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2007年1月の32件の記事

2007年1月31日 (水)

SAKURAの春 桜のつぼみ 3 バラマンディの切り身

勝手にアドバイスは、いつもと趣向を変えて、店舗建て直しのフィクショナルな
物語の続編を書いています。今日はその3回目です。なんとか第三コーナーを
曲がりました。金曜日までお付き合いいただければ幸いです。

SAKURAの春 桜のつぼみ 3 バラマンディの切り身 @@@@@@@

Mr.Tのような圧倒的な独裁者が弱音を吐くことを目の当たりにしたわたしは、
これまで以上に「なんとかこの店を建て直さなくてはならない」と思うようになって
いった。恐怖ゆえにそうするのではない。ブリスベンに滞在し続けるためだけに
そうするのでもない。Mr.Tの悔しい思いに応えるためにも、みんなの力でこの店
を何とかしたい、素直にそう思えてきた。

そういう気持ちが従業員にも広がってきたからだろうか。とり立ててメニューも
設備も何も変えていないのに、ここ2、3日は少しずつだがお客さんが増えている。
従業員がヤル気になると、お店の表情が良くなって、お客さんも入りやすくなる
なんて法則でもあるのだろうか。ワンダも麗朱も前よりもきびきび働いてくれて
いる。上の者が胸を開いて正直になり、危機感を持たせるだけで、従業員には
変化が生まれる。

だが危機感から発生するヤル気は、最初の内はプラスの変化であるが、その
ままずるずると状況が好転しなければ、すぐに、急速に、しぼんでいくものである。
そう考えると一刻の猶予もないと思われた。

そんなことをアパートのベッドに寝そべりながらぼんやりと考えていたら、そろ
そろ9時30分になっていた。お店は休日なのだが、SAKURA本店のシェフのひとり
が体の具合が悪いとかで、替わりに本店の応援に行かなければならない。
わたしはそそくさと出勤の支度をして、車のキーをつかんだ。

だが今日は休日だ。年寄りのフィアットには休みが必要だ。休ませてやろう。
車の鍵は机の上に放り、わたしはアパートの前の通りを下り、バスでダウン
タウンまで行くことにした。

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SAKURA本店の入口は、すでにシャッター開けられ、扉には昨夜からのClosed
の札があった。2階にある店舗まで薄暗い階段を駆け上がると、階段脇の小さな
事務室の半開きの扉から明かりが漏れていた。奥にはMr,Tがいた。あいさつを
して調理着に着替えた。厨房ではすでにKIMさんは仕込みを始めていた。鳥の
唐揚や照り焼きのために冷凍のホールチキンをさばいていた。

「コンニチハ!コバヤシさん!」 インドネシア系のチャイニーズのKIMさんは
後藤にも負けないくらい地黒の肌をしている。小柄な彼だが仕事は俊敏で
そつなくこなす。もう4年以上、SAKURAにいるはずだが、どうも和食の味覚だけ
には素材によって、ときどき自信が無いようで、「コレドオデスカ」と小皿を差し
出してくる。酸っぱい味に弱いのである。だがKIMさんとは良いコンビが組めた。
二人だけで、どんなに急なお客さんにも、宴会にも対応ができるという自信が
あった。

それが今やわたしは店長として別の店舗の数字に責任がある。KIMさんがうら
やましくて、ぼやきたくもなった。

「おはよう!」 と調理場に入ってきたのはMr.Tの奥さん、ミセスTである。
「おはようございます」とわたし。「Goo’ day!」とKIMさん。
「コバヤシさん、今日はこっちでたっぷり気分転換してね。でもあっちのお店から
貧乏神だけは連れてこないでちょうだい」

ミセスTはいつものようにぴしゃりと言った。空手家の奥さんだから言葉尻にも
チョップが効くのだろうか。格闘家が美人好みなのか、美人が格闘家を好きに
なるのか、おそらく両方ともに真実なのだろう。美人は美人だ。黒くウェーブの
かかった髪、やけに紅い唇が顔の輪郭もひきしめてはいる。それがかえって
年齢をわかりやすくしているのはマイナスだが。

空手道場経営が一時傾いたとはいえ、生活には苦労をしていない。だがここは
日本から遠く離れた地である。ミセスTは南半球の日本料理店の調理場で料理
をする運命を楽しんでいるのか、あるいは悲しんでいるのか、きっと本心は自分
の夫にも告げたことはないのではないかと思った。

       @@@@@@@@@@@@@@@@@@

「さあて、今日のランチ。何にしようかしら」とミセスTはステンレスのフリーザー
の扉をパタンパタンと開けたり閉じたりで、「KIM、バラマンディあったかしら?」
KIMさんは自らフリーザーを開けて、ごそごそと中から白身魚の切り身をいくつ
か手に取った。

「いくつある?KIMさん。今日のランチにできないかしら」 バラマンディという
オーストラリアの北部で獲れる大きな魚は、そのサイズに似合わずあんがい
繊細な味がする。フリッタには最適なのだ。この手の魚は切り身にして、アラ
カルトの素材としてラップにくるんで冷凍しておくのだ。

「20枚ぐらいね。ちょっと足りないけど、もっと注文がきたら、そこから鱈や
チキンに変えちゃいましょう。今日はバラマンディのフリッタに、サラダ、おひたし
に、お味噌汁に・・・・・これで文句無いでしょう、駐在員さんには。涙ものね」

日替わりランチはほとんどが日本人駐在員向けのメニューである。ミセスTは
料理も上手であるが家庭料理の延長線上の腕前でしかない。ミセスらしく
冷蔵庫を開けて、今日は何にしようかしらの鼻が実によく効く。市場の閉鎖で
何も仕入ができなかった日には、ランチはオムライスになったことがあった。
ところがそれが大好評だった。オーストラリアまで来て日本のオムライスを
食べれるなんて、と涙ものであった。単純と言えば単純だが、ニーズがある
ものは、どんなものでも、たいてい単純な構造をしているものだ。

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出典: http://image.blog.livedoor.jp/tako_chuou/imgs/d/1/d11b0938.jpg

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わたしは調理台にラップに巻かれて無造作にころがった、解凍をじっと待って
いるバラマンディの切り身をながめていた。その時だった。背中がぞくっとして、
あるアイデアがひらめいたのは。

そうだ、バラマンディでいいんだ。途中からチキンでもいいし、鱈でもいい。
ニッポンの味を伝えるには、このやりかたがあったではないか!わたしの中
でそのアイデアが、掃除機に吸い込まれるチリのようにひとつになっていった。

ミセスTがフリーザーを開けて「何かないかな」のランチは、日本人に日本の
味を日替わりで提供して喜ばれている。素材は計画的なときもあるが、その
日その場で決まっているものもある。亜熱帯のオーストラリアには四季は
ないが、日本人に染み付いた四季折々の食材、季節ごとの料理が人気が
ある。だからちょっとした工夫でも、日本を忍ばせる調理や素材があれば、
喜ばれる。

だがほとんどのオーストラリア人は日本の四季も食材も食べ方もわからない。
先日のお客さまインタビューでもあったが、日本食は「SHIKII GA TAKAI
(敷居が高い)」のだ。料金だけでなくて、お箸や作法も敷居が高いのだ。
気取りのないオージー・スタイルにあわせて、日本料理を気取りなく食べ
させるというのはどうだろうか?オージーもヘルシーな日本食を手軽に、
もっと食べたいと思っているはずなのだ。

わたしのひらめきとは、日本を感じさせる四季のメニューや素材を、毎日あれ
これとメニューを変えて、ブッフェスタイルつまり食べ放題スタイルで提供する、
日本で言うバイキング・スタイルだ。自分の好みで好きなだけとってもらう。
日本食はこうして食べるものだという押し付けはしない。本物の日本レストラン
としての味や内容は落とさず、いろいろな食材を食べていただくことで、日本食
ファンをつくることにまず専念にしたらどうだろうか。

まず「SKIIを低くする」ことから始めよう。明日、みんなでじっくり考えてみよう。

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出典: http://pds.exblog.jp/pds/1/200509/15/54/b0058454_15473567.jpg

SAKURAの春 桜のつぼみ 3 @@@@@@@@@@@@@@@@ 終わり。

今日は以上です。お読みいただきありがとうございました。Good Day Mate!

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2007年1月30日 (火)

SAKURAの春 桜のつぼみ 2 Mr.Tとのドライブ

SAKURAの春 桜のつぼみ 2 Mr.Tとのドライブ @@@@@@@@@@@

「SAKURAならでは」を考えてあまりよく寝付けなかった翌日、わたしは高床式の
アパートの部屋から駐車場に降り、相棒のフィアットのイグニッションをまわした。
セルモーターがいつになく頼りない音がした。低年式だから仕方がないさ。だが
がんばってくれ。わたしはいつものように、One、Two、Three、Fi-At!と、この
フィアットの型式の呪文を唱えて回した。

呪文がきいたのか、セルモーターは座礁したタンカーを引っ張るタグボートの
ように、ゆっくりとフィアットのピストンを上下に漕ぎ出した。これで今日もまた
一日が始まる。だがろくな日にもなりそうにないぞ。わたしはやっとの思いで
混雑するイースト・ブリスベン通りに合流した。

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店に着くと、予想通り、ろくな日にならない兆候があった。店の電話には留守番
の録音があるというランプが、早く聞けと催促するようにチカチカ点滅していた。

「よう。コバヤシ、状況はどうだ?今日そっちに行くからな」 ツー・・・・。終わり。

これだけだった。だがこれだけでも十分過ぎるくらいの会話量だ。なにしろ録音
の声の主はMr.Tだ。彼の英語もぶっきらぼうだが、それは日本語も同じだ。
どうやらぶっきらぼうは国境を越えるらしい。先日、この店に来たとき、彼はこう
言いすてて帰っていった。

「来月も売上がもどらなかったら、コバヤシ、お前を殴る」

寸止めではない実戦空手で一世を風靡した極深館の有段者にして、ブリスベン
空手市場の開拓者。最盛期は道場は空手愛好家であふれていたという。だが
その空手道ブームも去り、いまではプライベートレッスンだけになっている。
今や彼の本業はレストランSAKURAの運営である。SAKURAを開く前には、
一時日本にも帰国して日本料理の修行までしたという。根性もあれば開拓する
ねばりも兼ね備えている。

わたしはそういう彼の根性、実行力は敬服していた。店舗の運営にしても素晴
らしいとは言えないものの、海外でちゃんと経営もし、固定客も獲得し、知名度
もそこそこある。しかも2店舗目まで出店した。これが誤算だったかもしれない。

「殴る」宣言からはまだ2週間弱である。まだ時間はあると思っていたわたしは
甘かったのだろうか。2度も留守録音の声を聞きたくはなかったので、すぐに
消去した。

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ランチの終わりの時間になり、Mr.Tが店の調理場にぬっと現れた。「よう!どうだ。
今日は何組入った?」 顔はヨットのクルージングですっかり日焼けし、アフロ
ヘアともいっていいほどのパンチパーマをかけている。体躯は背が高くはないが
空手家らしく背筋がぴんと張り、引き締まった胸と、抜け目のない敏捷さがある。
彼をレストランのシェフ兼オーナーですと誰かに紹介すると、日本であれば
うどん屋かちゃんこ料理屋ならば場違いではないだろう。

わたしは正直に今日の組数と売上額を伝えた。最悪の数字ではなかったが、
大きな声で伝えられるほど陽気な数字でもなかった。
「元気だせよ、コバヤシ。お前を見込んでいるんだから」といってニコリと笑うが
口元の笑顔と裏腹に、目だけはいつも冷徹に笑わないのがMr.Tである。格闘
家は皆こうなのだろうか。

「もうあとの片付けは後藤にまかせて、ちょっとオレと付き合ってくれよ」

わたしよりも先に後藤がぴくりとした。だが彼は視線を上げずに洗い物に専念して
いた。いやそうするしかなかったのだ。誰もがMr.Tの前では目を伏せるしかない
のだから。

「はい、わかりました!」と言うが早いか、わたしは調理着を着替えに小走りに
動いていた。

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「どうだ、コバヤシ。この車の乗り心地は?」

もちろん前にも何度か乗ったことはあるのだが、Mr.Tはいつも誰かに聞くの
だろう。彼の大きなメルセデスはまるでクルーザーのようにゆったりと走る。
いや、低速で走ると、ほんとうに動いているのだろうかとさえ思わせる。おまけ
にふっくらと包まれるような、大ぶりのシートである。これから処刑場に向かう
死刑囚が、こんなに良い待遇で護送されることがあるだろうか?

Mr.Tが運転するメルセデスは都心部を抜け、ブリスベン北部の埠頭に向かって
いた。このあたりは倉庫街で、昼間でもあまり人気のないところである。大小
さまざまな倉庫が両脇に続く。借り手がいないのか、扉が開きっぱなしの荒れ
はてた風情の建物のある。潮のせいで錆びた看板は、角が古地図のように丸く
めくれている。自分の頬も、あのようにめくれるのかと考えて憂鬱になった。

メルセデスはさほど大きくない、1階建の倉庫の前で止まった。

Mr.Tは何も言わずに車のドアから踏み出して、サングラスをパンチパーマの
際まで上げて、じっと倉庫をみつめた。何も言われなくてもわたしも観念して
降りるべきだと考えて、やわらかなシートから尻を上げた。そのとき気づいたが、
自分の尻はすっかり汗をかいていた。

だがMr.Tはわたしには目もくれず、倉庫の左そでの路地に入って行った。
そこには人間が通るための普通の扉があり、緑色の上塗りのペンキがところ
どころ剥げて錆びていた。Mr.Tがノブを押すと軋む音と共に動いた。わたしも
後に続いた。まさかこんな地の果てで殺されるはずはないと祈りながら。
   
       @@@@@@@@@@@@@@@@@@
  
倉庫の中は四方八方の壁の割れ目から入る日光のせいで、真っ暗では
なかった。薄暗さに慣れてくると次第にあたりの状況がわかってきた。倉庫には
似つかわしくないものがある。それは吊り下げられたサンドバッグだった。パンチ
をあびせたり、キックのトレーニングにつかう革のずん胴のバッグである。近視
のわたしが目を細めると3つのサンドバッグが下がっている。

ロープは倉庫の梁から下がっていた。太いロープで無造作にぶら下がるサンド
バッグ。格闘家ではないわたしにさえ、しばらくだれにもパンチもキックも浴びせ
られず、長いことまったく揺れないで寂しさと戦っているかのようだった。

ドアの脇に積み重なっていたのは、倉庫ではおなじみの資材、パレットであった。
在庫品や入荷品を保管する木製のパレットだが、スノコの隙間が板を入れて
平らになるように工作され、その上には板と厚いゴムシートが貼られていた。
ここは道場だったのだ。

Mr.Tは陽が比較的多く差し込むところに移動して、一抱えもありそうな板状の
看板のようなものに、積もったホコリを手でぬぐっていた。わたしの位置から
字までは読み取れなかったが、一、・・・、二、・・・といわゆる座右の銘のような
ものなのだろう。

「ここからオレは始めた」 Mr.Tはつぶやいた。 「コバヤシ、オレはここから
始めたんだ」 わたしは自分でも不思議なほど神妙にうなずいた。

「お前は『千日をもって初心をする』なんて聞いたことはなかろう。鍛えても
鍛えても完成することはない、1000日では足りない。万日やれという教えだ。
だが人はいつか初心なぞ忘れ、アゴをあげ、口は軽はずみになる。初めは
何をめざしていたのかすぐに忘れるのが人間だ」 彼はその板を壁に立て
かけた。わたしは黙っていた。

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「オレはな、コバヤシ。空手は極めてきた。空手道場はそれだけでも何とか
なるものだった。汗は嘘をつかない。だが・・・」 Mr.Tが口をつぐむと、薄暗い
空き倉庫が静けさをとりもどした。隙間からの陽が息をするように揺らいでた。

「初心に帰るべきだと思ったとき、オレはここにくる。最初にブリスベンに来て
英語も満足に話せなかった最初の100日を思い出す。不動産屋にわたりを
つけて、ここで最初の道場を開いた。単に何にもない倉庫だったが、ここを
道場生でいっぱいにしてやるぞと心に誓った。着替えの場所なければ、
打ち放しのコンクリートの床だ。それでは誰も来やしない。だから最初の
100日は道場づくりだったよ」 Mr.Tは遠くを見るように言葉を接いだ。「毎日
床づくりやペンキ塗り、看板づくりの大工仕事ばかりだった。それが楽しかった」

薄明かりの中で、Mr.Tはこちらを振り向いたように思えた。

「コバヤシ。2号店はオレのミスだったのかもしれない」
一瞬、Mr.Tの言葉が自分の中に入ってこなかった。だが言葉は続いていた。

「オレは慢心していたのかもしれない。自分の力を過信していたのかもしれない」

Mr.Tは、ほんのコンマ何秒かわたしを見た。いや見たような気がした。その目が
何を告げようとしていたのか、暗がりの中ではわからなかった。Mr.Tの弱音は
予想外であったが、殴られるよりもよっぽどボディブローのようにわたしに
響いてきた。

SAKURAの春 桜のつぼみ 2 @@@@@@@@@@@@@@@ 終わり

勝手にアドバイスは、いつもと趣向を変えて、店舗建て直しのフィクショナルな
物語の続編を書いています。今日はその2回目です。フィクショナルなのですが、
わたしの実体験をベースにしています。お付き合いいただければ幸いです。

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2007年1月29日 (月)

SAKURAの春 桜のつぼみ 1 ミーティング

お気づきの読者もいたでしょうが、2007年1月1日から1月5日までの【勝手に
アドバイス:旬ネタ】は、新春特別企画として、ある飲食店舗の建て直しを、
「物語風にまとめる」という暴挙(!)に出ました。その暴挙の余勢をかって、
第二弾を書こうというのが今週の旬ネタ。またまた暴挙にお付き合いいただ
ければ幸いです。

第一弾、『SAKURAの春 プロローグ』のあらすじ

ワーキングホリディで渡航したままオーストラリアのブリスベンに居ついた
コバヤシは、元空手道場経営者のMr.Tの経営する日本料理店『SAKURA』
で働いていた。料理店の経営は順調であったので、Mr.Tは郊外立地の
『SAKURA2号店』を出店し、店長にコバヤシをすえた。開業当初は競合店も
無いこともあり順調だったが、近くに日本の大資本をバックにする『KOTO』の
出店を契機に、SAKURA2号店の来店者はめっきり減少した。Mr.Tからはこの
ままの経営では「お前を殴る」と告げられ、悩んだコバヤシは同僚の後藤と
競合店のKOTOを訪れ、店長の堀田から助言を得た。まずお客様の声第一と
考えたコバヤシは、従業員の家族や友人を2号店に呼んで会食会をひらき、
店の評価を得た。キーワードは「日本を伝道する」「小さな国際貢献」という
言葉であった。

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 プロローグの全編はこちら。
 http://sakura-no-haru.cocolog-nifty.com/
 初出の固定リンクはこちら。
 http://marketing-brain.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/sakura__b5be.html

SAKURAの春 桜のつぼみ 1 ミーティング @@@@@@@@@@@@

本物のお客さまではないとはいえ、お店への率直な意見をたくさん得ることが
できてわたしはほっとした。だがほっとしたといってお客さまが増えるわけでは
ない。お客さまインタビューの翌日のランチもいつもと同じで、閑散としているの
に変化はない。だが数日前までのあせりからは解放され、なんとかなるのでは
ないかという気持ちになってきた。

見上げるとすっきりと晴れ上がったブリスベンの青さが目に入った。あらためて
日本から正反対にある地の、穏やかな気候に感謝した。ふるさと新潟の、見渡す
かぎり灰色の日本海の世界から逃れるように旅を始めた頃を思い出した。ふる
さとから逃亡したように言われたこともあったし、「そんな人生でいいのか」と
あからさまに非難されたこともあった。逃亡というよりは、そこにとどまるのが
嫌だったからだけだった。何とかなるさと始めてしまった旅を、どこで終わりに
するのか決めないままに出てきてしまった。

だがブリスベンの気候は、あれこれひとりで思い悩むことを忘れさせる「抜ける
青空」がある。今は始めたことを続けたい、せっかくのチャンスをモノにしたいと
思った。そのためにも店を何とかしなくちゃならない。

ヒマなランチも終わりの時間にぼんやりとそんな思いにふけっていると、台湾系の
ウェイトレス麗朱の声に呼びもどされた。

「コバヤシさん、昨日の話、続けて考えてみましょうよ」
「昨日の話って・・・お客さまインタビューのこと?」
「そうです。わたし、良いアイデアがあるわけではないのですが、昨日の夜、
なんとかしなきゃってずっと考えていました」

正直なところ、彼女の口からこんな前向きな言葉が発せられるとは考えても
みなかった。この店がつぶれても勤め先はあるだろうし、そもそも台湾から移住
してきた家族は裕福な家庭である。働かなくても済むのである。むしろヒマなら
楽して給料がもらえるのを喜んでいるのではないかとさえ思っていた。その
彼女が、お店のことをずっと考えていてくれたのだった。

「わたしも同じ。どうすればもっとお客さんがたくさんくるだろうかって考えて
なかなか眠れなくて」 最後のお客さんが帰った後のテーブルの片付けをして
いたワンダも、声をかけてきた。「何とかしたいよね」
「忙しくなった方が楽しい。お客さんがたぁっくさん、来てほしい」と麗朱。

わたしは言葉を出すことができなかった。こんな身近に真剣に考えてくれる人
がいたことを思いつかなかったことが恥かしかった。もっと早く胸を開いてしまう
べきだった。そういえば、経営者のMr.Tから「この業績では店を閉める」と言わ
れて悩んでいたとき、競合店のKOTOを調べようと提案してくれたのも調理担当
の後藤だった。実はみんな同じことを心配していたのだった。それをわたしは
自分の心だけに閉じ込めすぎていたようだった。

「ワンダ、今日の午後は授業はあるの?」
「ないです。午後は時間とれる」
「麗朱は?用事がなければミーティングをもてない?」
「OK、ミーティングしましょう」

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

後藤を入れてわたしたち4人は客席のテーブルを囲んだ。わたしは不要になった
メニューの裏紙に、前に紙ナプキンに書いたKOTO、SAKURA、偽のラーメン店
の図を描いた。

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「あらゆる面でKOTOと差がついちゃっている」と後藤が言った。
「そうだけど、ウチだっていいところはあるさ」強がるようにわたしは言葉を返した。
「これを書いてみると、ウチのお店ならではを考えないと負けっぱなしになるのが
わかった」 わたしがそう言うと一同はうなずいた。

「ワンダ、麗朱、君たちはKOTOに行ったことある?」
ワンダは首を振って「学生には高すぎまぁ~す」と笑った。だが麗朱は肩をすぼめ
ながら「ごめんなさい、実は一度行ったことがあります」と言った。
「別に謝ることはないよ。KOTOのお店、どう思った?」
「料金は高かったけれど美味しかったし、雰囲気もよかった。ウェイトレスもきちん
としていて気持ちがいいお店」
「じゃあまず、KOTOを分析してみよう」とわたしは別の裏紙を取り出した。

四角のハコに『KOTO』と書いてみた。「まずお客さまだ」 その下に『顧客』のハコ
を書き足した。「顧客は日本人とオージーだね、だいたいは」 皆はうなずいた。
「日本人といっても、たぶん、日本人同士とオージーと日本人の接待の二つのお客
さまね」と麗朱。
「オージー同士だけで日本食を食べに来るなんて、どんな人なんだろう?」
「きっとフェチだ」と後藤が言ったのでわたしが書き足した。

01_7
 
そんなやりとりをして図が出来上がっていった。従業員は現地人もいるが日本人が
多いこと、これは想像だが、日本の大企業の資本がバックにあるので、教育がしっ
かりしているのではないかということで『教育』というハコを書いた。

「どう思う?」とわたしは後藤に訊いた。
「KOTOの店長、堀田さんがウチのお客さんは『現地のリーダー層』だって言ってた
のを思い出した。現地のリーダー層からトップダウンで日本食を広めたいって」
わたしはうなずいて、図にKOTOならではと書いて上で、赤いペンでこう書いた。

KOTOならでは・・・・日本食を現地リーダー層から広める店格

 02_3  

「こうやって整理すると、KOTOというお店、お客さんから食事、サービス、お店の
施設、従業員まで、一貫している」わたしはため息まじりにそう言った。皆うなず
いた。「ウチのお店、SAKURA2号店はKOTOとどう違うのだろうか?」

「お客さまには接待客はいないし、オージーのみのお客さんはたまに来るけど、
場違いのお店に来ちゃったというような『迷い犬』みたいね」ワンダがそういうと
皆笑った。わたしは紙ナプキンに『迷い犬?』と書いて上においた。

設備は個室もなければ、日本的な情緒にあふれる庭園も鯉も寿司カウンターも
ない。従業員は日本人だけでなく現地人でジャパニーズムードには欠ける。
それは悪いことじゃないのだが・・・とわたしはワンダと麗朱に、そういう意味では
ないと言った。店のオーナーは日本の大資本ではなく空手家だから、教育も
へちまもないのだ。

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これでは「SAKURAならでは」がまったく見えてこない。わたしはためいきを再び
ついた。ため息をつたのは、わたしだけではないのが空気の振動でわかった。
後藤も麗朱もワンダも、裏紙をじっと見つめるばかりだった。

SAKURAの春 桜のつぼみ 1 @@@@@@@@@@@@@@@@ 終わり。

勝手にアドバイスは、いつもと趣向を変えて、店舗建て直しのフィクショナルな
物語の続編を書いてみました。フィクショナルなのですが、わたしの実体験を
ベースにしています。登場人物も状況もそれとなく事実です。

お伝えしたいのは、「事業規模の大小を問わず、成長企業ならどの会社でも
同じことをする」と言う普遍的なメッセージです。お読みいただきありがとうござい
ました。今日はちょっと力が入りました(笑)。明日から平常心♪ では明日。

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2007年1月28日 (日)

プラネタリウムをバレンタインギフトに

ある方が「子どもの頃、天文台に勤めたいと思っていた」と話すのを聞いて、最初はちょっと突飛に聞こえた。だがとてもロマンチックな夢だなと思った。

最近は学生の理系離れと言われて久しい。理系で製造業に入って技術屋になると、たいてい年収も伸びないし、技術音痴の文系にこき使われるのも嫌だからという理由らしい。特許も会社のモノになってしまう。だがお金や職業を抜きに考えれば、実はみんな子どもの頃は、宇宙にも科学にも大きな夢をはせていたのだ。

そんなこんなで、今日の勝手にアドバイスは「プラネタリウム」をとりあげたい。

【勝手にアドバイス Vol.112 プラネタリウムをバレンタインギフトに】
満天の星を見なくなって久しいが、そんな思いを手軽に毎日かなえてくれる商品がある。セガトイズの家庭用プラネタリウム『ホームスター』である。この商品に2006年暮れ『ホームスター プロ』が登場して、マニアならずともウケているという。玩具としてはちょっと値が張るが、惹かれる商品。

B000gqmpdi_01an1vrqenfrjn5__aa280_sclzzz 小さな玉から宇宙が。

『ホームスター』は2005年の発売後、累計10万台を出荷したヒット商品。そのバージョンアップ『プロ』の商品概要は;

今回、レンズ・LED の投影ユニットのグレードアップにより、お客様より要望の高かった投影画像周辺の伸びや歪み、暗さを大幅に改善、周辺部の星までよりはっきりと見えるようになった上位モデル「ホームスターPRO」が登場いたします。流れ星・日周運動・タイマーといった従来の機能はそのままに、4 等星以上の星に微細な色を施したカラー版の原板が付属し、より鮮明でシャープな星空が楽しめるモデルです。

  B0009e387o_07 家庭に宇宙を!

