« 四元奈生美さん 「やってる私たちは暗くない!」 | トップページ | 弥生・小雪さんのトート/COACH 65 TASTE »

2007年3月 5日 (月)

中田英寿 地球というホーム

今日は勝手にアドバイスはお休み。隔週で書いています「ぷろこんエッセイ」から
の転載です。テーマは中田英寿さんです。うまくゆかないなということも多い世の中、
中田選手の思い、行動、姿勢にはとても力づけられました。

中田英寿 地球というホーム

正直、今さら中田かと思っていた。彼のサッカーや生きる姿勢にはいつも心を寄せ
たし、彼の最後の代表の試合への献身も素晴らしかったが、やはり2006年6月に
終わった人でもあった。

だから買って読まなきゃ・・・と思っていた『In His Times 中田英寿という時代』の本、
著者の増島みどりさんから「中田の本出しましたので、お時間のある時でも・・・」と
いう葉書を頂いたとき、まずいと思った。なぜなら出版は知っていたが、まだ購入して
いなかったからだ。

葉書を頂いた翌日、書店に行くとすでに本は二刷だった。初刷でなくてごめんなさい。
テレビでしか見たことのないHideに言えばいいのか、増島さんに言えばいいのか
わからないままに、そうつぶやきながら購入した。

読み始めて、中田英寿選手と増島みどりさんのお二人の1994年から2006年の記録
(In There Times)に、何度も涙をこらえた。

スポーツ・アスリートの本なのだから、お涙頂戴の本であるはずもない。それでも
目が熱くなった。涙の元は二つある。一つは中田英寿というアスリートの態度、思考
や生き方への感動
。それを証言するアスリートや関係者の言葉への感動である。

もう一つ。中田が蹴り出す強いパスに「誰も受け取れないスルーパス」という言わ
れ方がされていたことがあった。そのピッチ上のパスだけでなく、日本人の大半が、
中田という生き方を「受け取れてなかった」
。それがわかったからだ。彼の献身的な
プレーが好きだし、理解もしていたと思っていたが、浅かった。自分の不明を恥じた。

この増島さんの傑作(『6月の軌跡』を越える代表作になった)から、1月下旬に30歳
になったばかりの元アスリートの言葉を綴りながら、自分自身の不明さを反省する
のが今回のテーマである。

  Keyvisual

            ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【考えること】
  ここ(セリエA)に来てみて改めて、自分は一体何が取り柄なんだろうか
  と考えたわけです。外国の選手に比べたら体があるわけじゃあない、
  背も低いし横幅だってね、こんなんでしょう。(中略)そこで唯一戦える
  ものって何なのかとね。そこから組み立てていく。考えること、それしか
  ない。身体能力なんてこれはもう一生かかってもどうにもならないだろうし、
  技術は習得に時間がかかるからそんなに簡単に追いつくものではない。
  でも考える力、それだけは今すぐに、それがJリーグだろうが、セリエA
  だろうがどこだろうが、すぐに実践できるはずです。

  中田英寿(ペルージャへの移籍のころ)

中田選手の言うように、あらゆる仕事ですぐにできることは「考える」ということで
ある。考えているようで考え抜かれていない組織や個人の行動が多い。考えて
いないから差が付かない、同質化競争に巻き込まれる。

わたしはかれこれ7、8年今の仕事を続けているが、簡単だと思ったことは一度も
ない。いつになったらもっとうまくできるんだろう、もっと切れ味が良い創造性が
出せるのだろう、もっとわかりやすい資料やデータ分析ができるのだろうと、もが
いてきた。知識も少なく才能も乏しいし、同僚や知人に比べて地頭も良さもない。
わたしなりに考えた自分の取り柄は図解力と文章力の二つ。どちらもまだ満足で
きないが、中田を倣って日々トレーニングを続けよう。

【プロは自分の頭の中にコーチを持つ】
  プロは周囲からアドバイスなんてもらうものじゃないし、自分の目で教材
  を見つける。その教材を解いてくれるのはクラブのコーチではなく、自分の
  頭の中にいるコーチということになる。1を聞いて3も5も知る、それができる
  選手だったんでしょうね。(中略)彼には、感性という才能が一番大きな
  武器だったと僕は見ています。その感性が、彼のフィジカルをコントロール
  していたのも間違いない。

