人に普及した成熟商品なのか?それとも発展途上の成長商品なのか?

どちらもYesなのである。携帯を通信ギアとしてみると、通話・電子メール・Cメールという成熟しつつある技術で成立している。しかしそこに動画や放送、音楽という通信素材を付加すると、まだ技術革新の余地がたくさんのこされているし、携帯電話機というカテゴリーの説明文があいまいになる。

いっそ携帯を「マネー・ギア」「コンテンツ・ギア」「デザイン・ギア」として捉えればいいのだろう。マネー・ギアはオサイフ機能、認証機能、ショッピング機能、さらに法人の商売上の機能が満載。コンテンツ・ギアは、キーボード付きの大画面ケータイで、ネットとの相性に優れる。デザイン・ギアとは、機能としては音楽や画像通信をベースにしつつも機能優先ではなく、持っていることがスタイルであるような商品カテゴリーとなる。

だがケータイ民族のニーズ(「お得」「便利」「カッコイイ」)は、一人のユーザーの中で混在しているので、ならばいっそのことメモリーカード方式で、仕事時間中は「お得」、アフター5は「便利」に変換できるように、コンテンツや個人情報の入れ替え機能が普及するかもしれない。そうなれば会社用の携帯と個人携帯を持ち歩かなくて済む。

このような路線で可能性を考えると携帯電話はまだまだ成長商品である。「デザインケータイ」という切り口については、13日のエッセイで書きたいと思います。

15  infobar錦鯉のプロトタイプ。

今週の『MNP/孫氏の戦略』にお付き合いいただきありがとうございました。今日は以上です。ではまた明日。

Click on tomorrow!

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2006年11月10日 (金)

MNP/孫氏の戦略 【5.民の扇動: MNP以外の争点へ(音声定額、通話品質、コンテンツ)】

『MNP/孫子の戦略』の5回目は、「5.民の扇動: MNP以外の争点へ(音声定額、通話品質、コンテンツ)」をテーマにしたい。

孫子の戦略には『戦争とは敵をだます行為である』とある。現代のそれはマーケティング上の戦争であるので敵をだますというより、出し抜くことが必要である。もちろん自社の従業員や顧客をだますこともできない。自社の戦略と商品情報、サービス精神をきちんと伝えることが必要である。

【兵站こそ生命線】
孫子曰く。『巧みに軍を運用する者は、民衆に二度も軍役を課したりせず、食糧を三度も前線に補給したりはしない。戦費は国内で調達するが、食糧は敵に求める。このようにするから、兵糧も十分まかなえるのである』
引用元 http://maneuver.s16.xrea.com/cn/sonshi.html

ソフトバンクに死角があるとすれば、孫氏から最前線まで、タテに伸びきった兵站にある。孫子曰く『兵站(今風ならロジスティクス)こそ生命線』であるが、前線の部隊(販売店)に満足な説明力も与えないまま、戦略的に予想外の発車をした料金プランに現場が追いつかず、システムも追いつかず、疲れきっているという話もある。MNP開始後最初の土日は、販売店員は長時間の労働を強いられランチも満足に食べる時間もなく、たいへんだったという。ソフトバンクの販売店の方々、ご苦労さま

20060826at1d2600a260820061f  何かとマスコミに登場した六本木店。

契約変更端末ジニーのシステム障害のおかげで、お客さんが減って現場はほっと一息がつけたという笑えない話もある。次の波は年末である。従業員は2度はだませない。今度はきちんとした説明をして、お客様を笑顔で迎えてもらいたいものである。

逆に言えば、DoCoMo、特にauの『顧客満足度No.1』戦略が、ソフトバンクのそれと対照的である、というイメージ付けができれば差別化になる。「やっぱりauに入ってよかった」と言わせるのは店頭のコミュニケーションだから。

【ケータイ民族の優先順位】
お客さまへの対応が、ソフトバンクのシステム障害で軽視されるの中で始まったMNP/番号ポータビリティ。そっちが話題になり、報道もお客様のニーズ/嗜好の変化については軽視している。何が携帯電話を乗り換えるほんとうの争点なのか?語られているようで語られていない。

もっとも最近わたしが目にした携帯電話の利用動向に関する調査は、「家族割引と年間契約割引の契約は約7割~携帯電話の料金に関する調査」である。

テーマは「携帯電話の料金に関する調査」であり、月額料金や通話料金に関する意識を探るというもの。調査対象者は18歳~50代の携帯電話ユーザー300人。この調査のポイントは次の通り。

1)回答者の月額料金は「3,000円以上5,000円未満」で31.0%(93人)、次いで「5,000円以上8,000円未満」、この2つの価格帯の合計で6割
2)料金オプションでは、「家族割引」で72.3%(217人)、次いで「年間契約割引」で71.0%(213人)。上位2つのオプションで7割となった
3)よく電話をかける通話先の種類を尋ねる質問では、「同じ携帯電話会社の携帯電話」が78.0%(234人)、次いで「異なる携帯電話会社の携帯電話」が56.7%(170人)で、携帯電話同士の通話が上位を占めた。

11021  こんなものかしら。

この料金調査からみえてくるのは、同じ携帯会社にかけたいという人が多いこと、割引には敏感であることである。現実にはケータイはまだ「(さまざまな機能を駆使する)携帯ギア」ではなく、まだ「携帯電話」が主流という事実である。同じ携帯電話会社同士のかけ放題/定額プランは価値があると見られている。料金をめぐる意識はだいたいこんなところだろう。

【ケータイ民族の心を動かす‘森’戦略】
ケータイ民族のニーズはおおむね次の三つに集約されると思う。それは「お得」「便利」「カッコイイ」である。

「お得」は料金プラン、「便利」はコンテンツや機能、「カッコイイ」はデザインやキャラクター・イメージである。現時点では、民の心の中では、だいたいこの順序になっている。そのどこに重心をおくか携帯各社の戦略であるが、DoCoMo、auはフルラインであるので、三番手のソフトバンクやPHSのウィルコム、携帯新規参入会社がどう資源を割り付けるかが大切なポイントである。

シェークスピアの『マクベス』には、マクベスに「バーナムの森が動く」と言わしめた挿話がある。数が劣勢であるはずの敵が、兵士に木々の小枝を持たせて行軍し、実際の数以上の兵力を錯視させたという挿話。

ソフトバンクは大手2社に相対的に少ない経営資源で、お得・便利・カッコイイの三拍子にすべて応えるように見せる必要がある。いわば従業員に木の枝を持たせて「森が動いている」かのように見せること、これが民を煽動する戦略である。

孫氏は今のところお得」の森を「予想外割」という大風で揺らし森が動くように見せた。見事であった。ただDoCoMoやマスメディアは動いたが、お客まではまだ動いていない。次のステップは「便利」となるが、MySpaceとの提携が目玉である。SNSや動画を含んだ定額パッケージをどう打ち出してくるか。これが次の森を動かす方針であろう。

Im20061107im9b7002_0711200613  マードック氏と孫氏。myペース?記者会見。

カッコイイ」に関しては、木を森に見せかけるイリュージョンでは無理である。カッコイイ=ブランド構築だからである。何年もかかって構築するものである。ソフトバンクないし孫氏のアグレッシブなイメージと、キャメロン・ディアスの可愛いイメージがかけ離れてしまうのが、今後の課題として残された。

さらに問題になりそうなのは、従業員が枝を持ってくれるかどうか、携帯のサプライヤーやコンテンツ・パートナーが「枝を見て森が動く」「森が動きそうだ」と見てくれるかどうか。金融機関もそれを注視している。年末商戦そして3月の転入出シーズンの商戦の成否は森を動かせるかにかかっている。

【ホームアンテナという植樹】
都心はともかく、地方ではまだまだ携帯はつながりにくいエリアがたくさん残されている。それをゲリラ的に解消する策として『ソフトバンク「携帯」ホームアンテナ無償配布 圏外解消へ“奇策”』もまた痛快な一手である。