寝る前に毎晩この装置をセットして、あれオリオン座、あ流れ星!なんて人もいるらしい。大宇宙のロマンスのある夢を、毎日見ることができるのだろうか。

【プラネタリウム・クリエイターという夢の仕事】
この商品の開発者は大平貴之さん。開発が嵩じて、2003年にプラネタリウム・クリエイターとして独立をされてしまったという、夢にまっすぐ生きる人である。

  Contentsimage_pic_01  星座はうお座。 

1970年、神奈川県生まれ。小学生の頃に作った夜光塗料の星空をきっかけに、数々のプラネタリウム自作に取り組み、大学時代に、個人開発では前例のないレンズ投影式プラネタリウム「アストロライナー」を完成。投影機の改良の傍ら各地で計11回の移動公演を行う。
出典はこちら


大平さんが東急文化会館でもプラネタリウム・イベントをされているのを知って、ずぅ~っと昔、渋谷のプラネタリウムに行ったなぁ・・・と思い出した。それは『旧五島プラネタリウム』だったんですね。小学生の頃だったが、ずっと東京育ちのわたし、あまり満天の星を見たことなかった。すごく感動したことを覚えている。

プラネタリウム、近場にないのかしら?と調べたら、なんと!お江戸日本橋にありました

【日本橋HD DVDプラネタリウム】
その大平貴之さんのプロデュース、演出は宮本亜門さんという組み合わせで『HOKUSAIの宇宙』という期間限定イベントが開催中(2007年6月30日まで)。プラネタリウムだけの『星空の贈りもの』もあります。次の一文は『HOKUSAIの宇宙』の案内

上映コンテンツは「HOKUSAI~北斎の宇宙」。総合演出は宮本亜門氏。ミュージカルだけでなく、様々な舞台で活躍する注目の演出家です。世界中に影響を与えた、江戸の日本が世界に誇る美術界の巨匠、葛飾北斎。時を越え、現代の才人と江戸の天才が、満点の星空の下で共演します。世の中に数多くあるプラネタリウムとも、葛飾北斎の展覧会とも、そのどれとも異なる、星空と浮世絵のコラボレーションによるまったく新しいエンターテイメントです。

同時に開催している『星空の贈りもの』でもいいだろう。
世界最高峰のプラネタリウム、メガスターⅡが創り出す500万個の星空と、包み込むようなヒーリングサウンドであなたを幻想的な星の旅へといざないます。

 Hoshi_01
 
オフィシャルサイトは主催の東京FMのこちら

【勝手にギフトのアドバイス】
そろそろバレンタインのギフトを考える方もいらっしゃるでしょう。チョコレートも物欲も良いけれど、プラネタリウムのバレンタインギフトというチョイスもある。 

なんといっても愛を語る上で星空は欠かせない。星空は果てしない夢につながっている。誰もが夜空の星に夢やあこがれを持っていたはずだ。それを一緒に思い出し、天文台の好きだった人と星くずの夢で愛がつながるなら!素晴らしいギフトだと思います。いかがでしょうか?

 B000m7g0bo_01_pt01__aa280_sclzzzzzzz_v46 大塚愛、宇宙を語る?

なぜかホームスターには『大塚愛バージョン』がある(大塚愛のロゴ付き、歌の歌詞カード付きのプラネタリウム)。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月27日 (土)

1%のカーボンニュートラル

カーボン・ニュートラルという言葉を聞いたことがあるだろうか? 英国のオックスフォード大学出版局が発行しているオックスフォード辞典では毎年新語を増やしているが、2006年の「ワード・オブ・ザ・イヤー」がこれだった。

その言葉がねらうところは、「生産及び消費生活にバイオマスを使おう」というもの。バイオマス(植物や生物資源)は成長過程で光合成により二酸化炭素を吸収しているので、バイオマスを燃やして二酸化炭素が発生してもイーブンであり、大気中の二酸化炭素を増加させることにはならないという考え方。

ビジネスからニュートラルな週末の今日は、カーボンニュートラルな商品と企業を取り上げたい。

【勝手にアドバイス Vol.111 1%のカーボンニュートラル】
今年の冬は暖冬型というよりも、もう暖冬しか来ないというほど、世界各地で気温が下がらず雪も降らない。ゴア元副大統領の『不都合な真実』ではないが、かなり不都合なことが起きつつあることは、人類の共通の認識になりつつある。事業も立派に継続しつつ、カーボンニュートラルな企業を目指す道はないのだろうか?

【monaccaの1%】
事業を何とか継続しつつ、しかも気高い理念を打ち出しているのがこちらの事例。

 monaccaは売り上げ額の1%を森に還元します。

 Bagkakup2  Bag_kaku_04 
 http://www.monacca.com/

monaccaというユニークなネーミング、ユニークな形状、ユニークな材質のバッグがこれ。

高知県馬路村、杉の間伐材から作る新しい木のカタチ「MONACCA」。薄くスライスした杉を何層にも重ねあわせ出来上がる軽くて丈夫な木の素材は、職人の手によって座布団やバックにカタチを変え、普段の暮らしの中に何気なく溶け込みます。
高知県馬路村のHPより。

商品も気になるが、もっと気になったのが「monaccaは売り上げ額の1%を森に還元します」という言葉。この村の面積の96%は森なんだそうですが、もともとは杉の生産地だった。しかし全国各地の多くの森と同じように、林業が衰退し間伐(かんばつ)されない森林ばかりになってしまい、森の生命が衰弱している。そこで間伐材を使った商品展開を、デザイナーの島村さんと共同で行っている。

森に生かされていることから「売り上げ高の1%」を基金に積み立てる。間伐材は従来は割り箸に使われていたが、安価な中国製などに押されて市場から消えた。細くて節があるので、薪やチップ、変わったところでは封筒などもあったが、一般に販売される製品としては使われにくかった。

だが馬路村では平成12年に三セクを設立し、お皿やウチワ、そしてmonaccaなどの開発を続けている。売上はまだ小さいだろうが、それでも1%を積み立てるというのは、とても立派なことである。理念や執念がなければできないことだ。

 Summry_kakou2   

このサイトがmonaccaについて詳しい。わたしは買いたいと思っている。

【セールスフォース・ドットコムの1%】
『セールスフォース,温室効果ガス排出削減への取り組み「Earthforce」を発表』という記事があった。

セールスフォース・ドットコムとは、マーケティングに関係する方々には馴染みのあるSFA(営業支援)やマーケティング支援(CRM)などのソフトウエアを開発・導入する会社であり、この分野ではトップ企業である。

Foundation_w_girljt

この企業の1%宣言が、いかにも米国企業!という匂いもするが、わかりやすいし、影響力のある大企業なら望まれる姿勢だと思う。同社の社会貢献型ビジネスモデルのリーディングカンパニーという宣言。

労働時間の1%、株式の1%、利益の1% という1%モデルを掲げ、このそれぞれを、社会をより良くするためや、特に地域社会の子ども達のためのプロジェクトに提供しています。

労働時間の1%
●全世界のセールスフォース・ドットコムの社員の85%が社会貢献活動に参加し、総労働時間の1%相当を

社会に還元する(年間6日のボランティア休暇を付与)

株式の1%
●会社保有の株式の1%を社会貢献活動資金として割り当てる
●200人以上の個人からの寄付

利益の1%
●世界中の200ヶ所以上の非営利団体や慈善団体に対してセールスフォース・ドットコムのサービスを無償提供

利益の1%、たとえばわたしなら年間のコンサルティング作業の1%相当を「タダでやる」ということである。年間3000時間だとしてその1%は30時間、3~4日無償で働くというものである。喜んでやりますし、現に「中小企業振興公社」の案内にはそんな旨で登録もしている(連絡はまったくないが)。わたしは中小企業診断士でもあり、その資格維持には年間6日中小企業のために働けという更新要件がある。タダで中小企を指導して資格維持、コンサルタントという職務の性質上、非常にマッチすると思うので、ぜひご連絡を!御社の売上高の1%UPに貢献するというレベルではやりませんから(笑)。

セールスフォースドットコムのCEO マーク・ベニオフの宣言

「企業の価値は、ビジネスでの主導権を握るためだけではありません。その企業がビジネスを行う地域社会はもちろん、世界のためになることをしていくことが真の企業の価値です。」

【カーボン・ニュートラルの見える化】
朝日電器から新製品として『エコワット』という簡易電力量表示器が発売される(日本経済新聞2007年1月27日)。

家電製品とこの製品をコンセントでつなぐと、「電気料金」「使用時間」「使用電力量」だけでなく(同社の製品ではこれらは実現してきた)、二酸化炭素排出量」まで表示するという。冷蔵庫の温度を下げればCO2が上昇し、エアコンの使用量が増えればCO2が増えるという、地球環境けん制商品である。ウチの地球温暖化寄与レベルがわかるという商品。

この商品、CO2が見えるのがいい。欧州でも日本でも雪が降らずに、さまざまな冬季競技で開催が延期がされるという「見える化」が現実にあるが、一般家庭でも購入製品別にこんなに二酸化炭素を出しているンだ!」という見える化があると草の根レベルのけん制になる。

【勝手にアドバイス】
個々の家庭で環境保全をしても・・・という向きもあるだろうが、今日は「海中でもCO2濃度が上昇している」という報道もあった。

企業活動も家庭活動も、成長を目指しつつもどこかで環境を少しずつ考慮する(たとえば1%でいい)時代に入ったのである。企業もしかり、消費者もしかり、1%を環境改善のために拠出することを考えたい。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月26日 (金)

化粧品三題噺 HABA、KOSE、カネボウ

最近ちょっと気になる化粧品がらみのニュースに接した。ひとつはウェブサイト、もうひとつは広告、さらに記事。そこから浮かび上がってきたのは、事業戦略を検討する上で欠かせない、とても当たり前のことだが実際にはあまり省みられないことだった。

コンサルティングの仕事をするなら忘れてはならない自戒を込めて、週末の今日の勝手にアドバイスは化粧品三題話から「・・・ならでは」を。

【勝手にアドバイス Vol.110 化粧品三題噺 HABA、KOSE、カネボウ】
最初はハーバー研究所の女性向け口コミ・ウェブサイト「Limiless(リミレス) 」。HABA研究所の企業メッセージは、「Health Aid Beauty Aid」 美と健康を助ける無添加主義である。無添加化粧品の通信販売を主体にする企業。そこが始めたウェブサイトである。

株式会社ハーバー研究所は、平成19年1月22日(月)より、情報に敏感である女性に、美容・健康・ファッション・グルメ・ライフスタイルなどの実体験や口コミなどの最新情報を迅速に提供する女性向け口コミサイト「Limiless(リミレス)」を立ち上げます。 ブログ、RSSなどの、ITの最新動向であるWeb2.0系技術を駆使した新しい形の次世代型情報サイトです。

0150679_01_1  あれこれ色々。

昨日のテーマ「ブロガー褌」ではないが、オリジナルのブログと著名人ブログの転載で構成されている。つまりRSS技術(情報の自動更新と閲覧)用いて、外部のブログ(Amebaが多い)の著名人サイトと連携させて、あたかもLimilessのサイトで書いてあるかように読ませるのである。著名人ブログを卸して再販という表現もできる。自社ですべてをやる時代ではないから賢いと言えば賢いが。

わたしは機会があってこの企業を少し研究したことがあるのだが、イメージキャラクターに萬田久子さん を一貫して起用する一方で、販促プロモーションでは新奇なトライアルもするし、通販主体かと思えばam/pmのコンビニルートや三越など百貨店ルートを拡充するし、さらに直営店も出す。化粧品だけでなくスクワラン(サメエキス)を含ませたインナーウェアも開発するし、ゴルフ練習場も所有していた。ティーンズをやるかと思えばエルダーマーケットにも食指を伸ばす。そしてこのLimilessでは、何をやろうとしているのか?ねらいがわからない

この会社の本質は『トライアル重視』なのである。きっと社内では、いろいろなテーマが並走しているのだと思う。

【KOSE おとな。but カワイイ。】
次はコーセーの新製品『エスプリーク プレシャス』ライン。この広告、CMもバンバンやっているので見たこともあるでしょう。モデルの圧倒的な存在感に惹かれた。

 Kose01  Kose02

  おとな。
  but
  カワイイ。 
   

  この言葉は日本だけのものじゃなく世界の共通語になろうとしている。

モデルはジェマ・ワードさん(Gemma Ward オーストラリア人)。「~新しい大人の「カワイイ」を提案する新ブランド~ 『エスプリーク プレシャス』誕生」がキャッチ。同社の百貨店専用ブランドの一ラインとして開発された。

ターゲットは20代後半から30代前半の団塊ジュニア女性である。コーセーは「ハイプレステージ」「プレステージ」「コスメタリー」の3つのブランドゾーンを展開している。そのプレステージゾーンの中で、最近の団塊女性の商品に対する嗜好が、「今より少し上の贅沢感」「自分の感性にあったもの」という自分基準で商品を選というスタイルになってきた、という仮説をベースに『Newプレステージ』というサブゾーンを設定した。

 0142913_02  戦略ターゲティング。

ジェマ・ワードさんというキャラも、おとなというかカワイイというか、きわどいバランスにある。

 0142913_03_1  わたしはカワイイな♪と思いました。

この会社の本質は『マーケティングの王道を行く』である。ターゲティング、製品ラインの幅と深さ(全13種44品)のゾーニング、キャッチコピー、そして起用するモデルまで、戦略が破綻なく一気通貫している。さすがコーセー、脱帽。

【そしてカネボウ】
これは日経ビジネス(2007年1月8日号)に掲載されていた花王の尾崎元規社長の言葉。

 そこ(カネボウのカウンター)に入った途端、まるで別世界でした。
 商品はもちろんのこと、カウンターが持つ雰囲気が花王と全然違った。
 うちのカウンターに立つアドバイザーはツーピースを着て、髪をきちんと
 整えて、メークもそれなりにしている。一方、カネボウでは、アドバイザー
 が着ているのはカジュアルなTシャツですよ。メークもやっぱいり少し
 華やかで、話す雰囲気も「いらっしゃいませ」ではなく、「あ、来たのね」
 みたいな親しみのある感じなんです。

カネボウさんのお店では制服ぽい人もいると思うが、わたしはあまり化粧品売場に立ち寄らないので、次の写真は同社のプレスリリースより、ビューティ・カウンセラー(BC)のユニフォームを転載した。

  Bc  カネボウのBCの制服

たしかにTシャツぽいのですが、それに対して花王ソフィーナ店はこんな感じ。

  26cosme

『カネボウならでは』はけっこうカジュアルだが、その本質にあるのは、お客様へ「売ります」という接し方ではなく、『キレイになりたい気持ち、一緒だよ』なのだろう。「鐘紡」としてはいろいろあったが、やはりカネボウ、素晴らしい会社だと思う。それに対して花王はまだまだ堅い。それを見習うための買収であったのだろうか。

【勝手にアドバイス】
HABAは『トライアル重視』、KOSEは『マーケティングの王道を行く』、そしてカネボウは『キレイになりたい気持ち、一緒だよ』。それぞれ自社の特性=「ウチならでは」を一貫させている。「・・・ならでは」があるから成功していると言って過言ではない。

そして「ウチの企業ならでは」はかなり風化が早い。いつも「ならでは」は進化させなくてはならない。企業買収の意味もそこにある。コンサルタントはそれを見抜き、進化させる役割こそ負う。いや、負いたい、それを忘れないと言い直します。

※今回のブログは営業本部の風向くまま本能の営業ウーマンKSYさんにアドバイスをもらいました。

今日は以上です。良い週末を!(わたしは仕事ですが) Click on tomorrow!

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2007年1月25日 (木)

「CM、つくってみない?」 ブロガー褌ビジネス

ブロガーの飯の種と言えば、アフィリエイト収入か、さもなくばブロガー喰わねど高楊枝をきめこむのが相場。読者がつけば出版の道もあるが、それはなかなか険しい。その一方でブロガーは、ブログサイトにタダ住まいし、一宿一飯の恩義でブログに広告掲載を許諾している。いわば「持ちつ持たれつ」の関係。DB停止が頻発するココログの非難をしてもいけない(最近してしまったが)。

そういうところに割って入ってきた新ビジネスが「CM、つくってみない?」という、エニグモというネットベンチャーのブロガー参加型動画CM制作ネットワークビジネスの「filmo」。エニグモがCM制作をやってみたいというブロガーと、草の根・口コミの広告効果を期待する企業の期待をマッチング・ビジネスらしい。わたしのように勝手にアドバイスを無料でやるより良いかもしれないと思わせるビジネスが今日のテーマ。

 Main_1 なぜかV-Dayから。

【勝手にアドバイス Vol.109 「CM、つくってみない?」 ブロガー褌ビジネス】
あっさりとしたエニグモさんのfilmoサイトから趣旨を引用しよう。

filmoとは。
企業やブランドの動画(CM)制作依頼を皆様へ配信し、制作された動画(CM)をブログ等でご紹介頂いた方々へ制作費をお支払するサービスです。
数多くの企業CMが流れる現在、価値や影響力のあるCMはどれほどあるのでしょうか?
「自分だったらこう作る」「こう作った方が面白い」と思った事はありませんか?
“filmo”はそんな思いを形にするサイトです。

 Filmo_service 手続き。

なるほど、ネットCM版の「スター誕生!」という要素もあるし、テーマに困っているブロガーに「新製品ネタ提供」という要素もある。企業にしてみれば「アイデア(相当に安く)いただき!」ということだろう。企業の広告を素人に作らせて、その上がりを収益とするビジネスモデルは新しい。

このサービスには次の3つの点が融合していると思う。動画媒体の活用、素人にCMを作らせるという変化球、そしてネットユーザーの褌で相撲をとるという点である。

【動画をめぐるネットビジネスが細分化】
動画サイトではyoutubeがダントツで視聴されているし、いろいろなサイトで商品紹介やサービス紹介で動画を見ることが格段に増えた。PCでも携帯でもiPhoneでも、動画が当たり前になってゆく。

つまり動画をめぐる一番手ビジネスはすでに勝負がついているが、二番手・三番手の細分化したビジネスに主戦場が移っているのだ。ひと口に動画と言ってもズブの素人の動画投稿から、プロのCMまでさまざまである。ネットで動画が主流になることは必死だとすると、自社のビジネスではそれをどう活用できるのか?動画を軸にした新ビジネスを起こせないか?これは今後3年ぐらいの新ビジネスのキーワードである。

【より個性的な広告コンテンツが求められる】
次に電通さんのインターネット広告の市場規模予測を見てみよう。

Photo_14

この予測によると、規模&伸び両方でウェブ広告が大きいのは当たり前として、P4Pともいわれる、検索連動広告やコンテンツ連動広告も1000億円以上の市場規模になると予測されている。

素人(といっても、実際には映画監督やカメラマン志望者、CMプランナー志望者がメインだろう)がつくったCM広告を作らせ、その製作者のブログ経由で流す。トラックバックもされるだろうから、面白ければかなりの広がりが期待できる。単なるバナー広告やクリック広告よりも、オモシロ画像で説得力のあるサイトへの誘導になるものも出てくるだろう。

【ネットユーザーの褌はどこまでゆるいのか?】
Web2.0の時代の大前提は「全員参加型」というキーワードである。参加者が多ければこそ、ネット大衆相手のビジネスも成立するし、細分化されたロングテールビジネスも成立する。

「CM、つくってみない?」は細分化型だが、表現したいからブロガーになるか、ブロガーになって表現欲に目覚めるか、どっちも多いからあんがい多数派になりそう。ブロガーというネット消費者の褌で、どこまでビジネスができるのか?という問いかけには、「実は褌はかなりゆるい」、つまりあんがい参加者は多くなるのではないかと思いました。

【勝手にアドバイス】
以前 「プロシューマ」をテーマに旬ネタでシリーズブログを書いたが、ネットというすべてをあからさまにするメディアの前では、素人とプロの境目もどんどん怪しくなってゆく。だから瓢箪から駒でないが、消費者の目線こそCMの原点であるから、すごいCMプランナーが現れても不思議ではない。

このような表現者を育成・選抜するビジネス、わたしは評価する。どんどんみんなでCMを創ろう!もともと、相当にドンブリな業界なのだから、価格破壊が可能な要素は充分にありうると思う。

折り入ってエニグモさんにお願いがひとつある。わたしのこの「勝手にアドバイス」のような文章で、お金が取れる仕組みをぜひ考えてほしい。「勝手にコマーシャル」かしら(笑)。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow

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2007年1月24日 (水)

カップヌードルリフィルで考えるR関心度

ブログ・ワールドでも大きな話題となっている「カップヌードルリフィ」。麺だけの包装品を購入して、マイカップで食べるという仕組みである。単価も安くなるというだけあって、注目度は高い。

 Noodle  発売は3月です。

日清には「すぐおいしい、すごくおいしい」のチキンラーメンがあり、これはお湯を注ぐだけで食べられるとあって、カップヌードルもこれを模倣したと言ってもいいかもしれない。だが使い捨てをリードしてきたカップヌードルがリフィル方式を採用したことは、カップ麺業界に与える影響が大きいばかりか、消費世界の大きな転換を感じた。今日の勝手にアドバイスはRプロセスを考えたい。

【勝手にアドバイス Vol.108 カップヌードルリフィルで考えるR関心度】
日清食品のサイトからの説明。
日清食品株式会社(社長:安藤宏基)は、「楽しく食べて、エコスタイル」をコンセプトに、まったく新しい食スタイル、食シーンを提案する環境配慮型商品の第1弾として「カップヌードル リフィル (詰め替え用)」「カップヌードルシーフードヌードル リフィル (詰め替え用)」及びリフィル専用オリジナルカップ「マイヌードルカップ (プラスチック製リユースカップ)」とリフィル各1食をセットにした「カップヌードルリフィル スターターパック」を、3月26日(月)より(中略)コンビニエンスストア、百貨店、バラエティーストア並びに通信販売で新発売いたします。

商品定価も下がり、環境にはよいし、言うことない。なぜ今まで作ってくれなかったのだろうか?とさえ思う。カップヌードルの「リフィル」という意外性といい、商品企画はである。実際どのくらい売れるか?というのも興味深い。

  Refillhowto なるほど。

日清食品の商品開発の凄さは、成功体験を忘却したことである。カップという素材や形状のこだわり、並大抵ではなかったはずだ。リフィルカップは作ったものの、MyCupでいいとしているわけだから自己否定である。

【業界に与える影響はなかなか広汎だぞ】

リフィルでカップ麺を買うことがあたりまえになると、コンビニに行くとずらりと袋麺が陳列されることになる。袋商品の陳列も変更する必要があるだろう。もちろん棚に並ぶ前の物流形態にも影響がでるし、パッケージ素材やデザイン戦略も変更となる。

スターバックスのリフィル・タンブラー(こちらはカップ値引き20円)のように当たり前になれば、コンビニは湯沸しポットではなく、お湯設備を考えなくはならないか?と余計な心配もしてしまう。スタバのタンブラーのように、さまざまな市販リフィルカップの開発などで裾野業界も活性化するかもしれない。

そもそも、もうカップ麺とは呼べない。リフィル麺というネーミングになるのだろうか?「おい、ちょっとリフィル麺買いに行こうか」なんて会話があちこちで聞こえると、新鮮というか、ちょっとオシャレというか、それも楽しそうだ。

リフィル麺だけでなく、すきな「かやく」(わたしなら高菜漬や辛ねぎかな)も組み合わせて買いたい。リフィル麺とかやくのカスタマイズができるなんて楽しい。購買単価も上げられるかもしれない。

【使い捨て社会の転換点】
使い捨てのアイコンでもあるカップヌードルが原油価格の高騰(2007年1月下旬時点では低落しているが)、元副大統領のアル・ゴアの映画『不都合な真実』のヒット、資源の枯渇問題、CO2の削減問題や地球温暖化、LOHASというライフスタイルの注目、身近なことではレジ袋の有料化など、環境問題に関心を向けざるを得ない時代に突入した。

だから環境にやさしい商品を選択しようという消費者の意向はあらゆるところで突出している。家なら太陽光発電、車なら軽自動車や1000ccクラスをチョイス、洋服ならPETボトル原材料のフリース、マイカップやマイ・チョップスティックや量り酒・・・。今や環境問題は、消費者の商品選択プロセスのコアにあるとさえ言える。

【3R+リフィルで「4R」】
リサイクル、リユース、リデュースという言葉をひっくるめて「3R」という言葉は聞いたことがあるだろう。リサイクルは再生、リユースは再使用、リデュースは減量。主に廃棄物削減を表現したもの。カップヌードルリフィルの発売を期に、これに「リフィル」を加えて「4R」としたらと提案したい。

3r_image  3R。

捨て去ってしまうのは「汚れちまった悲しみ」とか、「ミラボー橋の下を流れるセーヌ川に流れてしまう愛」でたくさんですよね(笑)。地球のために少しずつ捨てないようにしよう。

リフィルというRは、麺だけではなく珈琲、お茶、お酒などの飲料、珈琲豆挽きやブレンド茶葉、量り売りなら栗や落花生もあるし、化粧品やトイレタリーグッズも可能であろう。

【勝手にアドバイス】
消費者の消費行動を表すキーワードにAIDMAというワードの組み合わせがある。すなわちAttention, Interest, Desire, Memory, Actionの頭文字である。これに今の時代風にR(Rifile, Reuse, Recycle, Reduce) のRを加えたらどうだろうか?

