電子書籍“サービス”Amazon Kindle
昨日に続いてワイヤレスの話題である。そうなったのもAmazonから発売された電子書籍リーダー『Kindle』が気になるだけでなく、Amazonの創業者ジェフ・ペゾスが語ったひと言が気になったからだ。
"This isn't a device, it's a service."
(これは機械ではなくてサービスである)
出典 http://www.newsweek.com/id/70983/page/1
日本時間の昨日、米国で先行発売のニュースを見て直感的に「これは買いだ!」と思った。それは発売元が電機屋でもなく書店会社でもなくAmazonだからである。Newsweek誌のベゾス氏へのインタビューにit's a serviceの言葉を発見してその思いは強まった。他の電子書籍リーダーに心を動かされたことはないが、AmazonのKindleは別である。それはなぜだろうか?それが今日のテーマである。
【勝手にアドバイス Vol.281 電子書籍“サービス”Amazon Kindle】
Amazon、ワイヤレス機能つき電子書籍リーダー「Kindle」発売
高速データ通信のEV-DO対応で、既に用意された9万冊以上の書籍を直接ダウンロードできる。本体は399ドルで、書籍は1冊10ドル程度から。通信は無料。
引用元 http://slashdot.jp/mobile/article.pl?sid=07/11/20/0737205&from=rss
90000冊以上の電子書籍と著名ブログ、新聞、雑誌、そしてWikipediaなどを有料/無料でダウンロード読書ができる電子書籍リーダーがAmazon Kindle。画面はモノクロ、重さは292g、同社がWhisper(囁き)と呼ぶ3Gデータ通信方式のEV-DO(Wi-Fiではなく通信回線)で、無線ダウンロードで書籍購入や記事の更新ができる。
【PCいらず、ケーブルいらず、同期化いらず】
「no computer, no cables, no syncing」とうたわれるように、PCいらず、ケーブルいらず、機器のステータスの同期化も不要である。スイッチを入れて60秒以内にKindle Storeに接続する。256MBのSDメモリーカードが付属しており、300冊ぐらいのペーパーバッグをダウンロード購入で持ち歩くことができる。カードは最近は2GBでも2000円しないのだから、蔵書の全てを一枚のSDに入れる時代が見えてきた。
ページ送りと戻りは本体サイド部をプッシュする(左利きにも対応する)。大画面で十分な文字解像度(文字サイズは選べる)を備え、キーボードがある(従来の電子書籍リーダーもある)。本を読んでいてわからない単語やフレーズ、人物調査があればビルトインの辞書(新オックスフォード辞典)とWiki検索をその場でできる。
斜めキー入力。
プロモーションねらいだろうが、今なら9.99ドルで買えるベストセラーが勢ぞろい。一方ブログや新聞が有料なのは、無料のpodcastingや新聞サイトが多い中、伸び悩むかもしれない。広告連動などで無料化も検討してほしいところだ。
【読書=思索=記録】
Kindleではキーボードから(本の余白にメモを書くように)文字が入力できるというし、ページやパラグラフのブックマークもできる。Kindle自体を「Myライブラリ」と位置づけて、ダウンロード書籍や書き込みの言葉の検索もすることができる。他の電子書籍リーダーにも似た機能はあるがKindleほどではないと思われる。
この2つの画像はわたしの本の読み方の一部である。中のページに線は引くのは当たり前、めちゃくちゃ書き込みをするだけでなく、ブックカバーや本の見開きにまで思いつく図をばしばし書きこむのである。良い本ほど書き込みは多くなる。それが思索する読み方だと思っている。Kindleの優れた点は、読書家のこうした作業をきちんとフォローしてモノづくりをしているところである。100%ではないにしろ。
【Amazonと他の電子書籍リーダーの違い】
こうしてみるとKindleと先発電子書籍リーダーとの違いは、本を知り読書を知るAmazonと、デバイス開発の電機企業の違いではないだろうか。SONYの“Sony reader”(米国で発売中 約300ドルとKindleより100ドル安い)だけではなくパナソニックなどの電子書籍リーダーの商品説明から感じるのは「デバイスを売ろう」という姿勢である。何冊入るか、見やすいか、めくりやすいか・・・機器としての性能ばかりアピールしている。
Amazonの事業理念を思い出してみよう。それは「アマゾン河のようなビジネスを地球上に展開する」だった。Amazonという読書体験を地球中に広めるというものであり、だからこそAmazonは電子書籍‘サービス’を売る。一方電機屋は、電子書籍リーダーを販売する。その違いを端的に表したのがネット接続の考え方である。
Kindleでは通信費用は機器料金込みになっていて一切無料。たいていの人は本屋に行くのにわざわざお金を支払わない。ついでに立ち寄るのである。わざわざ機器を立ち上げ、ネットに接続するのではなく、スイッチ一発でAmazon Kindle Storeに来てもらう。そこにハード売り事業との根本的な違いがある。
Kindleと似ているサービス(めざすサービス)はiTunesであり、残念だが(独自仕様、独自規格にこだわる)SONYはまったく競合しない。SONYはデジタルプレイヤーでも読書ビジネスでも、周回遅れなのが残念だ。
【勝手にアドバイス】
ゆえにKindleの先には、もっと大きな展開の可能性がある。たとえばGoogleとのタイアップ。Googleには知の編纂作業、ブックサーチという無償事業がある。大学図書館と連携して過去の人類の叡智を無償で電子化し開示するものである。KindleがGoogleと提携すれば、数々の人類の叡智を無料で読むことができる。それこそグーテンベルグ以来の発明となるだろう。
そこまで先走らなくても、いくつか身近なアドバイスが思いつく。
・有料貸本サービスとの提携
・書評SNSコミュニティづくり
・Kindleユーザーの読書体験やブックマーク公開
・著者の近況ブログやインタビュー連携
だが皮肉なことに、AmazonにおけるKindleの商品評価ポイントは良くない。☆2つ半という有り様だ(試用ユーザーからの評価)。だがジェフ・ペゾス氏はめげる必要はない。印刷術の発明以来500年、Web時代へ突入してまだ15年である。Web時代は始まったばかり。書籍の電子化への流れは止まらない。やがてそれはAmazon河のようになるのは間違いない。短期的に低評価で、Kindleが安くなるのであれば、個人的に(買いたいので)大歓迎である。今日は以上です。
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