お金持ちのお嬢さんは、なぜお金持ちのお嬢さんに見えるか
先日ランチどきにCherryさん と大通りの歩道を歩いていた。彼女が言った。
「あら、あの後ろ姿、MKさんに似ている! 」
「どの人?・・・」(ほどなく、われわれのちょっと前を、しゃなりしゃなり歩くお嬢さんを発見)
「うん、うん、似ている。MKさんそっくりだ」 わたしはすっかり同意した。
背格好、肉の付き方(ていうか付いていないところ)、髪型・・・その後ろ姿、MKさんにそっくりなのだ。地味なプロジェクトにアサインされている彼女は、クライアントの狭い小部屋に常駐しているはずだから、今ここにいないことはわかっている。だが、後ろ姿は見間違うほどそっくりだった。
だがCherryさんは言った。「MKさんとは、どこか違う」
【勝手にアドバイス Vol.217 お金持ちのお嬢さんは、なぜお金持ちのお嬢さんに見えるか】
どこか違う。何かが違う。もちろん個体が違うのだから遺伝子も体脂肪も違うのだが、その道ゆくMKさん似の女性、どこかMKさんのオーラというか雰囲気が出ていないのだ。
わたしも相づちを打った。「うん、違う。その違いはね・・・わかった!ほら歩いているあの女の人、お嬢さんぽくない」
「そうね!MKさんがかもしだしている“お嬢さん”て雰囲気がないわ!」 Cherryさんは合点がいった。「MKさんは・・・お嬢さんだから、やっぱり」
われわれは道ゆく女性の背中に勝手なことを言い合った。だがお嬢さん論については、わたしにはかねて考えていた知見があるのだ。それをCherryさんに披露してみた。
「僕はね、なぜお嬢さんがお嬢さんだとわかるか、考えたことがあるんだ」
「どうしてわかるんですか?」
「ひとつは、高い化粧品を使っていること。お顔がね、高いお化粧品の塗られてるのよ。たとえばC化粧品は使わない」
「C化粧品なんて、おばさんしか使わないでしょ」と苦笑するCherryさん。理由ひとつ目はウケなかった。
「ふたつ目は、ほんわかしたお顔なんだよ、お嬢さんって」
Cherryさんは即座に言った。「あっ、それはあるかも!」 理由その2はウケた。
「僕のね、いとこにお金持ちがいたけれど(会社倒産したから昔のことだよ)、顔つきがほんわかしているんだ。お嬢さんってどこか、ほんわかしたお顔だよね」
「ガツガツさがないっていうか・・・」
「そうそう、ほら、生まれや育ちが出ているっていうか、生活に苦労してないんだよ」
「そうね、ほんわか。ほんのりしたお顔」
「芸能人で言えば・・・・う~ん誰だろう。芸能人って、そもそもガツガツしているからな」
「ギラギラしてるから、芸能人には少ないかも」
「松たか子はお嬢さんだね」
「そうね、そんな感じがする」
「小雪と弥生の姉妹もそうかも知れない」
「うんうん」
いつの間にかそのMKさんもどきの女性は視界から消え、わたしたちは庶民の辛い食べ物で胃袋を満たすため大通りから道を折れた。
【セレブからソーシャライツへ】
若い女性が何と呼ばれることを望むか。昔はお嬢さんやご令嬢だった。今ではセレブ(celebrities)からソーシャライツ(socialites)へと進化している。
ソーシャライツとは、ほんらいはニューヨーク在住の資産家の令嬢を指したそうだが、日本でその言葉を広めてきた雑誌『25ans』でのソーシャライツさんたちの経歴を垣間見ると、次のような特質が浮かび上がる。
今月号は「王道レディス」がテーマ。
・ リーダーシップのあるポジションや活動
・ 垂涎のキャリアまたは独立している
・ 海外で働いた経験ないし充電経験がある
・ 名家の出身である
・ エコ感度が高くボランティアにも積極的である
【セレブとソーシャライツの違い】
もちろんファッションやボディの手入れは怠らない。知性と教養もあり、美食や消費に関する感度も低くてはダメだ。財力があり有名ないし人望が高い。知的でボランティアにも精を出す。ここまではセレブもソーシャライツも共通である。
大きな違いは、前者はお金をいかに稼ぐかに血眼になってきた経歴をもち、後者はいかにお金を使うか考えあぐねてきた経験があることだろう。
ウォールストリートジャーナル(WSJ)のブログに「What Do Socialites Do All Day?(ソーシャライツって毎日何しているの?)」という記事がある。ああ!まるで別世界である。取り上げられているのは、あのハースト家の末裔、Fabiolaさんのある日だ。
Fabiolaさんは真ん中のレディ。胸元に注目! http://www.newyorksocialdiary.com/partypictures/2006/09_20_06/partypictures09_20_06.php
・7時半に起床し、パーソナルトレーナーとワークアウト
・その後2時間半仕事をする(宝石の買い付け会社社長として)
・Le Bernardinで2時間のランチ
・Vogue誌とのインタビュー(チャリティでダイヤを寄付した話で)など
・6時15分に仕事を終え、ヘアスタイリストに立ち寄る。
・その後ディナー、そしてバーへ。
Le Bernardin ★★★★ by ミシュラン。 http://www.le-bernardin.com/
WSJの記者は「これでソーシャライツが遊んでいるって言えますか?」と微妙な反語で結んでいる。
引用 http://blogs.wsj.com/wealth/2007/06/19/what-do-socialites-do-all-day/
【勝手にアドバイス】
Fabiolaさんの仕事はきついのかもしれないが、十分に息抜きがありそうだ。3時間激務でも3時間の憩いがあるのだもの。ソーシャライツがソーシャライツたる由縁は、生活の辛苦がお顔やお手に表れずにすみ、ほんわかしたお顔にとどまれるからである。
デフレ時代からインフレへ、そして格差社会に突入した日本。今やビジネスは金持ちを相手にするか、貧乏人を相手にするかどちらかに選択と集中するのがいいと言われる。所得2000万円超の富裕層人口が、1990年から2005年の間に2倍近くに増えたとする第一生命経済研究所のリポートもあった。こうした単純化したマーケティング論に傾きたくないので、せめて「二元論」ではなく「三元論」してほしい。その三層とは・・・
庶民(親が親なら子も子)、セレブ(悪銭身につかず)、そしてソーシャライツ(いつまでもあると思うな親と金)。
今日は以上です。
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