予想外割でまぎれてしまったニュースだったが、屋内で携帯電話がつながりにくい利用者に、屋内用・屋外用のホームアンテナを無償配布するというサービス。yahooBBのときのADSL無償配布をほうふつさせた。あの奇策で一気に利用者を獲得したことは記憶に新しい。

03  ウィルコムのレンタル品ですが似たような品でしょ。

携帯のホームアンテナをお宅やオフィスに配布することは、あったらいいがなくてもいいので、効果のほどはどうかわからない。2万円/台プラス設置費用がかかるが、基地局投資を「まばらに」にできるとも思えないない。だが地方ユーザーには朗報であるし、またしても奇策!である。

家々にホームアンテナを植樹するという、森に近づく一歩である。かなりオープン系の香りのする戦術。わたしはこのアイデアにも起業家の打ち手ての戦略性を感じて感銘した。

今日は以上です。今週のテーマには力が入りましたし、考えることがおもしろかった。明日は今週分のまとめをしつつ携帯合戦の行方を想定してみます。孫氏の戦略というテーマとはずれるのですが、おもしろいテーマである「デザイン・ケータイ」について次のエッセイで書いてみたい。次週もご訪問頂ければ幸いです。

ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月 9日 (木)

MNP/孫氏の戦略 【4.篭絡(ろうらく): サービス&コンテンツ提携合戦を仕掛ける】

『MNP/孫氏の戦略』の4回目は、「篭絡(ろうらく): サービス&コンテンツ提携合戦を仕掛ける」をテーマにしたい。

MNP/番号ポータビリティの主戦場は、孫氏の思惑もあり奇襲的に「定額」から派手な大砲戦で始まったが、主戦場のひとつは「コンテンツ」である。それを支えるウェブ・サービスが最前線である。

【携帯会社のポータビリティ戦果】
11月8日発表のポータビリティの緒戦の結果は次の通りであった。

新制度を使った転出入の差し引き数(10月24―31日)

 au 10万2000件増
 DoCoMo 7万3000件減
 ソフトバンク 2万3900台減

おおかたの想定の範囲内であろうが、ポイントは「auへの増加は案外少なかった」。

DoCoMoからauへ転出したい人が多いという下馬評に対して、実はそれほどでもなかった。草刈場になると言われたソフトバンクは善戦した。auへのご祝儀相場はこれに3連休分を足して終わりだとすると、あとは年末年始商戦、そして3月の転入出シーズンは「スクラッチの戦い」になる。DoCoMoもソフトバンクも、心の中では「善戦した」と思っているに違いない。

【携帯コンテンツの2つの争点】
わたしは携帯コンテンツには2つの争点があると考える。ひとつは「コンテンツの広さ・豊富さ」、もうひとつは1.0か2.0か」

まずコンテンツの広さ・豊富さについて言えば、先行したDoCoMoが総合力を発揮する一方、傘下にYahooをもつソフトバンクが強みを発揮する場である。通信キャリア系であるauが音楽ケータイだけに特化させたのは、コンテンツ開発に相対的な弱みがあるからだ。

もうひとつ「1.0か2.0か」。これはナビにしろ、ゲームにしろ、テレビにしろ、「メディア型のコンテンツ提供サービス」と、SNSやブログに代表される「オープン型のコンテンツ創造支援サービス」に分かれる。どちらももっと伸びると考えられるが、ウェブ・マーケティング的におもしろいのは後者である。

【Yahooの事業領域】
ソフトバンク・コンテンツの提供会社、Yahoo(ジャパン)のサービスは中核サービスと付帯サービスに分かれる。 

中核サービスとは、「ヤフオク」=オークション、ショッピング、グルメ、リスティング(情報掲載サービス)、YahooBB(高速インターネット)、メディア(ニュース、地図、路線、グルメ、エンタメなど)、メッセンジャー(テレビ会議、チャット)である。

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サービスも幅広いがバナーも幅広い。

付帯サービスとは、他社提携サービスまたは独自サービス(進出が予定されているものを含む)である。セブンアンドワイ(セブンイレブンとの共同事業=物流・決済)、クレジットカード・消費者金融、証券仲介、銀行業、動画配信、ネット電話などのサービスや機能、そしてSNS(米国の最大手マイスペースと提携発表)である。

中核サービスのうちいくつかはすでに成熟サービスである。ゆえに「幅広く、ひとつのサイトで何でも提供できること」がポイントになる。携帯で提供する上では「網羅的」なコンテンツを「定額」提供することが有利になり、当然のことながらYahooを傘下にするソフトバンクが圧倒的な強みを持つ。

付帯サービスは中核サービスのビジネス支援機能、決済や金銭のやりとりがサービスであるものなどである。これらの付帯サービスの中から次の時代の目玉が出てくる。目下のところ目玉はSNSであろうと見られている。つまりソフトバンクの構想は、1.0の広さ・豊富さの充実と、先端的な2.0サービスの取り込みである。

【なぜGyaoは伸び悩み、youtubeが伸びたか】
もうひとつの視点、「1.0か2.0か」という点については、ちょっと違う角度から考えてみたい。「なぜGyaoが伸び悩み、youtubeが成功したか」。今後の携帯ビジネスにも左右するポイントとなるかも知れない。

Logo_tagline_sm 対   Img_gyaologo

GyaoはUsenが提供する動画コンテンツの無料提供サービス。その中核的な価値は「メディア」「ドラマ・映画」「音楽」など商品としての動画コンテンツが主体である。それに対してyoutubeは著作権におかましの動画ゲリラである。youtubeの掟は10分の画像を、好きなとき好きなものを投稿できるという極めてシンプルかつ融通性の高いものである。

どちらが今、旬か。どちらが今、おもしろいか。いうまでもなくyoutubeである。企業価値から見て、Gyaoが2000億円以上の価値があるかどうか(ありそうだ)はさておき、youtubeはインターネットの本質的価値=全員参加を動画という切り口で表現したビジネスである。それに較べればGyaoはネットテレビというビジネスモデルの中にとどまっている。

両者の違いは「(公式)メディア系」と「(非公式)オープン系」と言い表すこともできる。Gyaoは「マスメディアの提供」であり、youtubeは「参加型のメディア」である。この2つにはウェブというものをどう捉えるか、本質的な相違がある。それが1.0と2.0の違いでもある。Gyao型のコンテンツ提供サービスだけでは、ウェブ上のカスタマーはひきつけられないのである

【携帯SNSの行方】
そこで2つの携帯会社とSNSの会社の提携のニュースがあった。ひとつはKDDIとGREE、もうひとつはソフトバンクとマイスペース

Mmitfa000031102006_2_0_fa  長くてすみません。 Jplogodotcom 仮です。

KDDI と GREE が提供する「EZ GREE」のキーワードは「参加するケータイへ」。「EZ GREE」は EZweb の各種サービスと連携し「+SNS」という参加型要素を各サービスに提供する(報道より)。

まずは、動画、Q&A、占い、ゲーム、デコレーション、wikipedia の6サービスを同時に提供するという。今後は、 GPS、音楽、ニュースなどに「+SNS」を拡大していくという。だがGREEの最大の特徴は今のところ「国内二番手」である。奇しくもauと同じである(GREEの社長は2番手連合を意識したという)。

対してソフトバンクとマイスペース。日本語版を11月中にも開設するマイスペースは、会員数1億人という規模、そして豊富な音楽や映像情報である。プロのミュージシャンらも参加してアピールし合うという場である。テキスト+映像コンテンツと携帯電話という組み合わせである。

【2番手+2番手が1番手になるのか?】
Yahooの社是は(どこにも書いていないかも知れないが)「No.1を取ること」といわれる。各コンテンツ・ビジネスもマネーサービスも、すべからくNo.1を目指し、業績検討は「No.1に達するまで何が足りないか」を軸にされていると思われる。

そういう風土のYahooとアグレッシブな戦略を繰り出すソフトバンク連合に対して、2番手戦術で挑むau・GREE連合に、最初から勝ち目が無いように思われるのだが。。。。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月 8日 (水)

