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2007年1月 5日 (金)

SAKURAの春 プロローグ 5

2007年1月1日から1月5日までの【勝手にアドバイス:旬ネタ】は、新春特別
企画として、ある飲食店舗の建て直し物語をお届けします。今日は最終回です。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

休業日、お客さまインタビューの日になった。平日の夜6時からディナーを
食べてもらうという予定で集まってもらい、食後に意見を話し合うのが筋書きだ。

後藤にも麗朱、麗貴そしてワンダにも、夕方からでいいよと言っておいたの
に、3時にわたしが店に来ると後藤がすでに店の前で待っていた。鍵を開けて
店の中に入り、5分もしないうちにワンダもやって来た。すぐにいつもより念入り
に掃除を始めたのだった。ありがたかった。

今日は10人ぐらいの「お客さま」が来ることになりそうだ。麗朱・麗貴の家族
と彼女らの友だち、ワンダの友人たち、後藤が現地で知り合ったワーキング・
ホリディの友人たちである。

「お客さま」は三々五々集まってきた。自分の家族にサーブするのは気恥ず
かしいが、普通にお客さまを迎えるのと同じようにしてほしいと伝えてあった。
それはメニューも調理場も同じで、特別のメニューを用意するわけではなく、
特別の材料を使うのでもなく、普段どおりの姿で意見をもらいたいのだ。

麗朱と麗貴の王さん家族は、父と母に彼女らの弟の3人、友人のオーストラ
リア人と中国系の男女、ワンダの友人はオーストラリア人、後藤の友人は
日本人。人種のるつぼ、まるでエスニック・レストランのようだ。注文していた
だいたメニューは、刺身、天麩羅、すき焼き、豆腐、蕎麦・・・とまんべんない
ものであった。テーマが「試食」でもあるので、テーブル同士で料理を分けあう
シーンもあった。

日ごろは現地の粗食に耐えているワーキング・ホリディの若者が、もりもりと
すき焼きを食べる一方で、日本食の食べ方をオーストラリア人に教えたりも
していた。小さな国際交流である。いつもこうだといいのだがと思った。

    J0408917_1 オージーも、 J0407404_1 日本男子も。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

食事が終わり、食後のお茶を出す時間になった。わたしは前に立った。

「今日はありがとうございました。麗朱や麗貴、ワンダ、後藤から話は聞いて
いると思いますが、わたしたちはこの店をもっと良いお店にしたい、お客さま
が喜ぶお店にしたいんです。ご意見を正直にお願いします」 

麗朱、麗貴、ワンダには食器をかたづけるように言って、わたしと後藤は
車座になって向き合えるようにテーブルと椅子を移動させた。

「料理、美味しいと思うよ。お店もサービスもまずまず」と王さんが口火を
きった。王さんの奥さんもうなずいた。
「わたしは日本にもいたことがあるから、そう思うのかもしれないが、日本の
味がよく出ていると思う」

「ぼくも同感」 ワーキング・ホリデーの若者のひとりが言った。「ひさしぶり
に日本食を食べたな~と思いました。もやしもチャイニーズ・キャベツも、
すき焼きで食べるのは久しぶりだった。タダだし」 みんなの笑いを誘った。
「いつもは日本食を食べたくなったら、あの偽モノのラーメン屋だもんな」と
別の若者が付け加えた。
「そうそう、あそこしかないから行くけど、ダシが日本の味じゃないんだよね」

わたしは質問してみた。「じゃあ日本食を食べたくなったとき、SAKURAに
行こうと思いますか?」 
少し間があいた。ワーキング・ホリデーの若者がおずおずと言った。
「来てもいいと思う。だけど・・・」 わたしはことばを待った。
「奮発するんなら、KOTOに行っちゃうかもしれない。でもなつかしいなと思う
のはラーメン屋ですね。お金がないならスーパーでカップ麺で済ますな」

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

ワンダの友人のオーストラリアンが日本語で続いた。
「わたしたちは日本語学科で、日本文化を学んでいます。日本の高校にも
交換留学で行ったことがあります。これは日本を少し知っているオーストラ
リア人の考えです。この店、SAKURAは、日本人にしかニッポンがわから
ないと思います」
「オージーにはわからない・・・・?」
「いやそうじゃなくて、混乱しちゃいました」 笑いが起きた。