  風間八宏(元ブンデスリーガ レバークーゼン選手)

サッカーは因数分解に似ていると言った中田選手だが、実生活でもサッカーと
いう仕事を生活の真ん中にすえて、チーム練習、パス交換、ランニング、ウェイト
トレーニング・・・・とやるべきことを足していったという。足しあげて時間がなくなり
やれずに我慢することが多かった。彼の凄さは教材を見つけるだけでなく、そこ
から「自分をコントロール」できるところであった。

自分の今の仕事を振り返れば、「誰もこの仕事のやり方を教えてくれない」という
ことに、入職後すぐに気づいた。それを恨めしく思ったこともあったが甘えである。
自分でどん欲に教材を見つけ、人から技を盗むしかない。成功か不成功かは、
自分の心の中に響く音を頼りにするしかない。

【平静心】
  あがくことが悪いわけじゃないけど、時には起きたことを受け入れて、
  そこからどう次につなげるかは自分との戦いになる。卑屈になったり、
  諦めたりせず、自分の力だけではどうしようもないものを、いかにプラス
  に転じて  いけるかが大事なんだろうね、それを学ぶことができたと思う。

  中田英寿 (2005年の長いケガのシーズンを振り返って)

  「いい時も、悪い時もある。大切なのは、ふて腐れたり、境遇を恨んだりせず、
  受け入れて次につなげることだ」

  同上

これを読んで、もう愚痴は言うまいと心に誓った。悪い時もあれば良い時もある。
それを自然体で受け止められる人間性を持たなければ(・・・ああ道は険しい)。

【気遣い】
  ヒデが急に、キャプテン、きょうお誕生日ですよね、おめでとうございます、
  と言うんでびっくりしてね(中略) いやもう69だよ、なんてね。ヒデは、エッ、
  そんなに年取っているんですか?ともかくこれからも頑張ってください、
  なんて励まされて。ホテルに帰ったら、部屋にシャンパンが届いていてね。
  ああ、ホテルからのプレゼントか、と思ったら、カードにヒデの名前が書かれ
  ていた。

  川淵三郎(日本サッカー協会 キャプテン)

マスコミから伝えられてきた像とは異なり、実に細かい気遣いをスマートにできる
のが中田だったのである。マスコミ報道の不正確さを改めて感じた。

【2006年のW杯敗戦】
  98年以降の代表は人を生かすよりも、自分のことを優先する傾向に
  あるように感じますね。今(2006年)のほうが、あの時の代表より何十倍も
  上手い。テクニックの進歩は目覚ましいけれど、一方ではメンタリティは
  その進歩についていっていないように感じることもある。

  中田英寿(2006年W杯前のインタビュー)

テクニックがメンタリティに付いてゆけなかったのがサッカー界の8年間だったと
すると、ここ数年の日本の社会にも、同じことが当てはまる。その一方で、
バブル経済以降の日本は「社会品質」が劣化している。

たとえば外資系投資銀行に入って数年で辞めて、ファンドをつくって儲けて
アーリー・リタイヤ。どんなビジネスでもいいからネット起業して、上場するか
会社を売ってリッチになろうというような、テクニックというか処世術というか、
そんなことばかり注目されてきた。それを批判する論調もあるのだが、どうも
世間一般は、そうした正論を支持しようとしないのが風潮である。

インターネットが人をつなぐ上で果たした役割は大きいが、同時に深いところでの
共通意識、社会意識を減退させているのではないだろうか。法律遵守、年金、
ニート、格差・・・自分のことを優先するあまり、上から下まで、これほど無責任な
感情が支配した時代があるだろうか?中田はサッカーを通じて、これと同じことを
言っているのだと思う。

【リーダーの責任】
  (2006年ドイツW杯)ブラジル戦の翌朝、一睡もしないまま、川淵はそれ
  でも、自らがパーソナリティを務めて4年続くラジオ番組「キャプテン川淵の
  行こうぜ!オレ達のニッポン」(ニッポン放送)の生収録に臨んでいた。ピッチ
  で倒れていた姿ではなく、ロッカーの前でうずくまって肩を震わせ泣いていた
  中田の姿を初めて明かしたとき、部屋中(収録室)が静まりかえった。