MNP/孫氏の戦略 【3.のろし: 広告宣伝・キャラクター比較(おっとキャメロン・ディアス)】

『MNP/孫子の戦略』の3回目は、「3.のろし: 広告宣伝・キャラクター比較(おっとキャメロン・ディアス)」をテーマにしたい。

今週の予定は以下の通りです。
1.闇討ち: 孫氏の奇襲、DoCoMoの怒り、auの沈黙 → 終了
2.掟を壊す: 料金とインセンティブ制度の破壊 → 終了
3.のろしを上げる: ブランドイメージを揺らす(おっとキャメロン・ディアス) → 本日
4.篭絡(ろうらく): サービス&コンテンツ提携合戦を仕掛ける。
5.民の扇動: MNP以外の争点へ(音声定額、通話品質、コンテンツ)
6.漁夫の利: 出だしの混乱は「想定の範囲内」、漁夫の利をねらうPHS陣営。

【DoCoMoのCM】
劇団ひとり(imode)、オセロ(割引)、Aiko(メール)、武豊(おめでとうコール)、宮崎あおい(テレビ電話)、朝青龍(国際電話)、津川雅彦(信頼度)など。

豪華7人(組)の登場であり、あらゆる角度からのDoCoMoを訴求。フルラインナップ、あらゆる顧客層のニーズに応えるという方針がはっきりしている。だから癖のない、笑いのある明るいキャラ、一般的な好感度が高い俳優・スポーツ選手が多い。

【auのCM】
中田喜子(ワンタッチダイヤル、Cメール、カメラ)、LISMO(音楽携帯)、速水もこみち+榮倉奈々(ワンセグ、ダブル定額ライト)、仲間由紀恵+速水もこみち(カスタマー・サティスファクション・MY割・無期限繰越し)、洵香(プロモーション)など。

auはDoCoMoにくらべると、はっきりと若い層に訴求するというラインナップである。国民的なアイドルになった仲間由紀恵はauの看板スターだが、それでも若い層への訴求であることには違いない。もこみち、榮倉奈々、洵香は若い層をいくつかにセグメントして訴求するというねらいだろう。

【ソフトバンク おっとキャメロン・ディアス】
びっくりしたのはキャメロン・ディアス。なぜ彼女がソフトバンクなのか。CM自体はキャメロンが歩きながら携帯でおしゃべりをして、途中で書類などを取り落とすという筋書き。自然でなかなか可愛い。薄型携帯の宣伝もかねているようだ。バックの曲はエアロスミスの「WALK THIS WAY」。エアロスミスの代表的な曲である。

Kensei0813img240x3201161578946kyame1  ヤフオクのオークションサイトより。素敵な人ですね。

Sonyのオトフレームでは「WALK THIS WAY」がメニューにあるものの、残念ながらブログ向けメニューになかった。このわたりの機動性があれば、SonyさんももっとCDを販売できます。要反省ですよ。

Photo_5  エアロスミス。まだ若いぜ。

2つ目のCMは(まだ見ていないのだが)、キャメロン・ディアスがスーパーマーケットで商品が山盛りに入ったカートを押すというシナリオだそうだ。こっちも評価は高いらしい。

Sbm15l  たくさん買っちゃったキャメロン。

CMではないが、予想外割の宣伝に出現した謎の「予想GUY氏」もキャラクターといえばキャラクターである。。「野口五郎」という名刺までつくっていたが、誰なのかはともかく、キャメロンと予想GUYという組み合わせ、一貫性がまったくない。はたしてこれも予想外の演出のひとつなのだろうか?

Photo_4  わたしもこの手のフザケは好きです。

わたしが思うに、DoCoMoやauと同じレベルでは潤沢に広告予算が振れないソフトバンクの台所事情からのものであろう。キャラを一人に絞ることと、ギャラはタダ?の予想GUY氏のようなジョークを打つことで広告費以上の効果を出そうというねらいだろう。

ただ、孫氏の際立つキャラと予想外割がインパクトがある一方で、なぜキャメロン・ディアスなのか?わざとミスマッチをねらっているのだろうか?その起用のねらいはわからない。キャメロンぐらいの大物なのだから、むしろVodafone時代から決まっていたのかも知れないのは、読みが過ぎるだろうか。

恐らく、ソフトバンク本来のイメージ戦略は「キャメロン・ディアス」だが、シェア獲得に血眼にならなくてはならない台所事情から、孫氏や予想GUY氏を繰り出さなければいけなかったというのが真相だと思う。

【勝手にアドバイス=おまけ】
Jリーグの浦和レッズをなぜ起用しないのか不思議である。Vodafoneはレッズのスポンサー契約を長らく続けている(契約延長をするか不明という報道もあり)。Jリーグ初制覇を狙う浦和レッズの今の勢いを使わない手はない。さいたまの熱いサポーターからのシェアアップは数万になるし、話題効果は大きかったはず。

Reds9  もう昔のもの。

【MNPの広告戦略】
わたし個人の感想だが、「MNPの戦略的な広告」という視点から見て、DoCoMoの広告の印象はほとんどなかった。「カスタマー・サティスファクション」を前面に出したauの広告も印象深くなかった。

その理由は、事前のさまざまなアンケート調査では、いずれも「MNPで大きな地殻変動はない」という結果が出たことが影響しているのではないか。メール・アドレスも移せなければ、年割・家族割も無駄になる(ソフトバンクはそこを突いた)ので、じわじわと影響は出るだろうが、10月24日の時点では、シェアに大きな変化はないだろう、というDoCoMo、auの「甘い読み」があったのではないか。

だが暴れん坊将軍のソフトバンクは、広告では(問題があるとはいえ)唯一インパクトがあった。印象に残った。

ただDoCoMoやauからすれば、ソフトバンクのイメージ戦略のほころびがあるとすればここである。戦線はタテに伸びきっている。つまり孫氏の幹部の戦略と、前線の営業や開発委託先までの距離が伸びているのが今のソフトバンク。混乱を仕掛けるなら「孫氏のソフトバンクとの比較広告」であろう。キャメロンのソフトバンクではなく。そうすれば、ソフトバンクの「ありたいイメージ=キャメロン」と「孫氏」の反スマートさが混じるのである

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月 7日 (火)

MNP/孫氏の戦略 【2.掟を壊す:料金とインセンティブ制度の破壊】

6日から書き始めた「旬ネタ」の2回目は『MNP/孫氏の戦略 掟を壊す: 料金とインセンティブ制度の破壊』。

孫子曰く、『敵が利益を欲しがっているときは、その利益を餌に敵軍の戦力を奪い取る』とある。つまり敵がこだわる利益を察知して、それに存分こだわらせながら、それゆえに敵の形勢が不利になるような戦いに持ち込むというもの。なお孫子の戦略を引用しているのはこちら

孫氏の敵陣への最初の痛打は、「定額制」と「インセンティブ制度」である。

【定額とインセンティブという弱み】
DoCoMoとauの利益のポイントは「定額にしないこと」と「携帯端末のインセンティブ制度」の二つである。規模が大きい2社は、定額を大々的に導入することができないというお家事情がある。インセンティブ制度は公平な制度ではないが、業界慣習=利益の源泉を自ら壊すことはできない。ここに敵の弱みを見出し、一気呵成の戦略を打ち出したのがソフトバンクである。

【規模が大きいゆえ定額制度が導入できない】
DoCoMoの中村社長は会見で次のように話している。

―NTTドコモがソフトバンクモバイルの「ゴールドプラン」のような音声通話の定額制を取り入れる可能性は?

