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2007年6月11日 (月)

三人の先生

今日は隔週で書いている ぷろこんエッセイ からの転載です。
 ご購読いただける方は まぐまぐ めろんぱん よりお願いいたします。

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自分で言うのも何だが、子どもの頃、わたしは乱暴者でもなければ、特に
先生や親の手を焼かせるタイプでもなかった。人より普通並か、少し勉強
ができる、内向的な子どもだった。だから同級生と小競り合いはあったが、
殴りあうような喧嘩はほとんどしなかった。

だが一度だけ、ある同級生と言い争いになった。小学3年生の頃だった。

授業中ではなく休み時間だった。口だけの争いでなく、とっくみあいになり、
他の同級生が止めに入るまでヒートアップしたのを覚えている。よくある
パターンで、伝令の役目の子どもが職員室の担任の先生を呼んできて、
わたしたちの喧嘩はようやく鎮まった。

今となっては、言い争いの内容もほとんど覚えていないし、相手が誰だった
かさえ覚えていない。だが自分自身の名誉にかかわるようなことだった。
だからわたしには珍しく強く言い返したのだろう。お前、言いがかりだ、
取り消せ!嫌だ!のような言い争いは、手を出し足を出しの喧嘩になった。

やってきた先生に仲裁され、組みほどされて、心臓がドキドキしながらも、
でも強く思っていた。自分は悪くない、こいつが悪いんだと。くやしいので
歯をくいしばりながら、涙を必死にこらえた。

仲裁に入った先生は「何があったの?」とわたしの目を見つめて訊いた。
わたしはできるだけ冷静に、これこれのことがあった。こう言われた、と
話した。どもりながらも、出来るかぎり冷静になぜ喧嘩になったのかを
話した。先生は喧嘩の相手にも同じ質問をして、同じく丁寧に問いただ
していた。ようやくわたしの身体の血の奔流が鎮まってきた。

やがて先生はあっさりと言った。「郷君が正しいわ。XXX君、謝りなさい」 

手を出したのはわたしが先だったのだが、「郷君は謝る必要はない」と
言った。相手はしぶしぶ謝った。どこかあっけに取られる結末だった。

たいがいの教師は、喧嘩両成敗という不合理な平等主義を持ち出して、
ふたりを廊下に立たせて、ほら仲直りしてね、みたいなウヤムヤな情操
教育をする。だがその先生(佐久間先生という女性)は違った。

話を聞いて、原因を理解して、裁決してくれた。わたしは救われた。

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もう6年ほど前になるだろうか。Y先輩とプロジェクトに入っていた。その
プロジェクトが情報系の業務改革から、全社のシステム系の改革に移行
し出したとき、その先輩(某社で情シスの部長をされ、あらゆるOSを熟知
されていた)から見れば、システム音痴の極みのようなわたしが相棒では
不安だったのだろう。彼から客先に往復する新幹線で、また出張先の
飲み屋で、よくシステムに関する話をしていただいた。

音痴は耳が悪いからと言われるが、彼の言葉の大半は右から左だった。
だがいくつかは心に残った。そのひとつにXMLという概念がある。6年前
では、XMLという概念はかなり新しい部類だった。今ネットで調べると、
IT用語辞典ではこういう説明がある。

【XML Extensible Markup Language】
文書やデータの意味や構造を記述するためのマークアップ言語の一つ。
マークアップ言語とは、「タグ」と呼ばれる特定の文字列で地の文に構造を
埋め込んでいく言語のことで、XMLはユーザが独自のタグを指定できる
ことから、マークアップ言語を作成するためのメタ言語とも言われる。

理解不能の説明文。他のサイトを探せば、もうちょっとマシな説明はあるが、
音痴にもこうすれば歌を歌えるという説明に近いものは少ない。

Y先輩はこう言った。「XMLってのは、ツリー構造のデータベースだよ。
そう言えばわかるだろう?」 わたしはうなずいた。なるほど、ツリーなら
コンサルとしてもなじみがある。データがツリー状に置けるのか。文化系の
わたしにもそのひと言はすっと入ってきた。

彼の説明はすごくわかりやすいので、感心していつか聞いた。「なぜそう
いう説明ができるんですか?」 Yさんの答えはこうだった。

「オレは家庭教師のアルバイトをしていたからかな」

Yさん曰く、家庭教師は子どもひとりの先生だ。その生徒のレベルに合わ
せて教えるのが仕事だった。Yさん、いや当時はY先生、相手のレベルに
合わせて「こいつにはこう言えばわかるだろう」と考えながら話すそうだ。
わたしにもそうしていたのだ。だからすっと入ってきた。

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もうひとりの先生はZ先生としておこう。Zさんの今の職業もまた先生では
ない。学生時代にアルバイトで塾の先生をしていたそうだ。そのときのこと
を思い出してこう言っていた。

塾だから飛びきりできる子どもと、まるでできない子どもがピンキリいます。
教育カリキュラムを示して、こういう内容をこれこれで教えます、というの
は親向けの説明。ピンとキリの子ども、それぞれの子どもを集中力を高め
て、勉強するようにするにはどうしたらいいと思う? わたしは首を振った。

「まず先生が、その子に信頼されないとだめなの」 
「信頼される・・・?」
「そう、一人ひとりがどんな子どもか、学力だけでなくて心を理解するところ
から始めるの。それからピンの子どもには高いレベルの興味をもたせる
やり方を、キリには基礎的なことが納得できる説明を考える。それが
私の考える先生という仕事だったの」

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元々佐久間先生は好きだったが、小学校のあの喧嘩以来、わたしは
先生を100%信頼した。その後高校生ぐらいの時だっただろうか。一度、
先生とお会いしたことがあった。恥ずかしくてうまく話せなかったが、
あのとき公平に扱ってくれた信頼は、1ミリも揺るいでいなかった。

そしてY先生にもZ先生にも、信頼される先生には共通項がある。生徒を
知ろうとすることだ。知ってから、教えようとすることだ。

今、さまざまな識者が教育改革を主張しているが、生徒の心になってみれば、
解決策はあんがい単純なような気がする。それは、「わたしを理解しようと
してくれている」という気持ちをもたせることだ。教える前にそこから始めれば、
ぐれないし、自殺しない子どもになる。

今日は以上です。いつもご購読いただきありがとうございます。

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