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2008年10月29日 (水)

SAKURAの春【10】胸をひらく 3/4

 ブリスベンのダウンタウンの日本料理店『SAKURA』に漂着したふたりの若い日本人、コバヤシと後藤。SAKURA2号店をめぐり、失意と熱意と成長を描く“マーケティング・エンターテイメント物語”。その10回目です。

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 日本人とオージー、異国フードと自国フード。この4つの切口で4つのタイプに分かれる。これである程度は整理ができそうだ。
 

Sakura01_2  

だが残るマスの意味をうまく片付けられない。対角の“オージー・自国フード”のお客さんは分厚くて大味なオージー・ビーフを食べるオージーだろうか?だとすればSAKURA2号店のお客さんではない。もうひとつの対角のマス、“日本人・異国フード”は、オージー・ビーフを日本に売り込むニッポンの商社マンだろうか?やっぱりSAKURAのお客ではない。

 どうもこのあたりがよくわからない。表分析とはむつかしいなと呟いたとき、店の表の入口ドアをコツコツと叩く音がきこえた。顔を上げると後藤がガラス越しにのぞいていた。

 「帰ろうとしたら、まだコバヤシさんがいるのを見たんで」
 
 後藤も今日はもやもやしているのだろう。そのまま帰れなかったのだ。後藤はテーブルの椅子をさかさまに向けて、背もたれに腕をのせて座った。わたしはテーブルの紙エプロンの分類作業を見せた。“オージー・異国フード”がねらうべきターゲットだよなと言いつつ。

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 「どこをねらうかと言えばそうかも知れないけれど」後藤は肩をすぼめた。「よくわからないのは、このマスには何を入れたいんですか、コバヤシさんは」
 「う〜ん。つまらない商学の課程の教科書本で読んだんだけど、ほらいわゆるターゲットさ。標的顧客。でいいんだよな?」
 後藤は無言でボールペンをとりあげて、コツコツとテーブルをたたいた。「お客さまってターゲットなんだ」ボールペンをダーツの矢のように持ってなげる真似をした。
 「あまり良い表現じゃないな」わたしは頭をかいた。
 「堀田店長は」後藤はことばを切った。「“日本食を伝道する”とか“優れた味は普遍的である”とか」
 「そうだ」
 「もしそうだとすれば、この4つのマスは“日本料理をどう食べたいか?” “どう食べてもらいたいか”、そんな意味を入れるんじゃないかな」
 後藤はマスのヨコ軸に文字を書きたした。「このヨコにくるのは、“異国フードとしての日本料理”をどう食べたいか、“自国フードとしての日本料理”をどう食べたいか、そうなるんじゃないかな?」
 わたしは言われるままに、図にふたつのことば、“としての日本料理”を書き足した。

Sakura02

「そうか、わかった。異国フードとしての日本料理を楽しむオージーは、日本食の初心者だ。日本食を体験したいんだ」わたしは表のマスに“初心者”と“体験”と書いた。
 「日本に興味を持つオージーでも、わさびが苦手とか納豆が食べられない、そんな人だ」後藤が加勢した。
 「彼らはヘルシーなジャパニーズフードを食べたいと思うけれど、日本料理店に入りにくいのかもしれないな」
 後藤はうなずいてわたしからペンを取り上げた。「じゃあこっちのマスは」“自国フードとしての日本料理”と“日本人”のマスにボールペンを走らせた「“ベテラン”だね。ようするに味にうるさい日本人だ」
 「“味にうるさい”と書いておこう」わたしがそう言うと、後藤はそのマスに“ベテラン”で“味にうるさい”と書き足した。

Sakura03

 初心者の異国フードを楽しみたいオージーはそこそこ来ているけれど、リピートしてくれていない。ぽつぽつとやってきて定着してくれない。だからランチは閑古鳥だ。

 一方で“味にうるさい”日本人の“日本食のベテラン”を唸らせる料理は出していないから、やって来ない。やっぱりKOTOやSAKURA本店に行くのだろう。だからディナーも閑古鳥だ。現地のマズい甘いビーフボウル店や日本ラーメン店のように安くないので、安けりゃいい日本人ワーホリも来ていないのが、救いなのか災いなのか。

 この図でわかったこと。SAKURA2号店は、初めて日本食を体験するニーズも、日本の味に満足するニーズも、まだどちらも満たしていない。それから“ターゲット/標的”を単純に描くのではなく、どんなタイプのお客さんなのか、そのお客さんのレベルはどこにあるのか。それを整理すべきなのだ。

 でも対角線上に残された2つのマスはまだ空白だった。“日本人・異国フードとしての日本料理”、“オージー・自国フードとしての日本料理”。どちらも何が入るかわからない。この表はまだ変なのだろうか。
 

Vegemiteontoast_large 引用元 

 「日本食じゃあないけど」後藤は鼻をつまんだ。「こんな顔してベジマイトを食べることかな」
 わたしは彼の歪んだ顔につられて笑った。ベジマイトとはオーストラリアンが好むパンのスプレッド。人によれば“ドリアン”ともいうべき匂いがあるからだ。

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SAKURAの春、10月に10回の掲載をしました。10回分、まとめてこちらに掲載をしました

 新事業のインタビューのまとめで、あいかわらず“脳内膨張”が続いています。その他のコンテンツでも、明後日くらいからCherryさんと制作合戦が始ます。いつブログが途切れるか予断なき状況。がんばり通せれば、SAKURA2号店の物語と新事業の同時進行ドキュメントを。ではまた明日。

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