  増島みどり記

ロベルト・バッジョ(イタリア元代表)は10番という責任に対して、「サッカー選手と
してだけでなく、一人の人間としてそのパーソナリティ、価値観を試され、注視さ
れることを意味している。勝てば皆が良かったからだ、もし何かうまくいかない
ことがあれば、その責任はすべてこの番号にのしかかる
」と語る(本書より)。

1998年、2002年、2006年、3つのW杯で中田はずっと「10番」であり続けた。背番号
は「7番」だったが実質的にリーダーであった。なぜ29歳でプロを辞めるのかと言われ
続けたが、当時の代表の力では勝ち抜けないという読みと、その時の身の処し方
を考えたのであろう。勝てないなら辞める。サッカーという狭い世界のルールと
いうよりも、一般社会の掟に従ったのではないだろうか。

【アウェーの精神性】
  「アウェーの苦手な日本人と、サッカーでアウェーを生きようとした中田
  選手を、来たる新学期から授業でも是非取り上げたいのです。歴史上の
  人物が海を渡ったといっても、生徒は無関心ですが、中田選手が、となれ
  ば俄然意欲が湧くと思います」

  (ある大学教授が増島さんの原稿を講義に使用する上での連絡文書)

言葉も生活も現地に溶けこんだ中田の姿に影響された人は多い。わたしも短い
期間だがアウェー(海外)に一人でいたことがあった。一人アウェーは、やって
みた人ならわかるが孤独である。彼の8年にわたるアウェーでの行動力は偉大
としか形容できない。

わたしのアウェー(1994年頃)の頃の余談だが、日本の実家から送られてくる
『サッカーマガジン』に連載されていた増島さんの記事で孤独を癒した。海外
から感想を送ったのが葉書を頂けるきっかけになった。

【地球がホーム】
  もちろん日本で生まれ育ったわけですが、僕らは地球で生まれているん
  だから、まあみんな同じなんだと思うことはありませんか。もちろん、色々
  な壁がある。言葉であり文化であり、宗教であり。しかし、こういう壁を取り
  除いたとき、誰にとっても、ここ地球がホームになる。

  中田英寿(引退後のインタビュー)

中田が「旅に出ます」と言った意味は「地球がホーム」であることを確かめるため
であったのだ。ピッチでも、練習場でも、ロッカールームでも、アウェーでも、サッ
カーという枠には収まりきらない人間が中田英寿であった。こういう30歳の日本人
もいる。それが嬉しかった。

            ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

増島さん、こんなにたくさん引用してすみません。わたしの拙文を読んで、本を
読んだ気になってしまう人がいたら申し訳なくて(笑)。中田好きの人も中田嫌い
の人もこの本を購入して、中田がもたらしたものが何だったのか考えてほしい。

Title_1
The masujima stadium

今日は以上です。お読みいただき、ありがとうございます。これからもよろしく
お願いします。ではまた明日。

|

« 四元奈生美さん 「やってる私たちは暗くない!」 | トップページ | 弥生・小雪さんのトート/COACH 65 TASTE »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 中田英寿 地球というホーム:

» NICOLABSへようこそ [NICOLABSへようこそ]
従来のMLMの常識を覆す非常識なプラン!即金+投資型MLM(リピート代金不要!)の融合で毎日報酬入金と8桁収入を目指します!報酬受け取り達成者が続出中!リスクは限りなくゼロ!! [続きを読む]

受信: 2007年3月 5日 (月) 21時48分

» Youtube 動画 [Youtube 動画]
簡単にYouTubeのことをおさらいしときます。サービスを開始したのは2005年の2月からです。tubeが英語でブラウン管、つまりテレビを指すところから、YouTubeの名前の由来は、きています。 つまりYouTubeは「あなた個人のテレビ局です」という意味で、名づけられたわけですね。 ... [続きを読む]

受信: 2007年3月 5日 (月) 22時12分

» ��スⓙ,鬟茱峪笋離咼献優稿獅� [★siawase★]
はじめまして!! 『騙され続けた方々を救う会』 にアクセスいただき、誠にありがとうございます。 代表の佐藤 勝彦です。 ※この情報販売に関する特定商取引法に基づく表記は最後に御座います。 この度、 私は悪徳出品者及び悪徳情報を公開する決断をしました。 (直接的な固有名詞は出しません。伏せ字や当て字です) 騙されたくない人は私のこの説明文をよく読んで下さい。 きっとプラスになります! ... [続きを読む]