Attention 注目
Interest 興味
Desire 欲望
Memory 記憶
Action 行動/購買
R(Rifile, Reuse, Recycle, Reduce 詰め替え)  

これでAIDMAR(アイドマアとするのである。その上で商品開発・流通・在庫・販売を考える上で、次のような質問を投げかけることは何にも増して大切である。

 その商品のR関心度はどれだろうか?
 R関心度の高さが購買行動に変化をもたらすだろうか? 
 R関心度の高さを商品・商売の差別化に利用できるだろうか?
 自社業界や商品ラインの消費者のR関心度を測定する必要もある。

Rなんてウチの業界に関係ないなどとはもう言ってられない。安藤百福氏が去り、日清食品は「おいしい、のその先へ」行っているのだ。見習おう。

  0611adf_s  Rという、その先へ。

今日は以上です。ではまた明日。

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2007年1月23日 (火)

イオン24色ランドセル 個を伸ばす商品開発

学校ではいじめが多発し、先生にも言えないで悩む子どもも増えている。いや、先生がいじめ側にまわってしまうという、呆れてモノも申せない事件さえあった。

そんな学校にわが子を送りだす親にしてみれば、「ウチの子に限っていじめない」「ウチの子はいじめられてもめげない」と思いたいだろう。今日はそんなめげない心づくりに一役買うのではないかと思う商品開発をテーマにしたい。

【勝手にアドバイス Vol.107 イオン24色ランドセル 個を伸ばす商品開発】
みにくいアヒルの子」ではないが、その昔、転校生がいた。父親の転勤なのか、訳あって転校してきたのだが、ランドセルが違う色だった。男の子の色、つまり黒ではなくグレーぽい色だった。彼はきっと、どうしてボクだけ色が違うんだろう?と自問していたかも知れない。どことなく肩身の狭いランドセルのように見えた。

ところが今やランドセルもカラフルな時代。今年もイオンは「トップバリュ 24色カラーランドセル」を販売している。多色化戦略を始めて、もう4、5年目になるという。春の風物詩とも言える光景になってきた。

  01_6  何色お好き?

【親心子知らず】
24色は需要や色開発から、毎年いくつか入替えがあるそうだ。今年の新色はストロベリー色とサクラ色。特にサクラ色は女の子にヒット中らしい。 価格は26,000円。全国の「ジャスコ」「スーパーセンター」「メガマート」「サティ」「ビブレ」「ポスフール」「カルフール」「ザ・ビッグ」の460店舗で販売するほか、インターネットでも販売している。

 02_2 投票!

イオンのウェブサイトでは24色の人気投票をしている。1月21日現在のランキングでは、男の子の1位はなんと!オレンジ、次いで無難なブラック、マリンブルー、ボルドーと続く。対して女の子はトップがサクラ、次いでハーバーブルー、ストロベリー、ターコイズとブルー系も人気がある。わたし一押しのキャメル。これはシックでカッコイイ!ちなみにキャメルは男の子順位では7位、女の子順位では10位だった。

だが、この投票はきっと親がやっているに違いないのである。ひとつおもしろいブログをみつけた。

  昨日は、今春小学校入学の長女用のランドセル購入の為、金沢区の
  ジャスコに行ってきました。
  お目当ては 『イオンの選べる24色ランドセル』です。
  僕が小学生の頃は 男の子は黒 女の子は赤のランドセルしか無く私立の
  小学校に通う子の緑や青のランドセルに憧れていたものですが、24色の
  中から好きな色を選べるなんて!!!夢のようです。
  自分が小学生時代 果たせなかった夢を娘に託し、いざランドセル売り場へ
  まぶしいくらいに輝く24色に僕は大興奮でした。

  我が娘のセンスを期待しつつ自由に選ばせる事 15分(!)
  彼女の選択は
『ノーマルな赤!!!』

  えーーーそうなの????

  
  http://plaza.rakuten.co.jp/muksos/diary/
  仲介手数料半額の不動産営業マン『婿養子が行く!!』 無断引用?すみません。TBしまっす。

【ジェンダーバイアスが邪魔している】
女の子でブラックもカッコイイと思うし、男の子でサクラもいいじゃない。だが日本にはまだジェンダーバイアス(性別に基づく固定的な決めつけ・偏見)が根強く残っている。女の子はピンク、男の子は紺とか。三つ子の魂百までの言われがほんとうなら、この年齢期にこそ昔からの軍国主義的な?常識を拭い去り、カラーに関する感性を養った方がいい思う。

【勝手にアドバイス 個を伸ばす商品開発を!】
だから親が選ぼうが、叔母や祖母が選ぼうが、「みんなと違う勇気」を持たせるためにも、「好きな色のランドセル」を背負わせてほしい。

同じ色のランドセルだけが「みんなと違うあひるの子」をいじめる土壌になっているとまでは言わない。だが小さい頃から、「人と自分の好みは違う」ということを認識させることは大事だと思う。この子は変わってるのではなくて、ボクと好みが違うだけなんだ!という心理を当たり前にしなくてはならない。

小さい頃から「自分で選ばせる」ということは大切。日本人には足りない「主張する」「少数派でもめげない」という感性を養う意味でも。だから子ども向けの商品では、選ばせるバラエティがもっとあっていい。

イオンさんも24色まんべんなく売るためには、ジェンダーバイアスを取り除く必要がある。サクラ色のランドセルに「桜くんと桜っこのランドセル」といったネーミングの工夫もいいでしょう。

005 果たして全数か?
出典文部科学省 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/030/06050823/004/002.htm

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月22日 (月)

言葉の恋人

今日はぷろこんエッセイ(現役コンサルタントによるワイルド・コンサルティング・
エッセイ)として発行しているメルマガからの転載です。
http://www.mag2.com/m/0000096057.htm

言葉の恋人

  夏怒涛ひとりでゆけるところまで

俳句は覚えやすくて、口ずさめるものだからこそ、つねに心の隅に置くことが
できて、自分を見失わないための拠り所になると思います。これは自作の句
ですが、自分に自信を失いそうになったときには、「夏怒涛ひとりでゆける
ところまで」という句を口ずさんで自分を鼓舞しています。すると、「できる
ところまでやろう」と前向きになれる。おまじないみたいなものかもしれません。
そのように誰かの心の支えになれる句を詠みたいな、と心から思いますね。

渋谷文化PROJECT
川柳と浮世絵で楽しむ江戸散歩 大高翔さん(俳人)
http://www.shibuyabunka.com/culture.php?id=21&admin=check

       *******************************************

コンサルタントとは「言葉の商売」か、「数字の商売」か。

タイプによって人それぞれだろうし、所属するコンサル組織によっても違うだろう。
業界言語と技術言語で情報システムを商売にするコンサルタントもいるから、
この商売の武器はいわゆる「言葉」と「数字言語」「情報言語」のみっつのタイプ
がある。

わたしどもは数字もつくらせて頂くが、数字を実行するのはクライアントである。
システム導入もして頂くが、それを使って入力するのはクライアントである。
クライアントの社員ひとりひとりに動いてもらう源には、クライアントの経営者の
言葉や、わたしたちのささやかな言葉の支援があると思っている。

       *******************************************

ところが経営者や外部コンサルタントの言葉なぞ足元に及ばない言葉がある。

SFAというシステムツールがある。セールス・フォース・オートメーションの略で、
営業支援システムと呼ばれることが多い。商談の進捗を管理して、営業担当の
行動や案件評価、実績管理をするのが目的のツールである。

このツールは、全国に散らばる営業担当の情報共有にも役立つし、管理上もち
ろん必要なものであるが、どうも営業担当には評判がよろしくない。いわく、書く
ことが面倒、書いても上司からレスポンスがない、はなはだしきは書くと営業先を
盗まれる、などの声も聞こえる。あるクライアントでもそんな状況があった。

そのクライアントのYさんとういう営業マネージャのところでは、比較的部下が良く
レポートをしている。やはりツールの使用は管理職の管理スタイル次第なんで
すね、とお話をしていたら、そのマネージャがこう言った。

「書くようにはなってきたのですが、まだ『オレはこうやった』ということばかりを
書くのが多くて困ってるんです」
「でもそういう記録を書くのがこのツールの目的ではないですか」とわたし。
「それもあるんですが、欲しいのは顧客の言葉なんです。顧客がどう言ったか、
生のままそれを書けと言ってるんですが、オレは何やった、ばかり書いてくる」

すべては顧客の言葉から始まる。顧客との最初の3分間に耳を澄ませば、課題
がぎっしり要約されているのである。それを記録せずに何を記録するのか?
長話をして1時間居座ったことが勲章だろうか?失注した言い訳より、失注した
ときの顧客の生の言葉こそ重要なのである。

       *******************************************

生の言葉への感度を高めるために、どうしたらよいだろうか?

わたしの仕事では、言葉はなるべくシンプルに短く、だれにも理解しやすい
ものであるべきである。そしてできればクライアントには膝打ちされるか、書き
とめられるか、できれば胸を痛めるきっかけにもなってほしい。

話し方の技術、書き方の技術、聴き方の技術、そういうテクニックも学ぶ必要は
ある。だがありのままを観て、ありのまま伝えることを研ぎ澄ますには、俳句が
いいという人がいた。俳句はたったの17文字の短い形式の詩に、見える世界を、
ありのままに伝える作業である。詠み手の気持ちをたったの17文字で伝える、
その凝縮する思考が、言葉の感度を高めるというのだ。

ベストセラー『サラダ記念日』の俵万智さんの後継者とも言われる、才能あふ
れる俳人が大高翔さん。これまでに瑞々しい句集が2つ出され、今春に3つ目を
出版されるのだが、わたしが気になっている俳人である。

彼女の俳句を引用しつつ、生の言葉の感度を高める上での俳句の効用を、
次の3つの句から考えてみたい。

   Photo_13  大高さん。

       *******************************************

①ありのままの日常に、非日常を観る。

  通学路凶器のように曼珠沙華    
                            句集『ひとりの聖域』
 
大高さんが10代の時の句だから「通学路」という日常がある。そこに真っ赤に
燃えるほど赤い曼珠沙華(まんじゅしゃげ)が、どこかの家の壁の向こうから
ヌッとのぞいていたのでだろう。尖ったかたち。それを「凶器」という表現を
するところが凄い言葉感覚である。

 Higannbana

日常的な光景は、気をつけていないとそのまま通り過ぎてしまう。だが、そこに
非日常的な光景が重なりあっているかもしれない。いつしか、非日常的な光景
が日常的になっていることもある。そういうことに気づく感性を持ち続けることが
課題観察の第一歩であろう。

②言葉の持つイメージをつかむ

  くちづけのあとの真っ赤なトマト切る
                            句集『17文字の孤独』

くちづけという紅さの感覚と、真っ赤なトマトのシンクロが鮮やかな句。しかも
「トマト切る」というあの、名残りのある、柔らかい感覚がくちづけをイメージ
させる。くちづけも好きだが、色彩感覚が好きな句である。

文章術の本には、たいてい「読み手に画像をイメージさせるように書け」と
いうくだりがある。読み手の心の中に、絵が展開するような表現ができれば
理解は促進される。クライアントがよく口にする言葉には、さまざまな背景や
固有のイメージがあるはずだ。それをつかまえて、資料やプレゼンテーション
にきちんと反映させれば、何がしかを共有することもできる。

③口ずさめる言葉をつくる。

  夏怒涛ひとりでゆけるところまで

冒頭に引用したこの句を詠むと、大高さんならずとも元気が出る。

ちょっと疲れたり寝不足の朝に、よ~し!iPodから1曲を選んで、今日一日
がんばろう!という「決め曲」があるだろう。決め曲の替わりに、決め俳句を
くちずさんで元気にゆこう!そんな精神安定の効用が俳句にはあることに、
この大高さんの句で気づかされた。

覚え切れない社訓を唱和して覚えるのも大切だが、自分を奮い立たせる一句、
自分を落ち着かせる一句を心の中で唱和するのもいい。クライアントに唱和
されるプレゼンテーションの一節や、報告書のくだりがあれば、そのプロジェ
クトは成功である。そういう言葉が無ければ、だいたい失敗である。

       *******************************************

顧客のありのままを見つめ、顧客の言葉でそれを表現し、口ずさめる改革の
キーワードをつくる。

かつてチョコレート会社に「お口の恋人」という傑作コピーがあったが、「言葉
の恋人」といえるほどに口ずさめる決め言葉を心に持っていると、クライアント
と対峙するときも、プレゼンテーションのときも、心に余裕がもてるのではない
だろうか。

02_1  http://www.shootaka.jp/

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今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月21日 (日)

FlipBook デジタル・パラパラ

FlipBookというViewerがある。2004年からソフトバンク・イーブック・システムズが展開してきた「ページをめくるように読める」という技術である。ネット上にあたかも雑誌を読むように見れる電子雑誌を展開してきた。同社が2007年1月19日より「電子ブック図書館 Flib(フリブ)」を開設した。

Images832254

従来よりぱらぱら読める「Manyo」など雑誌を中心に無料講読サイトを運用してきたが、収益を得るビジネスモデルができあがったということらしい。日曜の今日は、FlipBookで雑誌のデジタル・バラパラをしてみたい。

【勝手にアドバイス Vol.106 FlipBook デジタル・パラパラ】
まずイーブック・システムズの代表取締役の岡崎さんの言。
 私たちの提唱する新たな電子書籍(FlipBook)は、紙の本に限りなく近い操作性を追及することにより、慣れ親しんだ紙の本独自の長所は残しながら、さらにこれまでの紙の本では不可能であった音声や動画像も取り扱える、まったく新しいメディアとして誕生しました。
 FlipBookが人々に新しい感動と豊かさを与えるメディアになると確信し、私たちはその普及に全力をつくします。

同社HPより。 http://www.ebooksystems.co.jp/company/message.php

パラパラめくっていく中で、思いもかけなかった情報にめぐり合うといった、偶発的な情報接触の形は、他のメディアには見ることのできない特徴』と岡崎社長がおっしゃるようにスクロールより自然。大量の情報をネットで読むようになり、スクロールホイール付きのマウスも日常的になった。だが人の手の構造から言えば、ページをめくるという行為はマウスよりも自然である。

【Viewerをダウンロードしてみよう】
わたしもさっそくFlipBook Viewerをダウンロードしてみた。直接の競争相手はアドビのPDFであるが、インタフェースはまったく違う。ファイルをダウンロードするというより、紙媒体をダウンロードするという感じ。『Ginger(アクティブオヤジ雑誌)』『Manyo(食・遊・旅・モノ・ファッション)』『Aura(働く女性のライフスタイル誌)』をめくってみた。

たとえば『Aura』を読む。マウスポインターがページをめくる形になり、それをクリックするたびにページがめくられる。小畑由香里さんというモデルが登場するページでは、左側のページに「美容と健康の秘訣は睡眠とストレスフリーの毎日です」といった記事が左ページに。その右側の小畑さんはさまざまなポーズを取ってくれるのである。ページの中で、モデルの小畑さんのポーズが次々に変わるのである

Fd00008220070115203930  この画像ではFlipできない。

あるいは「魅力的なバストをつくるフェロモン・ストレッチ(なんだそれ?笑)」のページでも、ストレッチ体操のコーチの女性が手振り身振りで「こうやって体操してください!」と動画(正確には静止画の重ね合わせ)で説明してくれる。

もうすぐバレンタイン。トリュフの作り方のページでは、ステップ1~8までその解説が写真つきである。大きな写真のエリアと各ステップごとの小さな写真のエリアがあるのだが、小さな方をクリックすると、上の大きな画像と入れ替わり、説明文も入れ替わるという、わかりやすさ。もちろん記事内の広告にはURLが仕込まれており、販売サイトなどにハイパーリンクする。リンクはFlipviewerではなくブラウザで立ち上がる。

自宅などのネットワーク環境によるだろうが、ほとんどストレスなしに、ページをぱらぱらめくる感覚で読める。あともどりも簡単。ページの厚さがめくっている前後で変わるのもいい。画像も非常に美しい。こんなことは普通の雑誌にはできない。

このほか小説(芥川龍之介、太宰治、夏目漱石など古典中心)、絵本、読み物があり、今のところすべて購読は無料。字も大きいので年寄りにもOK。

【収入源】
収入モデルは今のところ3つ考えられている。

ひとつは広告。『Manyo』の見開き2ページの広告料は200万円であり、広告主から徴収する。10万アクセスがあれば、1ユーザーあたり20円。かなりピンポイントであるばかりか、動画や音声、URL埋め込み、クリックで画像が切り替わるなどの効果を考えれば高くない。

もうひとつはViewerの使用料金の徴収で、一般読者からでなく、雑誌を出版する出版社側から、1号1読者あたり3円のライセンス料を徴収する。10万読者であれば毎号30万円の収入がある。

さらに有料コンテンツの販売も検討されており、コピー回数や異なるPCへのコピー制限などを加える著作権保護の仕組みを入れるだろう。

【雑誌の概念を変える】
動画の広告や記事などとの連動が図れるのが新鮮だと思う。音声(曲)も付けられるから、ロック雑誌にも新譜広告を打つことができる。単にCDのジャケットを印刷しておくよりもずっとアピールする広告となる。

また雑誌は刷られたらあとは売れるか返品されるだけであるが、ネット上の雑誌なら、事の修正や追加も容易である。1ヶ月に1回発行するのではなく、ニュースによって「随時内容が変化する雑誌」というような、今までにない形態も考えられる。

さらに有料誌をパッケージ料金で複数購読契約というモデルをつくることも可能だろう。雑誌1冊に料金を払うのではなく、今月読みたい雑誌を選んで、定額に達するまで何冊でも読めるというサービスである。女性誌に
はニーズがあるだろう。

Images832253 めくる。

【勝手にアドバイス】
おまけのアドバイスは、電子ブック図書館には絵本があるが、それで思いついたのが「不思議の国のアリス」の話が実現しそう。絵本を読みながらウトウトしちゃう。夢の中では映画の主人公になって、白ウサギやチェシャ猫やと戯れる。アリス、アリス!という声で目が覚める。

つまり(原作)本をクリックするとDVDやTV映像が視聴できるようにする。DVD/TVを観たあとは原作本を読む。こうすれば映画も文学も両方楽しめる。両者の違いも楽しめておもしろい。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月20日 (土)

さくらさくよ。2007で受験生を応援!

今日から大学入試センター試験。全国735会場に55万人が挑戦をした。むかし、共通一次試験と呼ばれた第一期生だったわたしには、懐かしい思い出であるが、今まっただなかにいる受験生には汗水もの。

そうした受験生を応援するフリーペーパーが『さくらさくよ。2007』。このペーパーの製作発起人は東大のある本郷商店街ということだが、首謀者はキットカットを発売するネスレである。正式な社名はネスレ コンフェクショナリー株式会社、キットカットのメーカー。

Paper_cover さくらさくよ。2007(大学ノート風)

【勝手にアドバイス Vol.105 さくらさくよ。2007で受験生を応援!】
今日の勝手にアドバイスは、このフリーペーパーをめぐって影ながら受験生を応援しよう。

キットカット ブレイクタウン
フリーペーパーの紹介の前に、このウェブサイト。ネスレが運営する、販売促進というより遊び心のウェブサイト。受験、恋愛、卒業と夢のメニューでは、夢をバーチャルな絵馬に書けるようになっていたり、恋愛講座やeカード、さらには愛のメッセージまで書き込めて、受付ナンバーで愛のお相手にだけ読んでもらうこともできるなど、いろいろなお遊びができる。

Photo_11

そもそも、なぜキットカットかと言えば、2002年頃から博多弁の「きっと勝つと」に「キットカット」をかけた言葉が流行りお菓子が売れ出した、という話は有名。他にも縁起菓子はあるが、元祖はキットカットらしい。

 縁起菓子の数々
 キットカット   (きっと勝つと)
 カール      (受かる)
 キシリトールガム (きっちり通る)
 コアラのマーチ  (寝ていても落ちない)
 さくさくぱんだ  (さくらさく(桜咲く)ぱんだ)

引用元 http://db.g-search.or.jp/sideb/column/20050120.html

ネスレでは、このキットカット・ブレイクタウンをベースにして、さくらさくよのメニューを徐々に増やしていった。2007年1月上旬から『さくらさくよ。2007』のフリーペーパー配布につなげるという、かなり組織的なプロモーション。なるべく企業名を表に出さないように配慮はしているが、仕掛けは手が込んでいる。

【さくらさくよ。2007というフリーペーパー】
「さくらさくよ。2007」は、満開のサクラがデザインされた一見大学ノート風のフリーペーパー。ここには、受験生のためのちょっとためになるアドバイスやデータ集をはじめ、委員会に賛同していただいた作家、ミュージシャン、アスリートなどの著名人から受験生への直筆応援メッセージと写真が掲載されています。
同サイトより

・有名人からの直筆応援メッセージ
 (市原隼人、レミオロメン、石田衣良、石川直樹、浅尾美和)
・高校3年生のデータベース
・鈴木杏×北乃きい対談「ちょっとブレイク」
・受験虎の巻
・勉強の合間にちょっとコーヒーブレイク
・「すべるモノ」「すべらないモノ」BEST15
・ふしぎ! 目の錯覚サイエンス
・実力を100%発揮! みんなの願いを叶えるジンクス大公開!