 音声定額のつらさはトラフィックの問題だ。周波数帯にあまりたくさんの余裕はない。音声定額を入れたらトラフィックは最低でも5倍以上に増えていくのではないか。きちんと対応しないと、普通の人の電話ですら通じないというとんでもないことになる。音声定額はなかなか導入できない。

 パケット定額でも同じような難しさがあった。始めはトラフィック量がわからなかったため、「プラン67」だけに限定して導入し、徐々に対象を広げていった経緯がある。音声のトラフィックはパケットの比ではない。その辺は良く見極めないといけないだろう。料金はコスト削減努力をしながら長期的に下げなければいけないと思っている。今のままでいいと言っているわけではない。

Tky200609050159  結構がんばっている。

【ソフトバンクの価格戦略】
だがソフトバンクの定額制度にも問題はある。ソフトバンクが打ち出したのは、ゴールド、オレンジ(auのイメージカラー)、ブルー(DoCoMoのカラーかしら?)の三本の料金体系である。

Ad_1  わかりやすい喧嘩の好例

わかりやすくオレンジはau潰し、ブルーはDoCoMo潰しがねらいである。ぞれぞれの会社の同プランから210円安いという設定は、MNPを促進させるというより「喧嘩を売る」のがねらいであり、ほんとうは「予想外割=ゴールドプラン」がメインになると踏んでいるはずである。いや、そうでないとソフトバンクは困るのである

このゴールドプランはくせものである。特徴は次の通り。

・基本料金は2,880円
 →キャンペーン期間の2007年1月15日までに加入なら何年たってもずっと変わらない。
 →それ以降の加入は、ゴールドプランの公式基本料金が適用される。
 →月額9,600円で、1年目以降割引が適用され、11年目以降2,880円になる。
・家族割りなし、年間割引なし。
・ソフトバンク間は無料?
 →通話は21時~翌0時台は累計200分を超えると21円/30秒加算
 →メールの無料は相手が電話もメールもソフトバンクの場合だけ
・他社通話は割高な設定(auやDoCoMoとの通話をすると高くつく)
・新スーパーボーナスに加入が必要

たしかに通話もパケットもソフトバンク間ばかりなら安いだろう。シェアから見てもそれは現実的ではない。ここがポイントである。なお、こまかな料金設定については、ITプロの下記のサイトがくわしいので、そちらを参照してください。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20061026/251858/?ST=keitai

【ゴールドプラン、実は苦肉の策】
Vodafone買収の巨額な負債で、金融機関に首根っこをつかまれているソフトバンクとしては、実は「予想外割」の広告宣伝は、奇襲というよりも、それしかない選択肢だったのではないだろうか。

わたしの想像だが、ゴールドプランが主体だと赤字にならない(契約者の何割かはわからないが増えれば増えるほどいい)。だからそこに呼び込むために「予想外割」「0円広告」という派手な広告を打った。2880円という線は、競争者(ウィルコム)の料金設定を参考にした。

その価格だけを見れば「安い!」と思う。だがゴールドプランは「新スーパーボーナスに加入が必要」であり、これは「パケットし放題」、「スーパー安心パック」、「スーパー便利パック」の3つのサービスに加入する羽目になる。その合計は4905円になるといわれる。しかも27ヶ月以内の解約は、機器の割賦販売分の負担があるため、相当の違約金が課せられるのだ

01_1  3ヶ月以内なら、という条件。

こうした「保険」がたくさんつくので、ソフトバンクは赤字を食らわない。それを「安い!」と誇大な宣伝をするわけだから、嘘発見器にかからないように、わざと感情をたかぶらせる被験者が孫氏と言えなくもない。

ソフトバンク間の通話・メールが増えればお得」という情報(というよりイメージ)が世間に広まれば、ソフトバンク同士の通話がいいねとなる。ウィルコムだけでなく携帯でも定額があるんだと。これが第二章であり、わたしが孫氏なら、第二弾のキャンペーンは大々的な「ご紹介キャンペーン」を打つことである。こうして「定額」「安い」「ソフトバンク同士ならますます安い」という三段論法でシェアアップを図るのではないか。

【インセンティブ制度が壊せるか】
もうひとつのソフトバンクのねらいは、敵(DoCoMo、au)の利益の源泉のひとつ、インセンティブ制度を破壊することであろう

インセンティブ制度とは、携帯電話の本来の本体価格が3万~5万円するといわれ、携帯ショップにタダ~2万円ぐらいで卸す。それを小売価格への反映はゼロ~低めに押さえ、月々の料金から吸い上げるという仕組みである。だから1年ぐらいで機種変更をする人が増えると通信業者は損するのだが、大多数は2~3年使うので、その間に差額を吸収して潤うという仕組み。

シェアの大きいDoCoMo、auの方が、メーカー仕入時点でのボリューム・ディスカウントが効くのは自明である。最初の仕入値の段階でソフトバンクは差を付けられているはずである。そもそも携帯の免許を取得したときに、機種の仕入値が高くて商売にならないのでVodafoneを買収した経緯もある。

そこを逆手にとって、ソフトバンクは携帯を割賦で販売しようとしている。自らの弱みを隠しつつ、他社はインセンティブ制度という「業界慣習」を利用して利益を上げている、という悪代官イメージを浸透させるねらいであろう。

料金面の不利、コスト面の不利に対して、実に理にかなった戦略を打っているソフトバンク。策士である。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

たまには宣伝させてください(すみません)
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2006年11月 6日 (月)

MNP/孫氏の戦略 【1.闇討ち: 孫氏の奇襲、DoCoMoの怒り、auの沈黙】

番号ポータビリティ/MNPが2006年10月24日、予想外のプロモーションから始まり、予想内のシステム障害・陳謝となり、顧客はいい迷惑をこうむったが、緒戦のシェア争いはおおむね予想内となった。

多くのメディアがこの騒動を取り上げているので、「marketing-brain:旬ネタ」もささやかに参戦したい。マーケティング的に生きた事例であり、戦略的にも興味深い。同時進行ドキュメントのようで楽しい。テーマは、奇襲をかけた孫氏に敬意を表して『MNP/孫氏の戦略』としたい。報道はメディアにまかせ、わたしはマーケティングの喧嘩とはどうやるものなのか、評論してみたい。

今週の『MNP/孫氏の戦略』の予定構成である。

1.闇討ち: 孫氏の奇襲、DoCoMoの怒り、auの沈黙
2.掟を壊す: 料金とインセンティブ制度の破壊
3.のろしを上げる: ブランドイメージを揺らす(おっとキャメロン・ディアス)
4.篭絡(ろうらく): サービス&コンテンツ提携合戦を仕掛ける。
5.民の扇動: MNP以外の争点へ(音声定額、通話品質、コンテンツ)
6.漁夫の利: 出だしの混乱は「想定の範囲内」、漁夫の利をねらうPHS陣営。

今日11月6日は、ソフトバンクのシステム不備で制限していた機種変更制限を解除する日。ソフトバンク店舗の現場はまた混乱した。孫氏には、予想外のブログ・テーマに感謝したい。

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1.闇討ち: 孫氏の奇襲、DoCoMoの怒り、auの沈黙

【前提となる市場数値】
2006年9月末時点の携帯電話の事業者別契約数は次の通りである。

全事業者合計
 9381万2400件(31万500件増)
NTTドコモグループ
 5210万2900件(12万6300件増)
auグループ
 2448万6300件(31万2500件増)
ツーカー
 191万6200件(15万1700件減)
KDDIグループ合計
 2640万2500件(16万800件増)
ソフトバンクモバイル(ボーダフォン)
 1530万7000件(2万3400件増)

出所http://k-tai.ascii24.com/k-tai/news/2006/10/06/665039-000.html

PHSのウィルコム(426万件)はMNPの対象外なので、出だしの商戦は実質3社間の争いである。9381万人にPHS488万人を足した「9869万人」が対象市場。この内、毎年他社への乗り換えは約500万人、約5%。MNP制度で番号という垣根の消滅の影響を600~700万人にとどめられるか、この場合はDoCoMo、auの勝利である。1000万人まで流動化できるか、これだとソフトバンクの勝利。これが焦点となる。

【良くも悪くもvodafoneは孫氏のソフトバンクになった】
一連の騒動を見ていて感じたのは、vodafoneという外資100%のおすまし会社が、ソフトバンクという暴れん坊将軍のいる会社に変わったということであった。予想外戦略も、少数幹部だけで決定し、現場には多くのことを伝えなかったという電撃さである。 

