趣味を科学する 5.趣味のH2B市場
趣味をマーケティングの切り口から考えてきた旬ネタ、今日で最後である。書いてきてふと思ったが、このブログも趣味かもしれない。仕事上の味付けもして書いているが、ほとんど就業時間外に書いているし、フォーカスしているのは、あくまで自分の中のマーケティング論や体験、雑談である。勝手にアドバイスしているくらいだから、そもそも趣味の域を出ていないとも言える。
だが、趣味が嵩(こう)じて何とやら、ともいう。結局、趣味は次第に嵩じるものである。嵩じれば新しい人生が待っているかもしれない。趣味をあなどるなかれ。趣味で人生を変えた人は多い。人生そのものを変えないまでも、人生のある時期を変えて、それが後の人生のかたちを変えたという人も多いのではないだろうか?
趣味は人の心を裸にすると書いたが、趣味の中でも、人の心を裸にする趣味が真の趣味なのだろう。心を裸にしない趣味はまだ真の趣味ではなく、いわゆるホビーに過ぎないのではないか。心を裸にするとは、思想や生き方、ライフスタイルに影響を与えるという意味である。これが正しければ、わたし自身、ほんとうの趣味は数えるほどである。
だが女性は趣味とどう付き合うのだろうか?ちょうどここまで書いたところで、同僚のTMYさんから電話があり、STKさん共々タイ料理を食べに行った。それで今日のアップが遅れてしまったが、TMYさんの趣味と言えばフラメンコである。その投入ぶりを見ると、男の趣味への自己投入と女のそれは本質的な違いがあるのではないか?という仮説が、タイ料理の辛みによる汗とともにほとばしった。
【勝手にアドバイス旬ネタ 趣味を科学する 5.趣味H2B市場】
まずある男性の趣味が嵩じて仕事になった成功事例をみてみたい。神山 隆彦さんという、もともとは外国TV局の日本支社でカメラマンなどの仕事をしていたそうだが、ある時から、子ども時代に親しんだ8mmビデオに取り憑かれてしまった。それで通信社に勤めるかたわら、8ミリ機材を通信販売するというとてもレトロな商売を自宅で始めた。商店名も「レトロ通販」。
彼の副業時代は激烈だ。通信社では早朝五時からのシフトだったので4時に起きて、共働きなので小さかった子供を預け、通信社で午後まで働き、夕方から副業と子供引き取りと宅配便発送をこなしたという。壮烈である。だからこそ趣味が嵩じて会社を首になってしまった。仕事より趣味の男なんていらんと、首を切られた。
そこで落ち込むかと言えば、好きな趣味で始めた事なので、むしろのびのびと仕事ができるようになり、通信販売から店舗販売に移行してしまった。錦糸町に事務所兼店舗を開くと、レトロな8mmの需要を一手に引き受けるようにお客がと現れだした。「実際にカメラが見たい」、「フィルムの入れ方を教えてほしい」、「映写機の扱い方を教えてほしい」などの顧客ニーズに応えてはいたが、それでも収入は激減、妻からも白い目で見られる中でとぼとぼとビジネスをした。
【男の趣味で独立物語は血まみれ】
事業が軌道に載ったきっかけは、TV局に取り上げられたというパブリシティだったが、実際には機材の販売だけでなく、撮影済み8mmをDVDに変換サービス、8mmフィルムを製造するなど、手作業ながらも、必死の思いで業容を広げたからと伝えられている。詳しくはこちらをじっくり読んでほしい。
参考 http://secondlife.yahoo.co.jp/hobby/master/profile/h108ktaka.html
神山氏の事例から感じるのは、男は趣味が嵩じるとなぜか血と汗と涙の物語になる。壮絶な物語や資金繰りの厳しさ、裏切り、ねたみ・・・など、男の趣味で独立物語は、血まみれが多い。
【男女で異なる趣味のAIDMA】
一方女性はと言えば、先日帽子デザイナーの山之井さんの話しを取り上げたが、彼女はOLのかたわらで帽子学校に通い、帽子製造会社に転職し、アトリエを持ち・・・と苦労はあっただろうが、伸び伸びと独立されたように見える。素晴らしいと思います。
フラメンコのためにスペインまで軽々と行ってしまうTMYさんも、料理修行でアメリカに飛んで行くCherryさんも、思いは一途なのだろうが、男の血まみれさとはまったく違う軽やかさがある。そこでハタと気づいた。初回に書いた「趣味のAIDMA」だが、これは女性の趣味独立の法則を表しており、男性のそれではないのだ。再掲したい。
Accumulate (アキュムレイト=蓄積)
Interval (インターバル=間隔)
Discovery (ディスカバリー=発見)
Magma (マグマ=地殻変動)
Awakning (アウェイクニング=目覚め)
男性版の趣味のAIDMAとはこんな感じである。
Accustomed (アカスタムド=慣れ)
Identity (アイデンティティ=オレがオレが)
Devoted (ディボテッド=自己投入)
Moan (モーン=うめく)
At work (アト・ワーク=やっぱ仕事だから・・・)
趣味が嵩じるということを考えるとき、女性は「趣味の仕事化」をはかるが、男性は「仕事の趣味化」の呪縛から逃れられないのである。
【H2B市場の広がり】
モノ余りで差別化がテーマになり、量から質への感性型消費社会に移行して久しい。労働も量から質、知的労働者優位の時代になり、さらに自由な感性労働の時代になった。このような消費社会の背景にあるトレンドのひとつに、趣味の仕事化があるのではないだろうか。それはHobby 2(to) Business,H2B市場である。
趣味の仕事化が昨今のトレンドだとすれば、あらゆる商品でデザインや味わいや希少性が重視され、ウンチクが語られ、トリビアな自慢をし合う理由もわかるような気がする。趣味化が嵩じる先は、恐らく人生の趣味化なのであろう。人生なんて趣味だ!血みどろからも自由だ!軽やかな趣味で稼ぐ!そうなりたいものだが・・・。
最後にわたしが最近AIDMAしてしまった趣味をご紹介して終わりたい。それは自転車である。今週何度か自転車の写真を入れましたが、これらはわたしが購入したものの同型です。手元(足元?)に届き、自転車行脚を始めましたら、その話題も書かせていただきます。今週の「趣味の科学」は以上です。お読みいただき、どうもありがとうございました。
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