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2008年5月28日 (水)

江戸の携帯化粧パレットは、女の衣であり素である

 男にとって女の化粧道具は不思議である。あの小ケースには紅や白や茶や漆黒が、なんやかんやと詰まっている。女がぱちんと蓋を開けて、ぽんぽんと馬毛のブラシを当て、さっさっと顔づくろいをする。紅筆を唇にすっくとあてる。瞬間、“おんなの性”が際だつ。見ている男はぽかんとする。そして好きが増す。

 いくら男と女の境目がクロスオーバーしても、男はコンパクトやらパレットは持ちあるかないだろう。だがその精緻な道具、性を際だたせる容器にはとても興味がある。伊勢半本店 紅ミュージアムで開催中の『甦る、江戸時代の化粧道具「板紅」の世界』へ今日(08年5月28日)行ってきた。

【hmm...なアドバイス116.江戸の携帯化粧パレットは、女の衣であり素である】
板紅は、婦女子が大切に慈しんできた、逝きし世の珠玉の化粧道具である。
筆や指で唇に点していた時代の紅は、小さな専用の容器に刷かれて
携行されていたのだった。

引用元 『甦る江戸時代の化粧道具 板紅』冊子 p10 
金沢学院大学教授 山崎達文氏

Chn12_rpt1692_image2ポスタアです。

 創業文政8年(1825年)以来、紅を扱ってきた伊勢半の展示会ですから、基本的には“リップパレット”。明治期以来洋装が主流になって、作られること自体が絶えてしまった“板紅”を、江戸から伝わる伝統技工(漆)で復活させようというプロジェクト。2007年4月から輪島・金沢の漆芸家と“板紅”を復活させようと取り組んできたそうですから、まさに1年ごし。

Chn12_rpt1692_image1 エキサイトより

 その1年ごしのプロジェクト、成果は十分だと思います。こんなに美しい細工モノの展示会、滅多にない。一品一品に長い時間見とれました。漆芸家28名、54点の作品群(といっても販売される商品です)はどれも驚嘆する細微さです。溜め息をたくさん吐きまして、ケースを白くしました(笑)。実際に手に触れたいと思いましたが、それは展示販売会までお預け。ケース越しでも、生で観ることができたのは貴重でした。

【わたしのお気に入り】
 ミュージアムでの写真撮影は不可なので、購入した冊子の写真を撮りました。わたしが気に入ったのは次の3つです。(四つ目は本の表紙)

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 この展示では人気投票もする。わたしは山村慎哉氏作のNO.50『唐草紋卵殻板紅』に一票を投じた。風呂敷みたいな唐草紋様のおもしろさ、庶民性、そして扁平した四角形が気に入った。

 ミュージアムの方から聞きましたが、江戸の女性が懐中に忍ばせた板紅のサイズは、3センチ四方ぐらいのサイズだったそうです。復活させるにあたって、加工性を考えて5センチ四方ぐらいというゆるめの制約で漆芸作家に注文を出したそうです。それほどに小さな物のなので、織物のケースで携帯していた(伊勢半で所有する当時の板紅のサイズはもっと小さい)。

【伝承のワザは複雑かつ長い】 
 お手本は今に遺る江戸の現品しかない。だから漆のプロでさえ、試作は手探りで繰り返し繰り返し行ったそうです。ミュージアムには漆の工程を20に縮めた説明展示がありましたが、実際には100を超える工程だそうです。縮めた展示の工程をメモりました。

木地部材ー組立接着ー木地仕上げー木地固めー紙着せー蒔絵ー蒔絵研ぎ①
蒔絵研ぎ②ー錆付けー錆研ぎー中塗りー中塗り研ぎー置目ー粉蒔①ー粉蒔②
粉固めー塗り込みー研ぎ出しー胴摺りー磨き

 展示会終了後、2008年7月4日〜6日に、15万円〜25万円くらいで販売をする(どれも一品モノ、購入希望が重複する場合は抽選)。間違いなく破格に安いと思ふ。わたしは専門家ではないので価値の云々は言えないが、こんな美彩なパレットを持ち歩いて紅をさす女性には、まっすぐ落ちてしまひます

【パレットは女の衣であり素である。】
 このプロジェクトで“伝える”ことの難しさと貴さを感じた。道具の復活や技法の復活は、よく“伝統技工の伝承”と言われるが、もちろん伝えることほどむつかしいことはない。才能ある弟子をとっても、何年もかかることだから。だが技法はあくまでカタチの伝承にすぎない。江戸のお化粧おハコを作る技工の難易度はもちろん高い。工程の複雑さもすごい。

 わたしの心がツンと立ったのは、時空を超えた女の美への気持ちを、現代の漆芸の作り手はどう想像したのだろうかと思ったときだ。

 女は、自分の美しさへのたゆまざる探求を、毎日使う化粧道具箱に塗りこめている。道具箱は単に紅を運ぶ運搬具ではない。素を際だたせ、色をつくり、おんなの性を際だたせる“希望道具”なのである。これこそ伝承すべき“普遍の顧客ニーズ”である。作り手視点の伝承とは“どう作るか”にすぎないが、使い手視点の伝承とは“時空を超える根源的なニーズ”を、はしょらず、きちんとモノに込めつづけることである。

 この漆芸の作品群は“女の衣であり素”である。時代を超えて使い手の美へのパッションまでぎゅっと詰めた化粧道具だからこそ、わたしはこんなに衝撃を受けたのだろう。

0505_chn12_rpt1692_sakuhin2 準グランプリの波の花

【ささやかなhmm…なアドバイス】

 明日のビジネスメディア誠の連載のテーマの女性アーチスト、才の衣があり女の衣があり、そしてすべての衣を溶かすパッションがある。ご期待ください。今日は以上です。

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