オモシロそうと思えば何でも手に取るわたしは、生活彩家にあったこのペーパーを取り(隣にあったキットカットの陳列はパスした)熟読した。わたしは高校三年生のデータベースがおもしろかった。そこには高校三年生の好きな音楽や絵文字の使用頻度、有名人ポジショニングなどがある。

記事では作家石田衣良さんの4行が良かった。「受験は確かに苦しいかもしれない。でも大人百人にきいてみとほしい。ほとんどの人は受験の苦しさなどきれいに忘れてしまっているはずだ」。うんうん。まことにそうである。苦しいことは受験の後にたんとあるぜ。

やはり可愛い浅尾美和さんのメッセージは「常に全力」。よし、がんばろう(おっとわたしは受験生じゃない)。

 Asaomiwa_1 この画像はおまけです。

【フリーペーパーとインターネットの関係】
フリーペーパーとウェブサイトは、切ってカットできない(苦しくてすまん)関係にある。

ライブドアの運営するネットリサーチサービス「BizMarketing サーベイ」が(2006年12月)19日に発表した『フリーペーパー/ R25 & L25 についてのアンケート調査』によれば、フリーペーパーの情報をきっかけに Web サイトを訪問する人は約7割に上るという。
引用元 http://japan.internet.com/wmnews/20061221/2.html

配布部数が100万部以上のフリーペーパー22誌を対象に、2006年12月に約1600人の回答を集計したこのアンケートでは、『「フリーペーパーの情報から Web サイトにアクセス」した経験がある人も70.9%に上ることがわかった』とされている。この調査では回答者の年齢層分布は10代から50代までまんべんなく取られている。それで7割というのには驚いた。

さくらさくよ。2007の場合、フリーペーパーからウェブに飛べるが、そこは「サクラサク委員会」。そのサイトをず~っと見ていくとキットカットのBreaktownに通じる。販促ウェブサイトに到達するまで実に2クッションある。だが7割近くはきっと到達するのだ。

Img95b4cc79bhz3cg 回りくどいが、ほんとうはこれを売りたい。

【わたしもフリーペーパー提案をしたことがある】
ある理由で陽の目を見なかったが、某社とのマーケティング活動構築プロジェクトで、新製品の発売を期に「マニフェスト」と作りましょう!と提案したことがあった。ありきたりの製品紹介のパンフではなく、『マニフェスト(公約)』と題して、販売する製品の機能やサービスをきちんと実現することを公約します!が趣旨。内容はできるだけ製品紹介を薄くして、お客さまの業界課題の解説やトレンドなどを書き込み、それを解決するのがXXXXですと控えめに訴えるという構成を考えた。原稿も書いた。

ねらいは、そのクライアント、新製品を打ち出す業界では知名度が低い。だから話題づくりで知名度アップをねらおうとした。残念ながら、製品機能を実現します!と書面で宣言してしまうと、クレームでも付けられたら訴訟モノだという法務部の意見でぽしゃってしまった。遊び心をわからない人はどこにもいる。

【勝手にアドバイス】
この手の読み物販促は、あくまで読み手視点の内容で、読み手が主役の内容にしなくてはならない。フリーペーパーの読み手が「読んで楽しかった!」「元気付けられたネ」「ためになったぁ」と思わせなくてはならないのである。

でないと「結局販売促進だけなのね!」と見透かされてしまう。その反動はダメージが大きい。企業名は露出してもいいし、販売促進だと悟られても構わない。だが「売るだけでない本気のメッセージ」が前にあらばこそ、購買につながる。本気でないならやめておくことだ。

ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月19日 (金)

旬ネタ 5.Apple iPhoneは‘黒船’になれるか?

今週の勝手にアドバイスは旬ネタとして、ホットな話題iPhoneをめぐるマネジメント戦略をテーマにしている。今日はその最終回。4回のまとめと、戦略分析に関する手法をご紹介いたします。

【勝手にアドバイス 旬ネタ 5.Apple iPhoneは‘黒船’になれるか?】
インターネット上では、またApple信者の間では「iPhone興奮」が続いているのだが、国内携帯大手2社から春モデルが発表された途端、一般消費者にはもう過去のことになっている。

結局、行政も閉鎖的なら消費者も保守的なのが日本市場!なのである。何せ今の高校生の好きな音楽順位は「J-POP」「J-ROCK」、三四がなくて、ずっと離れて「洋楽」という、内向き意識が強い。DoCoMoとauという、たった2社の囲い込みの箱庭市場で育ってしまう携帯消費者が、果たして幸せなんだろうか?と危惧を感じてしまう。

今週をおさらいしてみよう。

第一回目では、「Apple iPhoneは携帯デザインを再定義した」と書いた。つまりタッチスクリーンを採用することで、製品機能を進化させることができるという、ハードに依存せずソフトを刷新できる。

①中身のソフトを替えるだけで製品寿命が延ばせる
顧客にとっては高価な機器を毎年買い換えなくても、いつも最新機能で、しかも愛着を持って使用することができる。

②事業資源を効率的に活用できる
他の携帯会社のように、春夏秋冬で七転八倒しながら新製品を次々に開発しなくていい。Appleと言えども有限な事業資源を、効率的に投入することができる。

第二回目では、携帯各社のロックイン(囲い込み)は料金と割引だけだが、Appleのロックインとはブランド力をバックに「電化生活ロックイン」で、iPhoneを入口にして「Macで電化製品を埋め尽くす」という指摘をした。

③iPhoneとPCの連携による囲い込み
iPhoneはPCとの連携で、iTunesストアから音楽や映画、Mac tvでテレビ視聴など、消費者の電化生活という、より大きなフォーマットでユーザーの電化ライフを囲い込もうという戦略。

④携帯メーカーの直接製品保証
通話契約と電話機器販売が一体になっているのは、世界では日本ぐらいである。こういう市場で携帯メーカーが機器の製品保証を直接やることが(当たり前なのに)新鮮になる。本来差別化ではないが、日本市場では先行業者のチャネルを揺らすことができる。

第三回目では、Appleが本気になるのであれば、通信市場でチャネル・キャプテンを取りに来るだろうというテーマだった。

⑤MVNOでの通信事業展開
自社で携帯ネットワークに投資することは考えにくいとしても、既存のネットワーク会社から無線通信インフラを借り受けての事業化(MVNO)はありうると書いた。そうしなくてはメニューや料金プランで独自性が打ち出しにくい。

⑥販売インフラとしての量販店Appleストア展開
携帯サービスの販売インフラをどうするか?携帯キャリアとの提携では、他社製品と併売されてしまい、唯我独尊路線が継承できない。そこでビックカメラのような量販店内にインショップでストアを開設することで、コスト・スピードが削減できる。

第四回目では、iPhone端末価格は決して高くないことと、料金モデルにもAppleならではのパッケージを導入すべきだと考えた。

⑦モバイルギアとしての価格設定
iPod nanoに通話・ネット機能がついたと考えれば、国内のW-ZERO3や、日本語されるというブラックベリーも発売予定価格は6万円。

Mmitfh000008122006_1_1_fa ブラック。

⑧音楽ダウンロードも通話もパッケージに
携帯他社が通信、パケット、割引、繰越など複雑さを極める料金体系にあって、Appleなら「音楽も映画もネットも通話もまるごとパッケージ」にすればいいと指摘した。個々の単価は問題にはなるが、かなり差別化で きる設定だと思う。

【創発戦略ツリーで市場フォーマットを引きなおす】
このように市場の境界や消費者ニーズを自社に有利に引きなおし、それを経営として調和させることが戦略立案である。Appleの戦略を想定するために、今週はいくつかのツリー図を作成してきた。

11
 
わたしたちはこれを「創発戦略ツリー」と名づけて、既存市場のフォーマットをいかに自社にとって有利なフォーマットに書き換えるか、という検討をするフレームワークとしている。

創発とは、『々の顧客価値を高めるために企業の仕組みを「売り方」「商品」「SCMプロセス」の3つの観点から見直し、部分改善+部分改善+部分改善・・・・の総和が次第に調和し、大局的に経営調和となるキーワード』と規定した。

今回作った戦略ツリーでは、「製品機能」「ロックイン(囲い込み)」「チャネル/ビジネスモデル」そして「料金」と、4タイプの図を作成して、既存業界との差別化策を検討した。既存のフォーマットのツリーと、新規のフォーマットのツリーを、単純化して比較するのがポイントである。

 ・製品機能=「商品」
 ・ロックイン、料金=「売り方」
 ・チャネル/ビジネスモデル=「SCMプロセス」

わたしたちは、あらゆるビジネスは「商品」「売り方」「SCMプロセス」の3つの創発機能に集約される考えている。商品は商品やサービス、売り方はマーケティングや販売、SCMプロセスとは事業構造を差す。

 093  創発の3つの機能(創発3兄弟?)

これら3つの切り口、「商品」「売り方」「SCMプロセス」を、ああでもない・こうでもないと同時に検討する。Phoneの例では上記の①~⑧の差別化策を考えたが、これらが「商品」「売り方」「SCMプロセス」で一貫しているかどうか?をチェックし、細部を詰めていくことが重要である。

【最後に宣伝】
この3つの切り口のより詳細な説明と、実際のコンサルティング事例とこのiPhoneをケーススタディにして、セミナーを2007年2月21日に弊社事業所で開催します。主催はビジネスブレイン太田昭和、そして株式会社アイデア社長・経営コンサルタントの江口一海氏とわたしの二人がスピーカーです。わたしの話すパートの概略は下図のようなもので、目下作成中です。

セミナーの開催案内は、弊社(BBS)HPにも近日掲載します。このブログでも再度紹介をさせていただきます。ご興味があればぜひ参加してください。

10  まだ未完成なので修正するかも知れません。

今週の旬ネタは以上です。お読みいただきありがとうございました。ではまた明日!

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2007年1月18日 (木)

旬ネタ:4.Apple iPhone 料金政策にビジネスモデルが凝縮される

今週の勝手にアドバイスは旬ネタとして、ホットな話題iPhoneをめぐるマネジメント戦略をテーマにしている。今日はその4回目。

【勝手にアドバイス 旬ネタ 4.料金政策にビジネスモデルが凝縮される】
今週4回目のApple iPhoneをお題にしたブログ。巷でいろいろなブロガーや評論家がApple iPhoneについて書いているが、それはこれから米国で発売される商品について。発表時の日経ITプロの記事から。

米国で6月,欧州で2007年第4四半期,アジアで2008年に発売
 iPhoneの価格は,4Gバイトのフラッシュ・メモリー搭載モデルが499ドル,8Gバイトのフラッシュ・メモリー搭載モデルが599ドル。米国では2007年6月に,欧州では2007年第4四半期,アジアでは2008年に発売する(日本での発売については言及がなかった)。iPhoneが利用できるのは,米Cingularになる。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/USNEWS/20070110/258261/

 Cingular_site  Apple+Cingular

Apple iPhoneがもしも日本市場に進出するとしたら・・・・

と誰もが思うが、Appleの日本進出の可能性は(少なくともここ2~3年は)低いといわれている。それは欧米の携帯ネットワークが第二世代中心であり、それに合わせて作られたiPhoneの仕様が日本の第三世代と会わない。欧米が第三世代に移行するには数年かかると見られるからだ。日本が進んでいるというわけではなく、日本の閉鎖的な通信行政が通信業界ニーズを重視して、消費者ニーズを軽視してきたことのツケである。

【iPhoneは「端末」という価格ではない】
4Gバイト・モデルが約6万円、8Gバイト・モデルが7万円超という価格は、任天堂Wiiに押されているSONYのPS3の価格レベルを想起させる。安くはない。だがこの製品、通話中心の、日本でいうところの「端末」という商品コンセプトではなく、音楽も映画もネットもGPSも楽しめる、携帯モバイル・ギアという位置づけになる。モバイル・ギアの一機能に「通話」があるというコンセプトである。

だから高いか安いかの比較は、まず同機能のiPod音楽・動画プレーヤーの4G・8Gモデルとの比較となる。もちろん類似のない製品なので、似たものになるが、シャープ製W-ZERO3(ウィルコム)は4万円弱である。これは音楽ケータイではないので、iPod nano 4GB 23,800円を足すと6万円を超える

そうしてみるとiPhoneは、将来の拡張性から見てかなり安いとも言える。いずれにせよ、機能合体商品が他社には少ないことから、価格リーダーシップを取れるという、従来からのAppleのプライシング戦略が踏襲されている。

 Top_d2   
 W-ZERO3、製品の評判はいいがペンタッチというところでAppleの後塵を拝した。

【ソフトバンクの奇襲に学ぶ料金戦略】
携帯電話業界は、料金システムにその事業戦略が凝縮されると言っていい。ボーダフォンを買収して携帯事業に進出したソフトバンクの場合はどうだっただろうか?DoCoMoとauの料金システムを上段に、それに対して闇討ちをしたソフトバンクの料金システムを下段にまとめた。

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<拡大可>

大きくソフトバンクは2つのことを訴求した。それはMNPでシェアダウンを食い止めるため(ウィルコムに倣って)ソフトバンク間の通話やメールを無料にしたこと、そして料金プランに携帯機器の割賦販売を導入したこと(需要がなかったようだが)。

ソフトバンクの料金設定は、巨額の借入金という重しがあるため、広告上は派手に安さをイメージさせるが、実のところは自社ネットワークを中心に利用させ、他社ネットワーク支払を抑えるように仕向けて、何とかコストダウンで凌ぐという、家事情である。ゴールドプランからホワイトプランに名称や若干仕組みが変わったが、基本的には支払を抑制するという方針に変化はないだろう。だから料金戦略というより、実はお家事情をカモフラージュするための広告宣伝であった。

逆に端末の割賦販売は戦略的だったDoCoMoやau、通信端末販売業者の不合理な点(=弱み)を突いた。だが一時の出費が小さく、後送りにすることが常態化しているため、消費者を味方につけるにはまだ時期尚早であったということだろう。

AppleがiPhoneを定価で販売し、それがiPodのように多くの消費者の支持を得たとしよう。料金システムや流通システムを根本から変えなくてはならないのはどこだろうか?それは、DoCoMoでありauである。キャリアの端末販売という、いびつな業界慣習はAppleという黒船で変化するのだろうか?

【Appleならでは価格戦略をとるとすれば】
自前ネットワークを持たないAppleで、どんな価格戦略が打てるのか?という制約条件はとりあえず無視しよう。わたしならこういう料金体系はどうだろうか?という案が下図。

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<拡大可>

現在の携帯会社の課金は、「通話料金」「パケット料金」「有料サービス」、これらを足し上げていくら、というやり方が原価管理上からも求められているため、そのようになっている。だが消費者志向ならば、そんな原価管理は裏側でやってくれ!と言いたい

iTunesの音楽ダウンロードと映画ダウンロードも含めて、全体でいくら!というのがAppleならではではないだろうか?基本料金が5000円だとして、その内訳は音楽購入でもメールでもネットでも通話でもいい。そういうパッケージにしてもらえると、定額料金パッケージはシンプルで魅力的である。タッチパネルのように、料金メニュー間もシームレスであってほしい。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月17日 (水)

旬ネタ:3.Apple iPhone チャネル・キャプテンの行方

今週の勝手にアドバイスは旬ネタとして、ホットな話題iPhoneをめぐるマネジメント戦略をテーマにしている。今日はその3回目。

***************************************************
今週の「勝手にアドバイス 旬ネタ」構成予定
1.Apple iPhoneという製品機能で携帯を‘再定義’→15日
2.Apple iPhone 電化ライフ・ロックイン →16日
3.Apple iPhone チャネル・キャプテンの行方 →17日
4.Apple iPhone 料金政策にビジネスモデルが凝縮される
5.Apple iPhoneは‘黒船’になれるか?
***************************************************

【勝手にアドバイス 旬ネタ 3.Apple iPhone チャネル・キャプテンの行方】
第一回(1月15日)で次のように書いた。

iPhoneのコミュニケーション機能がどういう方向をめざしているか直感では「Web1.0からWeb2.0へ移行させる」ととらえるべきだと思う。

携帯電話が「話す」こと主体のデバイスであれば、iPhoneも電話ネットワーク上で使われる、デザインの優れた電話デバイスに過ぎない。だがiPhoneのめざすのが、消費者の「電化ライフ」シェアを限りなく拡張すると仮定した場合、電話+αのデバイスになる。いやむしろ+αの方が、機能面の重要性はますます大きくなる

ちょうど昨日(1月16日)、DoCoMoauから携帯の春商戦ラインナップが発表された。DoCoMoの製品群を見ると、「薄型化と機能の多さを両立する」のがテーマとしている。SONYからはブラビア・ケータイ「SO903iTV」、三菱電機からは「D800iDS」というニンテンドーDSと同じ2画面を持ち、ゲームや脳トレができるという。これはもはやノートPCを超える携帯デバイスである。

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  美しい画面と、      ・・・・・・・・携帯DS!

一方でパーソナル・コンピュータはコモディティ化し、機能進化は止まっているかに見える。その割にはOSとCPUの原価高止まりのせいで、価格はそれほど安くならない。一方携帯デバイスならTVもゲームもお財布も携帯できる。消費者にとっては、ノートパソコンよりも、携帯デバイスの方が安いし何でもできる。

【携帯チャネル・キャプテン】
チャネル・キャプテンとは、商品とマネーの流通において主導権を握る会社のことを言う。日本市場では携帯市場は紛れもなく携帯キャリアが握っている。

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 流通構造図(東京都調査資料より)

図はやや古い資料からの添付なので、Jフォンという名称が見えるが、今でも基本は変わらない。通信事業者は携帯電話メーカーに自社仕様の端末を供給させ、これを卸売店/商社経由で携帯販売店に卸売りする。消費者は携帯販売店や通販サイトから端末を購入する。言い尽くされてはいるが、この流通構造のメリットは、末端の消費者が何万円とする端末費用を一時的に負担しなくて済む(だが毎月の使用料に分割・上乗せされている)。

サービスコンテンツについては、通信事業者が外部のコンテンツ提供会社や金融サービス会社からの供給を受け(開発協力もある)、契約者に有料・無料のサービスを提供する。ハードも情報もお金も、すべて携帯キャリアが握りる構造である。

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  <拡大可>

この仕組みには問題もあるが、ここではそのチャネルの是非を問うわけではなく、Appleという新規参入者が、既存の通信事業企業のビジネスモデルをいかにパスするかを考える場としたい。

【iPhoneのねらうチャネル・キャプテンのあり方】
これに対してAppleはどう出るのだろうか?基本的にはチャネル・キャプテンを取ろうとするはずである。それも自前では携帯ネットワークを持たずに、である。

わたしの想像するAppleのチャネル・キャプテンへの道は次の図である。

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 <拡大可>

図の右側、機器やシステムを開発する部門にぶら下がるのが、実際にiPhoneを製造する委託先と通信事業者である。iPhoneの発売に合わせてAppleが米国内で提携したパートナーはCingularである。進出する各国で通信事業者に携帯機器を提供するような「機器メーカー」のポジションに甘んじるのか、ソフトバンクのように通信事業に乗り出すのかまではわからない。だがAppleは既報の通り、世界市場を見すえているところから、通信事業者との提携、ケースによってはMVNO(無線通信インフラを他社から借り受けてサービスを提供する事業者)での通信事業展開も検討されるだろう。

さらに図の左側のiPhoneストア(仮称)という、携帯電話のサービスネットワークも、チャネル・キャプテンを取る上では不可欠である。全国、全世界展開となると、現在のApple直営だけではサービス提供はできない

その布石が、日本ではビックカメラへの家電量販店内のAppleストア展開ではないだろうか。家電量販店にしてみれば、Appleというブランド力のあるインショップを導入することは喉から手が出るほど欲しい。派遣社員さえも、店舗側から提供してもらうこともあるだろう。店舗をつくるよりも、好立地の場所に、低コスト・スピーディに出店が可能である。

 L_og_macshop_001  有楽町ビックカメラのAppleストア。
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0609/21/news039.html

もちろん既存の通信事業者とコンテンツ供給の提携ないしMVNO提携をして、通信事業者の携帯ショップの軒先を借りることはできる。たとえば日本ならソフトバンクだろう。だがこれまでのところ、そういう匂いはない。なにしろAppleの総帥は、あの唯我独尊のスティーブ・ジョブスなのである。しかも業績は絶好調。軒先を借りれば併売されるのは目に見えている

Appleがチャネル・キャプテンを取れない策をみすみす打ってくるとは思えない。だから家電量販やGMSなど大手量販店が「Apple iPhoneストア」出店のターゲットとなるだろう。

【後発企業がチャネル・キャプテンが取るには】
以上のようなチャネル・キャプテン政策を実際にAppleが打つかどうかはわからない。Appleのブランド力、ロックインの製品ラインナップがあればこそ、既存事業者をまたぐようなチャネル政策が打てる、というのもまた事実である。

だがより重要なことは、既存事業者の横並び業界に新たに打って出るには同じチャネルでは歯が立たないということである。異なるフォーマットを持つべきである。「ウチの会社ならでは」の売り方とは何か?既存業者が進出していない、隣の業界の資源やチャネルが使えないか?そうした場合、商品、売り方、チャネルまでの一貫性をどう保てるか?どのくらい市場の仕切り方が従来と異なるか?こう自問することが大切である。その意味でも、Appleがどういう打ち手を打つか、観察しましょう。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月16日 (火)

旬ネタ:2.Apple iPhone 電化ライフ・ロックイン

今週の勝手にアドバイスは旬ネタとして、今Hotestな話題、iPhoneを取り上げている。今日はその二回目。

【勝手にアドバイス 旬ネタ 2.Apple iPhone 電化ライフ・ロックイン】
今回のMac Worldのニュースの中で、びっくりはしたが考えりゃ当たり前!と納得もしたのは、Apple Computer Inc.から  Apple Inc.へとなることの発表であった。

スティーブ・ジョブスはこういった。

「Mac, iPod, Apple TV, iPhone。"コンピュータ"と考えられるのはMacだけだろう。よくよく考えてみた。われわれの名前もそれを反映したものにすべきじゃないだろうか。」

 Dsc_0246  社名から・・・・

ここからAppleのロックイン戦略は始まっている。

【ロックイン(顧客囲い込み)とは何か】
マーケティング用語でいう顧客ロックイン/囲い込みには、いくつかのタイプがある。

 ・なじみの関係を構築: 例 あのスタイリストのいる美容室
 ・ブランド・イメージを構築: 例 Sony、Honda、エルメス
 ・購入を継続させる: 例 雑誌の定期購読、ゲームのシリーズタイトル
 ・メンバー制度: 例 ポイントカード、マイレッジ
 ・システム互換: 例 ウィンドウズ
 ・コミュニティづくり: 例 ハーレーダビッドソン、Mac ピープル

Appleの場合は伝統的にブランド・イメージの構築とコミュニティづくりでロックインを獲得してきた。だが近年の囲い込み戦略のねらいは、ウィンドウズ陣営に押されたこと、マニア層だけのコンピュータ会社では株主が納得しないことから、顧客層の拡張をめざしてきた。その活路が他社にはない「PCのデザイン化」というものであった。

iPhoneでやろうとしているロックインは、従来の企業がまだなし得ていない、消費者の電化ライフをApple製品とAppleサービスで囲い込んでしまうという戦略だと考えられる。

これほどのことをなし得る会社があるとすれば、SONYぐらいしかなかったのだが・・・。

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 出所不明(・・・てことはない。こちら http://www.my-mac.org/

【従来の携帯キャリアの顧客ロックイン】
まず従来の携帯キャリアの顧客ロックインを見てみよう。下図である。

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わたしもさもしい奴なので、確かに携帯のポイントは気になる。今の使用中携帯の電池が切れそうだ。auなのだが1,000ポイントで電池を交換するのがルールだ。長く使ってくれればいいことあるよ!と言いたいのだろうが、これだと貯める方も貯めてもらいたい方も、さもしい感じがする。

それはともかく「料金ロックイン」はあまりロックインにはなっていないと思う。どこのキャリアも大差なく、横並び意識して(料金のデフレを避けて)いるだけのように見える。細かく見れば差はあるが、ロックインまでのヤル気を感じさせてくれない。その意味ではソフトバンクの0円奇襲は評価できる。

一方、契約の継続部分では各社で競い合っている。顧客数の多いDoCoMoにアドバンテージがある。そこに追随するauとソフトバンク。だが5年スパン、あるいは10年スパンで見た場合、実際にはどれほどの違いがでるのか?料金政策を毎年のように変えるのであれば、消費者は揺らされるだけだ。生命保険が掛け金をわかりにくくしているケースと似ていなくも無い。

携帯キャリアが重視しているのか判然としないのが、サービスロックインの領域。機器の保証期間であってもさまざまな例外があり、修理費を請求されるケースもある。故障すれば「買い換えた方が安い」のは、環境破壊と言えなくもない。これはキャリア=製造メーカーではないことが影響してるのだろうか?

