« FUROSHIKI &MOTTAINAI | トップページ | マーケター・マイオピア 2.反対企画書を書こう »

2007年5月 7日 (月)

マーケター・マイオピア 1.メタ顧客になろう

マーケティング・マイオピア(marketing myopia/近視眼)とは、マーケティング・グルであるセオドア・レビット氏が用いた言葉である。改めてチェックをしてみると1960年のハーバード・ビジネス・レビューで指摘されたコンセプトである。

その言わんとするところは、製品やサービスを追求するあまり、自社の商品を売らんかなという姿勢になってしまい、消費者の根本のニーズを見間違うという「近視眼な状態」を指している。レビット教授が引いた例は鉄道会社の例(米国の鉄道会社は、その事業領域を「鉄道事業」と狭く定義したせいで、「交通事業」に進出できなかった)、映画の例(ハリウッドは、その事業領域を映画産業と定義したせいで、「テレビ」というメディアを敵対視するしかできず、衰退した)が有名である。

身の回りでもいろいろ指摘できるだろう。たとえばシャンプーやコンディショナーを買うのは、シャンプーやコンディショナーを買うのではなく、美しい健康な髪の状態や、不潔な印象を人に与えないエチケット、愛する人に愛(め)でてもらうシーンを買うのである。一方、眼鏡やコンタクトレンズを買うのは、近視(マイオピア)を矯正するためだけではなく、自己イメージを買うという逆説的な事情もある。

何はともあれ、レビット教授の今から50年近く前の指摘である。自社の事業をどんな言葉で規定するかで、事業や場合によっては業界の盛衰が決する。まさに先見の明ありの箴言と言えよう。コトラー氏のAha!と同じく、本質を表す、わたしの好きな言葉である。

そこで思うのは、マーケティング・マイオピアという言葉を、「過去形」で失敗学的に学ぶというようなイメージでは捉えてはならない。商品を開発する現場の方々や、外部のマーケターさん、プランナーさんにとって、常に現在形の問題として扱わなければならない。わたしも常々そう思っている。

そこでわたしは「マーケター・マイオピア」というネーミングを創造して、自分の問題として考えてみよう、反省しようと考えた。今週の勝手にアドバイス旬ネタのテーマとしたい。

商品開発者やマーケター、そしてコンサルタントが陥りがちな落とし穴とは何だろうか?いかにして陥らないようにすべきか?「自分が見たいモノを見ようとすることを防止する」にはどうしたらよいだろうか。それを5回に分けて考えてみたい。なるべく概念的なものではなく、手軽にかつ具体的に、今日から応用できるというような内容にしたいと思っている。想定した構成は以下の通りである。

1.メタ顧客になろう
 顧客目線を持つという永遠の課題。
2.反対企画書を書こう
 企画書を読み手主語の文章に書き直す。
3.言葉の変換器を持とう
 言葉をさまざまに変換できるクセをつけよう。
4.忘却したフリをしよう
 脳トレもいいけれども・・・
5.反省をしよう
 毎日のセルフ反省会が翌日の始点。

【勝手にアドバイス旬ネタ マーケター・マイオピア 1.メタ顧客になろう】
あなたは顧客のことをほんとうに真剣に考えるだろうか?これまで考えてきただろうか?まず胸に手を当てて、自分が顧客のことを考えたときの状況、顧客や上司や同僚の言葉、やったこと、そして腹の底にあるほんとうの自分の思い。自分事例をあげて考えてみてほしい。

正直言うとわたしも顧客価値に対してブレたときがある。それは当初書かれた企画書を信奉し続けたことだ。クライアントのことがよく見えない状態で書かれた初期の企画書には、契約履行上の意味はあるとしても、真の成果を約束する内容が含まれていない場合がある。

だから途中で進路変更が必要である。それが仕切れなかったことがあった。車は急に止まれないが、プロジェクトはそれに比べれば急に止まれる。もちろんアサインした人員と工数を再構成するのは問題だが、それは顧客価値と何の関わり合いもない請負側の問題である。

【メタ/マイオピア・マトリクス】
そのとき思ったことは、企画書は契約書ではあるが誓約書ではない。契約の本質はクライアントの満足である。顧客の満足は売り手の一種の誓いから生まれる。われわれの仕事(コンサルティング)のようなものだけではなく、50円の駄菓子の売り手もそれは同じである。そういう自戒をこめて、そこに陥らないように考えてみたのが、メタ/マイオピア・マトリクスである。

 01_18  
     メタ/マイオピア・マトリクス 原形

あなたがマーケターや開発者であると思って見てほしい。まずAは「会社のため」「自社の成長」という象限である。こうポジションすると「自己満足なポジションだなあ」と見がちだが、世の中の8割以上のマーケティング・営業活動がだいたいAに属している。何せノルマをかかえ(自社成長)、会社のため(給料と賞与)である。ここをBに持って行くことが、社員としての成長がある。

