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2007年3月16日 (金)

旬ネタ 「・・・ならでは」の伝承 5.本田技研 語り継ぐ伝承

「・・・ならでは」の伝承について書いてきた勝手にアドバイス旬ネタ、今日は5回目で最終回。お読みいただきましてありがとうございます。

やや古めかしいワード「伝承」を、「ナレッジ・マネジメント」といったカタカナにしてしまうと、ITツールに情報を蓄積しておしまい!という考えになりがちである。わたしの理解では、一般的なITツールの使い方は、情報の「伝達」である。古い情報は情報でない、という「ふるい」を検索ではかけるわたしたちである。古いコンセプトの「伝承」は今のシステムとは相性が悪い。

だが「伝承」と「伝達」は違う。前者は基本的に口伝であり、後者は現代ではITツールで行う。この二つの言葉は本質的に大きな違いがある。辞書をあたってみても、伝承は「受けついで伝えて行くこと」であり、一方伝達は「命令・連絡事項などを取り次いで伝えること」である。極論すれば松明を受け継ぐか、データを渡すかという違いである。前者は理念や事業の本質を伝え、後者は仕事の情報を伝える。

念のため、わたしどもはそのようなツール系の仕事をしないわけではないし、むしろ導入をおすすめする側である。だからシステムを否定しない。システムがあらばこそ、システムでしかできないこと、知っているつもりではある。

だが経営という大きな視点からコンサルティングの姿を考えるとき、大量のデータを倉庫(ウェアハウス)に入れておき、いつでも出せるというシステム・アプローチよりも、事実ないし本質的なデータだけを検討できるシステム・アプローチが重要である。それが伝達から伝承へと近づく、一歩になると思う。

そんなことを思ったのも、本田技研という卓越した会社をめぐる状況を考えたからである。さて、みなさんは、創業者の本田宗一郎氏に関する本が、これまでに何冊出されているか、想像が付くだろうか?今日はそんな疑問から出発し、本田がらみの言葉でわたしの好きな言葉を紹介したい。

【勝手にアドバイス 旬ネタ 「・・・ならでは」の伝承 5.本田技研 語り継ぐ伝承】
その答えは「とても多い」と言えるだろう。

『ざっくばらん』『得手に帆をあげて』『私の履歴書=17=』『俺の考え ブームを作る経営秘密』『スピードに生きる』『HONDA 商法』『現代人物論 本田宗一郎』『13人の侍 奇跡の人々』『教科書では教えない人生(下)』『世界を変える男』『経営の心 10集』『青年諸君』『ミスターホンダ』『ホンダの原点』『技術人精神』『本田宗一郎と藤沢武夫の世界』『ホンダ商法の秘密』『ホンダ超発想経営』・・・・・・・

あるサイトにはこんな具合に116冊(!)が掲載されている。これは出版年順になっていて、最後に記載された本『本田宗一郎 不屈のリーダー学』の出版年月が (1998.10.26) となっている。それかから8年以上も経っているのできっと150冊を軽く超えるのではないだろうか。
http://www.r56imai.com/book_htm/souitisyoseki.htm

【語り継ぐ経営】
わたしは経験したことを経験者自身が「語り継ぐこと」こそ、伝承の唯一無二の手段であると考える。本田技研では本田宗一郎や藤沢武夫を始め、多くの語るべき人材を輩出してきた。彼らが成し遂げた多くの業績も、今日まで語り継がれてきた。それらが膨大な資料や書籍になってきた。戦後日本を代表する企業、本田だからこそ語り継ぐべき膨大な事物があった、ということはもちろん言えるだろう。

だが、その業績の裏にあった苦労や逸話、訓話、笑い話・・・そうしたことを何年、何十年にもわたり語り継いできた人々(社員、関係者、ジャーナリスト、販売店やサプライヤー、そして顧客)がいたからこそ、現在の本田の発展、そして挑戦を忘れない事業家思想が途絶えないのではないだろうか。

その語り継がれてきた言葉は、本田宗一郎らが、ミカン箱をひっくり返してその上に乗って、喋ったこともあれば、生産ラインの側でなぐりつけて(本田の暴力が労組で問題になったこともあった)話したこともあっただろう。とにかくおしゃべりで語り好きな人だったというから。重要なことは彼ら経営者たちが語ってきたということだろう。それらを受け止めて、語り継いできたというところに、軸がぶれなかった要因現在まで進取の気性に富む会社であり続けている要因だと思う。

   

