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2007年9月23日 (日)

OXO 大根グレーダー/先端技術と昔の知恵の出会い

プロダクトデザイナーの仕事とは何だろうか?

先日(2007年9月20~21日)の日経デザインフォーラムではその答えをいくつか示してくれた。アイデアとイノベーションを組み合わせること、認識を変えること、感覚をかたちにすること、UD(ユニバーサルデザイン)の探検隊を組織すること、開発の原則をつくること、エンジニアリングとアートをブリッジすること、すべての抽象を具体化する、意識の中心を見抜く・・・などなど。

ひとことで言えば、「人とモノとの関係を考えること」だ。そのことを考えさせてくれたのは、フォーラムでも秀逸な話をされていたデザイナーの山中俊治さんだった。秋といえば秋刀魚(さんま)。秋刀魚といえば大根おろし。今日は山中さんのグッドデザイン賞受賞作品「OXO(オクソ)大根グレーダー」にまつわる話を考えたい。

【勝手にアドバイス Vol.243 OXO 大根グレーダー/先端技術と昔の知恵の出会い】
なだらかなスロープの裾野を押さえて、しっかりとテーブル上に固定して使います。科学の目とコンピュータによるデザインがまったく新しい使い心地を実現しました。
引用元 http://astore.amazon.co.jp/atmyhouse-22/detail/B000FFQT8M

    51f66z2gd1l__aa280_  6_oxo 大根おろしには見えない。

なるほど従来の大根おろしとはかなり違う。主な工夫は次の点。

・自然に手を添えることができるゴムのスロープ(土台のところ)
・ブレードの計算された歯並びが、いままでにないサクサク感を実現(ランダムに計算されたとされる)
・その素材にアセタールを使用(アセタールとは強度と耐摩耗性にすぐれ、しかも弾力のある樹脂素材)
・そそぎ口をつけ、使用後は自立させて乾かせることができる(日本の台所事情を反映)

 
    Img17071108 手をしっかり添えられる。
    http://item.rakuten.co.jp/toolandmeal/10000141/ ほか

講演でも説明されていたが、歯の部分の開発はゼロベースで検討された。いかに楽に、かつ美味しく大根が擦れるか。歯の高さは二種類あり、しかもランダムに並んでいる。一般的な樹脂の大根おろしの歯は一定間隔で並んでいるから、前後におろすとすぐにタテ筋がついて、持ち替えるでしょう。OXOのグレーダーはランダムなので持ち替えなくても擦りあじに変化が少ない。

【道具に宿うものをたいせつにする】
デザイン作業でまず注目は、「使い手の手の添え方から考えた」という点である。使い手がどのような姿勢か、腕の角度はどうか、手の置き方は・・・・そこから考えた製品はあるようでなかった。フラットな視点からの観察が、この土台の形状になった。

次に歯の形状。昔の職人の手による大根おろし金は、銅板に目立てをして、コツコツとひとつずつ目を上げていった。だから「ランダムさ自然にできて」それがよかった。ところが工業製品化される過程で、均一になったゆえに、逆に削りにくくなった。皮肉ですね。変形した大根が市場に出回らないのとどこか似ている。

    Img17419995  なるほど独創的。

山中さんは最先端のNC(数値制御)をつかった工具を使いながら、わざとランダムな数値を入れ、デザインとして絞り込んでいった。これを氏は「最新技術を駆使して、人に寄り添う努力をすることの大切さ」と表現されている。もともと道具には国民性、文化性が反映され、ローカルな事情が宿っていた。その特徴を捨ててしまって、画一的なモノを作ってきたのが大量生産である。それを素な視点から否定し、だからといって手作り主義に懐古するのではなく、「先端技術と昔の知恵の出会い」をはかった。
参考 http://www.deepscience.miraikan.jst.go.jp/miraijin/new/01.php

【無思慮なプロダクトは文化を破壊する】
図面とコストだけをにらめっこして機械的にモノをつくると、文化さえ破壊する。欠陥商品や毒性を持つ商品輸入が問題になっているが、生命リスクだけでなく文化変質のリスクもある。大根おろしも擦れればいいというだけのプロダクトが増えて、擦りかたさえも衰えてしまう。

そうすると大根とおろしにまつわる言葉も消えてしまう。「せかせかしておろすと大根おろしが辛くなる」「女がおろすと甘くなる」「やさしく円を描くようにおろす」「大根おろしに医者いらず」。モノと言葉と食文化には密接な関係がある。

【モノとの対話の減少】
ブラックボックスになって、モノと対話が減っているのも気になる。

自動車はその最たるもので、もはや自分でオイル交換さえする人は少ない。エンジンフードを開けても、どこに何があるのかわからなくなった。コンピュータもそうだし、液晶テレビもデジカメもオーディオも・・・対話しようにもメーカーがさまざまな理由から対話をさせなくなってきた。

これをブラックボックス化と言うが、これはユーザーの頭も真っ暗にする。思考領域が狭くなるのだ。素材の産出、モノの生産、そして廃棄に至るサイクルで、使用時点以外にユーザーが関わることができないのだから当たり前だ。食べ物なら地産地消が可能だが、工業製品ではそれはむつかしい。

【勝手にアドバイス】
プロダクトデザイナーは文化を理解し、伝承し、進化させる役目を担う。人と大根と大根おろしを考えると文化に突き当たるように、人とモノの関係を正常化させる役割も担う。たかが大根(あるいはデザイン)、されど根深いのである。

  Daikon1 先端は辛い。上を丸くやわらかく擦ると甘い。

デザイン素人のわれわれは、せめて大根おろしに、レモン汁か醤油か何もかけないか、深く悩みながら秋の味覚を正しく食しよう。今日は以上です。

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