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2007年4月13日 (金)

カスタマー・バリューのフロンティア 5.経験心理の消費:AVISレンタカーの経験

【カスタマー・バリューのフロンティア 5.経験心理の消費:AVISレンタカーの経験】
消費者行動と調査をテーマにしてきた今週の旬ネタ。5回目の今日は「経験心理の消費」における消費者心理と調査について考えてみる。

昨日(2007年4月12日)のブログにも示した図にあるように、「経験消費」とは横軸の左側に伸びる矢印で表した消費心理である。これは誰もが反復的に経験する消費行動と規定した。だから、なるべく心の摩擦係数が小さい方がいい消費心理なのでである。

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コンビニエンスストアやスーパーでの消費のように、毎日反復的に消費する場合、長いレジの列やレジ係の段取りの良さ、さらに商品陳列の巧拙が影響するだろう。あるいは吉野屋に行き牛丼を頼むとき、カウンター内の店員が接客に注文受け、運搬に品だし、そして代金受領までをテキパキとできるかどうか、同じ牛丼でも味が違うと思ったことがあるでしょう。右往左往する店員にいらいらさせられると、味も変わるのである

銀行のATMもそうだ。港区新橋の某銀行は、規模も大きいし3階まであるし、1階角地にあるATM台数も多い。それでもそこのATM行列はいつもディズニーランドのアトラクション待ちのように、行きつ戻りつと長いのである。あそこの銀行の心理摩擦係数は高いので、近くを通るたびに中を見て、どのぐらい並んでいるか観察してしまう。同僚のCherryさんは、「あそこの銀行を使うとき、わたしは一番右側にあるブースにゆくの」と言っていた。それは静脈認証専門のATM。彼女はずるいのである。だが、ずるい消費者がいることを、某銀行は恥じるべきである。

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それはともあれ、その人の消費経験によって商品やサービスの評価はかなり変化する。その商品の持つほんらいのバリューに関係なく、変化する。だから心理的な摩擦を小さくすることが、消費者満足は「大なり」になるのである。

【消費の経験とは何だろうか】
心理摩擦係数を小さくすることは、他の消費、たとえば感動消費にも通じるではないかという反論もあるだろう。もちろんあらゆる消費には心理摩擦係数が小さい方が良い面がある。だが「経験」という点から見ると、なかなか興味深いことがわかる。

わたしたちは、今経験したことを評価したり咀嚼したりする場合、既知の知識を活かす。これまでに経験したことから見て、このことがどうなのか、プラスなのかマイナスなのか、黒なのか白なのか判断するだろう。つまり過去の記憶や経験が、現在の評価の鍵を握ることが多い。つまりこうである。

消費者はマーケティングの影響を受けながら、過去に経験したことをそれとは異なる新しい経験に置き換えながら記憶していく。『心脳マーケティング』より。

つまり消費者の「記憶や経験という心理の場」で、売り手は商品やサービスを提供し、買い手はそれを購入することで、毎日記憶を塗り替えている。売り手は自社のブランドやサービスイメージというマーケティングをし、買い手はこれまでの経験を確認して安心し、あるいは値踏みしている。経験消費は、その反復行動を通じて、経験を塗り替える合戦なのである。

【顧客との関係性とは何だろうか?】
ところで今や大学生の間でも浸透している「CRM」という言葉がある。もちろんCustomer Relationship Managementの略で「顧客関係性マネジメント」と訳されている。一般にはCRMができるシステムをCRMと呼ぶ。

わたしにシステムのなんたるかを教えてくれた先輩は「CRMって顧客の‘関係’を管理するんだよな。顧客を管理するなんて、そんな失礼なことはないよな」と言っていた。まさにその通りだが、世の中の実態は違う。「顧客を管理しよう!それもたくさん買ってくれる(くれそうな)顧客を識別・管理し、買ってくれない(くれそうもない)顧客は管理するのをやめよう」 つまり購買額や、かけたコストとリターンを管理しているのが実態である。どこのコンサルタントもITベンダーも平気でそう言うだろう。

ところが、顧客の記憶や経験が売り手と顧客との関係を通じて、塗り替えられるとすれば、顧客との関係性の何を管理すべきだろうか?ザルトマン氏はこう主張している。

顧客の記憶をどう管理すべきかということを理解せずに、CRMを通じて顧客から信用を得ることはできないし、利益を上げることもできない

いささか変わり者のコンサルタントを張るわたしは、CRMを入れれば利益が上がると言ったことはないし、これからも言わない。だがCRMで、たとえ特定少数の顧客であっても、その記憶や経験が管理できて、経験プロセスに対して打ち手を考えるためになら、ぜひ導入すべきだ。

【Total Experience Management】
顧客の経験を改善するコンサルティングがある。それはExperience Engineering社という「Total Experience Management / 経験マネジメント」という手法で、店舗やサービス改善をする米国のコンサルタントである。以下は『心脳マーケティング』、MIT SLOAN MANAGEMENT REVIEW(Spring 2002)、Twin Cities Business Monthly(Jan.2003)を参照してまとめさせていただいた。

