« 電化オタク女性をターゲットに | トップページ | オンライン・アイデンティティ/Online ID 【2.セカンドライフで生まれ変わる】  »

2006年12月 4日 (月)

オンライン・アイデンティティ/Online ID

ときどきこんなことを思う。たった今死んだら、自分のウェブサイトやSNS、そしてこのブログは、誰がどう始末してくれるのだろう? プロバイダーを解約しない限り、登録したメルマガも本人が死んでも勝手に送ってくる。ましてhotmailなどタダモノのアドレスだったら、家族も「ま、いっか」という調子でそのままになる。

肉体は死ねども、サイバースペースには別のアイデンティティが浮遊し続ける

今やわたしたちは、リアルだけでなくサイバースペースにもアイデンティティ(ID)を持つ。それもたいていの人は複数持っている。そのある日突然、IDを生まれ変わらせることもできる。「あのわたしはもうやめた。WebタイムのXX時XX分から、新しいわたしになりました!」 こんなことが日常的になっている。

今週の勝手にアドバイス旬ネタは、『オンライン・アイデンティティ/Online ID』を考えてみたい。

ざっと思いつくままのブログ・スケジュールは次のとおり。5回もしくは6回にわたるつもり。

***********************************************
Lonelygirl15というオンライン・アイデンティティ(今日)
セカンドライフで生まれ変わる
膨張するオンラインID
オンラインIDビジネス
オンラインIDはペルソナか?リアルか?
オンラインIDの価値
***********************************************

【勝手にアドバイス旬ネタ: 1.Lonelygirl15というオンライン・アイデンティティ
2006年6月ごろから、youtubeBreeという15歳の少女が、ビバリーヒルズの自宅のベッドルームから率直に思いを語るビデオが定期的に投稿されて話題になった。Breeは自分の父を「厳格」と語り、家族の宗教を忌み、ボーイフレンドのダニエルをなげき、ビデオに向かって頬をふくらませたり、顔をゆがませたり、微笑んだりする。クッキー作りコンテストに応募し、10代の人生を語り、パープル・カラーのモンキーのぬいぐるみと話しこむ。

Lonelygirl157月4日の投稿から一気にメジャーになった。その日の投稿の読者数はあっと言う間に50万以上にも到達した。Breeのビデオ・ビューアは全米から世界へと広がった。Lonelygirl15の投稿ビデオは平均でざっと数万から10数万のヒット数があるが7月4日のものが最高である。15歳のスクールガール少女Breeを観たさに、いや助けたいという心もあって共感が広がった、ということもできる。

Ff_232_lonelygirl2_f  BreeことRose。Lonelygirl_youtube

【3人の作者たち】
Lonelygirl15の発端は、Mesh Flindersという男性が15歳のLonely girlというキャラクターを夢想したことだった。彼の空想では、彼女はへんくつで変わりもののスクールガール。彼女を主役にした話を劇に仕立てて売り込んだこともあった。だがどの会社も買ってくれなかった。だが彼は自分の夢想のGirlをあきらめなかった。

そんなある日、Meshは形成外科医のMiles Beckettに出会った。Beckettはしがない形成外科医だったが、その職業にあきたらず彼自身もコメディ寸劇をネットに投稿していた。出合って早々に二人は盛り上がった。ネットでLonelygirlを創ろうと話し込んだ

彼らはLAのメキシコレストランでGreg Goodfriedというエンタメ業界に詳しい弁護士と会った。彼らの質問はこうだった。Lonely girlを創作して、ネットで公開して、法律的に何か問題は生じないだろうか?」 ピッチャーからマルガリータを注がれたGregの答えはシンプルだった。

「もしもビューア(youtubuers)が'この少女って実在するの?'と聞かれても質問に答えないこと」、「だが嘘はつくな。答えには答えないことだ(どこかで聞いたことがあるようなセリフ笑)」、プラス「商品を売るな、著作権許可のない音楽も使うな」。なぜならもしもそのサイトから何かを買ってニセモノだと知ったら、訴訟を起こされる。

こうしてMeshとMilesとGregは投稿ビデオ制作の仲間になった。

【金が無い中での制作】
仲間はそろった。話は書き出した。だが主演女性がいない。

BreeことJesscia Roseは演劇学校を出たてのニュージーランダー。15歳じゃなくて19歳。仕事は欲しいがどこにもない。「君が必要なんだ」とFlindersとBeckettが言ったとき、いくら仕事が欲しくてもさすがに怪しんで、じゃあねといってさよならした。だがBeckettがRoseの携帯に電話した。「これはポルノなんかじゃない」「わかってるわ」それでもRoseは信じなかった。「だが無料で演じてくれ

Ff_232_lonelygirl3_f ビバリーヒルズではない。

こんな具合で始まったビデオ制作。ビバリーヒルズのBreeの部屋は実はFlindersの家の部屋。セットづくりで揃えたマットレスや枕や絵は、量販店のターゲット(安売りで有名です)で100数十ドル。チン!あとはウェブに載せるためのビデオカメラとPCだけ。タダの女優、タダ同然の制作費のビデオが数十万のヒットをすることになるとは誰も思わなかった。

結局、Lonelygirl15はあまりに有名になり、9月過ぎ頃にはさまざまな指摘(RoseがMySpaceに登録していたこたがばれた、Roseが生活費に事欠くようにになってTGIフライデイで働きだしたとか-バレるとこまるので、Beckettが親から金を借りて渡した)がネット上で指摘され、フィクションであるということがばれた

だが彼らの行動を「単なるイタズラ」と捉えるか、「瞬時に地球上を共感で覆い、アイデンティティも創造するネットというメディアの可能性」と捉えるか、どちらかに立つかでウェブ2.0時代のチャンスを見過ごしてしまうことになる

