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2007年4月27日 (金)

問題研究の人間学 5.答えが問題をつくっていないか?

今週(2007年4月23日~)の旬ネタでは問題研究の人間学を考えてきた。これを考えるようにわたしに問題意識をもたらせたのは次のような思いである。

顧客ニーズ、ウォンツ、ベネフィット・・・開発者が取り組むべきマーケティング用語は数あれど、それにどう感づくか、感づけるか、それこそが本来の問題である。世の中には「アイデア発想法」や「問題構造化技法」の書はたくさんあるが、どう「感づくか」を真正面から論じた本は少ない。商品やサービス開発に直結していないものも多い。生活者の目線、フラットな視点、既視感リセット・・・それもわかるのだが、どうしたら「子どものように新鮮な目」を開発者は(少しでも)取り戻せるのだろうか?

人間学を考えるのには消費研究という消費者調査視点、人間そのものを察する問題研究視点、この両者が「顧客」を考える上で欠かせない視点である。いかに顧客を囲い込めるか?いかに商売にできるか?はその後なのである。前者の活動が無いままに(不足したままに)、囲い込みや顧客生涯化など、なぜできるのだろうか?このような問題意識からのテーマであった。

【勝手にアドバイス旬ネタ: 問題研究の人間学  5.答えが問題をつくっていないか?】
わたしは日本では知名度が今イチのDixie Chicks(今年のグラミー賞ウィナー)ファンであるが、彼女たちの最新アルバム『Taking the long way』の出だしの2曲目「Easy Silence」の中のこのフレーズが耳に残っている。

  ♪Answers only make more questions♪(答えがまた新しい問いかけを生むだけ)

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[原詩 第1小節]
When the calls and conversations, accidents and accusations, massages and misperceptions
[拙訳]
電話にでれば「たいへんな災難でだったわね・・」のメッセージか、「非国民は失せろ!」の勘違いばかり。

[原詩 第5小節]
Anger plays on every station, answers only make more questions,  I need something to believe in
[拙訳]
どのラジオ局にもわたしたちへの怒りがリクエストされて・・・答えがまた新しい問いかけを生むだけ。何かを信じたい気持ちでいっぱいなのに。

ご存知の方も多いが、この詩の背景にあるのは、彼女たちのあの困難な日々である。2003年に米国がイラク侵攻を始めた頃、英国でのコンサート中にナタリー・マインズ(vo)がブッシュ大統領批判をした。そのために保守的かつブッシュ大統領の本拠地であるテキサスを中心に、ディクシー・チックスのCD不買や廃棄運動を起き、カントリーミュージックのラジオ局には「ディクシー排斥!」のリスナーのコメントが殺到し、その剣幕に恐れをなしたラジオ局は、彼女たちの曲を一切流すのを止めた事件である。

Dixie Chicksのドキュメンタリー映画『Shut & Sing』にあるが、彼女たちが謝罪をしようとすると、「何に対して謝っているのよ!」といった反応が返ってきたり、思いきって3人がヌードになって雑誌の表紙に出たことも(当たり前だろうが)火に油を注く結果になったりと、「答えがさらに問題を」つくったのであった。そのあたりの状況、気持ちを歌った詩であろう。わかります、その気持ち。

【答えが問題をつくることは日常茶飯事】
答えがさらに問題をつくる」「問題を深める」ということは、世の中では珍しいことではない。売り言葉に買い言葉という喧嘩腰の態度ではなくても、答えたつもりが相手には答えにならずに、より問題がこんがらせることはあるだろう。そればかりか、答えが問題をさらに発展させてしまうこともあり、問題の子どもを増やしてしまうこともある。

政治討論のように、わざと質問に答えない場合もそうだ。もっとも国会質問では、会期中に質問ひとつで数十人、下手をすれば数百人が答弁づくりに駆り出されるそうだから、質問は罪作り、いや税金のムダである。ということはわざと質問に答えないことは、実は税金の削減につながっている(わたしは問題の捉え方が間違っているだろうか?)。

さて答えが問題をつくることはコミュニケーションに限ったことではない。解決策と思って取られた行動や意志決定の中にこそ♪Answers only make more questionsが潜んでいる。

【ビルのセキュリティの教訓】
昨今の企業をめぐるセキュリティへの取り組みは高まりこそすれ、廃れる気配はない。企業では何らかのセキュリティ対策を施している。ちなみに昨今のオフィスビルのグレードを決める重要な要素は、セキュリティ対策がどの程度打たれているか、打てるかにある。すべての訪問者が1階ロビーでチェックされるので、アポの無い押し売り(古いですね♪)はビル内の入居企業に立ち入れない。

