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2007年4月 9日 (月)

カスタマー・バリューのフロンティア

【マーケティング・ブレイン旬ネタ 1.カスタマー・バリューのフロンティア】
今週一週間「旬ネタ」として書きたいテーマは「カスタマー・バリューのフロンティア」、言ってみれば顧客価値研究の先端、消費者調査の先端という野心的なテーマである。

テーマの発端はひとつの夢を見たことである。夢といっても「お告げ」ではないので安心してほしい(笑)。お告げではなく、夢の中の他人が、自分に語りかけることはよくあるだろう。わたしの見た夢でもそれがあった。彼はわたしにあることを語りかけてきた。その内容を聞いて目が覚めた。わたしは、彼の意見が自分の中から出てきたとは信じられなかった。自分が考えてもいないことを語りかけられたと感じたからだ。

そこでハタと気づいた。人は普段考えていることだけで動いているわけではない。考えてもいない(と思いこんでいる)ことでも動いてもいる。

」のところを「消費者」に変えても事情は同じではないだろうか。人の中には、自分で意識して購買する態度と、無意識的に購買する態度が共存している。表層心理で買う場合と、深層心理から買う場合があるのではないだろうか?それがゆえに「消費者が見えない」と言わしめるのではないだろうか?

今週はこうした問題意識をきっかけとして、意識(表層心理)、無意識(深層心理)をテーマにした書、『心脳マーケティング』(ジェラルド・ザルトマン著)に触れつつ、なぜ多くの企業で、従来の消費者調査を否定して、新しい試みをしているのかを見ていきたい。

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【今週予定している構成】

1.カスタマー・バリューのフロンティア(本日)
2.表層心理の消費:シャープの『ホット庫』という見えないニーズへの気づき
3.深層心理の消費:サントリーのネット‘珍問答’飲料調査
4.感動心理の消費:花王『エッセンシャル』でかわいくなる
5.経験心理の消費:AVISレンタカーの利用者体験からの改良
6.売り手の情熱:トヨタ『bB』 若者による若者のための・・・

教科書的にならないように、商品開発パターン別に、どのような調査が適用ができるかも書きたい。関連して紹介したい消費者調査は次の通りである。

「コンセンサスマップ」(シャープ ホット庫)
「ZMET法/メタファー調査」(サントリー 茶飲料)
「トータル・ライフスタイル分析」(花王 エッセンシャル)
「経験エンジニアリング」(AVISレンタカー事例の紹介)
「フォト・サンプリング」(トヨタ bB)

ここでは、各商品の開発の経緯から、そのような調査手法を適用したのではないかというわたしなりの推測を含めているので、実際にその手法を適用したかどうかは厳密にはNoのものもある。

だが事例というものは厳密さを求めて読むものではなく、自社の商品開発に「こんなやり方が適用できそうだ」という視点で読むものである。そのようにお読みいただきたいし、それぞれの手法は大変興味深い。なるべくわかりやすい視点でまとめるのでお読みください。

【新しい消費者理解が必要な背景】
「作れば売れる」時代はとうに昔のものとなった。何を作ればよいかわからない時代に、「作って売れた時代」はもはやマーケティング・ノスタルジーに過ぎない。あるいは消費者が見えなくなった、消費者ニーズやその変化に追いつかなくなった。そう言われて久しい。消費者がしっかり見えていると豪語できる会社があるとすれば、それはマーケティング・イリュージョン(幻視)に過ぎないかもしれない。

作っても売れない時代に入り、まずなされてきたのは、「何を作るべきか」を探るために「顧客の現状の不満を聞こう」というリサーチであった。しかし「不満や満足」からは、今の製品やサービスの肯定か否定、すなわち製品の改良をすることはできても、「何を作るべきか」まではわからない。改良に明け暮れている内に、従来と異なる地平線上に新たな商品やサービスが表れ、シェアがじり貧になることも茶飯事である。

ならば「あなたのほんとうのニーズは何ですか?あなたがほんとうにしたいことは何ですか?」と聞こうという話になって、潜在的なニーズを探る仮説検証型のリサーチも行われてきた。しかし、「いまだ見えないニーズ」は顧客は知らないし、わからない。だからプロダクトアウトがいい、という乱暴な論調もあるが、何よりも「仮説に基づいて集められたデータは、その仮説を肯定する」*というバイアスがかかって、仮説補強リサーチとも言われている。(*印は『心脳マーケティング』からの引用)

