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2006年11月14日 (火)

リッツ・カールトンというおもてなし

11月13日に、『東京ビジネス・サミット2006』でリッツ・カールトン・ホテル・カンパニー日本支社長の高野登氏のご講演を聴講しました。題は「リッツ・カールトンに学ぶおもてなしの極意」。

高野さんの温かい口調にもほだされましたが、「おもてなしを極める」ことがたいへん心にしみこんだので、自分のために聴講の記録も兼ねて、今日の勝手にアドバイスでは、そのいくらかを共有させていただきたいと思います。

【勝手にアドバイス Vol.68 リッツ・カールトンというおもてなし】
リッツ・カールトンには2つの源流がある。19世紀後半、ホテル王といわれるスイス人のセザール・リッツが、パリにホテル・リッツの源流となる「ホテル・リッツ」を開業した。これが一代目。高野さんは「二代目」と表現されていましたが、1983年米国に進出したリッツ・カールトンは、アトランタから今日のリッツ・カールトンの流れをつくりました。

【おもてなしとは現状否定/発想の制約解除から】
おもてなしイコール・サービスと直接的に思いがちですが、リッツ・カールトンのおもてなしのDNAは、セザール・リッツ氏の「発想の制約を外す、現状否定をする」というものに端を発するという。

リッツ氏は数々の現状否定を実現してきた。19世紀から20世紀にかけて(つまり今から100年前)、シャンデリアの明るさを変えたのもひとつ。現代のように調光機能など当然にあるわけもなく、そのような考え方自体が存在しなかった。リッツ氏はただ「女性をもっとも美しく見せること」から発想したという。あるいはホテルの全室にシャワー室を備えるのもパリのリッツからだったそうです。それまではシャワー室に行くのが当然でした。

Go beyond Nine Dots/発想の制約をとる】
現代のリッツ・カールトンの営業研修では、いわゆる「ナイン・ドット」をやる。それこそ「脳がびしょびしょになるほど」考え抜かされるという。

謎々好きの方はナイン・ドットはご存知だろう。「4本の直線で9つの点をすべてたどる」というアタマの体操である。すぐ種明かしだが、9つの「枠」の中だけではできないのだ。「9つの点の外にはみだす」直線を考えなければできない。つまり「まだあなたは枠の中で考えていないか?」という問いかけをするものである。

Ninedots

http://britton.disted.camosun.bc.ca/ninedots/ninedots.gif

ドットには意味をもたせることも重要である。「施設の制約」「設備の制約」「コストの制約」「人材の制約」「自分の経験」「過去の成功体験」「エリアの制限」など、制限や制約を書き込んでみて、それを飛び越えないとほんとうの商品戦略改革、事業戦略改革はありえない。
お好きな方はこちらでスタディしてください。
http://www.nine-dots.org/programs/share/index.asp?P=64&L=2&SNID=1&ICID=18&

【10万円のオムレツ】
大阪のリッツカールトンでは「10万円のオムレツ」を1日2名のカップルにだけサーブするキャンペーンをした。その企画に対して、最初営業担当からは「10万円も払ってオムレツを食べる人はいないよ」とさんざんだったが、フタを開けてみると予約が殺到した。

なぜか。10万円のオムレツはオムレツだけでなく、リッツでテーブルマナーや料理のウンチクまで学べる場であったことが評価された。その企画を否定した営業担当は「自分の年収」「自分の価値観」「自分の経験則」など、ナイン・ドットの中でしか発想していなかったというわけだ。10万円の価値を認める人の年収、価値観、経験したいことに思いをめぐらせることができなかった。

高野さんの話はこれで終わらなかった。

ひとつの仮説に過ぎなかったオムレツにニーズがあった。リッツ・カールトンの社員に「制約ははずさなくてはならない」という認識をもたせた。これが第一章。

そして第二章は、「いろんなことを試してもいいんだ」という意識転換である。「制約を越える」ことで大切なのは、「考えたことを実行してもいいんだ」「実行できるんだ」という企業風土である。だから考えることがおもてなしにつながるという意識が生まれ、それから「考えさせる技術」「考えさせるプロセス」を業務に組みこんでゆく。手法やプロセスが先ではない。社員が本気になること。こっちからだ。

今朝の社内ミーティングでもこんな会話があった。自分の業界内の掟で考えるのはたいした発想がでない。せいぜい改善どまりである。業界の枠は取っ払うこと。なぜならお客様は業界を選択してお金を払うのではなく、あなたの会社、あなたのサービスに対してお金を払うのだか

【わたしのリッツ体験】
わたしは一度だけリッツ・カールトンに宿泊したことがある。それはサンフランシスコだった。前職で社長のカバン持ちをしていたとき、物見遊山兼お仕事で社長とその夫人と共に宿泊した。その厳粛な概観はもちろん、部屋の広さ(わたしはシングルルームだったがかなり広かった)、調度品の素晴らしさなど、ハードウェアはもちろん素晴らしかった。