わたしの先輩の話していたエピソードを紹介する。ある鉄鋼会社に営業をした営業マンがいた。彼の売り込み商材は自社の戦略商品(情報システム商品)であり、それで鉄鋼会社のひとつの事業部から受注した。金額的にはさほど大きくなかった。その後鉄鋼会社の担当者から「ウチはナレッジマネジメント、情報共有が弱いんだ」と言われた。営業マンはさっそく自社開発の、鉄鋼とは違う業種のソフトウェア(医療機関向けだった)を営業しようとした。そこで彼は上司から言われた。

「お前さ、鉄と医療って合わないよな。第一そのパッケージはそのまま使えないし(開発が入る)、それでお客さんのためになるのか?あの鉄鋼会社、情シス子会社があっただろう?」

営業マンはその言にハッとして、その鉄鋼会社の情報システム子会社に連絡をした。そして関連するパッケージシステムの紹介をした。鉄鋼会社の担当者は満足した。その場は失注した。だが、鉄鋼会社の複数の別の事業部から、すぐに戦略商品の引き合いが来た。その鉄鋼会社の口座はすぐに数倍になった。

ごく最近の実話であり、AからBへの移動の事例である。損して得取れ、あるいは因果応報といえる。

ポジションCは、見かけ(直近の売上)が良くてもいずれ破綻する「売れ売れポジション」である。行き過ぎた成果主義でもある。ポジションDは理想であるが、「顧客のため」はいいが、なぜ「自分のため」が理想なのか?と疑問をもつ人もいるだろう。だがほんとうの顧客のためは、自分のためと一致する。自分が心地悪いことは顧客もどこか心地悪いのである。自分がまっすぐだと思うことは、顧客もまっすぐだと思うのである。

個人的には、こう思います・・・」とわたしは、ほんとうに個人的に考えて、顧客未満の方に提案した。すると顧客未満の方は「その通り!」と即座に響いてくれた。そして顧客になっていただいた。会社のことは、少なくとも顧客との瞬間には、忘却しなくてはならない。

【動物で例えると・・・】
動物でたとえるとわかりやすい。
 
 02_12  
   メタ/マイオピア・マトリクス アニマル編。

ポジションA(近眼さん。ちなみにわたしはド近眼です_笑)は「マイオピア視点」であり、ポジションDは「メタ視点」である。カモメのように自由に飛翔して、会社も自分も顧客もすべて上空から観ることのできるポジションである。は深慮深いフクロウは一匹オオカミというイメージがぴったりだろう。

ではいかにして「かもめ」になれるのだろうか?それが今週のテーマだが、高島屋にヒントがあった。

【高島屋のSEEカード】
高島屋がSEEカードというものを発表した。

S.E.E.(シー)カード」。英語のSilent(静かな)、Easy(ゆったりとした)、Each(それぞれ)の頭文字から取った。「シーッ」と、人差し指を口元にたてるしぐさの図柄がある。これは高島屋が立川店で始めた静かにショッピングを楽しみたいという客に声かけを控えるサービスである。つまり、希望するお客さまに店内に用意したカードを首にかけてもらい、店員からは話しかけないようにする。

 Main_img_see Mm20070428132226959m0 

わたしはこのサービスの是非は本稿では問わないが、「これは逆だ」と思った。むしろ業員がSEEカードをぶら下げるべきだ。それも胸ではなく、心の中にぶら下げるべき

ショッピングするお客様に、すぐに声をかけず、服装、動き、表情、連れと話す言葉を、お客様の背後から観察して、ほんとうに欲しいものを大局的に観るSEEでなくてはならない。その目線こそ「顧客メタ」である。顧客を越えて、ほんとうに欲しいものを提示するのを「顧客メタ」と呼びたい。

小売業だと、顧客の背後を行けるのでわかりやすいが、どんな業種でもわたしの顧客メタのイメージは、背後霊のように顧客の背後高く立ち、顧客も売り手(自分自身)も見下ろすもの。煎じ詰めれば、顧客メタをいかに実践できるかが、あらゆる商売の課題なのである。今日は以上です。

|

« FUROSHIKI &MOTTAINAI | トップページ | マーケター・マイオピア 2.反対企画書を書こう »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/158074/6340724

この記事へのトラックバック一覧です: マーケター・マイオピア 1.メタ顧客になろう :

» ヘナ [ヘナのご紹介サイト]
ヘナ [続きを読む]

受信: 2007年5月 8日 (火) 19時26分

» 発見しました。ちょいワルオヤジの法則っ!!!! [ビリーズブートキャンプ体験!効果・感想調査委員会]
みなさん。大変なことになっています。なんと、発見しちゃいました。「万有引力の法則」、そして「フレミングの左手の法則」…指つっちゃうよぉ※ ばれちゃったかなぁ…ビリーこくばるは理系!?発見しちゃいました。これら法則に次ぐであろうといわれる「ちょいワルオヤジの法則っ!!!!!」今日はチカラはいってます。まずは「ちょいワルオヤジはスポーツジムに行く法則」またの名を「スポーツジムに行くと必ずちょいワルオヤジ�... [続きを読む]

受信: 2007年5月14日 (月) 22時43分

« FUROSHIKI &MOTTAINAI | トップページ | マーケター・マイオピア 2.反対企画書を書こう »