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2008年3月 3日 (月)

ひとさし指に風を感じて

 今日は隔週で書いているぷろこんエッセイからの転載です。
 テーマは“指”です。

 宮里がパー3の3番でつまずいた。第一打を池に入れてダブルボギー。
 上空にティーグラウンドでは気付かない風が吹いていたそうで「ショット
 自体はすごく良かった。わたしの責任でもありキャディーの責任でも
 ある」と悔しそうだった。

 米女子プロゴルフツァーHSBC女子選手権(シンガポール)に出場した
 宮里藍選手の言葉 日本経済新聞 2008年3月2日付記事

          ~○○○○○○○○○○○○○○○○~

 ゴルフでは風を読むときよく芝生をつまんでひょいと投げる。落下する
芝生の動きを見て、「アゲンスト(逆風)だな」「ヨコなぐりだな」「少しだけ
フォローの風が吹いている」などと読んで、アドレス(かまえ)やクラブ、
強弱の参考にする。指でつまんで投げる ― なんとなくその仕草がプロ
ぽくてやってみたこともあります。まったく仕草だけですが。

 というのもわたしのゴルフは「下手の横好き」ならぬ「下手の横飛び」
でした。ティーグラウンドでアドレスに入ると、いっしょに回る人々が危険を
察知して、後ずさりするようになりました。じっさい、打ったボールがコース
から大きく逸れて、フェンスを越えて走る自動車の屋根にぽーんと跳ねた
ときもありました。そのまま走り去ってくれたのは幸運でした。ゴルフを
やめたのは正解ですね。

 だから芝を指でつまんで投げるなんて、宮里藍選手のような正確な打球
が打てるプロがすることであって、横飛びがすることではない。まして地上
ではなくて上空の風まで読むなんて・・・プロは違うなぁと思いました。

          ~○○○○○○○○○○○○○○○○~

 そんなわたしは、風を読み風をつかむときにはひとさし指を立てます。

 この商品のポイントはこれだろうか。あの事業買収のねらいはそれだろうか。
あの人事のねらい、ほんとうはこれこれにあるんじゃないか?読みをいれる
とき、心の中だけでなく、ちゃんと右手のひとさし指を立てて、風を感じます。

 指に風を感じるときはGood。
 指が風を感じようとするときはBad。

 ちょっと哲学的ですが、アイデアは降ってくるものをつかむ作業であって、
つかまえにゆくものではない。つかまえにゆこうとすると、ロクなモノをつかま
えない。だから風を感じるか感じないか、風まかせというか“指次第”。

 指が何も感じないときも多々あります。そういうときはアイデアの枯渇、感性
の鈍りなのですが、「スランプ」ではなくて、感じる前に指をしまってゲンコツに
しているのだと思うようにしています。だから「指よ、隠れるな。立っていろ」と
諭して、心の指も立てるようにします。

 そんなとき思いだす“ひとさし指エピソード”があります。スープストック・トー
キョーの提案事例です。この事例、ひとさし指にピピンと感じるところがあり
ました。ピピンは「一人称」「一日」「指で味を取る」と、指一本に通じてます。

          ~○○○○○○○○○○○○○○○○~

 スープストック・トーキョー事業は、起業した遠山正道さんが所属する三菱
商事からケンタッキーフライドチキン(KFC)に出向した97年にさかのぼります。
遠山さんから見るKFCは「時代遅れ」。当時、日本は外食不況まっただなかで、
アメリカンそのもののでっかい厨房やドライブスルー、ペイしないばかりか、
感度が低いと考えました。これからは「低投資、高感度」なちっちゃいお店が
いい。これが遠山さんの提案の底流の時代感覚です。

 そんなある日、仲間とのレストランでの会話で、ふと「女性がひとりでスープを
飲むシーン」が心に浮かびました。その話しをみんなに話すと「いいじゃない
それ!」となりました。そこからスープストック・トーキョーのコンセプトを、全
13ページの企画書『スープのある一日』にまとめました。

 その企画書には3つの指1本がありました。一本目の指は“一人称”。

 企画書はこんな始まりだそうです。「恵比寿にある日本センタッキー・ブライト・
キッチンの秘書室に勤める田中は、最近駒沢通りに出来た(仮称)Soup Stock
の具沢山スープと焼きたてパンが大のお気に入り・・・」という始まりの“物語”。
主役の女性がその店舗を想い、店舗に訪れ、メニューを選び、ほっとしてひとり
でスープをすする・・・一人称の企画書でした。

 二本目の指は“スープのある一日”という視点。

 朝っぱらから、今日は何食べようか・・・とランチのことを考えているなんて!と
部長さんからはドヤされそうですが、人間の生活、リズムがあります。朝の寝起
きの気分、通勤途上の出来事、会社に入る前のコンビニでのペットボトルのチョ
イス、PCに電源を入れて思い出す今日のTo Do Lists・・・そんな一定のリズム
ないしサイクルにあるのがわたしたち消費者。ランチも重要な要素です。

 そんな物語の提案を3人のレビューアにぶつけました。当時のケンタッキーの
社長と副社長、そして今ローソンの社長の新浪さんでした。企画書の表紙には
我が子の写真さえ貼る意気込みにほだされたのか、その場で「それほどやり
たいなら、やってみろ」とゴーサインが出たそうです。

 とりあえずスープを煮込んで“煮えてるかな?”と指をちょこっと入れてペロリと
味見する。それが三本目の指です。

1 遠山さんの企画書

          ~○○○○○○○○○○○○○○○○~

 補足します。まず“一人称の発想”とは、「自分自身がそう感じているか?」
「それで自分は満足なのか?」 アイデアでも企画でも日常業務でも原点は
一人称で考えること。自分を満足させるのが、自然に顧客視点になります。

 二つ目の“スープのある一日”の視点とは、スープと秘書室の田中さんの
接点はランチでも、その接点を持つまでの期待の気持ち、接点後の満足の
気持ち、幸せになった一日全体を顧客満足として考えています。一日が
一ヶ月や一年というスパンでも同じですが、接点を通じて全体プロセスを
考えることで、自社の商品だけではなく、顧客の生活の全体を見渡すことが
できます。

 三つ目は比ゆですが“ひとさし指を時代にさしこんでみる”ということ。熱々の
スープに突っ込むとアチチでヤケドしますが、ときにはそれも必要。頭(理屈)
でなく指(感性)で感じているか?ことわざで「流れに棹を差す」と言いますが、
指を突っ込んでみれば時代の流れもわかります。

 ひとさし指を立てて自分に吹いてくる風を感じて、あたりを見回して、指を
くるくる回してみる―誰かに見られると「変な人!」と言われますが、やって
みてください。 

2 遠山さんのブログより。

          ~○○○○○○○○○○○○○○○○~

 宮里藍選手の昨年来の不調も気になります。不調の原因はゴルフ場に吹く
風の読みというよりも、どうも自分に吹いてくる風をつかまえられないのでは
ないか?プレッシャーさえも楽しむ“一人称のプレー”ができているだろうか?

 横飛びですからゴルフのことはよくわかりませんが、良いショットも打ちに
ゆくと力が入る。時には風まかせぐらいがいいのかも知れません。春一番で、
飛んでくるのが花粉ばかりかもしれませんが(笑)。

 今日は以上です。

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