なぜならバレたあともLonelygirl15は続いており、しかも多くのビューアを集めている。彼女のアイデンティティがフェイクだと知りながら、である。

Ff_232_lonelygirl1_f 「ターゲット」で購入したこともバレたが。

【一体彼らは何をなしとげたのか?】
いったい彼らは何をしようとしているのだろうか?ずっと昔(大戦前)オーソン・ウェルズがラジオ放送(火星人襲来!)でリスナーをだましたようなことだろうか?オーソン・ウェルズの場合は、だまされた人がいたとはいえ、純粋にエンターテイメントであった。あるいはThe Blair Witchのようにテレビ番組の中で迫真性を持たせたことだろうか?素人ぽさが、もっと迫真性をもたせように思える。

大手メディア(Wired Magazine)でのインタビューでFlindersは「もともとプランなどなかった」と言っているように、お金は欲しいがマーケティングがあったわけでもない。純粋に「Lonelygirl15」という創作をして、多くの人を共感させたかった、というのが正直なところだろう

だがLonelygirl15という現象がわれわれに突きつけるのは、「Web 2.0」のひとつのかたちだと思う。向こう側にあるアイデンティティという意味において。

【普通のマーケティング的に考えれば】
youtubeという新しいコンセプトとは「Broadcast yourself」、つまり自分自身を放送しよう!である。録画の投稿が本来のコンセプトではない。自分を撮って売り込む、これがyoutubingすることである。

この意味では素人のプロットでLonelygirl15が数十万ヒットをしたことは、こうしたyoutubing活動が、表現メディアとしての可能性メディア広告媒体としての可能性、そしてマーケティング・プロイ(罠)としての可能性を示すというものである。これらの指摘は重要であり、わたしも業界の恥ッこのマーケターとしてこの3つの可能性を追求したい。

だが「やらせ」がバレて炎上するというのが常のウェブの世界で、このやらせがなぜ炎上しなかったのだろうか?なぜバレても続いているのだろうか?もっとも彼らは、製作資金がとっくに底をついて、今や寄付さえ募るという笑うに笑えない事情もあるというが。

【もっとも投稿がヒットした瞬間、そしてバレてもビューアを集める理由とは】
前述した7月4日の投稿がなぜ爆発的に増加したか。

6月に初めてアップして以来の投稿は、Lonelygirl15のありふれた日常だったのだが、その日の投稿は違った。タイトルは「My Parents Suck・・・(ウチの親はバカ!)」。ビデオに出てきた彼女は「わたしほんとうに怒っているの」 彼女は自分の親が宗教のせいでわたしがスポイルされていると静かな怒りをこめて語り、ボーイフレンドのダニエルとハイキングにさえいけないとため息を吐く。初めてカメラの前で感情を露わにしたのだ。このビデオは本日(12月4日)現在約693,815ヒットである。

このビデオ以来、Lonelygirl15をめぐるさまざまな共感、現象がネット上にあふれた。『電車男』現象と同じで、共感である。最新のLonelygirl15、12月1日投稿分では彼女らは車で旅に出たのはいいが、途中でBreeは「わたしたちはどこに行けばいいのよ!」と怒鳴り散らす姿を演じている。お金に困る実話に近そうな話だが(笑)。

共感だけではない。ばれても迫真性がある限り、youtubeを観るたくさんのビューア自身も、フェイクなストーリーに浸りたいと思うのである。日常のアイデンティティと違う役回りも出せるネット上なら、Breeに素直に共感を示せる、そういう役回りを観客として演じて参画したいのである。演じるアイデンティティがリアルなフェイクであり、観る方のアイデンティティも決してリアルではない。

オンライン・ゲームだと「ゲームをする必要がある」が(わたしはやらない)、ビデオへの共感なら心を動かせればいい。投稿もできる。こうしてブログにも書ける。ウェブというメディアは人間の「表現したい」というアイデンティティを解き放ったのである。しかも共感を得るためにだけに、4人の男女は、このビデオを創りつづけているのだ。その象徴的な出来事がLonelygirl15だった。

彼らの創作に至るドキュメンタリーの方がよほどおもしろい、のはさておこう(笑)。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

|

« 電化オタク女性をターゲットに | トップページ | オンライン・アイデンティティ/Online ID 【2.セカンドライフで生まれ変わる】  »

コメント

なんとなく。

投稿: naoya1972 | 2010年11月26日 (金) 06時20分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/158074/4429451

この記事へのトラックバック一覧です: オンライン・アイデンティティ/Online ID:

» SNSを楽しみながら、ちょっとした仕掛けをしただけで こんなに簡単に不労所得を得られるなんて、夢かとおもった、でも私の手元には今・・・・・ [SNSで月収93万円の不労所得を得た男]
SNSに参加していろんなコミュニティに入ってなんとなくそれなりに楽しんでいたんです。しかし見つけてしまったんです、遊び感覚でSNSを楽しみながら収入を得ることのできるある「ノウハウ」を。 、 [続きを読む]

受信: 2006年12月 5日 (火) 11時51分

» 徹底解析!pc ゲームもりぃもりぃの謎 [徹底解析!pc ゲー もりぃもりぃの謎にせまる!]
巷で話題の無料PCゲーム もり ぃもりぃ!その謎のすべてをラブビーム全開で追跡! [続きを読む]

受信: 2006年12月 5日 (火) 22時47分

» ウェブスケジュールについて [ウェブスケジュール管理案内人]
ウェブスケジュール管理についてのお役立ち情報です。 [続きを読む]

受信: 2006年12月17日 (日) 04時04分

« 電化オタク女性をターゲットに | トップページ | オンライン・アイデンティティ/Online ID 【2.セカンドライフで生まれ変わる】  »