以上のように、既存の携帯キャリアには、ロックインはまだまだ希薄であるい。逆に言えば、だからこそMNPは盛んにはならないのであるどこに契約替えしても大差ない)。寡占業界にありがちな「横並び意識」が透けて見えてこないだろうか。

【iPhoneの3つのロックイン】
これに対してiPhoneには、3つのロックインがあると考える。それが商売ロックイン、電脳生活ロックイン、そしてサービスロックインである。

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商売ロックイン」とは、ブランド・イメージと商売イメージで構成されると考えてみた。ブランド・イメージに関しては、PCや音楽デバイスでAppleという強力なブランド力を誇る。現時点では地球上で最も強力なブランドである。

もうひとつの商売イメージと名づけたのは、最近の同社の硬軟取り混ぜた事業戦略の妙である。例えばマイクロソフト・オフィスと互換性のある「マッキントッシュ・オフィス」、Intel MacというCPUの搭載などで、PCとしての前提条件をウィンドウズ陣営と同一にする。その一方でiTunesでは、互換性の低い音楽形式で提供をしてロックインを図る。マック=変わり者やプロ、商売というよりカルチャーという以前のイメージはなく、商売巧者でもあるのだ。

「電脳生活ロックイン」とは、iPhoneを入口にして「Macで電化製品を埋め尽くす」という戦略である。

iPhoneの大きな特徴に「PCとの連携」がある。iTunesストアはPCありきである。新発売のApple tvもまたそうであろう。PCだけでなくネットへの接続、プリンタ、さらにはオーディオとの接続が無線でできるAirMacという製品の存在は大きい。 AirMacを中核にAppleの電化製品で家庭内シェアを占有しようというのがねらいだろう

 Indexairtunesflow06072004 Air Mac。地味だが大きな存在。

【サービスロックイン】
Appleケア・プロテクションという保証制度が、iMacやMacBookなどPCやiPodには適用される。当たり前のことなのだが、「壊れたら買い換えればいい」わけではないから。

iPodのように「保証期間を2年に延長してください。電池交換や消耗品交換が可能です」というのが、メーカーと購入者のロックインの関係である。日本のゆがんだ携帯市場では、メーカーではないキャリアが受付をしなくてはならない。費用負担といい顧客満足といい、ロックインできない重要な要因がここにある。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

※本日早目の投稿は、15時からcocologのメンテナンスがあり、24時間閲覧のみ可能になるからです。お昼を抜いてがんばりました(嘘です笑)。

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2007年1月15日 (月)

旬ネタ:1.Apple iPhoneという製品機能で携帯を‘再定義’

先週来のわたしにとってのビッグニュースは、相次ぐ胴体切断などという物騒な話ではなく、何と言ってもiPhoneである。

Indexhero20070109_1  ため息。。。

やってくれました!という ため息のでるデザイン、携帯機能の秀逸な集約と拡張、そこから垣間見える電化ライフスタイルの変革の匂い・・・。Appleならではのデザインもさることながら、ひとつの商品として稀なほどのエキサイティングを感じさせてくれました。

Apple iPhoneに匹敵するエキサイトした商品やサービスと言えば、ノートPCの「初代ダイナブック」、自動車のHonda「初代シビック」、音楽ならやはりSonyの「初代ウォークマン」・・・・。皆さんのiPhoneの印象はいかがでしょうか?

iPhoneが日本市場に投入されるかどうかは微妙ですが、今週の勝手にアドバイス旬ネタでは、Apple iPhoneをお題として、製品とサービスで消費者行動や意識、市場チャネルを仕切りなおす事業戦略のあり方を概観したい。報道からの事実と、わたしの想像をべースに、彼らが進めるであろう戦略を分析することで、業界の殻を打ち破る変革の目を養おうというのが趣旨である。

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2007年1月2回目の「勝手にアドバイス 旬ネタ」構成予定
1.Apple iPhoneという製品機能で携帯を‘再定義’→本日
2.Apple ロックインの電化ライフスタイル
3.携帯2.0~チャネル・キャプテンの行方
4.料金政策にビジネスモデルが凝縮される
5.Apple iPhoneは‘黒船’になれるか?
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【勝手にアドバイス 旬ネタ: 1.Apple iPhoneという製品機能で携帯を‘再定義’】
同時期(2007年1月10日前後)に行われたCES(Consumer Electronics Show)では、今年で最後になるビル・ゲイツ会長のキーノート・スピーチには中途の退席者も出たというが、スティーブ・ジョブスは今年もやってくれた。キーメッセージは「Appleは電話を再発明する」だった。

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iPodに似ながらも大幅に進化させたタッチパネルのデザインだけでも、相当に「再発明」であるが、タッチスクリーン内に鮮やかな色彩で並んだ機能をつぶさに見ると、Appleの戦略が垣間見れる。それは機能面、顧客のロックイン(囲い込み)、チャネルの再構築、そして料金政策に表れるだろう。

【従来の携帯電話の機能】
まず下図を見てほしい。現在の携帯電話の機能は「通話」「メール」「カメラ・動画」「ウェブ」、そしてさまざまな「差別化(お財布、地デジ、音楽など)」の各機能に分かれている。どのメーカーのどの製品も、おおよそ同じ機能をベースにしている。

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iPhoneが提供する機能もおおむね一緒だが、従来の携帯メーカー/キャリアとは大きく異なる点がある。それは機能を提供する「切り口」とも言えよう。まずAppleといえば「初代iMac」以来、デザイン・カンパニーである。それを裏切らない、他社製品とはまったく違うデザインという切り口。

次に機器としての機能は、「コミュニケーション」としてひとくくりに考えられていると言っていい。誰かとの通話やチャットや動画、メールやボイスメールというコミュニケーション、ネットとのコミュニケーション、カメラやGPSという環境とのコミュニケーション。

さらに重要なのがAppleロックインという切り口。音楽、テレビ、PCとの連携、ソフトウェア、プロテクションプランなど、iPhoneという製品をきっかけに、Appleで消費者のライフスタイル・シェアを根こそぎ奪取するとうねらいが見えてくる。これが彼らが言う「電話を再発明する」意味だと思う。

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従来の携帯メーカーの提供してきたのが電話+関連機能のデバイスであるとしたら、Appleがやろうとするのは「電話+ライフスタイル」という、まるで次元の違う戦略を打ちだしている。

【携帯デザインを再定義した】
そのiPodライクな秀逸なデザイン。シャープのW-ZERO3のようにペンタッチ入力ではなく、直接指で操作する。何より、スクリーン内にほとんどの操作機能があるというデザインがすごい。

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このタッチスクリーンの良さは、自由なデザインが可能になる点である。言い方を変えれば、ハードに依存せずソフトを刷新できることにある

iPodユーザーならわかるが、iTunesでiPodのソフトウェアを更新すると、「あれ?前はこんな機能はなかったよね」という追加機能が現れる。この快感は何ともいえない。購入後もユーザーとメーカーがキープ・イン・タッチしてますよ!という強力なメッセージになるのである。ウィンドウズにもアップグレードがあるよと言うが、セキュリティ機能アップでパッチを貼るなどメーカー保証の範囲。ほんとうに画面を変えるには、追加投資が必要である。

携帯にボタンやスイッチを物理的に配置してしまうと、これと同じことをやろうとしてもなかなかできない。表面に何もないこと(タッチパネル)が逆に何でもできるのである。デザインで携帯の機能進化を保証したというのがiPhoneのいう「再定義」でもある。

【コミュニケーションは2.0に向かって新化する】
iPhoneのコミュニケーション機能がどういう方向をめざしているか直感では「Web1.0からWeb2.0へ移行させる」ととらえるべきだと思う。次回以降でもう少し深く考えたいが、携帯電話というのはメールやボイスメール(留守番電話)で2.0的な要素をすでに活用している。Web2.0とは、この稿では、ネットワーク/ウェブ上にデータやソフトウェアを持ち、必要なときに呼び出せると定義する。

つまりAppleは社名から「コンピュータ」を取ったとはいえ、携帯とコンピュータを同調させるというコンセプトを引きずるはずだ(これはAppleの携帯電話の提携相手のCingularの技術上の都合もある)。むしろそこを携帯キャリアとの差別化ポイントにする。

PCないしテレビ(tvという製品も発売する)やDVDなど、ストレージは自宅やネット上におき、iPhoneはそれを呼び出すデバイスというのが基本コンセプトに他ならない。

【Appleロックインという強力な武器】
Web2.0、いや「携帯2.0」をめざしつつ、Apple製品で顧客をロックインする(囲い込む)のが、Appleのマーケティング展開戦略であると想定される。

2006年11月からの番号ポータビリティ/MNPを思い出そう。あのとき争点は、数円単位の通話料金や基本料金のカバレッジの小さな字、果ては「誇大宣伝」の責任のなすりつけあいという、顧客不在の業界内での争点しかテーマにならなかった。

Appleの持ち込む差別化の争点は、携帯キャリアの自社の台所事情を引きずっていない分、スケールが大きい、顧客に訴えるものとなると思う。

Pic11  Appleはどこに行くのか。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月14日 (日)

公立美術館に求められること

先日ふと「絵を買いたい」と思った。それはある美術品販売サイトから配信してもらっているメールマガジンの中に、ひと目惚れした絵があったからだ。「生の絵」を自分で買ったことがないので、数万円とはいえドキドキした。数日考えてよし買おうと思ったら、すでに売約済み(!)だった。残念。いずれ自分ギフトでこの作家の絵を買うぞと誓った。

そんなわたしが気になったのは、財政破綻した夕張市の市立美術館閉館のニュースだった。市が倒産なのだから美術どころではない。だが夕張市だけではなく公立の美術館では、館の存続や運営をめぐって窮状にあるところが多い。日曜の今日は公立美術館について考えてみたい。

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  心配される収蔵品の行く末 北海道夕張市(毎日新聞より)

【勝手にアドバイス Vol.104 公立美術館に求められること 】
夕張市立美術館は79年2月に開館。道内の市立美術館の中では網走に次いで2番目に古い。北炭社員の傍ら夕張を描き続けた一水展会員の故畠山哲雄画伯(1926-1999年)の油絵、スケッチ画など約450点のほか、市内の絵画サークルの炭鉱絵画、彫像など600点余りの計約1000点を所蔵している。(記事より)

だが年間25万円の入館料収入に対して、施設維持費だけで250万円が必要な赤字施設。収蔵絵画の扱いは、市の計画では空調を止めた倉庫保管にするというので、寒暖の差で絵画が傷むことは必死。北海道内の美術家や書家らから、施設の存続を求めて署名も集まっている。

【公立美術館の収益率は低い】
全国平均で収益率(歳出に対する歳入の比率)が18.7%、収益率が10%に満たない館が3割を超えるという、日本の公立美術館の現状(『産経新聞』東京版 2004年3月28日付)。

全国平均で運営経費の8割を自治体が赤字を補てんしている。もちろん美術館に限らず、公立施設は博物館や音楽ホール、公営住宅な病院なども赤字が一般的である。水道、バス、病院など自治体が別の組織で運営する地方公営企業法における事業では、「他会計繰入」という聞きなれない会計費目で赤字を補てんしている。それはもちろんすべて税金である。

【収入よりもバランスシートが問題】
経営改善には二つの方策しかない。ひとつはコスト削減。もうひとつは収入のアップである。

コスト削減は、指定管理者制度という民間委託やNPOへの委託など、官から切り離して運営コストを削減しようというもの。もちろんムダなコストは下げなくてはならないが、公立美術館だってすでにボランティアの手を借りるなど、かなりコスト削減はしている。

目先の損益(観覧者)やキャッシュフローも大切だが、入館料で黒字にならないのは明白であり、むしろ赤字運営が前提の施設である。バランスシートとして美術館を見れば、借入金が過多で資本が無いのに(簿価の)資産ばかりが肥大している。結局はだれかがバランスシートの右側を負担しなくてならない。目先の会計だけを考えて民間委託をするのでは、いずれは夕張のように美術品が傷むだけである。

【企画展依存という問題】
収入アップにも課題はたくさんある。たとえば「美術展といえば企画展」というイメージを美術ファンに植えつけてきた業界体質は罪が重い。常設展は美術展ではないのだろうか?

もちろんコアな美術ファンではない、多くの人の来館は大切である。だが画展ばかりでは美術ファンがいびつになる一方である。スーパーや百貨店が安売りに走り過ぎて、バーゲンハンターしか呼べなくて経営が傾いたことを思い出させる。さらにイベント業者提案の企画展にだけ依存するのは、自前に運営力が無いという問題も突きつける。

【運営側のがんばりもほしい】
日常の運営面でも改善すべきポイントがある。たとえば開館時間。2007年1月21日に乃木坂にオープンする国立新美術館、週日18時に閉館(ただしイベントのある金曜は20時)。ターゲットは有閑シロガネーゼだけではないだろう。わたしのような会社勤め人だって行きたい。せめて19時、できれば毎日20時まで開館してもらえるといいのだが。

 Visual_home  設計 黒川紀章氏

ずいぶん前のデータだが(今もあまり変わりあるまい)、17時46分という数値がある。東京都内に立地する美術館(30施設)の閉館時間の平均値だそうだ。娯楽施設なのだからもう少しがんばってほしい。

【ひとりの美術ファンから勝手にアドバイス】
①公立美術館には大儀が必要
「ウチの市にもひとつぐらい美術館を」という甘さが破綻につながる。行政が市民に対して、ウチの市町で美術館が必要な「大儀」を説明し尽つくしてこそ、税金で維持しうるのである。コスト削減だけのための民間委託は本末転倒であり、運営に自治体が主体性を持てないなら閉鎖やむなし、だと思う。

②公立美術館は美術の公教育の場
たいていは開館にあたり、「○○市ならでは・・・」という美術分野やアーティスト選定、その地域資源とのマッチングなどコンセプトを考える。だが自治体が手がけるべき根本は公教育だと思う。美術を通じた教育の場づくり。子どもから大人まで、鑑賞・批評から描くことまで、美術教育に努めてほしい。地域バリューをあげる上でも効用があるはず。

③大儀、公教育、その上でコスト削減や支援策を考える
企業メセナ美術ファンドなど、最近は支援策はさまざま存在する。だが大儀を煮詰めて、基本的な方針を決めた上で、運営方法や組織改善である。その逆はない。

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 ホテルオークラが毎年主催する「アートコレクション展」(美術展示会チャリティ)

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月13日 (土)

カップ酒、量り酒のサードプイレス

前にわたしのマイミクが書いていたが、巷ではカップ酒が流行っているという。ちょっと気を利かせた屋台や一杯呑み屋では、「今日はどれにしますか~」とずらりと並ぶカップ酒から選ぶこともできるらしい。

なるほど、それはおもしろい!とちょっと調べてみるだけで、確かにバラエティ豊かにカップ酒が売られている。また量り売り(主に焼酎)も増えている。

しかるに、カップ酒や量り酒という売り方、需要が縮小する中での酒メーカーの創意工夫、競争激化の酒販店の生き残り策という見方もできる。今日のテーマは片手にカップ酒を持ちながら(いいえまだ_笑)、カップ酒と量り酒がテーマ。

【勝手にアドバイス Vol.103 カップ酒、量り酒のサードプイレス】
その昔、中小企業診断士の診断事例というと「酒販店」と相場が決まっていた。全国津々浦々どこにでもあるし、取り扱う品目もわかりやすければ、呑ん兵衛がターゲットというのもわかりやすいからだろうか。

だが大型リカーストアの増加、酒販規制の緩和で、どこのコンビニやスーパーでも酒販をするようになったあおりで、酒販店は減少している。つい先ごろ、わたしの家の近所でも最近酒販店が閉店した。診断士の提案くらいではいかんともしがたいのだろうか。

「酒販店の減少」
平成3年 106,649店
平成6年  92,436店
平成9年  83,770店
平成11年 77,668店
平成13年 65,098店
(出典 商業統計表)

【カップ酒流行のきっかけ】
ブームのひとつのきっかけが『カップ酒スタイル』という本のようである。

 448042217x_01__ss500_sclzzzzzzz_v6634939 スタイル、である。

「カップ」酒であることの魅力、その愉しみかたのスタイルだ。手軽に飲める機動力こそ最大の武器。「どのように飲むか」をこそ語るべきなのだ!これを読み終えたアナタが、居ても立ってもいられず、野へ、山へ、カップ酒片手に飛び出してくれたなら、望外の喜びである。
『カップ酒スタイル』 (いいざわたつや著)の紹介文より。

味わいよりもまず「カップ酒スタイル」という主張。それがかっこいいかどうかは人次第だが、お手軽だし呑み過ぎないのは事実。

【カップ酒の詰め合わせセット】
リカープラザ越後屋さんでは全国各地のカップ酒、にごり酒をよりどりみどりで詰め合わせしてくれる。豊富な品揃えから選ぶことができる。

Img10252399716   Img10251984413  Img10251745126 カップいろいろ。

「玉乃光」「吟醸 まぼろし」「梅錦」「初花」「沢の鶴」など銘酒やめずらしいものもある。カップ酒といっても、1本500円のものもあるのだ。10本セット詰め合わせでギフトにすると、酒好きにはウケるのではないだろうか。

Cup_hako10p  詰め合わせの例。

千葉県市川市の株式会社ヒズシステムではお酒の量り売りをフランチャイズ展開している。焼酎、清酒、ウィスキーなどの量り売り装置を導入するFCはすでに80社。

【月桂冠の復刻醸造酒カップ】
ブームに乗り遅れまいと、大手の月桂冠でも明治・大正・昭和の味を再現した「復刻醸造酒カップ」を発売していた(2006年12月末で終了)。

 20060801gekkeikan  明治、大正、昭和のひびき。

月桂冠は、明治・大正・昭和時代のそれぞれの日本酒の味の特徴を再現した「復刻醸造酒カップ」を2006年9月に発売する。「明治仕込み」「大正仕込み」「昭和仕込み」の3種類で、それぞれ180mlの飲み切りサイズのガラスコップに詰め、ラベルには各時代の図案をアレンジした。
引用元 http://www.nikkeibp.co.jp/news/life06q3/509775/

【勝手にアドバイス】
このような商品開発や売り方の工夫は、消費者が路面の酒販店で酒を買わなくなったこと、日本酒や焼酎の総需要が停滞していること、本格品(ビールならエビスビール)か、格安品(発泡酒)かに個別需要が二極化していることが背景にある。

カップ酒取扱いや量り売りは、中小企業診断士試験の回答としては模範解答といえるだろう。だが本質的にマーケットを変えるというまでの力があるかどうかは疑問である。

珈琲店を考えてみよう。パパママ運営の店は淘汰され、ドトールチェーンが価格破壊業界参入し、大手チェーンも価格を下げざるをえなかった縮小市場に、スターバックスが進出してきた。飲料単価は300~500円である。「日本では成功しないよ」という声を掻き消し、今や売上高800億円に迫る。

それは珈琲を愉しむ「くつろぎのサードプレイス(家庭でも職場でも学校でもない3番目の場所)」を創りあげたからに他ならない。既存の珈琲店の枠組みをとっぱらってしまった、スターバックスのスタンダードを浸透させたからである。

Main12_fig02  スターバックスという3rd Place。

野へ山へのカップ酒スタイルでは新しい市場は創れないが、窮状を脱するには、「(いわゆる)呑み屋でも自宅でもない3番目の呑み場所」を創るしかないのであろう。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月12日 (金)

夢のプロジェクタ・セッション

仕事始めの実質的な第一週も今日で終わり。お疲れさまでした。わたしはクライアント向け資料づくり、2月に予定しているセミナーの準備などで、すでにお休みムードは払拭・・・したつもり。

そうそう、来週はまた出張&セッション・・・と思って、コンサルタントの七つ道具のひとつ、プロジェクタの使用予約を!と思ったったとき、ブログのテーマをひらめいた。

兼ねて思っていた「こんなプロジェクタがあったらいいのに」というアイデア。コンサルタントや企画職、コーチングを仕事にする人にはハハンと言ってもらえないだろうか。今日の勝手にアドバイスは「夢のプロジェクタ・セッション」。

【勝手にアドバイス Vol.102 夢のプロジェクタ・セッション】
わたしの考えるコンサルタントの七つ道具とは、ノートPC、メモリー、ノート、筆記用具、携帯電話、差し棒(レーザは嫌い)、そしてプロジェクタ。このうちプロジェクタだけは他のモノと違って肌身離さず、というモノではない。

最近の製品はかなり明るく、しかも小型・軽量。だがどこの会社の製品も似たり寄ったりなのが難。ちょっとした差別化提案の前に、われわれの稼業の現場での使い方を説明しよう。

【コラジェクタ・セッション】
業務でのプロジェクタの普通の使い方といえば、部屋をちょっと暗めにして、あらかじめ用意したおいたプレゼン資料を粛々と説明するための投影機器。最近はどの会社でもちょっとしたミーティングにも使うようになったため、明るめ(2000ルーメン以上)のプロジェクタが主流になってきた。

これはちょいと自慢だが、わたしはかれこれ6年以上も前から「コラジェクタ」というセッション運営を実践してきた。コラジェクタとはプロジェクタとコラボレーションを掛け合わせた造語で、慶應MCC(丸の内シティキャンパス)の桑畑幸博さんが開発したとされる。商標登録済みだそうだ。

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 コラジェクタ実践セミナー資料より(慶応大学丸の内ワークショップサイトより)

まず司会者と書記役が二人セットで運営側。ひとつのスクリーン(壁)にプロジェクタで資料を投影しながら、会議の参加者の発言内容や打ち合わせ事項を、リアルタイムに記録してゆくという方法。メリットは多い。

 ・ひとつの画面に皆が集中するので議論が拡散しない。
 ・専門用語も確認しながら記録できる(これはわれわれの仕事には重要)。
 ・決めたこと、実行することが即時で共有される(言った言わないもない)。
 ・議事録がその場で作成されるので、会議終了=その場で議事録配布が可能。

実際の運営は司会者と記録者のアウンの呼吸やタイピング能力、もちろん会議運営能力も問われ、すぐにはうまくはできない。準備資料にもコツがある。先日のセッションではクライアントに大変勘の良い女性社員がいた。わたしは彼女の書記役スキルには大変満足した。ありがとう(読んでないか_笑)。

社内だと司会がうまくできないが、たいていの会社ではこれに近い作業もしているはず。だからもっとコラジェクタ・セッションをスムーズにするために、それにあったプロジェクタを開発してほしい。

【勝手にアドバイス、ならぬ勝手にアイデア】
①プロジェクタにキーボードを付ける。

プロジェクタにUSBポートを設け(すでにある製品もある)市販のキーボードを装着できるようにしてほしい。オペレーション・ソフトウエアにプレゼンデータのメモリー付きのプロジェクタ。キーボードは客先で借りるか、軽量薄型の製品をセットにする。プロジェクタだけで、コラジェクタ・セッションが開けるし、クライアントの指摘事項もその場で記録できる。

軽量化が図られてきたとはいえ、プロジェクタは2kg内外の重さがある。ノートPCの入ったカバンに、プロジェクタも下げて出張に行く身になってもらえれば、このアイデアは良いと思うのだが、いかがだろうか。

②二眼レンズのプロジェクタ。
わたしはプロジェクタを2台同時に使ってセッションをしたこともあった。とくに資料のある箇所を拡大しながらも、ページ全体を隠したくないという場合である。小さなレンズでいいので、デュアルに投影機能がほしい。

「ここの箇所だけ大きく映してみて!」 異なる画像データを立ち上げてもいいだろう。デザイナーさんのセッションでもよさそう。ノートパソコンとセットであれば近いこともできる機能を持つプロジェクタもあるようだが、片方に動画、片方は静止画という組み合わせだと、遠隔でのセッションも1台で可能である。

③録音機能付きのプロジェクタ。
わたしはテープ起こしはしない主義だが、せっかくだからボイスも一緒に記録しておくと便利な場合もある。単純にICレコーダー機能が付加されていてもいいのだが、ページごとに発言が録音される(このページのときにAさんがこれこれの発言をしたことがわかる)ならば便利かもしれない。

【プロジェクタの市場規模と成長性】
プロジェクタ大手のエプソンによれば、データプロジェクタ(企業で使用するプロジェクタのこと)市場は2005年に356万台(全世界合計出荷台数)、ホームシアター・プロジェクタは54万台(同)。2007年までにデータプロジェクタは毎年20%、シアタープロジェクタは年率5割で伸びると観ている。

4548056090799  エプソンのプロジェクタ。お世話になっています。

最近の機種の機能は、2500~3000ルーメンとい照度アップ、リモコンは当たり前だが、メモリーを本体に持ちPCレスで操作が可能なものもある。高機能(国内メーカー)か低価格か(台湾など)、市場は二極化しているという。

価格競争に巻き込まれなければおいしい市場でしょう。価格競争を避けるには、機能の差別化を図るしかないですよね。わたしのささやかなアイデア、「記録する」「観る」「聴く」の3つの新しい機能のアドバイス。コンサル稼業7年の真髄(?)ですので、ニッチな市場規模はあると思う。

国内でも台湾でも、ニッチ市場をねらうプロジェクタメーカーさん、リサーチから市場投入まで、リサーチ&セッション&アドバイスいたします。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月11日 (木)

湯たんぽに学ぶ「温故知材」

いよいよ寒くなった。わたしも昨日からコートが一ランク厚手になった。乾燥して肌もかさかさ、喉も痛いこともあり、水分をできるだけ取るようにしている。そんなある日(正確には昨日ですが)、Cherryさんから「湯たんぽがアツい!」というメールが飛んでまいりました。

一昨年来の原油高もあり(生活面では灯油高ですね)、LOHASという環境にやさしいライフスタイルが注目されている。さらに空気も乾燥させず、安全な温かグッズ「湯たんぽ」が見直されているそうだ。

人肌でぬくもるという幸せな人もいるだろうが、あんがい相手は「腕がしびれるからな~」などと思っているかも知れない。ウチは「猫が湯たんぽ替わりなのよ」という猫派もいるが、湯たんぽのように猫の上に足は乗せられない。猫は人の上に乗ってくるのでかえって悪夢をみたり。ですので今日の勝手にアドバイスは湯たんぽ。

【勝手にアドバイス Vol.101 湯たんぽに学ぶ「温故知材」】
改めて言うほどのことはないが、湯たんぽのメリットは次のようなものがある。

①電気も灯油も使わない(お湯を沸かすときだけガスや電気を使う環境への優しさ)。
②温まりすぎない(コタツや電気毛布では温まりすぎたりする)。
③中の水(温いお湯)も再利用できる。
④頭寒足熱でぐっすり熟睡できる。
⑤低コストの暖房器具。

湯たんぽというとあの波をうった商品イメージがあるが、どうもそれがCherryさんによると違うのだ。

 Yutampo2006   やはり波打つのが基本?
 尼崎のマルカの製品。純銅、真鍮製がある。

【さくらんぼの種で温まる】
ぬくぬくくまさん」というネーミングのこの商品、さくらんぼの種100%で温まります。

100%さくらんぼの種でできたた自然の恵みの優しい暖かさ! 
この袋の中には可愛いさくらんぼの種が沢山詰まっています!
自然の恵みの暖かさですね。優しい暖かさはリラックス効果抜群!!
日本で言う使い捨てカイロのような感じなのですが、物や資源を大切に使いながら暮らすドイツの人々のアイデアから生まれた繰り返し使えるぽかぽかクッションです!