DoCoMoという市場のガリバー、No.2の地位を堅持するau、第三勢力として台頭したいソフトバンク。自動車業界にたとえればDoCoMoはトヨタであり、auは日産、そして孫氏は、フォードから株式を買い取ってソフト・マツダで自動車業界に進出をするようなものである。

【DoCoMoは怒り、auは冷静に事実を伝えた】
「0円」、ととっても小ちゃな文字は事実誤認(法律的には有利誤認という)を生みかねなく、景表法違反/すれすれである。これに対して業界のリーダーとしてDoCoMoはひとこと言うべき立場である。その役割は果たした。だが役割を果たしたことと、喧嘩に勝つことは別である。わたしの感想だが、DoCoMoの社長がしたのは、殴ってきた相手に対して「卑怯じゃないか!」と吼えただけ見えた。

Mmitfa000027102006_1_0_fa  こりゃいかんよ。

対照的にauは、事実だけを伝えた。

『MNPの出だしではauへの流入が10月29日時点で10万1200件、auからの転出は2万600件。ソフトバンクモバイルのシステム処理遅延障害で MNP業務を一部停止した上での状況という前提』。(au社長のコメントより)

「大人の対応」で応酬したわけだ。こちらの方がずっと効果的なジャブであった。だが、auの一連のMNP広告=『お客様満足主義でいこう。』を見ていても同じことを感じたが、おっとりしているというか、スマートというか。MNPという戦国時代を前にして、そこそこアップの万年2位に甘んじるつもりなのだろうかDoCoMoと「大人の談合」をしていていいのだろうか?

中国の孫子曰く、「敵が謙虚なときはそれを驕りたかぶらせる」。日本の孫氏は定石を打っている。

【なぜ闇討ちが必要だったか】
大方の開戦前の予想はDoCoMoがそれほど客を落とさず、ソフトバンクが激減、auがそれをさらってゆく、というシナリオである。ソフトバンクとしては、その予想範囲内の構図を壊す一手だけを、あれこれ考えていたに違いない。

さまざまな打ち手から、戦略マップの頂上に、「予想外割引で闇討ちをする」と書き込んだのではないだろうか。携帯の争点はさまざまだが、ソフトバンクは「価格/料金」だけに絞ってプロモーションを展開した。内容の是非はともかく、ゲリラ・マーケティングとしては常道であり徹底していた。世間の話題をさらった。

孫子の戦略の要諦のひとつには「どこに立てば負けないか」というものがある。逆に言うと、それを争点することで敵が困ることは何か、である。だから奇襲の順序として「価格比較」「音声定額」「データ定額」、その後は「コンテンツ」であろう。ちょうど本日6日付けの新聞の見出しは『ソフトバンク、マイスペースと提携』。ソフトバンクの戦略、恐るべし。

孫子いわく「戦争とは敵をだますものである」。ネットにせよ携帯にせよ、あらゆる面で数が勝負であることを熟知しているソフトバンク陣営。No.1戦略こそ企業方針、企業風土である。混乱を引き起こして、業界を揺らす。その目的は達した。つまり序盤戦をみる限り、ソフトバンクは市場を揺らすチャレンジャーとしての戦略の定石を打っている

【顧客流動化の孫氏の打ち手の概観】
 料金で揺らす (定額制度)
 業界慣習を揺らす(インセンティブ制度を揺らす)
 ブランドイメージで揺らす(旧勢力対チャレンジャー)
 もう一度料金で揺らす(紹介制度を強化するはず)
 コンテンツで揺らす(Yahooの強みを全面に出す)

5219106  孫氏の戦略

概観するとこんなところだ。ただソフトバンクに問題がないわけでなく、システム障害や店頭の混乱がある。料金収受システムの構築はこれからという噂さえある。孫子曰く、休む間もなく戦う軍隊は疲弊する。これがウィーク・ポイントである。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月 5日 (日)

ディクシー・チックスの日本公演を実現する!

1997年にデビューした米国のカントリー・グループ「Dixie Chicks」。これまでの4枚のアルバムで3000万枚以上売っているテキサス出身の「発言するミュージシャン」だが、日本での知名度はイマイチで、そのせいで未だ来日公演が実現していない。

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【勝手にアドバイスVol.66 ディクシー・チックスの日本公演を実現する! 】
にわかDixie Chicksファンになって以来、もう半年以上経った。アルバムもライブも含め5枚のCDを買ったので、にわかも卒業である。今日は日曜日、企画提案の体操みたいなノリで、Dixieを日本市場に売り込むマーケティング戦術を考えてみたい。残念ながら(まだ)依頼主はいないが、仮想依頼主に対して企画提案。題して『Dixie Chicksの日本公演を実現する!』。

【対象特性をぼやっと把握する】
企画提案をまとめる場合、対象について最低レベルのアウトラインは知らねばならない。調査を通じて、どこにフォーカスを当てるべきか自分なりの仮説を立てる。

対象を熟知していればいいか。必ずしもそうともいえない場合もある。プロモーション提案なら、他業界の新鮮な視点からの提案が求められる場合もあるし、コンサルティング提案なら第三者から見ておかしな点をどしどし指摘してほしいといわれる場合も多いからだ。

だからあまり詳しく調べない方がいい。「たぶんこれがポイントだろうな」のぼやっとした感覚が大切である。依頼主の話だけを鵜呑みにして書いても、「それはオレが言ったことを書き換えているだけだ」となるし、自分の経験からだけで提案書を書くと、依頼主の夢がこぼれ落ちる

だから大切なのは「ぼやっと」把握するレベルでの仮説を立てておく。依頼主に会うときに自然な質問を投げかけられる心構えを維持しておくには、それがベストだろう。

【南部出身の発言するアーチスト】
ディクシー・チックス/Dixie Chicksを例にとると、グループ名のディクシー、すなわち米国南部(テキサス、ルイジアナ、ミシシッピーあたり)と、チックス(ひよっこ/娘)という名づけを理解することは重要である。

つまり彼女たちは、彼女たちのCDのカテゴリーであるカントリー・ミュージックの盛んな地域の出身で、そこは米国でも保守的な層が多く、有色者への差別も強い地域である。そんな地域で彼女たちは「発言するミュージシャン」でもある。

このサイトが詳しいが、イラクとの戦争について、リード・ボーカルのナタリー(上写真中)は、コンサートで「ブッシュという大統領を、同じテキサス出身として恥じる」と発言した。それがきっかけで保守系のメディアに叩かれ、CDを焼かれ、カントリーチャートから追い出され、寄付をボイコットされるなど、散々な目に遭い、その想いを「Not Ready to Make Nice/まだいい子にはなれない」という曲につづった。

【音楽性とファン層】
二つ目の特徴は、「カントリー」というカテゴリーではあるが、音楽性はロックンロールやポップスとフュージョンしていることである。ほんとうのカントリーファンには物足りないかも知れないし、ロックかといえばそうともいえない。だがマーティ(左)のフィドル、エミリー(右)のパンジョー、バック・ミュージシャンたちから生み出される演奏は強力でレベルが高い。カントリー・ミュージックの枠組みを超えた音楽性なのである。

三つ目の特徴は、女性ファンの圧倒的な支持があること。代表曲「Goodbye Earl」は夫の妻への暴力がテーマで、デビューヒット曲の「Wide Open Spaces」は殻を破って自立する女性がテーマ。「Travelin' Solders」は徴兵で旅立つ若者と彼らを待つ女の子の哀しい物語。「Cowboy take me away」は題名の通りカウボーイ、わたしを連れてって! 愛することや、自立することで生まれ変わりたい、という女性心理や母性をテーマにした曲が多い。

【星屑を星座にする】
企画を考えると、「まだいい子にはなれない」「発言するミュージシャン」「カントリー」「自立」「フュージョン」・・・などキーワードが頭の中を行き交う。これをわたしはキーワードの星屑と呼ぶ。『星屑をつないで星座にすること』が提案のシナリオづくりである。シナリオとは星屑を結んで、プロモーションという星座を創る作業である。

