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2007年8月 6日 (月)

経営改革の正の循環

今日は隔週で寄稿している「ぷろこんエッセイ」からの転載です。
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経営改革の正の循環

出版した本を贈呈するため、先日久しぶりに元クライアントにお邪魔した。
このクライアントとは、全社課題の整理と中計策定を通じて、協働する機会が
あった。プロジェクトを通じて多くの汗と感動の涙、そして流血(マネジメント
の整理、という意味である)のドラマがあり、わたし個人としても最も印象深い
プロジェクトになった。

前期は業績が回復したこともあり、全社員・全パートに至るまで決算賞与が
支給されたのは嬉しかったが、今期も好調を持続しているのは、マネジメント
の正常化を図り、一人ひとりの社員の意識が覚醒し、自信が回復したからで
ある。

お邪魔した時に、財務部長から営業企画部長へ、また関連事業部長から
人事部長へと、要職へそれぞれ着任された、元プロジェクトメンバーのお二人
が楽しげに話されていたのは、パートさんの研修エピソードだった。

従来、当社ではなかなかパートさんまでは研修が手が回らず、入社時の
実務研修以外は何もやれていなかった。だがパートさんも社員も、現場では
同じ仕事をしており、お客さまはパート/社員の区別をしているわけではない。
それで、マネジメント側に社員とパートを区別する「雇い主目線」があったの
ではないか、という反省が起点になった。

そこで、入社後一定期間を経た時点で、パートさんにも社員と同じ研修を
実施することにした。初めて参加したパートさんには、なぜ今頃研修?面倒
だね・・・という気持ちもあっただろう。研修時にはあまり発言もなく、研修講師
(くだんの人事部長)も「手応えあったのかな?」と不安に思った。

だが心は動いていた。研修を受けたパートさんの受講後のアンケートには、
「これまでなぜパートには研修がないのでしょうと思っていました」「社員は
社員、パートはパート、だと思っていました」などという記述に混じって、こんな
表現のものもあった。

「これまで店舗の所属という意識でしたが、当社の一員でもあると思いました」

当社ではパート雇用は各店舗にまかされており、パート=店舗の人なので
ある。だから末端のパートは、遠い本社を意識したことがなかった。会社の
理念や方針を語られても遠い向こうの話だった。商品政策を伝えられても、
もちろん中期計画目標の数値割り当てを見ても、他人事だった。

ところが集合研修という、ごくありきたりな行事が、意識の変化のきっかけと
なった。ありきたりだが、それは今までなかった。これまで赤字に苦しんで
いた本社からは、無いことが見えなかった。ありきたりだったが、パート一人
ひとりが大事にされているというメッセージが、意識を変える素になった。

ここまでくるのに、実に3年かかっている。

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企業の栄枯盛衰のライフサイクルは、創業、成長、成熟、衰退で語られる
ことが多い。事業曲線はいわゆるクジラ曲線で、尾っぽから胴体、アタマに
かけてだんだんせり上がっていくが、いつしかアタマから海に転落する。

これは事実だが、社員や経営者の意識はどうだろうか?

「企業は人なり」は正しいが、人心と成長クジラ曲線は実は一致していない。
人心はむしろ「逆クジラ曲線」をたどる。創業から成長にかけて、一心不乱に
私心無く仕事をし、協働の喜びを分かち合う。だが事業が成功し美酒に酔う
頃には、社員も多くなり、創業理念は薄れている。停滞、疲弊、そして無関心
へと、意識=マインドが一気に下降する。

このズレが企業の成長をアタマ打ちにするばかりか、不祥事の原因となる。

 Kujira_kyokusen 

二つの曲線のズレをなるべくなくすことが、経営改革の要諦である。パート
さんまで改革を浸透させた当社でもそうだったが、そこまでの道のりは
おおむね三段階がある。

 ・経営改革プロジェクト(きっかけ)
 ・マネジメント改革(変革の実作業、流血)
 ・現場の意識変革(浸透)

このように意識改革が遅行してしまうことが、改革プロジェクトの弱点でもある。
二頭のクジラは、仲良く並んで泳ぐことができないのだろうか?

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この度出版した本がかたちになるまでに、いくつかのキーワードがあった。
そのひとつが「機能コンサルタントから経営コンサルタントへ」である。

機能コンサルタントとは個別の部門(財務、生産、人事など)から仕事を受託
して、個別の機能をよくするための支援をするものだ。人事制度作り、統制
ワークフローづくり、原価把握のシステム化、マーケティングがらみで言えば、
顧客名簿の名寄せや情報化ツールの導入などである。見渡せば、機能
コンサルティング案件が実に多いことに気づかされる。

「機能コンサルではホントの改革なんてできないよ」 共著者の一人の言葉で
ある。部分の仕事を受託してそれが全体を調和させていけるだろうか?
部分の改革が先にあって、企業や事業全体の調和が図れるだろうか?

お客さまが起点にあり、ニーズを満たす商品やサービスがあり、その顧客
との接点づくり(売り方)、その接点の維持(サプライチェーン構築)までを
一貫して構想・実施することが「経営コンサルティング」である。

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制度の改善といった外堀を埋めるイントロ(さわり)では、機能の改善レベル
である。もう一段上の構造改革レベルでインプリ(実行)を支援する必要が
ある。そしてM&Aが日常化する今日では「事業価値を上げる支援」こそが
求められる。それはインベスト(投資)まで関わるプロデューサー志向で
ある。

これが一頭目のクジラのアタマを水上に上げさせる支援のかたちである。
さらに二頭目のクジラ曲線の「尻尾」を跳ね上げさせるのは、人間的な裏方
の作業であるが、これこそ改革に欠かせない要素である。

従来のやり方では、構造改革を先に進め、コアメンバーの意識を上げること
を優先し、一般社員にはさしあたり何とか我慢をしてもらって、経営改革の
本気度を徐々に知らしめる努力をするしかなない。一人ひとりの意識覚醒
をいかにするか、コーチングという意識変革が注目される由縁である。

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くだんのパート研修話にはおまけがある。

当社には従業員研修担当者がいる。彼女はこれまで社員研修やパートの
入社時の実務研修の業務をそつなくこなしていた。そんな折りに、営業企画
部長から「パートさんにも従業員研修をすべし」という提案が降ってきた。
彼女は自分がこれまでやってきた仕事を否定されたように感じて、いたく
ショックを受けた。まじめにやってきたのに・・・と落ち込んだ。

彼女ののなだめ役は人事部長が努めた。曰わく・・・

「君の仕事はなんだろうか。社員研修をすること、じゃないよね。社員やパート
のマインドを上げて、お客さまの満足を高めて、それが売上につながるのが
仕事だよね。そこに気づいてもらいたかったんだ」

経営改革とは、企業がこういう正の循環に立ちもどることなのである。

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国は、違法な労働者供給事業を放置するよりも、派遣労働を法制化をし、労働大臣(現:厚生労働大臣)の許可と届け出を義務づけることにより労働者の保護を図る方が好ましいと判断し、ドイツやフランスの関連法をモデルとして同法を制定するに至った。 [続きを読む]

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