Img35882703_1  Img35882702 あまり可愛くないが(笑)。

クッションごと電子レンジで20秒~1分温めるだけ。さくらんぼの種にそんな機能が隠されているとは知らなかった。自然の恵みとはありがたいものである。お湯も環境にやさしいがこれもかなりやさしい。だがこのサイトの商品、実は今は売り切れている。紹介して売り切れは申し訳ないので探してみた。

Img30897494  座布団型のさくらんぼの種の湯たんぽ 2,500円。

Img10292839115_1 湯たんぽにも氷枕にもなるよ♪ オーガニックコットン ドール/あったかペーター
ちょっと高い4,200円。

【小麦でも温まるんだそうです】
アルファー波を増やしリラックス効果の高いラベンダーとナチュラルな小麦粒子入りの環境に優しいホットピローです。電子レンジで(約2分)温めれば約1~2時間その温かさが持続します。

Img10486563950 Beddy Bearという名前は怪しい(笑)。 4,800円。

さくらんぼの種に小麦粒子。きっと他にも自然の恵みで温まるものがあるだろう。

【勝手にアドバイス~温故知新の知恵】
温故知材とは、もちろん温故知新のもじり。そもそもはカタログハウスに温故知品というリサイクルショップがあるところからのもじりのもじり。

昔ながらの素材を使うことにも新しさがある、昔からある知恵、昔からある素材を商品開発に生かそう、というわたしからのメッセージ。

たとえば、建築素材。インテリア素材であれば日本には「紙」「土」「石灰」「古材」「石」を使う伝統がある。衣料であれば、以前ブログで紹介したソールワークは、温故知新を「和柄」で実現したビジネス。アイウエア(眼鏡)のブログでは新潟華眼鏡の「竹」の眼鏡フレームを紹介した。

Ygp_image_soulwork ソールワークと、Imagejb15   竹。

カネボウはお米のとぎ汁由来の「泔(ゆする)エッセンス」を開発し、ダメージヘアの改善商品を出している。「米のとぎ汁を用いた平安時代宮廷女性の髪のお手入れ習慣」に着目したという。もっともこの商品は今は廃番。どうやら「いち髪」シャンプーに商品を変更したらしい。この商品にその成分が生かされている。

B000jtugro_01__aa280_ou09_pibundle2topri  一髪。

Cherryさん(さくらんぼ)は温かいんだ」というのは事実である(ホント_笑)はさておき、湯たんぽにもあった「古きをたずねて新しきを創る」のも商品開発の王道である。人間(会社も)、そんなに新しいことを生み出しているわけではない。温故知材という素材づかいにこそ知恵がある。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月10日 (水)

ICタグ 柔らか用途で市場拡大

今日(2007年1月10日)の日本経済新聞に「ICタグ 使い道広がる」という記事があった。そこには配線ケーブルにタグを付けた配線管理システムや在庫物流管理、製造履歴管理、違法駐輪管理、子どもの登下校管理など、用途がぐんぐんと広がってきているという内容が書かれている。

見えないところで普及しつつあるICタグ。コストダウンも実現して(今や1個5円)その課題は「用途開拓」である。用途を開拓し、システムで導入できれば、ど~んと大きく商売ができる(ちなみにシステム込みの初期投資は数百万円以上)。そこで今日の勝手にアドバイスのテーマはICタグの用途、それも新聞にはないような用途、なるべく柔らかい用途を考えよう。

F4576i2  ICタグのスケルトンのイメージ。

【勝手にアドバイス Vol.100 ICタグ 柔らか用途発想トレーニング】
ICタグとは何ぞやはもう充分だろうが、バーコードリーダーQRコードとの最大の違いは、何回でも追記や書き換えが可能だという点。だからモノの行ったり来たりの移動の記録に向いている。

つまりバーコードリーダーやQRコードは商品情報だけを一方通行で伝えるICタグは利用情報を伝えるという理解でいい。用途考える場合、次のような基本特徴をおさえておきたい。

①とても小さい(最小は0.4mm角)
②情報を記録することができる(データ容量は64~128バイト)
③非接触で情報を交信できる(遮蔽物の影響を受けない)
④書き込みが何回でもできる(10万回という製品も)
⑤電池を持たないタイプもある(無線で電力を伝送される)
⑤熱や衝撃やほこりに強い

こんな特徴があるので、ヒトの体内に埋め込むという話まであった。だが今のところの用途開拓はモノの出入り管理が中心である。

Img004   
用途もいろいろ、市場もいろいろ。
凸版印刷のサイトより http://www.toppan.co.jp/products_service/ic_tag/rfid/003.html

【病院でのICタグ利用例】
民間利用で比較的進んでいて、具体的にイメージしやすいのが医療機関での活用事例。実用化、これから実用化を含めてこんな用途がある。

・製品の取り違い防止(薬剤投与、血液確認、血液取扱、母子確認などのため)。
・患者取り違い防止(患者へタグ付け)。
・スタッフおよびスタッフ用アラームの位置確認。
・医療器材の資産の位置確認(移動式超音波装置、CTなど)。
・盗難防止(高価な医療器材の盗難を防止する)

日本でもよくあるのだが、高価なカテーテルなどは、医師がアルバイト先の大病院からくすねて、自院に持って帰るというケース。より深刻なのは医療麻薬などの盗難防止管理である。

患者にICタグをとりつけるのもいかがかと思うが、担当医師がこれからオペに入る患者に。「切断するのは左足ですね」「そうです、ばっさりやってください」と言いつつ、オペで右足を切ったという事例もあったので、ICタグで健康な足が救われるなら安いものです。

【この口紅、わたしに似合うかしら?】
これはけっこう活用がわかりやすくニーズのある事例。口紅を塗る前に、その色の口紅を塗った自分のお化粧フェイスをシミュレーションできるのだ。

様々な化粧品を気軽に試してみたい―そんな女性の願いをかなえるのが、RFIDタグ(無線ICタグ)を利用した「メイクアップシミュレーションシステム」である。(中略)ネットワーク技術と融合することで、応用範囲が格段に広がりつつあるのだ。

  Images799115  商品を選択して(ICが付属)、

  Images799113 カメラで写した自分と商品をシミュレーション。 

口紅という商品にICタグを付け、その製品情報(色)とユーザーが付けたときのフェイスをシミュレートできるというところが新しかった。反響はそこそこあったので記事多し。下記サイトを参照。

NTTコミュニケーションズ「メイクアップシミュレーションシステム」
http://www.ntt.com/ict/future/make_up/
http://premium.nikkeibp.co.jp/itm/case/13/
http://ascii24.com/news/i/topi/article/2006/02/13/660520-000.html

【発想~勝手にアドバイス】
勝手にアドバイスのほどサマになっているが怪しいが、啖呵を切った手前、わたしなりに楽しそうな用途を考えてみました。

1.屋外での利用 ~ 四国お遍路さん

四国お遍路さん巡りにICリーダーをつけ、いつ通過したか、何分で到達したか、お遍路さんなりの競争をしてていただく。杖やお年寄りパスにICチップを入れる。
派生系としては、「各地の七福神」や、愛する人のための「お百度参り」につけるのもいい。ズル監視というまいな思考でなく、いくつ歩いたか忘れた・・・という忘却支援に。もちろんオリエンテーション競技にも適用できる。

2.健康コンビニ ~ ダイエット日記 (by Cherryのアイデア)

 購入するお弁当や惣菜を支払の度にカロリーや繊維質量を記録する。「ああ今週は食べすぎね!」と思えば購入制限をされるが、 ああ今日は○カロリーたべちゃった。まずい!今週はもう○カロリーもオーバーぢゃん、みたいな。オーバーしたら「あなたには春雨スープを!というレコメンデーションができそう(笑)。

3.ワードローブ・シミレーション

その場で購入する商品のシミュレーションができるのは、先に上げた口紅のから理解できる。だが女性の買物とは、その時・その場の商品だけでなく、自分の持ち物とのコーディネイトをしたいという欲求が強い。

そこで過去に購入した商品のICタグ情報(商品そのもの)を携帯電話に取り込み、お店で携帯から情報をお店のシステムの飛ばし、「家にある、あのブラウスと合うかしら」を、これから買おうとする商品とシミュレーションが画像上でできれば、これは素晴らしい。女性向けだけでなく男性にも、ネクタイやシャツや靴のコーディネイトに効果ありそう。 

4.旅行 2.0

旅行好きの人向けに「旅行ヒストリー・カード」というようなものを発行する。旅行先の名所旧跡で、チェックポイント(ICタグリーダー)にそれをかざして、「わたしがいつここに来た」という足跡を残せる機能を持たせる。その履歴はネット上で管理され、個人別にいつ・どこに旅行したという記録がなされる。そこから旅行先の類似な同好の士を集めて、旅行企画などが可能である。

以上、発想をまとめると、お遍路さん行動チェック』、ダイエット日記は『ウェイト・ウォッチャー』、所有と購入のワードローブ管理は『コーディネイト』、そして旅程の記録は旅行2.0は『わたし記録』というタグが付けられる。こんな発想もできる商品、需要開拓を工場や倉庫にとどめておくにはとても惜しい商品、それがICタグなのである。

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【@WORK】
今日(2007年1月10日)午前中にMac WorldでiPhoneのキーノートニュースをチェックして、もう興奮(笑)。クライアントへのセッション資料も気もそぞろになってざっくり(嘘ですよ)。お昼休みにジョブスのKey noteにアクセスしようとしたら・・・まったくダメ。サーバダウンかしら。今度はがっかり。

Itt0701100001  ジョブス。

同僚のNN嬢にいち早く「見た?このニュース?」とやったら、BOSEのiPodスピーカーを先ごろ購入した彼女こそ、もう気がそぞろというか、Appleへの物欲にどっぷり(笑)。物欲オンナになったというメールを着信しました(笑)。

それにしても美しき携帯である!わたしは工業デザイナー深澤直人氏のinfobar2を買うという決心が揺らいでいる。さらによく落ちるMSのIE7に愛想が尽きていることもあり、次期パソコン購買の肝は決まった。

つまりわたしの今日一日はiPhone Day。そのデザイン/美しさ、発表された機能、そして機能拡張予感にも、心身共に刺されました。ではまた明日。Click on tomorrow!

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号外 iPhone登場!

噂は本当だった! iPodと電話の融合機がいよいよ発売される。

Indexhero20070109
http://www.apple.com/iphone/

電話、メール、ウェブ、そしてiPodという四つの機能が整然と並ぶ様は美しい。以前にこのブログでも「いよいよ発売か?」と取り上げたことがあったが現実になった。

さらにカメラ(2MGP)、Googleマップ、写真、インスタント・メッセージ・・・など、やってくれたという機能満載のようである。マネー機能はどうか? アジアへの投入がいつなのか? 2008年とされているが、日本市場という技術閉鎖市場への投入はあるのだろうか?

などなど期待と疑問が尽きないが、ぜひ次週の「勝手にアドバイス 旬ネタ」では、iPhoneという機能&デザイン革新商品を中心に、携帯電話のマーケットView戦争といった切り口で、市場制覇のマーケティング・アプローチを書いてみたいと思っている。

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~Marketing brain blogの構成は3つ、ほぼ毎日更新中~
【勝手にアドバイス】 気になる商品・サービス・店舗の「もっと売れる勝手なアドバイス」。
【勝手にアドバイス:旬ネタ】 勝手にアドバイスを、旬のネタを連続テーマで書きます。
【メルマガ:ぷろこんエッセイの転載】 隔週でお届けする「コンサルタントの本音エッセイ」
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2007年1月 9日 (火)

リーガJ フットサルの夜明け

2007年は7月にアジア杯はあるとはいえ、五輪は来年、次のワールドカップまでは3年もある。だから今年はサッカーイベントの端境(はざかい)期。ワールドカップの敗戦以来、日本代表の試合が満員にならない、視聴率が取れない、しかも代表グッズのレプリカ・ユニフォームは福袋で在庫処分という話さえ伝わる。

だが今年は、身近な草の根レベルで新しいプロフェッショナル・サッカーリーグが発足する。それは日本フットサルリーグである。1月下旬にはリーグの愛称(要は「Jリーグ」のようなもの)が決まるという。今日の勝手にアドバイスは日本のフットサル。

Futsal
もうすぐ愛称が決まります。

【勝手にアドバイス Vol.99  リーガJ フットサルの夜明け】
そもそもフットサルって何?もあるだろう。だが40代、50代の人でも昔は「ミニ・サッカー」やりましたよね。「ああ、それならやったことがある!」なら、体育館でもできるあのサッカーのこと。

草サッカーゆえに、ルールも1994年にようやく統一。1989年以来はサッカーと同じく、ほぼ4年に一回の間隔で、FIFA世界フットサル選手権が開催されている。

【日本のフットサル】
フットサル施設は日本全国で500を越えているというが、その全貌はなかなかつかみきれない。だが1999年よりフットサル普及に立ち上がった「フットワン・リーグ」は『関東(東京、埼玉)、関西(大阪、兵庫)で年間約500チーム、総勢10,000名以上 が参加する日本最大のチーム固定制フットサルリーグです』という規模だから、それ以外の地域での活動を考えると相当な規模なのである。

だが一方で代表レベルとなると、日本代表の世界での戦績は残念ながらまだ道険しである。1989年オランダ以降、92年香港、96年スペイン、00年グァテマラ、04年チャイニーズ・タイペイまですべて予選落ち。08年ブラジル開催での初出場へ向けて、本腰を入れううとしているのことも、プロリーグの発足につながっている。

今や海外(スペイン)で活躍する小野 大輔選手ら日本人選手は増えている。海外に出るフットサル選手を増やすためにも、日本リーグが必要なのである。

【フットサルというJOY】
そのルールを簡単にまとめると、プレイヤーは5人以下、コートの大きさは縦38~42m×横18~22m (国際大会の場合)、天然芝、人工芝は国際大会では認められておらず、前後半20分ずつ、交替は7人までで戦う。他にもスライディング・タックルやショルダーチャージは認められていないなど、子どもにも女性にも楽しめる競技になっている。(数値等) 

あのロナウジーニョもフットサルからサッカーを始めた。ブラジルのあちこちでの草サッカーの延長だろう。彼の幼少時のプレー(フットサル)と、最近のプレーを重ねあわせたナイキのCMはすごかった。数ヶ月も前だが、わたしは同僚のヒゲのチョイ悪から、このファイルのコピーをもらった。驚愕した。

 060414_arc_nikesoccer2 RONALDINHO joy

ロナウジーニョだけでなくジーコ、マリーニョ(フジタ工業、日産自動車で活躍したサッカー選手)らもまたフットサル出身。テクニックを極めるにはサッカーよりフットサルが良いというサッカー関係者は多い。密集したエリアで抜きさるボールコントロール技術、チャージやタックルがないゆえ、ボールの扱いと狭いエリアでのパス交換に専念するからである。とりわけ技術は中学校までしか身につけられない、走力や体力は後で充分、という専門家もいる。

【日本フットサル・リーグ】
そこでプロ化して一気にフットサル・ブームに火を点けようという日本リーグだが、北は花巻から南は大分まで8チームで発足。町田市(東京都)がベースというチームもあり、1万人収容の大阪市立体育館をべースにするチームもありさまざま。だが投資にも熱いチームもある。

名古屋ベースのプロチームのさきがけ、大洋薬品/BANFF(名古屋オーシャンズとしてプロリーグに参加)は、こんな立派なアリーナまで着工しているのである。本格的である。

 Taiyou_yakuhin_arena  見るもよし、やるもよし。

【勝手にアドバイス】
①U15がフットサルの主役
上(プロリーグ)から底辺を引っ張りあげるという趣旨は良いが、気になるのはU15(15歳以下)。中等教育でサッカーをするかフットサルをするのか、さらにクラブか学校かという選択がますます問題になる(サッカーでの課題でもある)。U15は将来の日本サッカーにとっても大切な成長期であり、プレー人口を広げると同時に、才能を見出すキャリア・パスわかりやすくしてほしい。

②オレにもできる、わたしも楽しめる状況づくり
すでに500施設もあるし、彼やハズバンドもやっている人も多いだろうが、もっと力を込めてテニス人口まで奪取すべし、だろう。わたしのように昔サッカーをやっていた人(中学だけデスガ)を引き込めればGoot。

③高い技術のアピール
大衆化させる一方で、「オレにはとても真似できない」というフットサル技術を、日本リーグは見せ付ける必要がある。それをどんどん(携帯)動画配信するような仕組みがあれば、子どもたちもそれを真似して、小野選手のようにスキルを磨きたい!となる。大衆化をうながすためには、実は高いレベルを見せ付けることこそ必要なのである。これはあらゆるスポーツ普及の基礎である。

 Hibiya_sal
 今日(1月9日)、当社のある日比谷国際ビルの日比谷シティでの特設フットサル場での光景。

今日は以上です。あ、リーガJ」というのは、実はわたしのネーミングです。応募はしていませんが。
ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月 8日 (月)

サウンド・オブ・マーケティング

今日はまぐまぐめろんぱんから隔週でお届けしている『ぷろこんエッセイ
からの転載です。

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名前だけの名刺を作ったのにはわけがある。
会社員のころ、仕事に行き詰まり「フリーで新しい道を探りたい」と話したら、
先輩にこう言われた。「今の仕事を自分の力と思うな。相手はあなたの会社
名と肩書きで会ってくれているのよ。名前だけの自分に何の力があったのか、
両方失ってはじめて思い知る。それでもよければ辞めなさい」


      ももせ いずみ(生活コラムニスト) 日本経済新聞2007年1月6日

       *********************************************

「最近の新事業や起業では、"サウンド″をしなくなりましたね」

この春に実施する事業改革セミナー(テーマは事業資源の集中やマーケット
を観る視点の変革による事業再生)の打ち合わせをしていたとき、外部の
コンサルタントEさんがぽつりと漏らした。

「そうかもしれませんね」わたしも同感だった。「わたしがマーケティング・
リサーチをしていたときは、よく"サウンド″活動のためにクライアントの開発
者と歩きましたよ」
「ほう開発者と一緒にですか」
「たとえばS化学工業の案件では、お弁当などに使う樹脂製の新容器の開発
がテーマで、開発者が『オレも一緒に調査して顧客の話を聞きたい』とおっし
ゃるので、わたしがアポとって、いっしょに弁当屋や惣菜屋めぐりをしました。
わたしが調査先の方にインタビューするかたわら、S社の開発者も質問を
投げかけていました」
「やっぱりそういうことはしなくてはダメだよね」

そのときS社の開発者とふたりで、お弁当屋さんの調理場まであがって、
立ち話でお話を聞いたことを思い出した。そういうときのやり方は、紙一枚に
事業化や新製品の要旨をまとめて、仮想顧客のドアをたたいて、その声や
表情を"サウンド″するのである。10件で十分。20件も聞けば尚正確だが、
多くやる必要はない。最初の2、3件でだいたいの反応がわかるからだ。

マーケットサイズや成長性といった「概論」は、従来の延長線の商売なら
あてはまるだろう。だが新規商材のチェックポイントは、目の前の人が
買いたいと思うかどうか。それだけと言っていい。想定ユーザーの目や
口調がどんなものか、この気づきをクライアントに促し、方針の修正や
さらなる深堀りをしていただくのである。

ときに残酷でもあるが、これも必要な作業である。

    J0409010

生のお客さんの話を聞いて「冷えて」しまった事業化製品もあれば、火が
消えなかった事業計画もあった。火が消えなかった事業計画にさそわれて
転職して、その事業の立ち上げから軌道にのせるまで一貫して付き合えた
わたしは幸運だった。コンサルタントをする前の話である。

       *********************************************

昨年(2006年)からブログを書き出して、おもしろいと思った商品やサービス、
人々をとりあげてはブログ上で「勝手にアドバイス」をしている。取り上げるもの
の中にはしっかりと"サウンド″をしていると思うものもあれば、勢いと内部の
盛り上がりだけで突き進んで、仕掛け優先で、あとのシナリオが無いと思う
ものもある。

まれにはヒザ打ちモノのアイデアで、サウンド不要なもの(大学生が発案した
コピー用紙の裏に広告を打つという『タタコピ』が好例)もある。だがそういう
アイデアは稀であるし、アイデアや技術が良くても、思いは正しくても、結局
大きな市場はなかったというケースも多い。

そのためには最低限のサウンドはすべきだろう。ウチのアイデアの元はシーズ
的発想だから、未知のモノを知らない素人相手にサウンドしても無駄である、
という態度は唯我独尊である。想定ユーザーがたとえ「良いか悪いかわから
ない」という意見だったとしても、それはそれで重要な意見なのである。

       *********************************************

かく言うわたしも、何度も"サウンド″して挫折している。

わたしはいっぱしのアイデア魔なので、「これはいける!」と思いついては
一、二枚のシートにアイデアをまとめて知人にぶつける。跳ね返ってくる
「音」は、ときに「シ~ン」であったり、ときに「バカ~ン」であったり。知人は
さぞや迷惑であろう。

多くの人を巻き込んでサウンドした件もあり、跳ね返ってくる音が鈍くても、
対象を替えたり、サービス方法を替えたりして、かなり粘ったこともあった。
ある事業化の件では、淡白なわたしにしては相当に粘った。たくさんの
意見も聞きつつ案を何度も修正した。しかし、最後にはこうまで言われた。

「あなたね、これで独立しようと思っているなら、やめときなさい」

こうまで言われたと親しい人に話したら、「郷さん(わたし)、良い人脈を
お持ちですねえ」となぐさめられた。確かにそうかも知れない。たとえ
アイデアを潰されてショボンとしても、サウンドをする効用はある。

       *********************************************

サウンドする効用とは、「冷やす」ことと「燃やす」ことにある。

冷やすというのは「そのアイデアや技術でマーケティング構想を立ててみな
さい」というプロセスである。

そのアイデアや技術がどれほど従来の需要構造を変化させられるか。
売り方はどうするのか、販売チャネルはどうあるべきか、アフターケアは・・・
それらが一貫性を保っているか。この考えることが「冷やす」「冷やされる」
プロセスである。

企業内だけでなく、個人のケースでも同じである。冒頭に引用した、ももせ
いずみさんの話にあるように、自立できるかどうかは「会社名も無い、肩書き
の無い自分」に市場価値がどれほどあるかを判断することである。

ももせさんの場合は、自分をマーケットに出そうとして、上司にしっかりと
冷やされた。その後10年間がんばってみて、会社と肩書きに頼らない自分が
できたと思ったとき、自分の名前だけの肩書きのない名刺を刷った。
冷やされたが、それで「燃えた」のだと思う。

冷やされても熱くなり、たたかれて固まるのが、サウンドというプロセスである。

       *********************************************

セミナーの打ち合わせが終わり、もうひとりの外部のコンサルタントのKさん
がこう言った。

「そうそう。いよいよ自分のオフィスを借りて、名刺も刷って独立しました」
と言って、自宅のプリンタで刷ったという名刺をもらった。最近はプリンタで
名刺が自在に刷れる。そこには自分の名前を冠したKXXXコンサルティング・
オフィス、とあった。

その方は、ある技術ベンチャー支援会社に所属していたはずだが、つい
2週間前に「独立しようかな~」とつぶやいていた、その矢先である。あまりの
電光石火の独立に唖然としてしまった。

おそらく、自分をマーケットに出す機が熟したと考えたのだろう。冷やされた
助走期間もあったのかもしれないが、きっとマーケットからそういう"サウンド″
が聴こえてきたのだと思う。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

18922  『くらし くりえいと』 by ももせさん。ぐっとな書名。 
くらしクリエイター/生活コラムニストのももせさんのサイト。  http://www.chikuwa.com/momo/


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2007年1月 7日 (日)

マリー・アントワネットというマーケティング・ムービー

映画『マリー・アントワネット』の公開が2007年1月20日に迫っている。

この映画(まだわたしは観ておりません)のテーマは、1770年に14歳でヴェルサイユ宮殿に嫁ぎ、夫ルイ16世との不和もあり、仮面舞踏会など乱痴気騒ぎを繰り返し、宮殿内外に敵をつくり陰謀を渦巻かせ、大衆の憎悪もかきたてて、ついにフランス革命で絞首刑にされたマリー・アントワネットの生涯である。

だが公開前の批評を見ていると、「歴史モノ」として観るには違和感のある映画のようである。監督と脚本のソフィア・コッポラという才女が、ずいぶんとお金(制作費40億)を使いながら、「私の映画に文句あって?」と言っているような。今日の勝手にアドバイスのテーマは「マリー・アントワネット」。

【勝手にアドバイス Vol.98 マリー・アントワネットというマーケティング・ムービー】
わたしの想像だが、この映画の見所は、ソフィア・コッポラ監督のファッション・チョイスマノロ・ブラニク)、それを着こなす主演女優キルスティン・ダンストのきらめき(ヘア・スタイルに注目)、舞台が18世紀なのにバウ・ワウ・ワウ(アイ・ウォント・キャンディ!)、あのスージー&バンシーズ(あら懐かしい『香港庭園』)といったパンク・ミュージックの選曲の妙にある。