【語り継ぐべし】
中小企業の社長やベンチャーの社長であろうと、大企業の経営陣であろうと、日頃から心がけてやらなくてはならないことは、語り継ぐことではないだろうか。無味で自慢話ばかりの(誰も読まない)社史をつくるのではなく、社内をぶらついて、味わいのある言葉で、経験や思いを語ることが必要ではないだろうか。味わいのある言葉を聞けば、社員は語り継ぐ。そうすれば、「企業風土に課題あり」「情報共有が足りない」「方針が不明確」というような愚痴・小言も減るはずである。もしもそれでも社員たちが語り継がないとすれば、社員に問題がある。

個人的なことを言えば、今の所属会社では、初代/創業の社長の言葉のいくつか心に残っている。わたしの入社時点ではすでに故人である。だから書き物とビデオに過ぎない。しかし(あえて披露しないが)心に残っている。今の勤め先の前の会社では、タコ社長(もう故人なのですまん)のお付きもしたが、やんちゃな社長の言葉はいくつも心に残っている。

現経営陣にも、わたしの心に残る言葉、切にお願いしたい。今日はわたしの持つ本田関連の本から、好きな言葉を拾って締めくくりたい。

【『私の手が語る』 本田宗一郎著 講談社文庫 絶版?】
人を動かすことのできる人は、他人の気持ちになることができる人である。相手が少人数でも、あるいは多くの人びとであっても、その人たちの気持ちになりうる人でなければならない。
そのかわり、他人の気持ちになれる人というのは自分が悩む。自分が悩まない人は、他人を動かすことができない。私はそう思っている。自分が悩んだことがない人は、まず、人を動かすことができない。

私などは、生まれてこのかた、不得意な分野に手を染めたことがなかったといってよい。得意というより、好きな分野のことで精いっぱいで、我慢してまで不得手なことをやる気はまったくならなかった。会社でも、藤沢武夫という百パーセント新信頼できるパートナーを得てむずかしい営業の仕事などそっくり任せきり、その意見をよくきき、取り入れながら得意なことに専念したのである。

こぼれたオイルを手のひらになすりつけながら、大きくなったらきっと自分の手で自動車を作り、思いきり自由に動かしてやろうという願望をもったのである。その気持ちは、いろんな新しい機械を見るたびに強くなった。

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【『語り継ぐ経営』 西田通弘著 講談社文庫】
「自由競争に徹していた」
二輪車業界は政府の保護をまったく受けていないし、四輪市場に打って出るときに通産省(当時)と大げんかしたのは有名な話である。さらに人材の登用も学校も学科も履歴書から削除する。販売店にも自由競争は徹底しており、販売テリトリー制はみだりに与えず、競争しながら販売していただくのが基本方針である。

「企業のあるべき姿、方向づけが明確」
藤沢武夫氏が「方向が正しければ、いつかはものになるよ」という言葉を好んで使ったことも紹介されている。有名な「作って喜び、売って喜び、買って喜ぶ」も「喜んで」生きることが最も大切であるという表現である。

「物事の本質を追究する」
失敗の原因、真の問題は何か、徹底的に食いついて放さない。本田・藤沢の、そのときの熱意や集中力は相当の本質をつかむ能力はすごかったという。執念深いとさえ言えたという。それも失敗した当の本人が、失敗の中から何かをつかみ出すまで許さないという叱り方だった。

その本田・藤沢の出会いのとき、本田はこう言ったという。「お互いに取り合うものがある間は一緒にやろうや、なくなったら別れようよ」

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【『スピードに生きる』 本田宗一郎著】
われわれに最も必要なものは金でもなければ機械でもない。いちばん必要なものは各人の考え方を直すことがもっとも大切である

私は会社のために働きにくるなどという社員は嫌いだ。自分のためにいかに働くかが問題であり、会社のためにになどと--昔の忠君愛国みたいなことをふりまわされるのはいやだ。それが欺瞞行為であることは、本人がいちばんよく知っているはずである。人はだれでも、自分の生活をエンジョイしたい、自由になりたいということで仕事に精を出すものなのだ。

技術屋でいちばん足りないものは技術ではない。われわれは商品をつくっているのだから、やはり人間の研究がいちばん大切だということになる。

好きこそものの上手といわれるように、好きなことは得手なんだから、得手以外のことは絶対に口を出さない。わが社はそういう組織でやっている。したがって能率が非常に上がる。

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伝承のアプローチを「理念ブック」「伝統と流行」「江戸っ」「社内創業/プロジェクト」「語り継ぐこと」の5つにわけて書いてきた。どの会社も尊敬されすぎる会社のケースばかりなのはいけなかったが、できれば自社の立場に置き換えて読んで欲しい。「業務」ではなく「経営」というコンサルティング・アプローチの上では、「伝承」という要素は看過できない。今後はコンサルティングの仕事を通じて、それを意識したいと思った。

今日は以上です。お読みいただきありがとうございました。ではまた明日。

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