Ritzcarlton_sanfrancisco   素晴らしい。

だがもっとも感銘したのは、一歩踏み入れたロビーから始まっていた、独特なあたたかいおもてなしの雰囲気であった。高い料金を取るホテルだと、わたしなど随行員は気後れをしてしまいがちだが、リッツ・カールトンは違った。ホテリアは実に温かかった。ロビーで奏でるハーブやピアノの音も心地よかった。社長にソソウがあってはこっちのクビが飛ぶ、という緊張感をひと時忘れさせてくれた。随行員は社長以上にのんびりとリッツを愉しんだ。お世辞ではなく、あのとき以上のホテル体験はその後ない

すでに時効だから白状するが、そのときリッツのハンドタオルを1枚失敬した。厚手でとても感触がいいのだ。長らく家で使っていたが、今はどうなっているだろう。

さらに余談だが、先日食事をしていて「今度リッツ・カールトンのセミナーに行くんだ」と話したとき、同僚のMK嬢が「わたしはリッツ・カールトンのタオルを持ち帰ったことがある、アハハハ」と笑っていた。「実はボクも」とはタイミングを逸したので言えなかった。だからここで白状しました。

Untitled  おもてなしだけでなくタオルも分厚い。

【成功を共有させることは】
もうひとつ心に残ったのが、リッツはお客様のクレームに備えて最高2000ドルの決済権が従業員に与えられているのは有名だが、高野さんが紹介したうちのひとつの事例。

ドバイのリッツ・カールトンで、あるお客様が病気になった。そのお客様は宗教上の信仰から、一般の病院には行くことができない。恐らく血液がらみだろう。ドバイ・リッツのドアマンは尽力をして病院を探し当て、お客様を送った。お客様から感謝が寄せられた。協力した従業員も人事評価された。よかった。翌週の月曜日の会議で、世界中のリッツ・カールトンにこの話が伝えられた。拍手。

これで終わらないところがすごい。

朝礼では「わがリッツ・カールトンで同じことが起きたならどうするのか?」という問いかけがなされる。大阪市内ならどこの病院ならOKなのか、コンシェルジェに調べさせるのだ。さらに調べた結果は、周辺の同業者(ホテルのコンシェルジェ)と共有したのだ。

だからリッツは温かいのだ。

立派な理念があってもこういうことはできない。唱和するだけではできない。トップから本気にならないとできない。そして本気になれる温かい心を持つ人材が集まらないとできない。おもてなしとは何かを考え続ける気持ちが共通しているからできるのだ。大阪のリッツを立ち上げた高野さんは「大阪では6ヶ月かかった」と言われていた。理念の共有は一晩ではできない。だがそれは、ある瞬間から堰を切るように「リッツ・カールトンになる」のだという。

自分に勝手にアドバイス】
他にも良い話がたくさんあったが、1日のブログの容量を超えているのでおしまい。セミナーに行けなかったチェリーさん、もったいなかったよ。代わりにエスコート?させていただいたKSYさん、良い話でしたね。

もうひとつ白状するが、わたしは知らず知らずの内に、お客様へのサービスで制約(時間、コスト、効率、作業難度など)を設けてしまうことがある。自戒。高野さんの話を思い出して、おもてなしには制約をもたないようにしようと思った。心が洗われました。高野さん、ありがとうございました。今日は自分へのアドバイス。

ではまた明日。Click on tomorrow!

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コメント

「リッツ・カールトンで午後ティ」だと、Breakfast at Tiffanyよりも字あまりだね(笑)。行けばよかったのに。雰囲気だけでも吸う価値があるよ。
いつかサンフランシスコに行こうよ!坂もツィンピークスもワインも黒人街もアルカトラズも中華街も何でもありの楽しめる街。ちょっと寒いところも日本に似ているし。サザンカリフォルニアも捨てがたいけど、SFは住みたいところです。

投稿: 郷/Marketing-brain | 2006年11月16日 (木) 23時03分

うぅ、行きたかったです。米軍キャンプさえなければ・・・。

SFに行った時、ひとりで暇だったのでリッツで
アフタヌーンティーをするというプランを考えたのですが、
さすがに一人で入る勇気がなく。(おひとりさまは割と得意な方ですが。)

テクニカルサポートにおいて、どんなサービスが求められているのだろうと、
ついつい考えてしまいます。
なぜなら、時間は17時までと決して長くないし、
回答までの時間も約束はしないなどと、
もし困っていたらどうなんでしょう?と思う態度だからです。
案の定、パートナーのアンケートでは、不満がちらほら。

前のコールセンターの話じゃないのですが、
テクニカルサポートで使うソフトがなかなか面白いです。
効率がすべてっぽい・・・。
criticalというステイタスのつけられた質問には
1時間以内に「受け付けましたー。担当です。」という
ご案内をしないと、個人およびチームの成績に影響し、
自動的にマネージャーにメールが行き、アラートが出てetc。
ものすごーく管理されてます。
でも、サービスレベルは管理されてません・・・。

投稿: Cherry | 2006年11月14日 (火) 22時40分

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