国立商店の顧客言動力
これまで愛用してきたデザイナーPhilipe Starck(フィリップ・スタルク)氏のデザインしたバッグAbideがへたってきた。それを休ませるためにも新しいバッグを買った。
このスタルク・デザインのPCバッグは気に入っている。PCを入れるように見えないデザインだからだ。負けず劣らずわたしが購入した国立商店のデザインもイカしていると思う。だが、書きたいのはバッグそのものだけでなく、バッグを予約し、到着するまでの同社の顧客関係構築活動について。それが今日のテーマである。
【勝手にアドバイス Vol.201 国立商店の顧客言動力】
国立商店のバッグは、デジタルARENAやアスキーなどPC関連サイトでも取り上げられる「知る人ぞ知る」バッグである。有名な吉田カバン/Porterはちょっとポピュラー過ぎるな、Tumiは価格が高いし、いかにもタフという感じがちょっと、という層にウケている。
その国立商店の看板商品は、2003年以来発売されている「2Way Light Brief」である。その改良版がちょうど2007年7月上旬発売された。
『 2Way Light Brief 』は、Lightduty(ライトデューティー)を使ったシンプルな軽量ブリーフケースです。シンプルで素朴な印象ですが、ハイテク素材使用することにより、強度を維持しながらも軽量化を果たしました。牛革のハンドルとのコンビネーションにより、すっきりとしたスタイルに仕上げました。
引用元 http://www.kawaya.com/shopping/2waylightbrief/index.html
【ワイド対応の改良】
大きな改良ポイントは「MacBook(13.3インチワイド)対応」であった。2006年に発売したモデルは好評であったが、AppleからMacBookが発売され、さらに他のPCメーカーからもワイドPCが続々発売された。2006年2Way Light Briefでは、それが収納できないという大問題があった。そこでリニューアルでは収納サイズの見直しをかけた。
──製品の開発はどのように進めているのですか?
遠藤 僕がデザイン画を提携工場に出して、詳細な図面を仕上げてもらいます。デザインといってもポンチ絵ですけどね。それを基に試作品を3点ほど作ってもらい、改良を進めていきます。
http://arena.nikkeibp.co.jp/article/col/20060605/117003/?P=2
カバンのスケッチは、代表取締役である遠藤幸作氏が自ら描き、商品にしていく。最初の図案はポンチ絵。
そこからのマニアックで詳細な開発話が同社のHPの「開発中の製品ページ」にある。これがまた、読ませてくれてくれる。「PC収納スペース部分は、上部両サイドをベルクロ付きの革バンドで留める方式にしました」「モバイルバッグとしての基礎機能の強化のために、バッグ本体にあるD管の台座の革の内側に、金属のプレートを挟み込みました」など、モノづくりへのこだわりが好感をもたせる。
http://www.kawaya.com/kaihatsu/kaihatsu_2007.html
さらにこれから開発する商品のアイデアまで開陳しており、読者のコメントを探ろうという開発姿勢もいい。
【同社の顧客言動力】
そんな苦労が実って、 2Way Light Brief の初回ロットも(おそらく)予約で完売であっただろう。現在2回目の生産ロットに入っている。手元に送られてきたバッグを見ると、たしかに丁寧作り込まれている。
だがわたしが感動したのは商品だけではない。国立商店の「顧客との言動力」に感動した。まず、予約時点(2007年5月)で、わたしの個人名を入れたメールが届いた。
この度はライトデューティー製ブリーフケース2Way Light Briefのご注文有り難う
ございました。ご注文確かに承りました。只今生産工場側と初回生産ロット分の
生産準備を進めている段階でして、来月6月の末~7月初旬にかけての完成を
予定しています。時間がかかってしまいすみませんが、できるだけ早くお届け
できるように調整と準備を進めてゆきますので・・・・・(以下省略)
ここまで書かれると買い手であっても恐縮してしまう。ところが6月下旬にまたメールが来た。
こんにちは、国立商店の遠藤幸作です。ご注文をいただきましたライトデュー
ティー製 ブリーフケース2Way Light Briefにつきまして、本日製作工場とスケ
ジュールの最終確認を行いまして、入荷日が決まりましたのでお知らせします。
製品が到着次第、すぐに出荷準備を進め、入荷当日の2日(月曜日)より出荷
できるように手配を進めたい と思います。・・・・(以下省略)
細かい配慮である。これにも驚いた。そして・・・3通目のメールが飛んできた。
こんにちは、国立商店の遠藤幸作です。ご注文をいただきました製品の発送
完了のお知らせです。ご注文をいただきました製品を本日3日(火曜日)の午後
に発送させていただきました。お待たせしました・・・(以下省略)
問い合わせ伝票番号を添えて、以下の記述がメールにあった。
■荷物のトラッキングはこちらよりどうぞ。
http://toi.kuronekoyamato.co.jp/cgi-bin/tneko?init
■ヤマト運輸、最寄りの営業所はこちらから検索できます。
http://sneko2.kuronekoyamato.co.jp/
そして届いたバッグの梱包段ボールのトップには、下の写真のシールが貼ってあった。
ここまでのホスピタリティの実行、読者の会社ではどうだろうか?
【勝手にアドバイス】
通販サイトはもちろん、無在庫通販のドロップシッピング、そしてB2Bのサイトも、このような国立商店の顧客リレーション戦術を学ぶべきである。売れれば勝ち!やサイトの見栄えばかり気にするなんてことはないだろうか?
国立商店は、取り扱う商品のほとんどが自社開発であり、商品点数も少ないし、たぶん顧客も数百のオーダーだからここまでできる、という反論はあるかもしれない。
だが、お客様の数の問題ではない。差別化された商品という問題でもない。同じ商品を売るのでも、ネットでは売り手が見えないのだから、お客様を安心させるホスピタリティこそ差別化なのだ。ひとり一人のお客様を大切にする「言動力」があれば、同じ商品を売っても大きな差別化ができるのである。
今日は以上です。
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