受信: 2007年3月 5日 (月) 22時25分

» 加藤美佳&上原やよいプライベート画像流出!! 編集 [加藤美佳&上原やよいプライベート画像流出!! 編集]
人気上昇中の二人、加藤美佳&上原やよいのプライベート画像流出です!! [続きを読む]

受信: 2007年3月 5日 (月) 23時24分

» ストレスと花粉症4 [ストレスバスター@癒し研究所]
ちなみにストレスの元、花粉症を引き起こす花粉はどれくらいあるんでしょうか?。皆さんはどれくらいだと思います。? なんと50種類以上もあるんです。ストレスの元がこんなにあるとは驚きというか脅威です。 [続きを読む]

受信: 2007年3月 5日 (月) 23時49分

» クレジットカードを利用する最大のメリットは!? [ANAマイレージ@陸マイラー]
クレジットカードを利用する最大のメリットは、何と言っても特典の数々。その中でも、利用者にとって一番のオトクは、利用金額に応じて付与されるポイント制度ですよね。毎日の暮らしの中で発生してくるあらゆる決済の場面で、現金で決済を行っているものを、出来る限りクレジットカード決済に変えて、ポイントをどんどん貯めることができます。タダで海外旅行に行くために、こんなシチュエーションでも。。。新聞や雑誌の年間購読料、ガソリンスタンド、高速道路、自動車保険、車検や板金代、プロバイダー料金、スカ...... [続きを読む]

受信: 2007年3月 6日 (火) 01時45分

» 太一&aikoの破局 [オンラインカジノやゲームの情報屋]
結婚を何度となく囁かれてきた交際8年の国分太一とaikoの破局。 [続きを読む]

受信: 2007年3月 6日 (火) 12時49分

» 大相場は近い!こんなこと言ったら叱られますか! [サラリーマンのドタバタ株投資]
今回の株価下落は、尽きるところ結局「需給の悪化」ということになります。 業績はまあまあですが、お金の流れが完全に逆回転していることは明白です。 [続きを読む]

受信: 2007年3月 6日 (火) 23時35分

» Kiroro玉城、第2子妊娠 [お得な情報多数掲載!!]
沖縄出身の人気デュオ「Kiroro」のボーカル、玉城千春(29)が第2子を妊娠していることが6日、分かった。 [続きを読む]

受信: 2007年3月 7日 (水) 19時33分

» ハゲタカはおもしろい! [ハゲタカはおもしろい!]
だけど、この小説は、外資ファンドは悪玉、日本のバンカーは善玉という単純な話じゃないんだよ。 [続きを読む]

受信: 2007年3月 8日 (木) 06時19分

» FCバルセロナ [FCバルセロナ]
FCバルセロナについて知りたいことは何ですか?FCバルセロナの画像?FCバルセロナの壁紙?FCバルセロナの選手?FCバルセロナに関する情報をたっぷり載せたサイトです。 [続きを読む]

受信: 2007年3月10日 (土) 07時52分

» サッカー日本代表@情報バンク [サッカー日本代表@情報バンク]
サッカー日本代表やJリーグの情報を集めています! [続きを読む]

受信: 2007年3月16日 (金) 08時35分

» 中田英寿「政界転身の布石」マル秘会食の夜 [最新ニュースRSS速報]
W杯直後の電撃引退も、いまや昔の出来事のように思える。“旅人”として世界を巡り続け、いまだ次の目標を表明しない中田。サッカー指導者となるのか、実業家としての道を拓くのか。 [続きを読む]

受信: 2007年3月23日 (金) 22時39分

» <日本サッカー協会>「夢先生」派遣へ 子供の健全育成で [一押しスポーツニュース]
スポーツニュース [続きを読む]

受信: 2007年3月29日 (木) 21時59分

« 四元奈生美さん 「やってる私たちは暗くない!」 | トップページ | 弥生・小雪さんのトート/COACH 65 TASTE »