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2007年11月12日 (月)

セーターの呪いと大蛇マフラー

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セーターの呪いと大蛇マフラー

その二、編む方も贈られる方も、「手編みのセーター」という意味深な贈与が
かかわる関係を重く評価せざるをえなくなり、その重さをお互いがうっとおしさ
を覚えるようになる。

 『セーターの呪い ~ モードの方程式』 中野香織 
                        日本経済新聞 2007年11月2日 

       £££££££££££££££££££££

男の兄弟は似た者同士に育つということは、ほとんど聞かない。兄弟2人を
知る他人のひと言目は「ほんとにお2人は兄弟ですか?」であり、二言目には
「まったく似ていませんねぇ・・」なのである。片方は外交的で、片方は内向的、
片方がスポーツ万能で、片方がスポーツ無能という正反対なことが多い。

わたしと兄もご他聞に漏れずで、180度違う性格である。性格よりも決定的な
違いは、兄はモテて、わたしはさっぱりモテなかったことだ。スポーツも万能で、
よく気がつく(言い方を変えれば調子の良い)兄は、モテにモテた。中学生の頃
からモテモテで、それは高校でも大学でも継続し、社会人になっても続いた。
うらやましかったが、それなりに‘女人事件’も起こしていたから、因果応報だと
密かに溜飲を下げたこともあった。

わたしが中学生の頃だ。兄とは2つ違いだから、彼は中学生か高校生になった
ばかりの頃のことだった。季節はちょうど今頃、秋の深まる頃あいだった。

兄のビニールロッカー(ジッパーでジ~っと引き上げる衣服入れ)の下に、
見慣れない大きな手提げの紙袋が見えたのだ。その袋から、なにやら白い
モコモコが飛び出している。

兄がいないときを見計らって、ジャっとロッカーを開けてみると、それは手編み
の毛糸だった。太くて真っ白な毛糸のマフラーだったのだ。

そのサイズが巨大だった。ちょうど見世物小屋の蛇づかいのオンナが首に巻く、
伸びきった大蛇のようなのである。背丈の2倍ほどはあっただろう。これを編む
のに何時間かかっただろうか?いったい誰が製作したのだろうか?(当時噂の
あったT女だったのだろうか?) 兄はこれを巻くのだろうか?学校に行くときに
は巻けないだろうな・・・。巨大なマフラーから疑問がいくつも湧いた。

後日談だが、結局そのマフラーは一度も使われた形跡を残さず、兄は引越
したときに持ち去らず、母かわたしかのどちらかが厳かに処分したように思う。
ごめんなさい、製作女さん。

2人分は優にあろう長さだから、そのマフラーの手づくり製作者と兄が並んで、
2人で巻き合って歩いたというような、そら恐ろしい伝説も残ってはいない。

          Photo 

       £££££££££££££££££££££

引用した服飾史家の中野香織さんのエッセイがトリガーになって、兄の大蛇
マフラーを思い出した。

中野さんのエッセイのその一は「編む方はセーターに夢中になるあまり、肝心
の恋人へ向けるべき関心が薄れる」、その三は「セーターを贈られた方は、
小さい頃におばに編んでもらったセーターを思い出して、恋人とおばが交錯
して愛情が薄れる」である。

『セーターの呪い』はずいぶん昔から語り継がれる現象のようで、中野さんの
ご指摘以外にも「編んでいるうちにタイミングを逸する」「関係修復のために
編む(だが結局は・・・)」「もらって好みに合わないと、編み手とも合わないという
ように思う」さらに「毛糸にアトピーなのを知らずに編まれて破綻した」などなど、
手編みは止した方がいい、セーターを編むと恋は破れるというアドバイスが
欧米には伝わる。
参考 http://en.wikipedia.org/wiki/Sweater_curse

たしかに、セーターや大蛇マフラーはちょっと・・・と思う。もらったことがない
ヒガミじゃない。手袋ならいいかな、とも思ったが手袋だとむしろ意識が強く
なりそう。手袋より冷たい手同士を重ねて温めあいたい、そんな淡い期待の
方がリアルなのだが。

                Drwho  呪われていない?         

       £££££££££££££££££££££

セーターの呪いは恋人同士だけでなく、クライアントとコンサルタントの関係に
もあてはまる。一品モノが、必ずしも喜ばれないのである。

「あなたの企業にだけ」という手編みのように手厚いコンサルティング・サービス
と、「他の企業にも似たものを提供します」という既製品型のコンサルティング・
サービスがある。

業界の外の人にとって、コンサルティングが「手編み」なのか、「既製品」なのか
わかりにくいと思うので、ごく単純に解説をする。一般に外資系コンサルは
既製品ないしパターンオーダー型である。国内系は手編みかカスタマイズに
近いところが多い。ITコンサルはほぼ既製品型である。導入システムがパッケ
ージばかりだからだ。

高い料金を払うのだから、「一品モノ」が喜ばれそうだと考えがちだが、それは違う。
多くのクライアントは「ウチだけのためにやってほしい」とは言わない。むしろ
既製品でいい、ヨソでやってきた事例を聞かせてくれというのである。

それは「セーターの呪い」に似た思いがあるからなのではないか。決して費用面
だけではない。アイデアが枯渇して飽きられるからだけではない。手づくりだと
関係が重たくなり、「あなただけ・・・は重い」という心理が働くのである。

       £££££££££££££££££££££

サービスする我々側は往々にして、「あなただけ」と頑張ってしまう。クライアント
のことを来る日も来る日も考え、ああしたらいい、こうしたらどうかと考え続ける。
考えたことをぶつける。そのアイデアになびかないと悲嘆に暮れる。なんてこの
クライアントは合理性が薄いのか!と雄たけびさえ上げる。

実はクライアントは、私達の「手づくりのアイデア」に押しつぶされているの
かも知れない。大蛇のマフラーにぐるぐる巻きにされるのを恐れているのかも
知れない。私達はクライアントを見ずに、ひたすら手編みのアイデアをつむいで
いないだろうか。

ならばパッケージ型のサービスがいいか。必ずしもそうではない。まず手の
長さや丈が合わない、首周りがきつい、色合いがちょっと・・・ということもある。
売り手は「これが業界標準なんです、使っているうちに馴染んできますよ」と
言うが、鏡に映った姿は「案山子にだぶだぶセーター」という事例も、高額な
システム案件を中心に見られる。

       £££££££££££££££££££££

大蛇マフラーもだぶだぶセーターも編まないようにするには、どうすればいいか。

それは寸法測定の技術を高め(課題抽出)、デザインの好みの聞きとり力を高め
(実現ゴールの把握)、美と用を兼ねる衣(既製と手づくりの最適なミックス)の
型紙を作ることである。型紙をクライアントに渡して、企業のかたちを、自ら引か
せることが大切なのである。

型紙に引く線が曲がったら、お客さまの素肌の手に、素肌の手を添えて「曲がっ
てますよ」とガイドをする。素肌とは本音である。やはり素肌のふれあいが一番
なのだから。

       Photo_2 案山子にもマフラーの季節ですね

 今日は以上です。

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