« 塩アイスクリームという自由 | トップページ | N704iμ Slim Womanの実像 »

2007年7月30日 (月)

わかりやすさが命 1.わかりやすくないと売れないのか?

唐突だが、安部政権が就任時に打ちだした「美しい国」というスローガン、わかりやすかっただろうか?

「美しい国」という言葉の敷居そのものは低かった。美しい日本、いいよねぇ。そうだよねぇ、誰にも否定はできないからだ。内閣官房「美しい国づくり」推進室が「美しい日本の粋(すい)」というテーマで募集した「あなたが思う、日本の“らしさ”“ならでは”とは、何ですか?」を問うアンケートには2000件以上の応募があった。美しい日本とは、誰もが何らかのイメージを持てる言葉だからだ。

誰もがイメージできるだけあって、官房のアンケートには、自然(美しい山河、森、四季折々、清流・・・)、気質(思いやり、礼儀、おかげさま、調和・・・)、生活様式(お辞儀、正座、向こう三軒両隣・・・)、伝統(漫画、童謡、折り紙、和食・・・)など多くの言葉が寄せられた。
出典 http://www.kantei.go.jp/be-nippon/archive/release_0530.pdf

 Btjp_min_image

ところがそれらを読んでも、部分の和=全体になるかというと、必ずしもそうではない。民衆の美しい国を表す総和には、どこまでいってもならないのである。ある人には自然が、ある人には伝統が、ある人には気質が美しい国=日本なのだ。それらは遠近法で見る鉄道の線路のように、先に行けば線路は一本になりそうなのに、実はどこまで行っても平行を保つ二本線なのである。

 1_9 線路は続くよ、平行に・・・。

つまり、わかりやすさ、とっつきやすさがアダになって、ひとつの理解に結晶することがなかった言葉、それが「美しい国」であった。みんなスタートラインには立てるのだが、美しい国への鴨居をくぐると、そこには何もなかった。まるで安部政権そのものだった(と過去形で書くのも何ですが)。

優れたキャッチコピーは、わかりやすいだけではなく、奥行きがあり、どこかで理解が交差するものだ。見て、読んで、聞いて・・・ほうなるほどと、すっと入ってきて・・・もう一度読みこむとハハン・・・なるほどと。優れたコピーには読み手を一致させる力がある。並かそれ以下のキャッチコピーとは、読み手を分散・分断させるのである。

では、どうしたらわかりやすい商品説明、サービス説明ができるのであろうか?

そう考えたのが今週1週間の旬ネタのテーマ、「わかりやすさ」の由縁である。マーケティングな切り口からわかりやすいとはどういうことか?逆にわかりにくいのはどんなことで、それはどうしてか?事例を入れつつ考えたい。テーマの構成予定は次の通り。

***********************************************
 1.わかりやすくないと売れないのか?【本日】
 2.わかりやすさで抽象化思考が停止する。
 3.わかりやすい商品、価格、広告事例
 4.情報格差を乗り越えるには
 5.入口では興味を、出口でわかりやすさを交差させよう。
***********************************************

【勝手にアドバイス旬ネタ わかりやすさが命 1.わかりやすくないと売れないのか?】

「なんか、わかりにくいなぁ」
「もっとわかりやすくしてほしいよね~」
「私らには難しくて・・・」

お客さまのこうしたつぶやきは、ナイフのように売り手を切り裂く。

小売業で言えば「店舗レイアウト」「陳列や商品説明」「商品交換やアフターサービス」「使用中の商品のFAQ、コールセンターのヘルプ」・・・わかりやすいか、わかりにくいかだけ」で評価が下される。引いては不祥事の場合のあやまりかたさえ、わかりやすいかが問われる。頭の垂れかたと言い訳がわかりにくくすれば、生命保険の不払い事件にあるように、その意図を見透かされ、さらに糾弾される。

わかりやすくないと売れないのか。答えは(おおむね)Yesである。

だからわたしたちは、商売のあらゆる局面で「わかりやすいかどうか」という強迫観念にとらわれる。わかりにくいという言葉に敏感である。わかりにくい!と怒声が飛んでくることを恐れている。かく言うわたしもセミナー講師として、プロジェクトのセッションや報告会での説明役として、その厳しい目線に晒されている。プレゼン資料、図解や言葉、構成や物語力、ジェスチャや表情。考えているつもりである。

わかりやすさは命、それはわかるが・・・どうしたらわかりやすくができるのだろうか?

