勝手にアドバイス 旬ネタ ポイント・ウォーズ
消費がちょっと上向いてきたと思えば利上げである。全般に企業業績は良くても、将来の見えざる危機を見据えて、内部留保を重視する企業が多い。それだけバブル・エコノミー後の失われた10年で、個人も法人もデフレに痛めつけられてきたということだろう。仕方ないと言えば仕方ない。
バブル時代を題材にした本を流行らそうという悪ノリには閉口するが(景気は循環モノですから、いずれハジけます)、消費者としてはそろそろ伸びもしたい頃である。新入学や就職で家財や不動産がらみの出費も多いそんな春先、消費者の力になってくれそうなのが「ポイント」である。
東京メトロまでポイントを導入するという時代、2007年花の3月に突入する今週の旬ネタは「ポイント・ウォーズ」としたい。本日(2月26日)現在想定している今週のブログ構成は次の通り。途中で変更することも大いにありですので、ご容赦ください。
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1.日常生活消費にポイントという衝撃
2.ポイントか割引かクーポンか、それが問題だ。
3.ポイントからターゲット・マーケティング?
4.公金も税金も投票も?クレジット・ポイントでお得に!
5.ポイント・コミュニティ vs. ポイント・コモディティ
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【勝手にアドバイス 旬ネタ ポイント・ウォーズ 1.日常生活消費ポイントの衝撃】
何といっても最近のポイントをめぐる衝撃的なニュースはTo Me CARD by 東京メトロであった。何しろ毎日のように消費しているサービス業が地下鉄ある。それがポイント化されるって?これは驚きである。勤め人のわたしのような人にとっては、自宅近所のスーパーには週に何度も行かないが、メトロは平日使わない日はない。乗れば乗るほど貯まるって?いいじゃないか。そのメトロのポイント制度の紹介文。
東京メトロの提供するポイントサービスで、SF乗車ポイントサービスや、To Me CARDのご利用に応じてポイントが貯まります。貯まったポイントは、PASMOにチャージすることができるなど、たいへんおトクなポイントサービスです。
http://www.to-me-card.jp/guide/point/index.html
メトロポイントをゲットするには普通の通勤・通学定期やPasmoではできない。あらかじめ申し込みが必要なクレジットカード「To Me CARD」が必要である。クレジット会社は現在JCB、NICOS、UCの3社であり、それぞれ無料の普通カードと有料のゴールドカードを用意している。
【乗車ごとに2ポイント、たまればPasmoにチャージ】
システムは単純であり、1乗車ごとに(定期はダメ)2ポイント(ゴールドカード会員は5ポイント)が加算される。1,000ポイント貯まったところでPasmoに1000円分をチャージできる。160円から210円で2ポイント=2円だから、割引率はおよそ1%である。
定期や回数券販売には適用されないので、ポイントは案外たまらないかもしれない。だが東京メトロの2006年の旅客収入の約57%、1500億円が乗車券売上であり、その1%の割引であるので、最大15億円の販売促進額という小さくはないスケールである。
ちょっと見にくいが、トップが東京メトロである。
http://www.tokyometro.jp/corporate/management_plan/pdf/tmp2006_14.pdf
対抗上、JRグループが定期券にもポイント化を進めれば、将来東京メトロも定期券へポイント適用をしないと誰が断言できるだろうか?
【たかが1%、されど1%】
この1%の割引が、競合他社や地域商業にとって、じわじわと効くボディブローになる可能性が高い。
まず何よりもJR東日本や都内近郊の私鉄への挑戦状であり、赤字にあえぐ都営地下鉄への最後の一撃になりかねない。同じ方向の路線があれば、ポイントのある方に乗ろうという意識が働くだろう。来年(2008年)6月に開業予定の副都心線は「池袋、新宿、渋谷、横浜、みなとみらいを結ぶ大動脈」と言われる。この路線で影響を受けるのはどこだろうか?もちろんJR東日本である。
今週じっくり考えたいが、ポイントというのは必ずしも「顧客囲い込み」ではない。だが、同じ二つのコモディティ化したサービスがある場合、ポイントがある方に消費は流れる。その意味ではあからさまな挑戦状である。同じ方向に走る二つの電車はコモディティと言っていいだろう(もちろん乗り心地が良い、駅設備が優れるなど選定の要素は別にもある)。コモディティは本質的な差別化よりもお得(=ポイントや現金割引、クーポン)で勝負するのが王道である。
【駅ナカから駅マワリへ】
ポイントカードはもちろん駅ナカへも適用される。東京メトロにはエチカ表参道という駅ナカがある。ここでポイント利用が対象になるのは現在は3店舗に過ぎないが、いずれ増えることは間違いない。東京都ではJR東日本の駅ナカのショッピングゾーン、エキュート品川や立川に都市計画税をかけるという方針を示した。それだけ駅マワリの商業施設に影響が出ているということである。
その辺りを読み取ってか、東京メトロのポイントは駅ナカだけではなく、駅マワリもグループ化している。ベルビー赤坂、カレッタ汐留、六本木ヒルズなどである。駅マワリへの拡張をすることで、通勤・通学者にはお得感を、地域商業の批判をかわすねらいもあると見たが、いかがだろうか。
【東京メトロは生活動線の囲い込みをする】
東京メトロは従来よりANAとは航空チケットの販売提携をしてきたが、売上はさっぱりだった。だがANAとのマイレッジの移行ができるようになった今、地下鉄駅で航空券を購入する人も増えるだろう。さらにペリカン便の日本通運との提携も、モノの移動という視点での提携であろう。
こうして概観すると、メトロを起点とした「エリアポイント」という戦略も見えてくる。
従来は私鉄がターミナル・デパートメントストアでエリアでの覇権を競ってきた。しかし大手流通業の衰退と業界再編&合従連携で、エリア制覇という考え方が後退している。その空隙を衝いて、東京メトロは都内の主要商業エリアでポイントをテコに、エリア商業のグループ化を進めるのである。まして時代はまさに21世紀最初の東京バブル、東京一極集中の時代である。そのトレンドにしっかりと乗る戦略である。
【拡張するポイント市場】
まず手始めに、今日は東京メトロのTo Me CARDを事例にポイント前線の動向を取り上げたが、そこにはポイントをめぐる争点が凝縮されているからだ。
・1%という小さな規模から始める(拡張の余地がある)
・駅ナカ&駅マワリという商業空間囲い込み
・鉄道から空路、運輸という長い動線企業との提携
・生活動線と生活エリアの囲い込み
野村総合研究所が推定した「企業通貨市場規模」(ポイント市場に近い概念)では、約4500億円もの規模になっているという。主な企業のポイント還元額は次の通り(フルに還元された場合の数値)。
携帯電話(上位3社) 874億円
航空 750億円
ガソリン 477億円
家電量販(上位10社) 306億円
総合スーパー(上位5社) 292億円
百貨店(上位10社) 274億円
コンビニエンスストア(主要3社) 49億円
ドラッグストア(上位5社) 39億円
今週はますます拡張するポイント市場を考察したい。今日は以上です。
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