対象のキーワード、依頼主の想い、ことばなど、散らばった星屑を星座にする。それもすべての星をつなぐのではなく、最も光っていると思う星を見出し、それをつなぐのである。つなぐと「かたち」ができる。星座をあれこれ・たくさん作ってみる。心の中で、あるいはノートやパワーポイントで。

星座はあまりにカタチが整っている没個性ではおもしろくない。「わたしの好きな星座のかたち」でいい。流星を飛ばしてもいいし。

【自分はコア・オーディエンスか】
自分はコア・オーディエンスであるか?という自問も必要である。プロのミュージシャンなら、演奏中、どのオーディエンスを見て演奏するか決めるそうだ。あそこの奴らが盛り上がればオッケー、というように。

自分がコア・オーディエンスであるかどうか。NOならばコア・オーディエンスになりきってみる。ディクシー・チックスの場合なら20代~30代の女性の気持ちにならなきゃ(むつかし!)。

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【わたしのディクシーの星屑】
ディクシー・チックスのような大物を日本に呼ぶには、スポンサーをつける、場所を決める、チケット流通を決める、放映権をセットする、広告を打つなどプロの仕事がたくさんある。この分野のアマであるわたしは、アイデアをコンサート会場とプロモーションという星屑だけをつないでみた。

来日講演のキャッチは、『ディクシー・チックス ‘私’という自由』である。

①早稲田講堂コンサート
 ここでは「言論の自由」がテーマである。ナタリーにも存分に政治を語ってもらおう。
②代々木公園 野外コンサート
 カントリー・ミュージックには野外が似合う。環境問題や戦争問題などがテーマの毎年4月の「アースデイ・イベント」の目玉として招聘するのもいい。「環境汚染からの自由」がテーマ。
③オペラシティ コンサートホール
 そして都内でもっとも音響が良いと言われるオペラシティでじっくり聴きたい。オペラシティでカントリーが演奏されるという意外性もいい。「自由なカテゴリーの音楽」がテーマである。

Ch_ph0  オペラシティ。凄い内装。

プロモーションは、米軍の横須賀など駐留兵士たちに、「Travelin' Solders」を歌って慰問をしてほしい。できれば陸上自衛隊のイラク派遣部隊にも歌ってほしいが、彼らは北海道かしら。ディクシー・チックスはブッシュ大統領の批判をしたが、戦地の兵士を批判したわけではないから。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月 4日 (土)

ソールワーク 和柄への熱い気持ち

宮崎あおいさんの袖口が気になった。

20060909_1518231  拡大すると目立つ。 Et0609091ns  袖口に注目。

この写真は、来年のNHK大河ドラマ『篤姫(あつひめ)』に大抜擢で主演する宮崎あおいさん、その記者会見からのもの。袖口、襟、スカートの和の紋様が、宮崎あおいという大きな瞳をもつ圧倒的な存在感の女優を引き立てていた。それは、和柄トレンドを創ってきたブランド、『ソールワーク』である。

今日は、ひいきの女性が多く、わたしのような中年男さえはっとする和柄ブランド『ソールワーク』がテーマ。

【勝手にアドバイスVol.65 ソールワーク 和柄への熱い気持ち】
エッセイも上手だといわれるブランド主宰者の古野雅子さんは、コンセプトを同社HPでこう語っている。

和ブームの火付け役として長年多くの皆様にご贔屓いただいているパイオニアブランドです。京都の染織の技や着物などに使われる紋様や長年培われてきた日本人の崇高な美意識を活かしながら、新しい衣のスタイルを追求しております。
昔はもっと身近だったはずの日本特有の衣文化を、新しいファッションを通して生き返らせたい」と、オーナーデザイナー古野雅子が思いをぶつけて10余年。熱い気持ちが今日の和柄ファッションの流行の源となりました。

ソールワークのHPの「about textile」には、江戸新菊、飛菊、糸菊、和菓子菊、聰菊、ちがや(茅草)などが載っている。わたしは「茅草」が気になった。古野さんの説明を読むと「昭和初期のアンティーク着物から復刻した」「ススキなどの多年生草木の総称」とある。神社のくぐりにも使われるそうで由緒正しい柄である。こんな柄を着こなせる男性でありたい。

Thumb  素敵な柄。

【デザイナーの血筋+起業魂】
古野さんは大学卒業後、広告代理店に勤め、3年目で結婚。エッセイ書きがこうじてフリーライターに転向。父はインテリア系のデザイナー、母は洋裁学校出だったという血は争えず、ファッションに関わりたくてブティックでアルバイトもした。経営の勉強をするために短大の夜間に通ったという。なんとこれは同時期のことだったそう

「主婦、バイト、学生、ライターと1人4役。忙しかったけれど、好きなことができて幸せでしたから、つらいなんて思ったことはありませんでした」

「ライター時代、織物産地などの取材をした時に、高い技術を持ちながらも、伝統産業が衰退していることを知ったのです。伝統に固執することなく、若い人向けにアレンジできれば、市場は広がると考えていました」
ドリームゲートのサイトより http://www.dreamgate.gr.jp/feature/inteview/women/019/

ファッションにこだわりながらライターを続け、そこで事業化のアイデアを育てた。「衰退する伝統産業」と「若い人(マーケット)」を結びつける着眼が、古野さんらしく「ファッション」であったのだろう。やりたいことの絞込み、熱意、市場ニーズの起業三点セットがそろっていた。

【2000年春夏東京コレクション】
ナチュラル・ビューティ、トクコ・プルミエ・ヴォル、花井幸子らに混じってコレクションを発表した古野さんについて、1999年11月9日付けの繊研新聞はこう伝えている。

ソールワーク(古野雅子)のデビューコレクションは、胸にくっつけたバッグを外すと、きもの地の柄が出てきたり、シャツやパンツのファスナーを開くと刺しゅうが見える、といったアイデア服。 

_soul05  ちょっと小さいですが和柄が見えます。

起業時点から古野さんのデザインポリシーは揺らいでいない。さらにその行動力。作品片手にロンドンまで飛んでしまうのだ。支援者たちにも恵まれたのであろうが、その行動力、新しいことへのチャレンジに脱帽。

【商品開発】
ソールワークの商品開発のポイントは、「和柄を新しくしたこと」に尽きる。

初期の作品はフリーマーケットで古い着物を仕入れ、解体して洋服にリメークしたという。それではひとつしか作れないし、着物という素材では気軽に着れない。いちいち着物クリーニングに出さなくてはならない。そこで、和柄をデザイン・パターンにしてプリントするシャツやワンピースをつくり、素材も働く女性が着やすく手入れのしやすいものにした

和柄をデザインにどう活かすか。ファスナーを開けて露出するのは1999年デザイン、宮崎あおいの着るジャケットのように袖から露出する、パンツのヒダから菊がチラチラ見える。こういう「日本的な奥ゆかしさ」もデザインの原点にあると思う。

簡単に言えば伝統的な和柄を現代風にデザイン・アレンジしたのだが、それが新鮮であった。一昨年あたりからの着物ブームや和柄ブームの源流にはソールワークの着想があった。

S001  古野さん。菊がお似合いそうな容姿の方。

また縫製には、ハローワーク経由で60歳以上のベテランの縫製職人を探し、発注しているという。技術を持つ中高年の活用は、高齢化社会のニーズにもマッチしている。すばらしいブランド、すばらしい事業である。

【男からの勝手にアドバイス】
メンズはあまり多くないようですが、黒いジャケットに似合う飛菊柄のシャツがあれば欲しいです。そしてこの飛菊のPCバッグには惹かれている。だが果たして通勤する勇気があるだろうか?