その証拠ともいえる、All aboutの映画レビュー、というよりファッションレビューを引用しよう。

【マノロ・ブラニクが作る18世紀のセレブ!】
18世紀の超セレブ、マリー・アントワネットがはいていたであろうラブリーな靴たち。

Marie12  「ブラニクソロジー」ともいうべきか。

このように、ゴージャスな靴を侍女にはかせてもらっていた・・・らしい。ピンクの大きなケーキや、カラフルスウィーツが沢山盛られた部屋がマリーの憩いの場所。フランス政府の全面協力のもと、ヴェルサイユ宮殿で撮影が行われましたが、ソフィアが描くマリーは、歴史上の人物というよりは、とてもポップで、ときにはロックンロール。18世紀のパーティー・セレブといった雰囲気で、現代でいうところのパリス・ヒルトンに近い感じ。

Marie1  ブラニクづくし。

これが映画評だとはとても思えないぜ(失礼)。どうもこのファッション・レビューアの感想からすると、この映画は「女性がぱぁっと買物をした後のように爽快」って言っている(笑)。

【18世紀パンク・ミュージック】
わたしとしては選曲が実に気になった。Bow Wow Wow(バウ・ワウ・ワウ)やSiouxsie and the Banshees(スージー・アンド・ザ・バンシーズ)などのパンク音楽を起用するところはとてもセンスを感じた。ソフィア・コッポラ監督のマリー・アントワネットの解釈も考えさせられて、興味深かった。

アイ・ニード・キャンディ」の選曲は、マリー・アントワネットが貧困と飢えにあえぐ民衆がパンが無いということを聞いて、「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない」と発言したという逸話(史実ではないとされる)からの選曲だろうか。何より「香港ガーデン」はぐっとくるパンクだ。どちらもyoutubeでぜひ聴いてほしい。

Siouxsie_and_the_banshees  Siouxsie and the Banshees

【米国のボックスオフィス動向】
水を差すようで悪いが、話題の割りに米国ではあまりヒットしなかった。2006年10月20日~12月3日まで、49日間、2ヶ月もたなかったわけだ。公開劇場数も多くはなかった(全米で870館)。

興行収益は15million約20億円)。06年最大のヒットがPirates of the Caribbean: Dead Man's Chestで423million。ちなみに4位のThe Da Vinci Codeは217million。マリー・アントワネットは2006年公開601映画中125位であった。

【ソフィアには父の映画づくりの血が流れている】
彼女の父、フランシス・フォード・コッポラには佳作『雨の中の女』がある。逃げてきた女をかくまう元花形フットボール選手(事故の後遺症で頭があまい)を描いたロードムービー。この地味な作品のあとに、あの「ゴッドファーザー」を監督した。あのニーノ・ロータの音楽、ドン・コルレオーネのタキシード姿・・・そうそう、わたしの友人はこの映画を「生涯の最高傑作」と言っていたっけ。

 Don01  男、ドン・コルレオーネ。

ソフィア・コッポラも東京を舞台にしたロードムービーから卒業して、「マリー・アントワネット」を撮った。評価はともあれ、自己の思想をファッションと音楽で表現するという血は争えない。

A000126300 監督ソフィア。A000126304 リハ風景。

【これから観る人に勝手にアドバイス】
この映画はカップルで観る人、女性ひとりで観る人に分かれるでしょう。女性ひとりだと「ああ、すごっく良かったぁ!」が感想でしょうが、カップルの相方には退屈かもしれない。マノロ・ブラニクって何がいいの?みたいな。

相方に告ぐ。彼女が映画のどこに興味を示すか観察すべし。そこに赤裸々な女心(物欲か、音楽好きか、歴史考証家か)が語られるのだ。

だからマーケターにとっては「女性マーケティング・ムービー」として価値がある。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月 6日 (土)

未病を推進!漢方キャラで健康に

岸田今日子(女優)、ジェームス・ブラウン(ソウルの神様)、ジェラルド・フォード(米国元大統領)、諸井虔(論客)、そして安藤百福(即席ラーメンの父)・・・この年末年始(2006~07年)は人がよく死んだ。正月早々縁起でもないといわれそうだが、人はいずれ死ぬものである。

何十年も行き続ければ人は体調不調にも病気にもなる。それを受け入れて予防に努めようという考え方が「未」というアプローチである。今日の勝手にアドバイスは健康第一という祈りを込めて、「未病という漢方アプローチ」のビジネスを紹介したい。

【勝手にアドバイス Vol.97 未病を推進!漢方キャラで健康に】
未病とはどういう意味なのか。日本未病システム学会ではこう規定されている。

「未病」とは「病気に向かう状態」を指し(中略)「自覚症状はないが検査では異常がある状態」と「自覚症状はあるが検査では異常がない状態」を合わせて「未病」としています。

 Mibyozu  ハート型

ポーラ化粧品のサイトの説明はわかりすい。
東洋医学では生体の機能を「気・血・水」に分け、このバランスが保たれた状態を「健康」と考えています。このバランスが崩れると、なんだか調子が悪い、疲れやすいなど、病気ではないが健康でもない状態「未病」になり、未病がさらに悪化すると「病気」になると考えます。

気とは「病は気から」の喩えどおり気力=生命力。血は血液、水は身体の体液。この三つが未病のバロメータである。

【未病推進は漢方から】
予防というと「セルフ・メディケーション」という言葉が使われてきた。それはMedication、つまり薬物治療という西洋医学的アプローチ。未病とはあえて言えば、Self Precaution(=自分で用心)という東洋医学アプローチである。「未病」という言葉、かれこれ2000年前の後漢時代の「黄帝内経」(中国最古の医学書)に「聖人は既病を治すのではなく、未病を治す」が語源。

未病のビジネスカテゴリーとは「ヘルスチェック」「健康食品」「サプリメント」「健康・美容機器」「漢方」などがあるが、中国2000年の歴史を鑑みれば、未病の本来の取り組みは『漢方』ということになる。

【未病をiモードでチェックというビジネス】
株式会社フェイス(携帯電話の『着信メロディ』を考案・実用化した)が、2006年12月から『漢方美人堂』というサイトを開始した。

『漢方美人堂』は、漢方理論の考え方をベースに年齢や体調不良、疲労やストレスなどで健康や美しさなどが損なわれる前に予防することをサポートするサイトです。まず体質チェックを行い、「木」「火」「土」「金」「水」の5つの体質タイプから適合したタイプに振り分けられます。その体質情報をもとに10万通りのアドバイスの中から、現在の体調に最も合ったアドバイスを提供致します。

 20061201_56  漢方キャラ。

陰陽五行という「木・火・土・金・水」の思想をベースに体質チェックをして、自分を「木・火・土・金・水」のいずれかに登録する。キャラクターデザイナーを起用して「木=ポプラ」「火=フレイミー」「土=ソイル」など名前をつけた。わたしはちなみに『火』のようだ。

自分のタイプを登録し、体調変化を入力すると、キャラの顔やコスチュームが変わる。さらに携帯メールで美容(気血や気虚のレッスンを配信)、健康(不調サインを読み取る)、癒し(ジャスミン茶の楽しみ)、薬膳レシピ(胃腸にやさしいレンコン粥)などの情報が配信され、漢方や薬局検索、健康情報サイトなどにもアクセスができる(有料 315円/月)。

3 携帯サイト

陰陽五行という、こむつかしそうなコンセプトを携帯アプリのキャラで「ゲーム感覚で自分の未病をチェック!」するのはおもしろい。「自分の未病を漢方キャラクターで」というアイデアは、閉鎖的な医療行政へのカウンター攻撃である。

【勝手にアドバイス】
たまごっちなど「育てるゲーム」ではキャラを仮想的に育てるというコンセプトだった。ところが『漢方美人堂』は「自分の未病を自分のキャラで管理」するのである。

今日のわたしの運はどうだろう?という占いとは違って、「自分の体質」と「最近の食生活と生活習慣」から推定される病気を示唆してもらい、自分を守りなさいというもの。自分の体調を入力・チェックし、良好に保つためには何をすればいいか、アドバイスをしてくれるのである。

もちろんそれを物販やサービス販売につなげたいところだが、そこには「医師でない者の準医療行為」という壁がある。一線を越えると壮健どころではなく送検である。健康産業の宿命ともいえるが、行政と顧客ニーズの双方に壁があるのだ。

だから健康予防を漢方キャラという遊びで包もうというのだが、果たして商算はいかに。

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月 5日 (金)

SAKURAの春 プロローグ 5

2007年1月1日から1月5日までの【勝手にアドバイス:旬ネタ】は、新春特別
企画として、ある飲食店舗の建て直し物語をお届けします。今日は最終回です。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

休業日、お客さまインタビューの日になった。平日の夜6時からディナーを
食べてもらうという予定で集まってもらい、食後に意見を話し合うのが筋書きだ。

後藤にも麗朱、麗貴そしてワンダにも、夕方からでいいよと言っておいたの
に、3時にわたしが店に来ると後藤がすでに店の前で待っていた。鍵を開けて
店の中に入り、5分もしないうちにワンダもやって来た。すぐにいつもより念入り
に掃除を始めたのだった。ありがたかった。

今日は10人ぐらいの「お客さま」が来ることになりそうだ。麗朱・麗貴の家族
と彼女らの友だち、ワンダの友人たち、後藤が現地で知り合ったワーキング・
ホリディの友人たちである。

「お客さま」は三々五々集まってきた。自分の家族にサーブするのは気恥ず
かしいが、普通にお客さまを迎えるのと同じようにしてほしいと伝えてあった。
それはメニューも調理場も同じで、特別のメニューを用意するわけではなく、
特別の材料を使うのでもなく、普段どおりの姿で意見をもらいたいのだ。

麗朱と麗貴の王さん家族は、父と母に彼女らの弟の3人、友人のオーストラ
リア人と中国系の男女、ワンダの友人はオーストラリア人、後藤の友人は
日本人。人種のるつぼ、まるでエスニック・レストランのようだ。注文していた
だいたメニューは、刺身、天麩羅、すき焼き、豆腐、蕎麦・・・とまんべんない
ものであった。テーマが「試食」でもあるので、テーブル同士で料理を分けあう
シーンもあった。

日ごろは現地の粗食に耐えているワーキング・ホリディの若者が、もりもりと
すき焼きを食べる一方で、日本食の食べ方をオーストラリア人に教えたりも
していた。小さな国際交流である。いつもこうだといいのだがと思った。

    J0408917_1 オージーも、 J0407404_1 日本男子も。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

食事が終わり、食後のお茶を出す時間になった。わたしは前に立った。

「今日はありがとうございました。麗朱や麗貴、ワンダ、後藤から話は聞いて
いると思いますが、わたしたちはこの店をもっと良いお店にしたい、お客さま
が喜ぶお店にしたいんです。ご意見を正直にお願いします」 

麗朱、麗貴、ワンダには食器をかたづけるように言って、わたしと後藤は
車座になって向き合えるようにテーブルと椅子を移動させた。

「料理、美味しいと思うよ。お店もサービスもまずまず」と王さんが口火を
きった。王さんの奥さんもうなずいた。
「わたしは日本にもいたことがあるから、そう思うのかもしれないが、日本の
味がよく出ていると思う」

「ぼくも同感」 ワーキング・ホリデーの若者のひとりが言った。「ひさしぶり
に日本食を食べたな~と思いました。もやしもチャイニーズ・キャベツも、
すき焼きで食べるのは久しぶりだった。タダだし」 みんなの笑いを誘った。
「いつもは日本食を食べたくなったら、あの偽モノのラーメン屋だもんな」と
別の若者が付け加えた。
「そうそう、あそこしかないから行くけど、ダシが日本の味じゃないんだよね」

わたしは質問してみた。「じゃあ日本食を食べたくなったとき、SAKURAに
行こうと思いますか?」 
少し間があいた。ワーキング・ホリデーの若者がおずおずと言った。
「来てもいいと思う。だけど・・・」 わたしはことばを待った。
「奮発するんなら、KOTOに行っちゃうかもしれない。でもなつかしいなと思う
のはラーメン屋ですね。お金がないならスーパーでカップ麺で済ますな」

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

ワンダの友人のオーストラリアンが日本語で続いた。
「わたしたちは日本語学科で、日本文化を学んでいます。日本の高校にも
交換留学で行ったことがあります。これは日本を少し知っているオーストラ
リア人の考えです。この店、SAKURAは、日本人にしかニッポンがわから
ないと思います」
「オージーにはわからない・・・・?」
「いやそうじゃなくて、混乱しちゃいました」 笑いが起きた。

「英語で話しますが、日本だときっとこういうお店、たくさんあるんでしょう。
その良さは日本人にはきっと伝わるけど、日本人じゃない人には伝わらない
かもしれません」
ワンダが口をはさんだ。「KOTOにはニッポンが感じられる?」
「ニッポンをあまり知らない人には、『ああこれがニッポン』と思うでしょう。
KOTOは日本を誇張しています。他の多くの日本料理店もそうです。でも
それは海外にある日本レストランだから必要なことなんです。日本料理を
食べながら、ニッポンも味わいたいのだから」

「なるほど。KOTOならオーストラリア人を連れて行っても、日本とはこういう
ものですと説明もしやすい」 わたしは着物のウェイトレス恵子や、琴の
音色のBGM、小さな池、寿司カウンターなどを思い出した。
ワンダの友人が言った。「わたしも日本食をよく知っているわけではありま
せん。ワサビは苦手です。一般のオーストラリアンならもっと知らないわけ
です。日本食というのは・・・・(日本語で)四季が高いです」
「敷居が高い、ですよね」 わたしが言うと笑いがおきた。

「SHIKII GA TAKAI、覚えました」 ワンダの友人も笑った。
「オージーにとっての敷居が高いとは、やはりお箸の使い方とか食べ方が
わからないということでしょう。まわりが日本人ばかりのお客さんなら、その
中で箸がもてないと恥ずかしいという心理もあります。この料理には醤油が
いいのかビネガーがいいのか、わからないときもあります。それがわからな
い現地の人にもやさしいお店だったら良いと思います」
「なるほど」

「オージーにも日本食ファンはたくさんいますし、本物の日本料理を知り
たい人は多いのです」
王さんが続いた。「そうだね、SAKURAは日本人相手なのか、現地人相手
なのかはっきりしていない、ということかもしれないね」
「お店のつくりもKOTOのようにできるほど広くもないし、そんなことあのMr.
Tがするわけもない」後藤も言った。
「料金的にはいんちきな現地系ジャパニーズ・フードに負けてしまうし」
と若者も言った。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

皆が帰り、後片付けを後藤としながら、わたしはぼんやりと考えていた。

 日本のどこにでもあるお店・・・・
 奮発するならKOTO、安くすますならカップ麺・・・
 KOTOは日本を誇張している・・・・
 敷居が高い・・・・
 現地の人にもやさしいお店・・・・

わたしは紙ナプキンを取り、ボールペンで「KOTO」と書いた。さらにその
下にSAKURAと書き足した。その下に思いつつくままに、競争する項目を
書き足した。「料金」「メニュー数」「本格さ」「おもてなし」「日本的雰囲気」 
「ステータス」、さらに「なつかしさ」と書いた。

Photo_9  図

KOTOを1として直線を引きマーク▲をつけた。SAKURAは相対的に■の
ポイントをつけた。対照的なお店として、若者が言っていた偽モノのラー
メン屋を比較して●をつけた。わかったことは「SAKURAはすべての点で
KOTOに負けていること。仕方ないとはいえ、問題はどの項目でも平均して
負けていることだ。つまり「低いKOTO」に甘んじている。

偽のラーメン店はほとんどが低ポイントではあるが、一点「なつかしさ」と
いう項目では日本人に圧倒的にアピールする。

KOTOと真正面からぶつかってもダメだ。ラーメン店のように少なくとも
一点強みがなくてはならない。「なつかしさ」の横にさらに項目を足して、
そこでKOTOに対抗できることがあればいいのだ。それは何なのか・・・・。

ふと思い出したのは堀田店長が言っていた「日本を伝道する」という言葉
だった。そういえば、今日も料理の食べ方を、日本人がオーストラリア人
に指導する「小さな国際貢献」もあった。

                     ・・・・・・・・・・・・・『プロローグ』終わり。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

なんとか5回書き終えました!読者の方々には40(代)の手習い&マンネリ
打破にお付き合いいただきありがとうございました。
明日からは正月モードから抜け出して「勝手にアドバイス」にもどります。
では明日、Click on tomorrow!

J0400796  commonwealth of nations

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2007年1月 4日 (木)

SAKURAの春 プロローグ 4

2007年1月1日から1月5日までの【勝手にアドバイス:旬ネタ】は、新春特別
企画として、ある飲食店舗の建て直し物語をお届けします。今日はその4回目。

 
       @@@@@@@@@@@@@@@@@@

わたしと後藤は帰途の車の中で無言だった。いつもうるさいと思っている低年式
フィアットのエンジン音が大きいのが、かえって救いになった。なぜなら騒音を
理由に、ふたりとも口を開かなくて済むからだった。

後藤のKOTOを偵察しようという発案はよかったかもしれない。だが偵察して
わかったことは、心の底では不安に思っていたことをズバリと指摘され、なお
頭を抱えなくてはならなくなっただけだった。

 規模の小さいSAKURAを作っただけではダメでしょう・・・・

まったくその通りなのだろう。KOTOの出店の影響というよりも、KOTOと
SAKURAが比較され、良くも悪くもSAKURAが日本の家庭料理であるのが
目立ってしまった。堀田店長が言うように、SAKURAのお客はもっと安くて「庶民
の味」のラーメン店や、回転寿司チェーンに流れているのだろう。

ちょうどフィアットはフードコートのあるショッピングセンターの前を信号待ちに
かかった。ここにだってアジア食がたくさんある。チャイニーズ、タイ料理、
インド料理、日本の弁当のお持ち帰りのデリカテッセンもある。わざわざ
SAKURAに来る理由はないのかもしれない。フィアットのアイドリング音が
急に高まったような気がした。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

SAKURA2号店にもどった。ディナーの準備にかからなくてはならないが、もや
もやは晴れなかった。堀田店長のことばが頭をめぐっていた。
 
 お客さまの心を感じ取る・・・・
 お客さんの近いところで商売を考える・・・・
 商売よりも伝道・・・・
 日本食を敬遠されるお客さまも大切に・・・・

照明を落としたSAKURAの店の中はだがまだ外は明るい。窓ガラスからは平行
四辺形にゆがんだ残照が差しこんでいる。思い出したのはことばだけでは
なかった。
 
 琴の音色のBGM・・・・
 高級な店舗だがGoo' Day!と声がかかる気さくな雰囲気・・・
 ひざまずくウェイトレス、ヤル気のある従業員・・・・
 日本でも滅多に味わえない加減のお茶・・・

Mr.Tにせよ、わたしにせよ、後藤にせよ、しょせんは風来坊なのだ。KOTOの
ような組織で営業をしているわけじゃない。最初から勝ち目なぞない。だが
このままでは・・・。

  J0399700  if you enlarge this, happy new year!

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

その夜もお客はまばらだった。わたしは堀田店長が話したこと(どんなお客
さまがどんな料理を注文するのかわかりますか?)を思い出して、お客さん
の様子を見て書き留めることにした。一組はオーストラリアン同士のカップル
で、始めて見る客だろう。すき焼きセットを二人前に、刺身の盛りあわせと
いう、日本人から見るとちょっと違和感のある注文だった。

あとはときどき来る日本人駐在員のグループ、日本人家族連れ、現地の
中国人の家族・・・・。今日も全卓が埋まらない1回転で終わりだ。

「いくらお客さんに話を聞けって言われても」 ぼんやりしていたわたしに
後藤が声をかけた。「突然、ウチのお店いかがですか?美味しくないです
か?なんて聞いたら不安だよね。もう来てくれなくなるかもしれない」
「それはそうだな。せっかく食事しているところに『アンケートお願いします』
てわけにもいかない」
「日本のお店でもよく『ご意見お願いします』ってありますよね。あれはよっ
ぽどアタマにきたときしか書かないですよ。店長出て来い!て」
「そう言って出てくる店長が、あの拳のやたら強い空手バカだとしたら?」
われわれは寂しく笑いあった。

どうやってお客さんの立場に立てと言うのだろう。ぼんやりと店の中を見て
いると、台湾人の麗朱がやはりぼんやりと立っていた。手持ちぶさたも仕方
ない。KOTOのウェイトレス恵子を思い出して、こっちには望むべくもない
ものかと思わざるをえなかった。と考えたところで、ひとつひらめいた。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

「後藤、彼女たちには家族がいるよな」
「彼女たちって・・・麗朱やワンダのこと?」
「うん」
「麗朱には移住してきた台湾人の家族がいまして、一度遊びに行ったことが
あるから知ってるんですよ。ワンダは一人住まいかもしれないけど、家族は
どこかにいるでしょう」

麗朱は父親の事業を手伝いながら、SAKURAにも働きに来ている。ワンダは
日本語科の学生であり、日本語と日本文化を勉強しているアルバイトだ。
「どうせこれ以上お客も来ない。早仕舞いにして、キッチンを掃除しちゃおう。
ここまでくれば、いっそ状況をみんなに知ってもらって、アイデアがあれば
何でも欲しい」

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

「みんなに相談したいことがある」 

みんなと言っても後藤、麗朱、ワンダとわたしの4人だけだ。麗朱の妹の麗貴
は今日はお休みだし、Mr.Tの奥さんも今日はいないのが好都合だった。
「昨日Mr.Tが来た。何のために来たか。みんなはこの店の売上状況はだい
たいわかるな」 3人がうなづいた。
「期限は言われなかったが、このままではこの店を閉じると言われた」
麗朱もワンダも、半ば驚き、半ば来るものが来たという表情だった。

「お客さんが少ない。売上が上がらない。仕入費用さえまかなえていない。
商売だからそれは当たり前だ。君らは他に仕事を探せば済むかもしれない」
ワンダはシュワっと空手の真似をしながら言った。「お前をブチのめす」
みんな笑った。「殺される前に逃げるよ。だが他に働き口もないだろうから、
日本に帰ることになる。できれば帰りたくないんだ」 

「そこで、ブチのめされる前に、できるだけのことをしてみたいんだ。今日、
ある人に相談をした。その人が言うには『まずお客の話を聞け』という。だが
お客さんにはなかなか聞けない。それで思いついたんだが、ワンダと麗朱の
家族や知人をこの店に呼べないだろうか?」
「なるほど、それでこのお店の意見をもらうんですね?」後藤が言った。
「そうだ。みんなからもぜひ意見はもらいたい。わたしも考える。だが客観
的に話してくれそうな人から聞くのが一番じゃないだろうか?」

「わかったわ。賛成です」 流暢だがどこか中国なまりのある麗朱が言った。
「実はね、麗貴とも『つぶれちゃうかもね』とは言ってたよ。だからママとパパ、
来てもらうよ。話してもらうよ」
「ワンダは?」
「OK。私は両親が近くに居ないので、友達でよければ来てもらえるでしょう」
「ありがとう。開催日なのだが、開店中に来てもらってもいいが、お話も聞き
にくいので、店の休業日に来てもらうことは可能だろうか? だとすると、みんな
には働いてもらわなくちゃならないが・・・」
「つぶれちゃうとコバヤシさん、大変だからがんばります」 麗朱が言って
くれた。ワンダはニコリとして日本語で言った。「コバヤシさん、正直に言って
いただき、どうもありがとう。これ、よかったと思う」

「ありがとう。もちろん全部、店のおごりだ」 意外なほどみんなが店のこと
を考えていたのだと思った。意外でもあり、嬉しかった。

J0399632  桜木花道、ですね。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

今日は以上です。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月 3日 (水)

SAKURAの春 プロローグ 3

2007年1月1日から1月5日までの【勝手にアドバイス:旬ネタ】は、新春特別
企画
として、ある飲食店舗の建て直し物語をお届けします。今日はその3回目

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わたしがお茶の具合に感心している一方で、若い後藤はまっすぐだった。
「お店の格も違うし、調査が目的だから、SAKURAは商売敵にならない、そう
いうわけですか?」 

堀田は微笑んで「そうではありません。失礼に聞こえたなら申し訳ありません。
KOTOはこうありたい、という考えを説明させていただきました」 堀田はわたし
の方を向いた。「コバヤシさん、KOTOの第一印象はいかがでしたか?」
「お店の格はウチとは違うなと思いました」 わたしは正直に答えた。

「内装は立派だし、メニューも豊富です。味も食材もまったく日本の味です
よね。BGMも落ち着く。日本庭園も見事です。SAKURAとは・・・」
「SAKURAとはウェイトレスがまるで違う」 後藤が口をはさんだ。
わたしもうなずいた。とてもはきはきしている。それに、席に着く前にあちこち
から『いらっしゃいませ!』って声が掛かることも、ウチにはまるで無いことだ
と思った。 

「なるほど。わかりました、彼女を呼んでみましょう。・・・恵子さん、ちょっと」
恵子と呼ばれたウェイトレスが微笑みながらやってきた。「こちらはコバヤシさん、
あなた自身のことをちょっとお話してあげてください」
彼女は腰をかがめてフロアに膝を付けて話し出した。

