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2008年10月15日 (水)

SAKURAの春【6】KOTO 2/3

 ブリスベンのダウンタウンの日本料理店『SAKURA』に漂着したふたりの若い日本人、コバヤシと後藤。その失意と熱意と成長を描く“マーケティング・エンターテイメント物語”。“リライト掲載”の6回目です。

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わたしはお吸い物をすすり、日本的な味に舌を巻いた。SAKURAで出す日本料理は“日本的”ではあってもこの味は出せていない。 

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「いかがですか、お吸い物は?」店長が訊いた。
 「すっごくいい味が出ています」後藤がすすりながら言う。
 「KOTOは日本の調味料の伝道師でありたいと思っています。もともと出汁や調味料が主力の日本企業の子会社が開いているものですから、こだわりはあります」
 堀田は日本人なら誰もが知っている調味料製造の大企業の名前を挙げた。その企業がKOTOを出店しているのは聞いていた。

 「ですから事業の展開は、お分かりいただけると思いますが、最終的には自社の商品の拡販です。しかし目先の販売増のために出店しているためではありません。レストラン・チェーン展開が本業でもありません」
 「チェーン店を買収しても仕方ないですよね」わたしはサクっとした海老天ぷらに塩をつけて頬張った。塩にもこだわりがある。
 「私たちは、きちんとした日本料理のシーンを海外に普及させたいのです」
 後藤もむしゃむしゃしつつ言う。「ここいらには、みょうちきりんな日本食も多いですからね」
 「甘〜いビーフボウル、うどんに刺身を載せる海鮮うどん丼、照り焼きチキンのお重・・・」 堀田がそういうと、三人で笑った。「あれは日本食じゃない」

 「ですがいまだにあれが日本食だと思っている人もいます。日本食を知らない海外の人を甘くみています。日本人ターゲットでも同じです。普段日本食を食べつけない現地日本人に“日本食ぽくあれば懐かしむ”と手抜きをする」
 わたしはブリスベンのスーパー『ウールワース』でときどき買うインスタントラーメンを思った。安くてスパイシーな即席麺。あれさえあればいい、と思うことがあるのを恥じた。
 「日本食が正確に伝わらないと、本格的な調味料を製造するわれわれの会社には阻害要因になります。KOTOのねらいのひとつは、日本食を伝道することです。高級イメージの日本食レストランにやって来る現地のお客さまは、さまざまな分野のリーダークラスの方々です。彼らから正しく日本食を広める、彼らのステータスにあった格の店舗をつくる。それに相応した味とメニュー、味、サービスを提供する。これがひとつのねらいです」

 「もうひとつは逆に、現地の食スタイルと融合させた日本食スタイルを創造することです。現地のお客さまがどういう食べ方で日本食を食べると幸せなのか、日本食の何が好まれ、何が好まれないか、どんな香りが好まれ、どんな食感が好まれるのか。現実にお顔を拝見しながらデータを蓄積しているわけです。常連のお客様にはメニューや飲みものについて、お話を伺う場ももうけます。むしろこっちがメインになります」
 「現地リサーチですか?」わたしは訊いた。
 「リサーチというより、“お客さまの笑顔を感じ取る”んです。和食・洋食・中華を問わず、美味しいものは美味しいでしょう?」
 後藤が頬張りつつうなずいた。「天ぷら、ほんとに美味しかった」
 「それはよかった。優れた味は普遍的なもの。グローバルに通用する。日本食を知ってもらうこと、その調味料を知ってもらうこと、その調味料を現地の人にも親しみやすいものにして共通語にしたいわけです」

 堀田は続けた。「“お客さんの近いところで商売を考えなさい” これは当社の社長の口ぐせです。商売はお客さんの表情がすべてだ、と。お店に来て頂くお客さまだけでなく、取引先の社員もその家族も大切にしろ、日本食を敬遠するお客さまも大切にしろ、そういう方々の心を知りなさい、表情のくもりを読み取りなさい。そこに殻を破るヒントがあると。そのために出店していると言ってもいいでしょう」

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引用元 

 二人が食事を済ましたぴたりのタイミングで、日本人ウェイトレスがお茶を運んできた。お茶碗を茶托に載せて丁寧に供すると下がった。わたしはお茶をひと口すすり、熱すぎもなく温すぎもない頃合いに感心した。

 「恵子さん、ちょっといいですか?」堀田は立ち去ろうとした女性に声をかけた。恵子と呼ばれたウェイトレスは微笑んでうなずいて、膝を折って低い姿勢になった。「こちらはコバヤシさんと後藤さん。SAKURA2号店から偵察に来られたんだ」
 わたしたちは顔を赤らめ、恵子はぷっと吹き出した。
 「冗談です。恵子さん、あなたのことをお二人に話してあげてください。同じワーキング・ホリデー仲間でもありますよね」

 恵子はわたしと後藤を代わる代わる見て語りだした。
 「私はつい3ヶ月前まで日本の会社でOLをしていました。料理が趣味でずっと料理教室に通い、日本酒のソムリエの勉強もしました。そのうちにどうしてもフードビジネスに関わりたいと思いがつのりました。その時、こちらの会社で現地従業員の募集広告を拝見しました」
 「日本で雇われてこっちに来たの?」わたしは興味をそそられた。
    

                      
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 立ち上げる“クリエイター事業”で、わたしと同じくオーストラリアのワーホリ体験者がクリエイターさんにいらした。いずれ根掘り葉掘り、どんな冒険だったのか聴いてみたい。そのクリエイター支援事業の拠点オフィス、だんだんとカタチが出来つつあります。その準備段階をチラ見せをして、今日は以上です。

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ちっちゃいけれど心地良いオフィス。遊びに来てください。

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