101550167_recimg_2  惹かれている。これならPC作業も和む。

ソールワークの代名詞でもあるこの「飛菊柄」も、元は京都のフリーマーケットで出会ったもの。マリメッコ柄のマウスぐらいなら違和感なく使っているわたしであるので、いずれ挑戦したい。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月 3日 (金)

ジョギング2.0 iPod nano+Nike

同僚の熱血営業、OK山さんは過酷なサハラ砂漠マラソンを走った。ホノルルも駆け抜けた。Cherryさんの彼は、昨年初チャレンジでフルマラソンを完走した。見事だ。それなのに今年はなぜかハーフマラソンだという不可解さ(は問わないでおこう)。

休日の今日はお天気もジョギング日和であった。昨日11月2日、Appleよりクリップ型のiPod shuffleが発売されたが、週末ジョガーのわたしが気になるのは『Nike+iPod Sport Kit』である。以前にもこのブログでかんたんに取り上げたが、買うか買わないか悩みながらジョギングしていたので、きちんと取り上げたい。

【勝手にアドバイスVol.64 ジョギング2.0 iPod nano+Nike】
ジョギングにiPod nanoを連れて行き、iPod nanoにリードしてもらう。音楽があなたのモチベーションを高めます。さらに上を目指したい場合は? ナイキとアップルのユニークなコラボレーションで、あなたのiPod nanoがコーチ、専属トレーナー、気の合うトレーニング仲間に。Nike+iPodが新登場。
引用元はAppleのサイト http://www.apple.com/jp/ipod/nike/

Indexhero20060912  nikeとiPod

単なるマラソン万歩計ではない。靴に差し込んだセンサーから、アームバンドのiPod nanoに時間と距離を送信する。受信したデータを元にiPodが速度とカロリーを計算する。そのワークアウト情報をPCにアップロードしてTunesで管理する。どれだけ走ったか、5km、ハーフマラソン、フルマラソンなど走行計画をセットすることで、距離やスピードなどさまざまな記録ができる。

【ジョギング2.0の時代】 ★★★★
それだけではない。インターネット上のNikeplusのサイトにアクセスして、iTunes経由で自分の走行データをアップロードする。そうすると自分の走りの統計が、世界のジョガーと共にネット上に登録できるのである

Synchero20060912  nikeplus

『過去24時間に8891回のRunデータが登録されました』 Nikeのサイトでは、米国、欧州、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、そしてジャパンで合計336万4175kmの走行距離が累計されている。刻々と増えているので、さっきチェックしたらもう336万8000kmを超えている。

Leaderboardというのもあり、5Kmの最速タイムはArmanの14'16''と驚異的なタイムが記録されている。5Kマラソンの経験者ならわかる驚異的な速さである。10Kmの最速タイム、時間や距離別など、最速ジョガー向けだけでなく、サハラ砂漠耐久型ジョガーにも配慮がされている記録ボード。日本人の最長登録距離はHIDETOさんの308.95kmである。よく走りましたね。

東京のランナーとニュージーランドのランナーが励ましあえるのである。これはすごい。SNSではなくMNS、Marathon Network Serviceなのである。ことばでなく走りで通じ合えるという仕掛けがある

【はげましが耳からはいる機能】 ★★★★
ここ一番で疲れたときには元気を出すため“パワーソング”を設定ができるし、ジョギング中には時間、距離、速度、カロリーが、音声でイヤホンからフィードバックされる(再生中の音楽の音量は下がる)。経過だけでなく、速度・距離・時間・消費カロリーといったパーソナルベストの更新を知らせくれる

『自己記録を破った際には有名アスリートが特別なメッセージで祝ってくれるが、実はこの中に為末氏バージョンも含まれているという。メッセージについて為末氏は「2~3時間かけてたくさん収録した』そうである。Appleのイベントに参加した陸上選手の為末大氏がはげましを吹き込んだのだ
引用元 http://ascii24.com/news/i/topi/article/2006/10/30/665511-000.html

真夏のジョギングは短距離でも苦しい。そんなとき見ず知らずの通りすがりのサイクリストから「ファイト!」と声をかけられたことがある。それでがんばれた。

為末さんもいいのだが、マラソンランナーではないが、日本の元気印といわれる高橋みゆきさん(バレーボール選手)に「ファイトォ!」と叫ばれたら走るっきゃないだろう。あるいは前にブログでも取り上げた浅尾美和さん(ビーチバレー選手)からのはげましだったら、とにかく全力疾走してしまうだろう。単調なジョギングにも新しい楽しみが添えられる。素晴らしい商品である。

Aflo1  ファイトォ! Asao3  走って!

【ジョギング2.0のプライシング】 ★★
kitは3400円。底面にセンサーを挿入するスペースのある純正のシューズは12,600円から。これにプラス、Nikeの純正ウェア7,500円からと走るのも安くはない

Nike以外の靴で対応させるグッヅも出た。トリニティの『SportSuit Sensor+』である、これなら1400円。

Nike+iPod Sport kit+ホルダー=4800円。それに、いつものシューズとアームバンドがあれば、ジョギング2.0をスタートできる。

Images823429  Images823432  こんなに小さい。

【勝手にアドバイス】
GPSと受信することで走行ルートを音声で伝達することができないだろうか。サハラ砂漠マラソンから迷子をなくすことができる。通過ポイントでnanoのデータをチェックするという、従来にないマラソン大会管理も可能である。近道をするズル・ランナーも撲滅できる。同じ発想でオリエンテーリング大会にも使えるだろう。

②PCにデータを送る前に、タニタの体重計のデータとシンクができれば、走行による体重や体脂肪率の変化ともデータがシンクできる。これはちょっとやりすぎかもしれないが。

③新発売のiPod ShuffleでもNike+ができるなら、シャツでもパンツでも、女性ならヘアでも(?)、はさんで使えるサイズなのでジョガーにはぴったりである。

2.0効果に投資すべきかどうか、アタマを冷やすために、今日は少し遠めのジョギングをした。結論は来週までお預け。とりあえず明日に向かって走ろう。Click on tomorrow!

【サハラ砂漠Plus】
このブログに登場した熱血営業OK山さんからの要望があり、サハラ砂漠マラソンで勇姿を分かち合った友人のサイトを教えてもらいました。 http://www.bea.hi-ho.ne.jp/s-takeshi764/saharaindex.htm 11月6日追記。

Pict0037  このサイトの作者の方。無断転載(失礼!)。

Pict0011  右にOK山さん

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2006年11月 2日 (木)

ホンダジェットに、Hondaの経営新化の挑戦を見る

先ごろ正式に受注を開始した「Honda Jet/ホンダジェット」。VLJクラス(Very Light Jet/超小型)のビジネスジェット機である。商品やブランドの魅力もさることながら、わたしはHondaの経営品質への挑戦に興味を抱いた。

勝手にアドバイスVol.63 ホンダジェットに、Hondaの経営新化の挑戦を見る】
Hondaの全額出資子会社、ホンダ エアクラフト カンパニーが2010年から量産予定の「ホンダジェット」を販売開始した。標準仕様で365万ドル(4億3800万円)とVLJクラス最高価格で上市したが、受注は好調ですでに100機の受注をしたという。その姿。

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【シビックなみの燃費性能とアキュラのプライシング】
この商品の特徴をひとことで言えば、マン・マキシマム、メカ・ミニマムである。ご存知の方もいるだろうが、昔のシビックなどのHondaの宣伝文句。居住性は最大に、メカは最小に

競合商品にくらべて燃費が30%もよい(リッター3km)。GEとの合弁会社「GE ホンダ エアロ・エンジンズ」が供給するジェットエンジンは、主翼の上という、従来に無いスタイリングである。エンジン主翼上面配置方式というそうだ。これはエンジンの振動を機内へ伝えるのを減らしつつ、機体の空気抵抗を減らすのがねらいである。これもあって機内は広々としているそうである。

Carlife_20061021d28747m2  揺られてみたい。

軽量級でもHondaらしいのは最大巡航速度のスピード。ホンダジェットの778Km/hは、競合のサイテーション『マスタング』(630km/h)、エクリプス500(695km/h)、エンブラエル『フェノン100』(704km/h)よりも相当速い。なんとボーイング737に近いスピードだという。速くて低燃費というところは乗用車のシビックぽい

だが価格は競合の2.5倍であり、米国で培われた高級ブランド「アキュラ」に近いポジションである。競合各社との比較表を作成されているサイトを見つけた。

Compete  
引用元 http://www2g.biglobe.ne.jp/~aviation/honda.html

【またしても独自路線】
最近ではHondaが乗用車製造に進出するときに、時の通産省(現経済産業省)と喧嘩までしたことを知っている人は少ないだろう。今回は喧嘩はしなくとも、国内航空機業界とは一線を画している。