「わたしは3ヶ月前まで日本の会社でOLをしていました。料理が趣味で毎週2回
料理教室に通い、和食や日本酒のソムリエの勉強もしていました。そのうちに、
どうしてもフードビジネスに関わりたいと思いがつのりました。その時、こちらの
会社で現地従業員の募集広告を拝見しました」
「日本で雇われてこっちに来たの?」わたしは興味をそそられた。

「そうです。ワーキング・ホリデーを利用して語学学校や大学に通いながら、
現地の和食レストランで働くという雇用契約です。日本で飲食業に従事すると、
ただウェイトレスをするか、調理をするかで、店舗経営を総合的に勉強しにくい
のです。こちらですと現地の大学のエクステンション(公開講座)で、経理やレス
トラン経営まで学べます。日本にいてはできない一石二鳥だと思って応募しま
した」
「なるほど」 ワーキング・ホリディで居ついてしまったわたしも風来坊なら、
後藤も風来坊だ。同じワーキング・ホリデイでも、そもそも意欲も資質も違うと
いうことか。わたしはお尻がむずむずした。

「日本にいるよりも海外の日本食レストランで和食店の調理や経営が学べる。
妙な感じもしますが、ヤル気のある人にチャンスを与えると、こうして生き生きと
働いてもらえます。店舗のメニューやサービスもみんなで話し合って改善して
います。彼女たちが成長することもこのお店の使命なんです」と堀田が言った。

  J0403209

わたしはSAKURA2号店の台湾人とオーストラリアンのウェイトレスを思い浮か
べた。彼女たちにひざまずくという習慣はないし、たとえあったとしても、きっと
しないだろう。それにお客さんが来なければ来ないで、何も感じていないのだろう。

「この店で採用しているのは日本から来て頂き、身元保証する日本人だけでは
ありません。現地の日本文化や日本食に興味を持つ人も採用しています。
現地の人から見る日本食を知るためには、これも必要なことです。ありがとう、
恵子さん」 堀田はウェイトレスを去らせた。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

「私がSAKURAを見て思ったのは、別に日本食でなくてもいいのではないか、
ということです」 堀田は続けた。
「どういうことでしょうか」
「偶然、あなたを雇った人が日本人で、あなたたちが日本人で、自分たちに
扱えそうな商売が日本食だった、率直に言うとそう思いました」

わたしは唾を飲み込んだ。カンフーブームが去り、空手道場経営が傾いて、
Mr.Tが『じゃあ日本食でもやるか』とつぶやいた様子を想像した。わたしは
レストランの開業に立ち会っていないが、Mr.Tは空手の弟子のひとりだった
レストラン経営者の店で半年ほど修行を積み、あまり流行っていなかった
シーフード料理店を居抜きで買い取った。ちょうどヘルシー料理ブームが
起きたころで、日本食=ヘルシーというイメージに乗れたが、メニューその
ものは「すき焼き」「天麩羅」「ソバ」という、あれもこれも置いてあるだけの、
日本で言えば田舎の街道沿いのファミリーレストランにすぎない。

「SAKURAの業績は不振ですか?」堀田は訊いた。
わたしと後藤は目をあわさなかったが、心の中では同じものを見ていた。
「お察しの通りです」 わたしは正直に答えた。「何とかしたいんです」

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

堀田が言った。「ではいくつか質問しますが、答えて頂けますか?」
わたしは、こんな光景をMr.Tに見られたらそれこそ顔面がへこんでいると
思いながらも、ハイと答えていた。

「2号店のお客さまはどんな割合ですか?」
「厨房からとレジで見ているかぎりですが、昼間は駐在員やその家族、
だいたい日本人が半分くらい、あとは韓国人などアジア系とオージーが
まばらに」
「ボクの感覚だと日本人が7割。ランチには駐在員はほとんど来なくなった
から、奥さん連中がほとんどじゃないですかね」後藤は反論した。
「おやおや、基本的なところでもう意見が違う。記録は取っていないので
すね?」 わたしと後藤は首を横に振るだけだった。
「記録はこれから取るとして、開店当初のねらいと実際のお客さまの構成
はだいたい予想通りだった?」

  J0402435

2号店を出そうというのはそもそもはMr.Tの発案だったが、出すと決めて
からはわたしも店舗物件やメニュー、内装にも意見を出したし、店長を
まかされることになって現地に根が張れると思うと有頂天になった。
日系企業も多数が進出しているエリアで、幹線沿いの立地で家賃がそこ
そこなら、そうは苦労はしないだろうぐらいにしか考えていなかった。調査
という調査はしなかったといってもいいだろう。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

「日本人に受け入れられる味を出せば、だんだん現地のお客さんも増えて
くると考えてました」
「味には自信があると?」
「ええ、海外で食べられる日本食としてはレベルは高いと思います。チャイ
ニーズ・ジャパニーズのラーメン店とも変な寿司バーよりずっと日本の味
です。正直、現地人のお客が増えないないのは仕方ないとしても、日本
人のお客さんも減ってきたのは、なぜかわからないんです」
「ではひとつ聞きますが、調味料や下味を作る材料の仕入はどうされて
いますか?」
そう聞かれて、わたしは低コストを理由にチャイニーズ・マーケットで、
現地に材料をコスト優先で仕入れている自分の姿を思いだして赤面した。
現地の昆布、現地の塩、現地のソース・・・。少しずつ日本のものとは
違うが、原価も下げなくてはならないのだから。

「メニューはどのようにして決めたのですか?」
「・・・それは、SAKURAのメニューから人気のある、料金的に高すぎない
ものをもってきました」
「従業員はどのように選びましたか?」
特に理由はなかった。SAKURA1号店で働く人の知人の台湾人姉妹と、
日本語の勉強中の学生をウェイトレスに仕立てあげたのだった。

「規模の小さいSAKURAを作っただけではダメでしょう」

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

今日は以上です。放浪者のコバヤシが海外でビジネスを創造しなおす
物語のプロローグ
、今週5回に分けて書いています。今日で3回目、お付き
合いいだだきありがとうございます。あととりあえず2回、よろしくお願い
します。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月 2日 (火)

SAKURAの春 プロローグ 2

2007年1月1日から1月5日までの【勝手にアドバイス:旬ネタ】は、新春特別
企画として、ある飲食店舗の建て直し物語をお届けします。実体験に
基づくとはいえ、物語づくりですので、最後までおもしろく語れるかどうか。
新鮮な気持ちでチャレンジしております。今日はその2回目。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

エンジン音がボディよりも大きい、わたしの低年式のフィアットで、KOTOの
駐車場に入ると、お昼をかなり過ぎてもまだ7~8台の車があった。ほとんどが
高年式の高級車である。日本車もあるが、オーストラリアの輸入関税の関係
もあり、欧米メーカー製が多い。

KOTOの入口のドアを開けると、出迎えてくれたのは、小柄な日本人の
ウェイトレスであった。大輪の花柄の着物姿でにこやかに微笑みかけてくれた。
「Good Afternoon! いらっしゃいませ。日本人のお客様ですね?」

外はとても暑いが、中はエアコンが効いてひんやりとしている。そして着物の
日本人女性の笑顔と、きびきびとした応対。ひさしぶりにほっとした感じがした。

店のあちこちから「Good Afternoon!」「いらっしゃいませ!」という声が
掛けられた。オーストラリアらしく「Goo' Day」という言葉も聞こえた。立ち働く
ウェイトレスたちからと、カウンター席の向こうに立つ板前さん、現地人の調理
人からだ。だいたい80席ほどお店である。流行っているからなのか、テーブル
に較べて従業員の数が多いようだ。

ランチももう終わりの頃に行くと、たいていはどこのお店でも素っ気無かったり、
あからさまに嫌な顔をされて「○時までです」と言われることもある。だがここ
では威勢の良い、明るい声掛けで迎えられた。こうしてにこやかに声をかけて
くれると、とても気持ちが良い。

案内された通路から聞こえてきたBGMは、「古都」ではなく「琴」の音色だった。
着物のウェイトレスに、一面ガラス張りに庭が見渡せる窓際の席に案内された。
ガラスの向こうには鯉が泳ぐ小さな池と、芝生の庭と石が置かれた、箱庭的な
日本庭園の情緒がある。

  A061158s0_1  大山忠作画伯

「KOTOにようこそいらっしゃいました」 ウェイトレスは笑顔でそういうと、ランチ
メニューの説明をして「お決まりになりました頃伺いにまいります」ときびきびと
した口調で下がった。

わたしと後藤はメニューをあれこれ見定め、ページをめくり、料理や飲料を
覚えようとして、覚えきれないほどの豊富さに舌を巻いた。しばらくすると、
スーツを着た日本人男性がやってきた。

「いらっしゃいませ。店長の堀田です」

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われわれはウェイトレスにひとり12ドル50セントのランチを注文すると、
KOTOの店長に向き合った。堀田と自称した男は、すらりとした背丈だが
俊敏な物腰を感じさせた。年は35歳ぐらいで、飲食店の店長というよりも、
世界を又に駆ける商社マンという雰囲気があった。「お話をさせていただい
てもいいですか?」

後藤の方を見てから、わたしはうなずいた。
「われわれの顔をすでに知っているんですね」わたしは言った。
「ええ。この店を出す前に、二度ほど2号店に伺いました。もちろんクィーン
通りの本店にも行きました」
「やっぱり調査はされるものなんですね」
堀田は笑顔をつくり「いや調査というよりご挨拶のようなものですね。あの
ロブスターの刺身はプリプリしていてとても美味しかったですよ」

わたしと後藤は目を合わせて忍び笑いをした。生きている体長40センチの
ロブスターの甲羅を力づくではぎ、胴体を真っ二つに切るシェフのKIMさんの
無慈悲な包丁さばきを思い出したからだ。伊勢海老よりは淡白な味わいで、
果たしてあのメニューが日本的といえるかどうか怪しいが、ブツ切りの大海老
のSashimiは人気メニューである。

「よくご来店していただきました。若い人が地球の反対側の地で冒険している
と聞いて、ずっとすごいなと思っていたんです。とても勇気がある」
わたしはそれが皮肉なのか本音なのか測りかねた。思い切って言った。
「今日は、KOTOを見にきました」 SAKURAを何とかしなければ、クビと顔面
が危ない、とは言えない。
後藤はもっと率直だった。「・・・というか、KOTOがなぜ流行るのか知りたい
と思ってきました」

堀田は代わる代わるわたしと後藤の顔を見た。彼の目の奥からは、わかりま
すよ、ということばが聞こえてくるようだった。

ちょうどわたしと後藤のランチが運ばれてきて、一皿ずつ目の前に並べられた。
海老と野菜の天麩羅、お刺身の小鉢、お吸い物、突き出し、そしてご飯という
典型的ともいえる日本食三昧のセットである。添えられた割り箸の包みには
「チョップスティックの使い方」が英語で書かれている。箸置きは琴のかたちを
デザインしたものだ。

「どうぞ召し上がってください。せっかくの機会ですから率直にお話しましょう」
堀田は自分にお茶を持たせるように伝えた。ウェイトレスはお盆に茶托と牡丹
が染付けされた湯呑みから日本茶をすすった。

「SAKURAさんのお店の感想の前に、お二人から見てSAKURAさんの敵、
つまりこの店についてお話ししましょう」

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「実のところ、SAKURAさんとKOTOは敵(かたき)同士ではないのです」

こんなに客を盗んでおきながらしゃあしゃあと言うもんだ、とわたしは心の中
でつぶやいた。そのつぶやきを逃さなかったかのように堀田が言葉を接いだ。

「結果としてKOTOの方にお客さまが流れていることは事実でしょう。しかし、
KOTOはおふたりもご存知の日本の飲料・食品メーカーの子会社が海外で
出店する飲食店の一事業です。オーストラリア出店はこれが2店舗目で、
ようやく土地勘やノウハウも付いてきました。

事業の目的は、お分かりいただけると思いますが、親会社の事業の推進、
ビールやリキュールなどの海外での拡販です。日本のビールやお酒を、正しい
呑み方で、正しい日本料理と共に食べていただく。日本料理の普及のために
開いています」

後藤がお吸い物をすすりながら言った。
「ここいらには、みょうちきりんな日本食も多いですからね」
「甘~いビーフボウル、うどんに刺身を載せる海鮮うどん丼、照り焼きチキン
のお重・・・」 堀田がそういうと、三人で笑った。

「いまだにあれが日本食だと思っている人もいます。少しずつ日本食が伝わって
きたとはいえ、まだきちんと伝わったわけではありません。正確に伝わらないと
いうことは食品を輸出するわれわれの会社には阻害要因になります。だから
KOTOのねらいのひとつは、日本食を伝道することです。高級とイメージされる
日本食レストランにやって来る現地のお客さまの多くは、さまざまな分野の
リーダークラスの方々です。彼らから正しく日本食を広める、彼らのステータス
にあった格の店舗をつくる。それに相応した味とメニュー、サービスを提供する」

結局はビジネス優先、資本力にモノを言わせるということなのか。地球の裏側
にまで来ても、日本のビジネスに追われるとは。わたしの曇り顔にかわまず、
堀田は続けた。

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「もうひとつは逆に、現地の食スタイルと融合した日本食のスタイルを研究する
ことです。現地のお客さまがどういう食べ方で日本食を食べると幸せなのか、
日本食の何が好まれ、何が好まれないか、現実にお顔を拝見しながらデータ
を蓄積しているわけです。常連のお客様にはメニューや飲みものについて、
お話を伺う場ももうけます。むしろこっちがメインの仕事になります」

「現地のリサーチですか?」 
「リサーチというより、お客さまのお考えを感じ取る、というのが正確ですね。
メニュー、サービス、雰囲気・・・など季節ごとにお客様を招いて、座談会も
開きます。改善点を伺って調理や食材、サービスに反映させます。もちろん
本社にもリポートもあげます」
「では店舗は儲からなくてもいいのですか?」 
「極端に言えばそうです。儲けなくてもいい。だが赤字も失敗も許されません。
当社の社長の食に対する思いいれからとはいえ、やはり商売ですから」

「これは当社の社長の口ぐせですが『お客さんの近いところで商売を考えな
さい』といつも言うのです。商売はお客さんの表情がすべてだ、と。お店に
来て頂くお客さまだけでなく、取引先の社員もその家族も大切にしろ、日本食
を敬遠するお客さまも大切にしろ、そういう方々の心を知りなさい、表情の
くもりを読み取りなさい。そこに殻を破るヒントがあると。そのために出店して
いると言ってもいいでしょう」

二人ともが食事を済ましたとき、ぴたりのタイミングで、例の日本人ウェイトレス
がお茶を運んできた。お茶を茶托に載せて丁寧に置くと下がった。わたしは
お茶を一口すすり、熱すぎもなく温すぎもない頃合いに感心した。

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今日は以上です。コバヤシと後藤の二人が自分たちのビジネスを創造しなおす
物語のプロローグ、今週5回に分けて書いています。今日まで2回、お付き合い
いだだきありがとうございます。ではまた明日。Click on tomorrow!

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2007年1月 1日 (月)

SAKURAの春 プロローグ 1

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新年明けましておめでとうございます。

Blogネットワークのすべての方々にとって、2007年が幸多き年になるようお祈り申し上げます。
わたしは今年も仕事人として、またBlogerとして、日々、自分の殻を破壊しつつ創造したいと思います。Gootくる本質的なアドバイスと、「なるほどね!」発想、そして細部まで良い仕事をめざします。そして、ひとりでも多くの人のアツい心を高めたいと思います。
本年もよろしくお願い申し上げます。

郷@marketing-brain
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2007年1月1日から1月5日までの【勝手にアドバイス:旬ネタ】は、新春特別
企画
として、ある飲食店舗の建て直しを物語風にまとめたいと思います。

わたしの実体験をベースに「成長するには誰でも同じことをする」という
普遍的なメッセージを、ストーリー仕立てでお伝えします。今日はそのプロローグ。

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わたしの眼はどこを見るでもなく焦点をさまよっていた。お客さんがまばらな
店内を見回して、毎日考えていることを考えだした。それは「どうしたら売上
を取りもどすことができるか」だった。

日本人にもオーストラリア人にも気配りをした日本食メニューは、一流では
ないが家庭的な味わいがある。すき焼き、しゃぶしゃぶ、和風味ステーキ、
お味噌汁やお茶漬け、蕎麦までそろえている。ランチもディナーも料金は
当地の一般のレストランに較べると安くはないが、日本食から離れられない
日本人駐在員相手である。少々高くても問題ではない。ちょっとした接待に
使えるレベルの格もあり、そんなグループも利用されていた。

だが売上が下がる一方なのだ。お客さんが日に日に減少していく。それも
これも・・・わたしは紙ナプキンにボールペンで4文字を書いた。

 K O T O

車でほんの4、5分の場所にKOTOという同じ日本食を扱うレストランが出店
した。そちらにお客は流れている。

KOTOの開店数日は、お客はとられるだろうが、しょせんは新参店。オースト
ラリア第三の商業都市ブリズベンで5年も店舗を続け、日本食といえば
SAKURAという知名度抜群の看板がモノをいうはずだ、と考えていた。だが
KOTOのオープン後、すでに2ヶ月が経ち、わたしがまかされたSAKURA2号
店に、お客さんはもどってこない。ここまで深刻な事態になるとは予想して
いなかった。

ちょうど昨日、店舗のオーナーのMr.Tがやってきた。Mr.TはSAKURA本店
の創業者で店長でもある。Mr.Tはこう言った。

「来月も売上がもどらなかったら、コバヤシ、お前を殴る」。

雇い主が従業員を殴るなんてありえない、普通に考えればその通りだが、
ここは地球の反対側の南半球、南国の都市。日本の法律とも無縁だし、
世間とも無縁。少々の治外法権も仕方ない亜熱帯の地である。拳は脅し
ではなく、Mr.Tは実際にたくさんの人を殴るのである。それも並大抵の拳の
持ち主ではない。

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状況をざっと整理しよう。

わたしはワーキング・ホリデーという渡航ヴィザでオーストラリアを旅していた。
そしてそのままオーストラリアの100万人都市、ブリズベンに居ついた。ダウン
タウンの目抜き通り、クィーン通りのジャパニーズ・レストランSAKURAで働き
口をみつけて、もう4年がたった。調理に特段親しんでいたわけではない。
漁師の息子として魚に親しんできたことがあったのだろうか。中国系シェフの
KIMさんの片腕となり、調理技術も徐々に習得した。あくせくしないで暮らせる
ダウンアンダーの亜熱帯の生活を愉しんだ。故郷の新潟ははるか遠い光景だ。

ジャパニーズ・レストランSAKURAのオーナーは、空手道場経営のMr.Tである。

空手は「寸止め」といって多くの流派では素手で殴りあわないが、格闘技の
原点にもどるべしとした、あの極深館の有段者であり、オーストラリアへ空手
宣教師として送りこまれたのがMr.Tだった。だが空手ブームが去り、道場経営
が傾いて、仕方ないレストランでもやるかと始めた素人経営。だが競合もない
こともあって、レストランの経営は順調に推移した。5年目にMr.Tは多店舗展開
を決意した。2店舗目の店長としてわたしにまかせたのだった。

2号店はダウンタウンからはやや離れた立地だが、日本人の働く会社や
住まいが増えている有望な場所。開店当初は店舗経営は順調だったが、
ある日競合となる日本食レストランKOTOが出店し、SAKURAの客は激減した。

KOTOは日本の大資本の子会社でチェーン運営で諸国に進出している。
海外での日本食レストランの運営ノウハウを築き、料理、サービス、お店の
雰囲気、まともに戦っては、どれをとってもSAKURA2号店に勝ち目はなかった。

極深館空手有段者のMr.Tの拳をまともに食らえば、顔面陥没骨折は必死
である。わたしは、Mr.Tが日本人のアルバイトを何人も殴りつけ「とっとと
失せろ!」と怒鳴り、足蹴にまでするシーンを何度も見てきた。

その立場に自分がなってしまう。殴られるだけでなく、ブリズベンでせっかく
築きつつある生活が無になる。いまさらとぼとぼと故郷の新潟に戻っても
職は無い。それに勘当同然で飛び出した家だ。どのツラ下げて帰れる場所
ではない。汗水たらして、だがのんびりと築いた生活を、日本の大手資本が
やって来たというだけでフイにしたくはなかった。

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わたしは今日も5組も入らなかったランチの帳簿付けを終えて、台湾系の
ウェイトレス麗朱とオーストラリアンのワンダに、店の扉に「Closed」の看板を
下げるように告げて、昼休みにしようと言った。

照明を落とし、がらんとした店舗を見回した。まだお昼過ぎなのに、まるで
残照のような日差しがさしていた。

「KOTO」と書いたナプキンをたぐり寄せ、「KOTO」の文字の隣に「SAKURA」
と書いた。古都に桜か。両立するはずなのに、としゃれてみたが、すでに桜
は枯れかけている。それも余命1ヶ月かも知れない。ここはワシントンじゃなく、
オーストラリアなのだから、桜は根付かないのかなと自嘲した。このままで
はだめだ。

  J0406912

調理場にもどると、ワーキング・ホリデーの旅の途中で働いている日本人の
調理アルバイトの後藤が手持ちぶさたもあって、たんねんにレタスを洗って
いた。開店当初は忙しかったので、本店のシェフKIMも応援に来ていたが、
今では閑古鳥。わたしと後藤二人だけで充分に調理は対応できる。レタスは
ピカピカになり、食べられずにしおれてゆく。

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「お昼にしようか」わたしは後藤に声をかけた。ランチの余りはたくさんある。
食べ切れないほどだ。

「コバヤシさん」 
後藤はレタスをラップでくるみながら言った。「昨日、Mr.Tが来ましたよね」
「うん、来た」
「なんて言ってました?」
わたしは肩をすぼめるしかなかった。「来月には売上を上げろって」
後藤はぺティ・ナイフの背を、まな板にコンコンコンと当てた。
「それだけじゃないですよね。Mr.Tのことだから、きっと殺すとか叩きのめす
とか言ったでしょう?」
「それに近いことも」
後藤は唇をゆがめた。
「そのときはボクもぺこんぺこんだ」 後藤もわたしも小さく苦笑した。

日焼けした顔を上げて後藤は言った。「地球の反対側まで来たのは、空手
バカに殴られるためじゃない。コバヤシさん、仕事にようやくありついたと
思って放りだされたら、ボクは日本に帰るっきゃない」 
わたしはうなずいた。大学を休学して冒険旅行にやってきた後藤の気持ち
がわからないわけはない。自分も同じだ。だが言葉が出なかった。

手をこまねいていたわけではない。ランチのメニュー改善もしたつもりだし、
PRのため日系の会社にランチやディナーメニューのお知らせファックスも
毎日入れている。日本食材の取扱商社まで行って、目新しい食材の購入
交渉もしている。地道な努力だがいずれ実を結ぶはずだ・・・。

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「破れかぶれですけど、敵から学びませんか?」後藤が言った。
「敵って、KOTOのことか?」
「そう。ボクはまだKOTOに行ったことがない。KOTOはこんなお店、という話
だけは聞いてるけど、なぜSAKURAは流行らないでKOTOが流行るのか、
よくわからない。せめてそれが知りたい」

わたしはKOTOの駐車場までは何度か足を運び、概観や入店車の台数、
そのステータスレベル(車のブランド)をチェックしていた。だが競合店の
店長ということもあり、中にまで入る勇気がなかった。店の規模がSAKURA
2号店の倍以上あること以外には、近所の競合店なのに、違いがどこに
あるのか、実際にはよく知らなかった。

「どのツラ下げてゆけばいいんだんだろう」
後藤はレタスを入れたボールを、磨かれたステンレス・ボディの冷蔵庫に
入れて、ずんと扉を閉めた。
「相手がどう出るかはよくわからないけど、ここは日本じゃない」

「日本じゃないって・・・?」
「祖国は遠く、競合といえど同じ日本人、助け合うということも無きにしも
あらず、でしょう?」
「それはそうかもしれないが」
「別に向こうの店長さんに会わなくても、なんでKOTOが流行っているのか、
少しでもヒントがあればいいと思うんです」
「そうだな。どうせ殴られるなら当たって砕けるか。まだ1時半だから、ランチ
に間に合う。行ってみよう」

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エンジン音がボディよりも大きい、わたしの低年式のフィアットで、KOTOの
駐車場に入ると、お昼をかなり過ぎてもまだ7~8台の車があった。ほとんどが
高年式の高級車である。日本車もあるが、オーストラリアの輸入関税の関係
もあり、欧米メーカー製が多い。

KOTOの入口のドアを開けると、出迎えてくれたのは、小柄な日本人の
ウェイトレスであった。大輪の花柄の着物姿でにこやかに微笑みかけてくれた。

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今日のブログは、いつもと趣向を変えて、店舗建て直しのフィクショナルな物語
(の出だし)を書いてみました。フィクショナルなのですが、わたしの実体験を
ベースにしています。登場人物も状況もそれとなく事実です。

お伝えしたいのは、「事業規模の大小を問わず、成長企業ならどの会社でも
同じことをする」と言う普遍的なメッセージです。明日以降一週間、わたしなりの
新しい試みにお付き合いいただければ幸いです。

本年もよろしくお願い申し上げます。

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