だが、大半のビルではそこまでの集中コントロールはなされていない。オートロックの無いマンションと同じである。事例としたい企業Z社が入居するビル(築10年以上前)では、セキュリティ対策は個別のフロア、個別の企業で施さなくてはならない。

そこでZ社では「セキュリティレベルをあげよう」と考えた。首尾よく実施したと考えたが、思わぬ落とし穴があった。それは、セキュリティレベルをあげたために、最終退出者がオフィスを後にできないという問題である。

いろんな込み入った状況があるのだが、簡単に言うと、最終退出者は正面玄関にあたるドアから出なくてはならない。だが正面玄関のドアのカギを持つのは幹部職員だけで、彼らはたいていは残業をしないのである。下々の残業社員が、セキュリティシステムのおかげで、最終退出ができなくなってしまったのである。幸か不幸か、残業ができないという問題が発生した。

Photo_47  本文とは関係ありません。

【ノーベル&ノーマルなアイデア】
この解決策は思わぬところからやってきた。残業社員のKUBOTAさんが見出したのだった。正面玄関から帰れなくなった残業社員KUBOTAさんは、そこで考えた。首尾良く残業するためにはどうしたらいいだろうか?

Z社では「打ち合わせスペース」を計5つ持っていた。第1から第4までは、ビルの窓側に面しており、ビル内廊下とは離れていた。ところが第5会議室だけは、ビルの廊下側に面していたのだ。それは、そもそもそのスペースが物置あり廊下への通路だったからだ。業容拡大の中でいつしか会議室になっていたのだ。誰もが会議室として考えており物置や通路とは考えなかったのだ(会議室には廊下へ出るドアはあったが、開かずの扉状態でドアとして誰もが認識していなかった)。

彼はなぜか、会議室は本来は物置であり通路であることを思い出したらしい。長い間に会議室として使われる中で、誰もが「会議室」という意識で、「通路」ないし「物置」という記憶が失われて、その部屋にあったドアにセキュリティを施すという考えも及ばなかった。だがその昔、気を効かせたビルのオーナーは、そのドアをオートロックにしていた。だから内から出ても自動的に締まるのである。

Z社では、これで一般社員も、制約なく残業ができるようになったそうだ(良いのか悪いのか・・・笑)。

【物置か?通路か?】
会議室から退出すると書くと変だが、そこにはオフィスに働く社員みんなの錯視があった。「会議室」はそもそもは「物置兼通路」だったのだ。いつしか会議室になった。その目(会議室)で見てしまうと、そこを通路(本来の姿)という考えには及ばないのだ。発見者のKUBOTAさんのノーベルな指摘を受けて、わたしはこれを「KUBOTAさんの物置兼通路法則」と呼んでいる。

業容拡大で会議室を作った判断は悪くはないが、通路を会議室にしたおかげで問題が発生したのである。この事例を「バカだなぁ」と思うことはたやすいが、あらゆる問題解決の判断は、次の問題発生の序に過ぎないかも知れないのだ。バカだなぁはともかく、そこをつかみとってほしい。

さらにネーミングはくせ者だ。会議室と名付ければ通路ではなくなるし、階段の踊り場でも会議室になりうるのである。

 Photo_46  踊り場でひそひそ。

問題にどうレッテルを付けるか?の前に、問題にそもそもどういうレッテルが付いているか?を考えるべきである。

昔「下着を上着」と呼んだデザイナーがいた。それで胸元からブラを、スカートの裾から下着を見せることに抵抗がなくなった。破れたジーンズを「ボロファッション」と呼んだデザイナーもいた。破れ目から肌を露出することがファッションになったおかげで、虫食いの洋服まで着れるようになった(かどうかはわかないけど)。

お風呂場を「バー」と呼ぶ人だっているだろう(お風呂で一杯ひっかけられるからさ)。台所だって家によってはキッチン・ドランカーがいるので「立ち飲み酒」と呼ぶこともできる。リビングの壁は「逆立ちフィットネス・ボード」と呼ばれているかもしれない。そこが一般には何と呼ばれているか抜きに考えることが、既にある凝り固まった用途に左右されずに、原理原則を思いださせてくれる。今までと違うレッテルを貼れるきっかけになる。

今週は以上です。お読み頂きありがとうございました。まだまだ未完の思考部分・調査部分が多いので、先々週の「カスタマー・バリューのフロンティア」と一緒に、もっときっちりした研究の末このテーマを再展開いたしますので、その際にもまた御支援賜れれば幸いです。ほんとうにありがとうございました。

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