経済産業省には、産業構造審議会 航空機宇宙産業分科会航空機委員会 小型旅客機開発事業推進専門委員会という寿限無もどきの長~い名称の委員会があり、三菱重工業ら日本航空業界のメン・イン・ブラックがこの委員会に参集し、50席クラスの航空機を国産開発して、離島を結ぶ路線に投入するほか、海外への輸出も検討している。

この小委員会は、「環境適応型高性能小型航空機」という、三菱重工業が開発している小型旅客機の計画と同調していると思われ、JAXANEDOなど、関連業界団体もかかわりながら次世代航空機の計画が進められている。

Hondaはこうした業界の呉越同舟に乗らずに、あえて独自路線で開発をしているのだろう。その理由はある。

【2つのエンジニアリングのハイブリッド】
2つのエンジニアリングとは、航空機エンジニアリング自動車エンジニアリングである。

エンジニアリングについて詳細を語る知識をわたしは持ち合わせていないが、ここではそれはテーマではない。わたしが注目したのは、ホンダが航空機事業から得られることを、経営全体にフィードするねらいがあるという点である。

たとえば部品ないしモジュール設計のエンジニアリング。設計、調達、製造、品質検査、組み込み、出荷、整備、修理、交換など、プロセスの各段階で、自動車よりもさらに厳密な品質管理が要求される。部品ひとつひとつへのトレーサビリティ(履歴管理)の厳密さは、自動車部品の比ではない。部品にリコールがある場合の対応も大きく異なるはずだ。

販売面でも個人富裕層への営業活動、販売管理面で、アキュラ・レジェンドの顧客層以上を相手にする。当面は販売提携をするそうだが、顧客満足のコツの蓄積も怠らないであろう。

つまり、航空機産業の経営エンジニアリングを自動車部門へ取り入れることで、Hondaは経営品質を大幅にアップさせることをねらっている。航空機製造レベルで経営ができるようになるということは、もちろん新興国の自動車産業など敵ではなく、フォードやGMさえも凌駕する経営品質という目標を見据えているのだろう。

【ホンダの理念に自動車の自の字もない】
基本理念は有名な『三つの喜び(買う喜び、売る喜び、創る喜び)』である。社是にはこうある。『わたしたちは、地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価格で供給することに全力を尽くす』

そもそも、どこにも自動車という文字は登場していない。オートモビル(自動車)・カンパニーではなく、モビリティ(移動手段)・カンパニーという位置づけなのである。

【勝手アドバイス=製品開発が企業成長の素】
製造業である限り、企業を成長させる原動力は「新製品」である。従来の延長線上の新製品では「延長線」レベルの成長にとどまるが、「企業の存在意義を問いなおす製品を開発する」という方針を立てるとき、事業構造の変革を導きだす。成長商品/シーズを見出し、もっとも適するマーケティング&セリングモデルを構築する、そこから企業の事業プロセス全体を見直し、事業資源のあり方まで一気通貫で見直す。これを支援するのが本来の経営コンサルティングである。

当社から転職したM田さんのいるHondaの話だと力が入る。元気だろうか。今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2006年11月 1日 (水)

歯磨きニーズを超えたピュオーラとTOOTH TUNES

【勝手にアドバイスVol.62 歯磨きニーズを超えたピュオーラとTOOTH TUNES 】
先日書いた男磨きの後は歯磨き、ではないが、ピュオーラの使用リポートとあわせて、歯磨きが楽しくなる商品をご紹介します。

【まずピュオーラ】
口内環境 清浄化宣言』がうたい文句。

薬用ピュオーラは、唾液の清浄(浄化・殺菌)作用に着目! 清浄で健康な口内環境に整える 新発想のオーラルヘルスケアシリーズです。 
お口に入れた瞬間から、サッととろけて→すみずみまで広がって→スッキリ洗われるような清浄感。お口全体がサラサラに整えられていく新感覚です。


つまり歯磨きであるが、口内洗浄商品という新しい切り口なのである。使ってみなけりゃわからないので、さっそく買いました。二種類ある味から「クリーンミント」。

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【使用3日目ユーザーの商品評価】
使用感は良いです。最初の一回ではあまり感じなかったが、二回目、三回目、口の中が清潔になった気がす

る。何を隠そう(ブログを書いているとだんだん自分が暴露されてしまうが)、わたしは歯周病気味である。「しっかりブラッシングしてくださいね」と歯医者さんに言われている。メカニズムは下記の通り。

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歯周病だと、普段はともかく疲れがたまると歯肉が腫れやすい。わたしの場合、疲れは眼にくるか歯(歯肉)にくるかどちらか。歯が浮いた感じが健康のバロメータになっている。その浮いた感覚が最近あったのだが、気のせいか落ち着いてきた。

使用3日目の結論だが、匂いを消すという効果もあるでしょうが、歯肉が清潔になった感じが○。歯周病予防=腫れとか歯の浮きが減るかどうか、まだなんともいえない。

【ハズブロのTOOTH TUNES 歯ブラシ】
歯ブラシしながら鼻歌歌ったことありますか? わたしゃうるさい!と言われるからありません(苦笑)。そこからのアイデアだろうか。歯ブラシから音楽が聴こえてくるのがハズブロのTOOTH Tunes

Black eyed peas, Hilrary Duff, The Cheetah Girls, Kelly Clarkson, Queen, Kiss, Destinys Child, Beach Boysなど人気ミュージシャンのメロディが2分間聴こえてくる。曲が終わり、はい、歯磨きも終わりという算段。

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【メカニズム】
歯磨きしながらどうして音楽が聴こえるのか?その秘密は骨伝導チップ。歯ブラシにマイクロチップが内蔵され、歯磨きをすると音楽が聞こえる仕組みになっている。

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【しつけと楽しさの合体】
歯をきちんと磨かせたいというお母さんのニーズは、おしつけがましくて嫌がられる。そこをひとひねりして、楽しくさせたというところに、この商品の愉快さがある

おもちゃだから、ではない。たとえば営業日報システムと呼ばれるパッケージ・システムだって、営業担当はさまざまな理由をつけて書かないでしょう。楽しくないし、見返りもない。日報を書くたびに楽しくなることが発見できれば、いいのである。ブログを書くと、たまには読者から励ましがくるというのも立派な動機である。

【勝手にアドバイス】
音楽が変えられたら尚いい。ミュージック携帯と同じで、歯ブラシをお店に持っていって、歯ブラシPod(?)に差し込むと、最近のヒット曲をダウンロードできる。

もっと未来の歯ブラシなら、磨くと三次元の画像が鏡に映されて、ヒラリー・ダフが「Mornin’!」とか笑顔で微笑んでくれると、眠い朝もしゃきっとするかも。冗談はさておき、歯ブラシ部分だけ交換もできるのかどうか。ちょっとそこがわからなかった。ブラシは定期的に(経済的に)交換したい。

76395bc9e0b_main400アイドル歯ブラシ

【勝手にアドバイス ふたつあわせて】
この二つの商品の特徴は、歯磨きというそもそものニーズから離れている商品開発がメインであることである。成熟した商品分野では、従来の枠組から外れたニーズの掘り起こしが功を奏するというパターン

ピュオーラの場合は「口臭」予防。つまり口臭危険遭遇エリアにおけるマナーや、キッスの準備(直接的な表現ですまん)がニーズである。

骨伝道は「しつけ」である。つまりチョチョイノチョイでは虫歯になりますよ!と口で言っても聞かない子供に2分間のしつけを支援する。

ただ歯のケア商品はそれこそ星の数ほど乱立している。電動歯ブラシ、フロス、キシリトール、舌クリーナー、リンス・・・歯にも口内にも問題があるからだろうが、広告に踊らされずに適切なケアを自分でするため、現状分析、課題の整理をしてくれるオーラル・コンサルタントも欲しい!

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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