このように、思いのほか顧客価値の本質を考えることはむつかしい。

第一線の現場に立てば、顧客の意識や行動のあり方、その変化は何となくつかめるのも事実である。だがそれは個人的な経験知であり、組織的な集積知ではない。つまり継続的な顧客の研究は案外なされていないのもまた実情である。これが新しい消費者理解が必要だと考える立ち位置である。

【従来の消費者調査、市場調査の限界】
わたしはマーケティング・リサーチャーを7年ほどやっていた。それを辞めて新規事業開発者を経てすでに十数年が経つが、新規事業開発に携わっていた頃はもちろん、コンサルタントになっても、リサーチという作業がわたしの中ではベースにある。

だからリサーチが不必要だということはまったくない。だが単に量的なサンプリング調査では根拠がつかめない、フォーカスグループのような座談会も、バイアスがかかりやすく信頼性が高いとは言えない。単純なヒアリング調査と資料分析でお茶を濁すようなリサーチでは、新しい発見の期待もしにくい。

何よりも消費者が本当のことを言うのか? たとえ彼/彼女が本当だと思って発言しても、消費の現場では深層の彼/彼女が表れて、リサーチでは「買う」と言ったのに実際には「買わない」ことがたびたび起きている。従来型の調査では、ことごとく、答えが出ないのである。

他にもいくつも気になっていることがあるが(リサーチをまるでしないでPJに入るコンサルタントがいるが、それはなぜだろうか?)、本論ではないのでこのくらいに。

【4つの消費者心理プロファイル】
今週のテーマ、下図の視点で書いてみたい。それは、顧客価値分析を4つの観点から見るものである。図も用語も郷(わたしのこと)作である。

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まず縦軸は、消費心理をメジャメントしている。「表層消費」とは表層心理がありのままの行動になって表れる消費である。これに対して「深層消費」とは、外からは見えない理由で消費者が選択をし、消費行動をすることである。前者は「わたしXXXを使っているの」と言いやすい商品で、後者は「XXXを使っているの」と知られたくない商品である。

横軸は、消費態度をメジャメントしている。日常から離れた、感動的な体験を得たいという「感動消費」。未知の旅行をしたい、かわゆいままでいたい、殻を破りたいという意識の強さを示す。対して、ありふれており反復的に間違いのない購買をしたい商品やサービスが「経験消費」である。

このふたつの軸で、心理が深いか浅いか、態度が高いか低いかを表す。

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縦軸の示すことは、自分の心をどれだけ人に見せたいか、あるいは見せたくないかという心理であり、それを「心を見せる係数」と呼ぶことができる。上にゆくと「見せる」、下は「見せない」心理がある。

横軸の示すことは、自分の心への刺激の度合いである。感動や驚きを求めて、心の摩擦係数を大きくしたい心理がある。それが感動消費であり、心にできるだけ波瀾万丈な摩擦を求める。逆にだれもが反復的に経験する消費行動であり、なるべく心の摩擦係数が小さい方がいい消費心理もある。この高低をわたしは「心の摩擦係数」と呼ぶ。

この4軸から、ほとんどの消費態度がポジショニングできるばかりか、なぜ消費者調査や消費者理解を区別して考え、実行する必要があるのか説明つくだろう。今週はそれぞれのポジショニングでの消費者行動と調査のあり方を、コンセプトと事例から考えてみたい。

今日は以上です。

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コメント

フリーランスのマーケティング・リサーチャーさんなんですね。
わたし的に親しみが持てる職業です(笑)。
リサーチは奥が深いものですね。それもこれも、相手が「人間」だからですね。ザルトマン先生によれば「心」「脳」「体」があるから、ということでしょう。今週はそれを痛感しています。
しかもサイトで当ブログのご紹介、どうもありがとうございました。
http://link-kobo.no-blog.jp/research/

投稿: 郷/Marketing-brain | 2007年4月13日 (金) 11時08分

はじめまして。
マーケティング・ブレインさんの視点は、参考になることが多く、いつも楽しみにしています。
今回は、いまだにリサーチを生業とする私にとって、つぼに嵌った内容でしたのでトラックバックさせていただきました。
これからも、blogを期待しています。

投稿: owl | 2007年4月13日 (金) 00時31分

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