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2008年6月 5日 (木)

私のマーケティング物語

 今日はビジネスメディア誠で連載する“うふふ”マーケティングへのリードです。

私のマーケティング物語
もし「ライダーブーツを作れ」と命じられたとしたら、あなたはまず何から
始めるだろうか。ライダーにヒアリングする? 競合メーカーのブーツを分解する? 
それも1つの方法ではあるが、しかし本当のマーケティングではない
——筆者はそう思うのだ。
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 今日も雨。レイニーシーズンで雨用品がネットにも増えてきた。ふと『スパイラルオンラインストア』で見つけた長靴、『KISSA SPORTS 長靴』が今回のエッセイの入り口でした。今年は梅雨入りが早いせいか、街で長靴を履く女性も多く見かけます。もちろんいわゆるゴム長ではない。シックな色、絞り込んだシルエット、飾りや柄。おしゃれな長靴が多い。その原点にはシューズデザイナーの高田喜佐さんの想いがある。それがきっかけです。

0510_kissa_gomunaga  
 喜佐さんの絵。『ELLE JAPON』 1993年11月20日号より。

【靴は何足お持ちですか?】
 都会で働く女性はかなりの靴持ちで「何足お持ちですか?」「さぁいくつあったかしら」と答える人が多い。いろいろあわせると30足を下らない人ばかり。TPOでの違いはもちろん、色やかたち、ヒールの高低、思い入れの深さ浅さ、“立ちやすさ”などでその日の靴を選ぶのでしょう。

 選ぶのは楽しいことでもありますが、日々大変でしょう。それにくらべれば男の所有靴は(たいてい)少ない。男は靴を何足持つのか?いや持つべきなのか。高田さんは著書にこう書いています。

 男の靴は道具だと思う。
 はき心地と機能性を第一に選んでほしい。

 男の靴は、丈夫で長持ちしてほしい。
 しっかりとした作り、実用的な靴であってほしい。
 流行に左右されてほしくない。色やデザインで選んでほしくない。
 本物のトラディショナルな良い靴をはいてほしい。
 最低必要な、基本の靴だけあれば良い。ローファーとスニーカーと、
 プレントウの紐じめと、ワークブーツと、この四足があれば良い。
 そしてよく磨き、修理に出し、何年も何年もはいてほしい。

 『私の靴物語

 実用的な靴4足。そのチョイスは、よく練られています。

 プレントウはフォーマルと都会の仕事、スーツからチノパンツまでOK。
 ローファーは仕事からプライベートの架け橋、スーツもジーンズもOK。
 スニーカーは都会も運動も、そして海辺のデッキまで万能なシューズ。
 ワークブーツは野や山を歩くだけでなく、自然を愛するという態度表明。

 わたしの靴箱にプレントウあり、ローファーなし(ローファーやタッセル、デッキシューズ型が好きではないので)、スニーカーあり、ワークブーツあり。四半世紀以上前に買ってまだまだ履けるクラークス(英国)のワラビーとデザートブーツがど〜んとある。

 喜佐さんはワークブーツについて、“男は自然と向き合う仕事もするべきだ”という意見を書いている。実はわたし、ほとんど履いていないティンバーランドのごっついワークブーツも持っています。米国のアウトレットでお買い得品を衝動買いしました。この靴を日常的に履ける仕事がしたいなと思うときが(たびたび)あります。いまだにその夢が果たせません。

 ワークブーツ、箱の中で鬱屈して、まさかカビていないだろうな?後でチェックしないと(笑)。今回のエッセイで喜佐さんにちょっと押されました。

【シンプル】

 男の靴は丈夫で実用的、機能が必要と語るウラには、石岡瑛子さんの婦人靴店のポスターの仕事の依頼というエピソードが影響している(『靴を探しに』)。与えられたテーマは“シンプルなハイヒール”のデザイン。ポスター案を何十枚書いてもダメ出しをされた。それまでのデザイン=装飾という想いを吹っ飛ばされた。シンプルじゃないとダメ出しをされた。

 シンプルってどんな意味なのだろう?ようやくそれが“機能性”につながっていることに気づいた。靴とは機能商品である。それに気づいて、“シンプル=機能性”を満足させつつ“遊び心のデザイン”というオリジナリティを持つことができたのではないか。これは1973年、彼女がデザイナーとしてブレイクする“滑走路上”にあったエピソードである。

 世に、飾り=デザインで終わっている商品は多い。でも機能ばかり重視の商品開発から入っても、シンプルの本意をつかむことはむつかしい。オリジナリティへの旅にでる、という意識がないとダメなのだろう。

【いさぎよさ】
 喜佐さんは1989年、靴デザイナーとして約20年以上走り続けたあと、会社を大きくすべきか、ほどほどにすべきか悩まれた。いくら個性化の時代で彼女の小ロット生産の靴が受け入れられるようになったとはいえ、KISSAというブランドは大きくもなく小さくもなく、ポジションとして微妙だった。今のようにロングテールでレアモノが売れる時代ではなかった。『卑弥呼』のように独自ブランドを維持しつつ拡大の道をたどるか、自分のテイストが薄まらない範囲で事業を継続するか、どちらかの道を迫られた。

 喜佐さんは後者を取った。そう決断して晴れた日曜日にひとりで会社に出て、ショールームに並ぶ靴を眺めていた。ほんとうに自分の履きたい靴、好きな靴はどれだろう?と。

 選んだのはローファーと紐靴、シンプルな中ヒールのパンプス、裸足のようなサンダル、そしてズック靴だった。男よりも数は1足だけ多いだけで、素足に近いチョイス。この5足の好きな靴でゆっくり靴づくりをしようという決断をして会社を小さくした。

 流されずベーシックで気持ちのよい靴だけを選んだ、喜佐さんのいさぎよい生き様がいい。今日は以上です。

Pict0044 喜佐さんの乗馬靴

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