【わかりやすさのチャンピオン=ジャパネットたかた】
何と言ってもわたしはジャパネットたかたこそ、わかりやすさのチャンピオンである。高田明社長の軽妙な長崎弁の語り口は(情報漏洩事件の後では)もはや語りぐさだが、彼が何を伝えようとしてきたか。それは商品の説明もさることながら、彼自身が絶対に重要だと考えたのは、「お客さまがそれを買うとどうなるのか」という一点なのである。

  004_0001  高田社長。

「さあ、今日は感動のハイビジョンテレビからスタートしましょう。さあ、皆さん。ちょっとテレビを替えてみませんか。変わりますよ、世界が。お部屋の雰囲気が本当に変わります。ご紹介するのはシャープのアクオスです」
出典 日経ビジネス 2007年3月12日号 『思いを電波に乗せて売る』

高田社長の第一声は「これを買うとお客さまの生活がどう変わるのか」そこに絞られている。なぜそうなのか。それは、お客さまが知りたいことは、実は商品の特徴や機能ではなく、「これを購入したらわたしの生活はどう変わるのか」なのである。消費者の真の期待である「どう変わるか」をときほぐすと、次の点である。

 ・今の生活と比べて何ができるか。
 ・今の生活スタイルがどう変わるか。
 ・それがどのくらい使いやすいか。
 ・今持っているモノがムダにならないか。
 ・わたしはこれを買ったらどう見られるか。

【メーカー主権を取っ払うことが躍進の原点】
自分の生活がどう変わるかを思うのが消費者なのに、メーカーのつくる商品カタログは、自分の言いたいこと、主張したいことばかりでダメだ、と高田社長は述懐している。

 X9hgoewa 力説!
 
私は自分のところで扱う商品を決める際、まずメーカーが作った商品パンフレットをじっくりと眺めることにしている。最初のページから最後のページまで、この商品の特徴、ウリは何かを吟味するわけだ。しかし、ほとんどの場合、巻頭のページは、新開発した機能や最新のテクノロジー、メカニズムなどをうたったものになっている。(中略)
 だが消費者から見れば、それがどれほどのものなのか、一読しただけでは判断がつかない場合も多い。多くは難解な専門用語で彩られているからだ。

出典  http://www.president.co.jp/pre/20021014/004.html

これは、けだし名言である。売り手が思う差別化は、最新の機能、技術、メカニズムであるが、オタクを除いてそんなギミックなことに気に掛ける消費者は少ない。消費者目線で見れば、実は当たり前の機能がちゃんと付いているか、数年ぶりで買い換えるデジタル商品であれば、その数年間に熾烈な機能競争があったとしても、むしろ当たり前の機能がちゃんとあることが大切なのである。それは常識なのに、売り手志向ばかりの(顧客と戦うのではなく、競合とばかり戦っている)カタログには(大きくは)うたわれていない。

【高田社長の徹底的なリアリズム】
ジャパネットたかたが、ウェブ通販時代の成長の裏側でなぜ急成長したか。飄々としたヒューマンタッチがその理由に挙げられることが多いが、それは事実としても、徹底的な消費者視点のリアリズムこそが、急成長を支えたのである。

高田社長がやったことは、メーカーのカタログやウェブサイトのスローガン10個をまず半分の5個に絞り、さらに5個のウチ一つだけに絞った。それを入口にして、それだけに全体の大半を費やして説明を繰り返し行った。それは「アクオスを買えばお部屋がほんとうに変わるんです!」という、生活の変化の部分である。

 004_0002  現場主義。

あとは社長の言う、お客さまの「支払意志」と見合う機能に過不足がないか、それこそは一つひとつの機能であるから、それを正直に説明するのである。
参考 http://www.president.co.jp/pre/20021014/004.html

【わかりやすくないと売れないのか?】
この問いかけ、必ずしもYESではない。なぜならわかりにくい方が売れるものも多々存在するからである。たとえば代々伝わる味の秘伝や秘法、陶器や磁器の秘訣、茶や剣術、価値のある発明や研究、個人の資格・・・わかりにくいからこそお金を払うものも数多いのである。

それも高田社長の言う「支払意志」なのかもしれない。気をつけるべきは「わかりやすさ」に囚われすぎて、本当に伝えるべき難しさまでも単純化して薄味になってしまうことかもしれない。

わかりやすさは奧が深い。今日はその余韻を感じつつ以上です。

|

« 塩アイスクリームという自由 | トップページ | N704iμ Slim Womanの実像 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/158074/7332347

この記事へのトラックバック一覧です: わかりやすさが命 1.わかりやすくないと売れないのか?:

» 旅行 [旅行にいこいこっ!]
憧れのあの地へGO! [続きを読む]

受信: 2007年7月30日 (月) 22時21分

» おかげさまで [千 風になって ~心に魔法のいい言葉で元気になろう~]
どんなにほめられても、「おかげさまで」といって、決して威張らない。これは六法全書には書いてないけど、日本に住んでいる大事な神さま。(『お金儲けセラピー』(斉藤一人)より)斎藤一人さんは 「日本で最大の神様は、みなさまのおかげさま」 だとおっしゃっています。 「おかげさま」という神様の力を借りなければならないそうで、 「みなさまのおかげさま」という神様が最大の...... [続きを読む]

受信: 2007年8月 2日 (木) 15時06分

« 塩アイスクリームという自由 | トップページ | N704iμ Slim Womanの実像 »