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2007年1月29日 (月)

SAKURAの春 桜のつぼみ 1 ミーティング

お気づきの読者もいたでしょうが、2007年1月1日から1月5日までの【勝手に
アドバイス:旬ネタ】は、新春特別企画として、ある飲食店舗の建て直しを、
「物語風にまとめる」という暴挙(!)に出ました。その暴挙の余勢をかって、
第二弾を書こうというのが今週の旬ネタ。またまた暴挙にお付き合いいただ
ければ幸いです。

第一弾、『SAKURAの春 プロローグ』のあらすじ

ワーキングホリディで渡航したままオーストラリアのブリスベンに居ついた
コバヤシは、元空手道場経営者のMr.Tの経営する日本料理店『SAKURA』
で働いていた。料理店の経営は順調であったので、Mr.Tは郊外立地の
『SAKURA2号店』を出店し、店長にコバヤシをすえた。開業当初は競合店も
無いこともあり順調だったが、近くに日本の大資本をバックにする『KOTO』の
出店を契機に、SAKURA2号店の来店者はめっきり減少した。Mr.Tからはこの
ままの経営では「お前を殴る」と告げられ、悩んだコバヤシは同僚の後藤と
競合店のKOTOを訪れ、店長の堀田から助言を得た。まずお客様の声第一と
考えたコバヤシは、従業員の家族や友人を2号店に呼んで会食会をひらき、
店の評価を得た。キーワードは「日本を伝道する」「小さな国際貢献」という
言葉であった。

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 プロローグの全編はこちら。
 http://sakura-no-haru.cocolog-nifty.com/
 初出の固定リンクはこちら。
 http://marketing-brain.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/sakura__b5be.html

SAKURAの春 桜のつぼみ 1 ミーティング @@@@@@@@@@@@

本物のお客さまではないとはいえ、お店への率直な意見をたくさん得ることが
できてわたしはほっとした。だがほっとしたといってお客さまが増えるわけでは
ない。お客さまインタビューの翌日のランチもいつもと同じで、閑散としているの
に変化はない。だが数日前までのあせりからは解放され、なんとかなるのでは
ないかという気持ちになってきた。

見上げるとすっきりと晴れ上がったブリスベンの青さが目に入った。あらためて
日本から正反対にある地の、穏やかな気候に感謝した。ふるさと新潟の、見渡す
かぎり灰色の日本海の世界から逃れるように旅を始めた頃を思い出した。ふる
さとから逃亡したように言われたこともあったし、「そんな人生でいいのか」と
あからさまに非難されたこともあった。逃亡というよりは、そこにとどまるのが
嫌だったからだけだった。何とかなるさと始めてしまった旅を、どこで終わりに
するのか決めないままに出てきてしまった。

だがブリスベンの気候は、あれこれひとりで思い悩むことを忘れさせる「抜ける
青空」がある。今は始めたことを続けたい、せっかくのチャンスをモノにしたいと
思った。そのためにも店を何とかしなくちゃならない。

ヒマなランチも終わりの時間にぼんやりとそんな思いにふけっていると、台湾系の
ウェイトレス麗朱の声に呼びもどされた。

「コバヤシさん、昨日の話、続けて考えてみましょうよ」
「昨日の話って・・・お客さまインタビューのこと?」
「そうです。わたし、良いアイデアがあるわけではないのですが、昨日の夜、
なんとかしなきゃってずっと考えていました」

正直なところ、彼女の口からこんな前向きな言葉が発せられるとは考えても
みなかった。この店がつぶれても勤め先はあるだろうし、そもそも台湾から移住
してきた家族は裕福な家庭である。働かなくても済むのである。むしろヒマなら
楽して給料がもらえるのを喜んでいるのではないかとさえ思っていた。その
彼女が、お店のことをずっと考えていてくれたのだった。

「わたしも同じ。どうすればもっとお客さんがたくさんくるだろうかって考えて
なかなか眠れなくて」 最後のお客さんが帰った後のテーブルの片付けをして
いたワンダも、声をかけてきた。「何とかしたいよね」
「忙しくなった方が楽しい。お客さんがたぁっくさん、来てほしい」と麗朱。

わたしは言葉を出すことができなかった。こんな身近に真剣に考えてくれる人
がいたことを思いつかなかったことが恥かしかった。もっと早く胸を開いてしまう
べきだった。そういえば、経営者のMr.Tから「この業績では店を閉める」と言わ
れて悩んでいたとき、競合店のKOTOを調べようと提案してくれたのも調理担当
の後藤だった。実はみんな同じことを心配していたのだった。それをわたしは
自分の心だけに閉じ込めすぎていたようだった。