「英語で話しますが、日本だときっとこういうお店、たくさんあるんでしょう。
その良さは日本人にはきっと伝わるけど、日本人じゃない人には伝わらない
かもしれません」
ワンダが口をはさんだ。「KOTOにはニッポンが感じられる?」
「ニッポンをあまり知らない人には、『ああこれがニッポン』と思うでしょう。
KOTOは日本を誇張しています。他の多くの日本料理店もそうです。でも
それは海外にある日本レストランだから必要なことなんです。日本料理を
食べながら、ニッポンも味わいたいのだから」

「なるほど。KOTOならオーストラリア人を連れて行っても、日本とはこういう
ものですと説明もしやすい」 わたしは着物のウェイトレス恵子や、琴の
音色のBGM、小さな池、寿司カウンターなどを思い出した。
ワンダの友人が言った。「わたしも日本食をよく知っているわけではありま
せん。ワサビは苦手です。一般のオーストラリアンならもっと知らないわけ
です。日本食というのは・・・・(日本語で)四季が高いです」
「敷居が高い、ですよね」 わたしが言うと笑いがおきた。

「SHIKII GA TAKAI、覚えました」 ワンダの友人も笑った。
「オージーにとっての敷居が高いとは、やはりお箸の使い方とか食べ方が
わからないということでしょう。まわりが日本人ばかりのお客さんなら、その
中で箸がもてないと恥ずかしいという心理もあります。この料理には醤油が
いいのかビネガーがいいのか、わからないときもあります。それがわからな
い現地の人にもやさしいお店だったら良いと思います」
「なるほど」

「オージーにも日本食ファンはたくさんいますし、本物の日本料理を知り
たい人は多いのです」
王さんが続いた。「そうだね、SAKURAは日本人相手なのか、現地人相手
なのかはっきりしていない、ということかもしれないね」
「お店のつくりもKOTOのようにできるほど広くもないし、そんなことあのMr.
Tがするわけもない」後藤も言った。
「料金的にはいんちきな現地系ジャパニーズ・フードに負けてしまうし」
と若者も言った。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

皆が帰り、後片付けを後藤としながら、わたしはぼんやりと考えていた。

 日本のどこにでもあるお店・・・・
 奮発するならKOTO、安くすますならカップ麺・・・
 KOTOは日本を誇張している・・・・
 敷居が高い・・・・
 現地の人にもやさしいお店・・・・

わたしは紙ナプキンを取り、ボールペンで「KOTO」と書いた。さらにその
下にSAKURAと書き足した。その下に思いつつくままに、競争する項目を
書き足した。「料金」「メニュー数」「本格さ」「おもてなし」「日本的雰囲気」 
「ステータス」、さらに「なつかしさ」と書いた。

Photo_9  図

KOTOを1として直線を引きマーク▲をつけた。SAKURAは相対的に■の
ポイントをつけた。対照的なお店として、若者が言っていた偽モノのラー
メン屋を比較して●をつけた。わかったことは「SAKURAはすべての点で
KOTOに負けていること。仕方ないとはいえ、問題はどの項目でも平均して
負けていることだ。つまり「低いKOTO」に甘んじている。

偽のラーメン店はほとんどが低ポイントではあるが、一点「なつかしさ」と
いう項目では日本人に圧倒的にアピールする。

KOTOと真正面からぶつかってもダメだ。ラーメン店のように少なくとも
一点強みがなくてはならない。「なつかしさ」の横にさらに項目を足して、
そこでKOTOに対抗できることがあればいいのだ。それは何なのか・・・・。

ふと思い出したのは堀田店長が言っていた「日本を伝道する」という言葉
だった。そういえば、今日も料理の食べ方を、日本人がオーストラリア人
に指導する「小さな国際貢献」もあった。

                     ・・・・・・・・・・・・・『プロローグ』終わり。

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

なんとか5回書き終えました!読者の方々には40(代)の手習い&マンネリ
打破にお付き合いいただきありがとうございました。
明日からは正月モードから抜け出して「勝手にアドバイス」にもどります。
では明日、Click on tomorrow!

J0400796  commonwealth of nations

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