創立者でCEO(Chief Experience Officer)のCarbone氏は「(消費者の)経験に関する一切合切は、吸収し観察すべき手がかり」と言い、「その手がかりが経験をつくる」と言う。

 Experience_engineering_ceo Carbone氏 CEO。

同社の代表的な事例がAVISレンタカーでの経験の改善である。

【AVISレンタカー事例】
1990年代の前半、AVISレンタカーは、顧客満足度調査のスコア下落(全米最下位)に悩んでいた。そこでニュージャージー州ニューアーク国際空港支店にExperience Engineeringを導入した。その手法の基本は顧客の「レンタカー経験」である。受注後、隠密に調査チームが組織化された。

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それを探るために(あらかじめ承諾&謝礼支払の前提で)顧客の腕時計や服に小型カメラ(録音機能付き)を仕組み、個々の顧客のレンタカー経験のすべてを記録した。顧客のボディ・ランゲージ、声の抑揚、言葉の選択などを記録し、その感情の変化を分析した。その感情のあり方を裏付けるため、顧客とレンタカー従業員の両方にデプス・インタビューを実施した。

おもしろいのは、その調査チームにはリサーチャーだけでなく、未来学者、心理学者、文化人類学者など人間を分析する「知」を結集しているところである。わたしのつたない消費者調査経験からすると、それはたいへんな重装備であり、各分野の専門家の指摘がぶつかり合うならば、とても興味深い。

その結果はAVISには驚きだったという。レンタカー屋のパンフレットにあるような「綺麗な車」「サービスの迅速さ」「挨拶の良さ」「装備の良さ」ではなく、ひたすら「旅行に伴うストレスや不安を取り除いて欲しい」というものであった。

【わたしの米国でのレンタカー体験】
わたしは短期(1.5年)の米国駐在をしたことがあるが、米国内で出張したことも多かったし、駐在後に訪れることもたびたびだったので、レンタカーにはエキスパート(自負)である。とはいえ駐車場からバックで出ると、右脳と左脳が逆転して、左側通行をすることもよくあった。レンタカーもレンタカー会社もまだ凹ませたことはない。

国土の広い米国では、レンタカーなくては商談やミーティングが成立しない。だからなるべく早く予約車にたどり着き、鍵をもらい、レンタカープールから出て、目的地にゆく。慣れた地ならまだしも、始めての地では緊張する。空港によって、微妙に借りるシステムが違うこともあった。空港カウンターのレンタカー・チェックインは、単なるチェックで、実際に借りるにはバスに乗らねばならない。他国籍のわたしは尚不安になる。

たいて黒人の運転するレンタカー場への案内バス(それを間違いなく乗るのも緊張する)に乗り、AVISかHeartsかその他か、到着地を聞き分けながらバスに乗るのである。空港によっては、予約シートを渡すと、当該レンタカーの目の前までバスを走らせてくれたのでほっとした。そうでもない経験もあって実に心細かった。さらに返却するのにも、どのぐらい空港への時間がかかるかわからないなど、緊張することが多かった。

AIVSの「経験調査」の場合、わたしも感じたようなストレスを解消するために、レンタカーの返却場所の入口に、フライトの出発時間・ゲート案内を示すビデオの設置、荷物の移動をしやすくする設備面の工夫や、ビジネスセンター設置などの改良を行った。その結果、米国内空港の顧客満足度調査でトップに躍り出たという。調査前は最下位だったのが飛躍的である。

【事例の受け止め方】
以上は米国での事例とわたしの経験であり、日本のレンタカーシステムはかなり違うので、そのまま当てはめられない。だがこのリサーチ事例を自社のサービスに適用されたことを想像してみよう。おそらくかなりの汗をかくことだと思う。

顧客視点を持つこと、顧客を研究することは、「言うは易し行うは難し」の代表的なことである。それはっふだんエンドユーザーに接しているか、接していないかには余り影響がないと思う。職業の違いもあまり影響がない。むしろ顧客心理感度の高低があるのだと思われる。自分の中の「職業経験」が、消費者視点にもどることを阻害しているのだろうか。

今日は以上です。明日は「カスタマー・バリューのフロンティア」のまとめをしたい。

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コメント

寿さま
コメントありがとうございます。
摩擦係数、低いといいとは限らなくて、
山本モナさんのような世間摩擦係数力が
高い方は存在感も高いわけです。
このあたりがむつかしいところでしょう。

投稿: 郷/marketing-friction | 2008年7月18日 (金) 09時06分

「心理摩擦係数」なるほど妙を得た言い回しです。

「顧客視点を持つこと」顧客関係性を深めたければ自分が一度その顧客になってどのように感じるかを体感してみることなんでしょうね。

投稿: 寿 | 2008年7月17日 (木) 00時53分

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