「ワンダ、今日の午後は授業はあるの?」
「ないです。午後は時間とれる」
「麗朱は?用事がなければミーティングをもてない?」
「OK、ミーティングしましょう」

        @@@@@@@@@@@@@@@@@@

後藤を入れてわたしたち4人は客席のテーブルを囲んだ。わたしは不要になった
メニューの裏紙に、前に紙ナプキンに書いたKOTO、SAKURA、偽のラーメン店
の図を描いた。

   Photo_15

「あらゆる面でKOTOと差がついちゃっている」と後藤が言った。
「そうだけど、ウチだっていいところはあるさ」強がるようにわたしは言葉を返した。
「これを書いてみると、ウチのお店ならではを考えないと負けっぱなしになるのが
わかった」 わたしがそう言うと一同はうなずいた。

「ワンダ、麗朱、君たちはKOTOに行ったことある?」
ワンダは首を振って「学生には高すぎまぁ~す」と笑った。だが麗朱は肩をすぼめ
ながら「ごめんなさい、実は一度行ったことがあります」と言った。
「別に謝ることはないよ。KOTOのお店、どう思った?」
「料金は高かったけれど美味しかったし、雰囲気もよかった。ウェイトレスもきちん
としていて気持ちがいいお店」
「じゃあまず、KOTOを分析してみよう」とわたしは別の裏紙を取り出した。

四角のハコに『KOTO』と書いてみた。「まずお客さまだ」 その下に『顧客』のハコ
を書き足した。「顧客は日本人とオージーだね、だいたいは」 皆はうなずいた。
「日本人といっても、たぶん、日本人同士とオージーと日本人の接待の二つのお客
さまね」と麗朱。
「オージー同士だけで日本食を食べに来るなんて、どんな人なんだろう?」
「きっとフェチだ」と後藤が言ったのでわたしが書き足した。

01_7
 
そんなやりとりをして図が出来上がっていった。従業員は現地人もいるが日本人が
多いこと、これは想像だが、日本の大企業の資本がバックにあるので、教育がしっ
かりしているのではないかということで『教育』というハコを書いた。

「どう思う?」とわたしは後藤に訊いた。
「KOTOの店長、堀田さんがウチのお客さんは『現地のリーダー層』だって言ってた
のを思い出した。現地のリーダー層からトップダウンで日本食を広めたいって」
わたしはうなずいて、図にKOTOならではと書いて上で、赤いペンでこう書いた。

KOTOならでは・・・・日本食を現地リーダー層から広める店格

 02_3  

「こうやって整理すると、KOTOというお店、お客さんから食事、サービス、お店の
施設、従業員まで、一貫している」わたしはため息まじりにそう言った。皆うなず
いた。「ウチのお店、SAKURA2号店はKOTOとどう違うのだろうか?」

「お客さまには接待客はいないし、オージーのみのお客さんはたまに来るけど、
場違いのお店に来ちゃったというような『迷い犬』みたいね」ワンダがそういうと
皆笑った。わたしは紙ナプキンに『迷い犬?』と書いて上においた。

設備は個室もなければ、日本的な情緒にあふれる庭園も鯉も寿司カウンターも
ない。従業員は日本人だけでなく現地人でジャパニーズムードには欠ける。
それは悪いことじゃないのだが・・・とわたしはワンダと麗朱に、そういう意味では
ないと言った。店のオーナーは日本の大資本ではなく空手家だから、教育も
へちまもないのだ。

 03_2

これでは「SAKURAならでは」がまったく見えてこない。わたしはためいきを再び
ついた。ため息をつたのは、わたしだけではないのが空気の振動でわかった。
後藤も麗朱もワンダも、裏紙をじっと見つめるばかりだった。

SAKURAの春 桜のつぼみ 1 @@@@@@@@@@@@@@@@ 終わり。

勝手にアドバイスは、いつもと趣向を変えて、店舗建て直しのフィクショナルな
物語の続編を書いてみました。フィクショナルなのですが、わたしの実体験を
ベースにしています。登場人物も状況もそれとなく事実です。

お伝えしたいのは、「事業規模の大小を問わず、成長企業ならどの会社でも
同じことをする」と言う普遍的なメッセージです。お読みいただきありがとうござい
ました。今日はちょっと力が入りました(笑)。明日から平常心♪ では明日。

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