« 斜め配置でゆったりと!連休の立ち席乗客に捧ぐ | トップページ | “もっと見える”から母の日を考えて »

2008年5月 3日 (土)

宮大工の人育て 薬師寺東塔をめぐって

 GW後半初日、新幹線自由席200%、ごくろうさまでした。南関東地方も雨から曇り、曇りから晴れになってきました。明日はきっとカラリですね。カラリとすればお出かけ日和。連休に古都めぐりをする人もいるでしょう。

 先日『薬師寺東塔を解体修理へ』というニュースがありました。奈良市の国宝、薬師寺東塔が解体修理で、1898年以来という大事業。ちょうど『宮大工の人育て』という好著を読んでいたので、このニュースが身近に感じられました。

【hmm…なアドバイス94.宮大工の人育て 薬師寺東塔をめぐって】
東塔は高さ33.6メートルの三重塔で、各層に裳階(もこし)と呼ばれる飾り屋根が付く。同寺や奈良県教委によると、風雨などの影響で、塔の中心を貫く心柱(直径0.85メートル)の内部に腐食や亀裂が生じ、礎石の一部も沈下。大地震や強風で倒壊する恐れが出てきたという。
引用元 読売オンライン 

20080501stxke0114010520081f  薬師寺東塔

 東塔は730年に建立、およそ1300年前の建造物。歴史的には1528年の兵火で薬師寺ではこの塔だけが残り他はすべて焼失した。1898年の明治の大修繕では、軸部を残し裳階部分を解体したとされる。

 今回の解体修理のニュースで「早ければ2011年から」とあるのは菊池恭二氏の著書『宮大工の人育て』を参考にすると、まず当時の図面の洗い直し。明治修理ではいくつかの図面が残されていて、その“木割”(お寺によって部材の割当方法が決まっている)を行い新たに図面を起こし、材料調書(必要な材木の種類と数)を作成し、材料の調達、製材、乾燥を行う一方、職人を組織するわけですから、着工までに2〜3年はかかる。

【薬師寺金堂を振り出しに】
 『宮大工の人育て』では頷きたくなる箇所が多々なのですが、まず著者の“ヒト”となりがすごい。「社寺建築を学びたい」という思いを募らせ、遠路はるばる岩手の遠野から奈良まで13時間電車で向かった。すでに始まっていた金堂再建の建築現場にゆき、その足で棟梁の西岡常一氏の自宅に押し掛けて「お願いします、使ってください」と頭を下げた。ちょうどその場に、NHKの取材班がきていて、岩手のその青年の無垢な姿を撮影をした。

残念ながら音声ではなくて、映像だけですが、そこには紛れもなく21歳の私がいました。岩手弁で何か必死でしゃべっているのですが、訛りがひどくて、たぶん何を言っているのかわからないでしょう。棟梁はタバコをふかしながら、ちょっと困ったような顔をしています。
『宮大工の人育て』P110

Nisiok_p 出典 昭和の大棟梁 西岡常一氏 

【図面を深く読む】
 どうすれば図面を“読める”のか?というくだりが同書にある。社寺建築では部材の数は何千、何万にもなり、そのすべてを頭にいれなくては棟梁は原寸図面を引けない。つまり頭の中で図面を立体像として描けることが一人前の大工だという。

「この木が45度の角度でこう上がってきたら、この角でこっちの木とこうやって出合って、こういうふうに組み合わせる」というのが正確にイメージできなければ、仕事になりません。
同書 P123

11034723  薬師寺西塔基礎 出典

 大工の弟子の見習い期間は、その立体像を理屈ではなく、身体記憶として獲得する期間という。この話を部材の組み上げという平面的な理解をしてはダメだと思う。部材加工からその木組み、仕上がりから微調整まで思い描くいうことは、技術を真ん中におきながら、現場の段取りや人の配置まで、すべて頭に描けるという意味である。まさにプロジェクトマネジメントの要諦だと思います。

【土産土法のおしえ】
 社寺建築にもっとも合うのは檜だということですが、西塔建立のときには樹齢2000年の檜はとうに日本にはなかった。どうしたかといえば、台湾の原生林の檜を調達した。今回の東塔でもそれができるのか?結論としてはムリなようです。

ユネスコの世界文化遺産の議論などを通じて「文化財の真正性」(オーセンティシィー)が言われるようになりました。文化財の修復は古材と「同じ樹種」「同じ品質」「同じ技術」で行われるのが望ましいという考え方です。
同書 P152

P4 菊池恭二氏

 オーセンティシィーを日本の言葉でいうと「土産土法(どさんどほう)」。その土地にとれたものをその土地の食べ方で食べる。日本の食料自給率は39%、エネルギー自給率は4%ですが、では住宅建築自給率は何%でしょうか?実態は知りませんが、おそらく20%もゆかないのではないか。おかしなことです。

 社寺建築では小修理と全解体を繰り返して数百年を持たせる。解体修理でも大半の部材をリサイクルする。なにしろ2000年の神様の宿る木ですから、滅多に捨ててはバチがあたる。

【hmm…なアドバイス】
 宮大工の世界が凄いと思うのは、“モノ語り”が延々と伝わること。薬師寺東塔はその建立の730年以来、100年から100数十年に一度、修繕が行われてきた。その都度代々の大工たちがどんな技術を込めていたか、建築を通じて後世の大工に伝わる。

 モノ語りは技量や思想を伝え合う“ヒト語り”でもあり“ワザ語り”でもある。良いモノは伝え合える。それにくらべると現代の「情報共有」とか「ナレッジ」、あまりに軽い言葉でイヤになる。今日は以上です。

|

« 斜め配置でゆったりと!連休の立ち席乗客に捧ぐ | トップページ | “もっと見える”から母の日を考えて »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/158074/20740361

この記事へのトラックバック一覧です: 宮大工の人育て 薬師寺東塔をめぐって:

« 斜め配置でゆったりと!連休の立ち席乗客に捧ぐ | トップページ | “もっと見える”から母の日を考えて »