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2008年10月28日 (火)

SAKURAの春【9】胸をひらく 2/4

 ブリスベンのダウンタウンの日本料理店『SAKURA』に漂着したふたりの若い日本人、コバヤシと後藤。SAKURA2号店をめぐり、失意と熱意と成長を描く“マーケティング・エンターテイメント物語”。9回目です。

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 昼と夜には物理的に境目がある。平均台のようなその狭い幅の道をふらふらと歩む、時間の帯がある。右手はまだほんのりと明るい。左手は暗い。どっちつかずだ。占いが当たったのだろうか、みるみる空が暗くなってきた。遠鳴が聞こえる。わたしは厨房から出て、黒い空が走って来るのを見た。すぐに雨が降り出した。熱帯特有のスコールだ。

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 雨だけの理由ではないだろうが、その夜もお客はまばらだった。ぼんやりとお客さんの様子を見た。オーストラリアン同士のカップル。始めて見るお客さん。そしてときどき来る日本人駐在員のグループ、日本人家族連れ、中国人らしきふたり・・・。ジ・エンド。今日も全テーブルが一度も埋まらずに終わりだ。

 来るお客さまは、スコールのように一気にやって来ず、中身も“ばらばら”だった。法則が見えない。オーストラリアンの注文は、すき焼きセットに、刺身の盛りあわせという、珍妙な注文だった。そんな注文がやってくるのは、ウェイトレスのせいもあるのではないか。何のために彼らがSAKURA2号店にやってくる。理由はそれぞれ違うような気もする。きっと空いているから来るんだろう。はっきりとはわからない。

 「お客さんを観察しただけじゃ、わからないな」後ろから後藤が声をかけた。「やっぱりジカに聞いてみないと」
 「だけどせっかく食事しているときに“アンケートをお願いします”てのも変だし」
 「日本でもよく『ご意見お願いします』って紙が置いてありますよね。あれはよっぽどアタマにきたときしか書かない。こんなサービスしやがって!店長出て来い!て」
 「そう言って出て来た店長が、あの拳のやたら強い空手バカだとしたら?」
 ふたりで空しく笑いあった。

 われわれもぼんやりしているが、台湾人のウェイトレスの麗朱も、やはりぼんやりと立っていた。ついKOTOのウェイトレス恵子を思い出して、その差を嘆いた。だが彼女のせいではない。手持ちぶさたも仕方ないのだ。

 
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 店を閉めて、客席の灯りを落とした。さっき後藤も帰った。ひとりきりだ。厨房から漏れる灯りを頼りに、客席のテーブルに座った。すき焼きをするときにお客さんに渡す紙性のエプロンを一枚取り出し、テーブルに広げた。ボールペンを持ちながら、何かを考えようと思った。窓からの月明かりも手元を照らしてくれていた。わたしは堀田店長が話したことを思い出した。

 “お客さんがどんな人たちか。どんな注文をしているか。なぜ彼らが来るのか。なぜ来てほしい人が来ていないのか。この順序です”

 いったい、どんなお客さまが来ているのだろう?大まかに言えば、オーストラリア人か、その他だ。チャイニーズもいるけれど、その大半が日本人なので、白人のオージーか日本人か、そのどちらかだ。大くくりにするとそんなところだ。次は彼らがどんな注文をしているか。日本人から見るとナンセンスな注文か、納得できる注文のどちらかだと思った。日本人は日本食を知っているし、オージーは余り知らない。当たりまえじゃないか。わたしは頭を振った。

 もう一度やりなおそう。分ける切り口は“オージー”か“日本人”か。これは事実だから、とりあえずいい。彼らはどんな注文をするのか。日本食初めてのお客はへんてこな注文、慣れたお客は理にかなった注文。当たりまえだ。堀田店長の“どんな注文”とはどういう意味なのだろう?

 考えかたを変えてみよう。SAKURA2号店が提供するのは日本料理だ。日本料理がなぜへんてこになったり、理にかなったりするのだろうか?わたしはう〜んと伸びをして両手を伸ばした。視界のはしっこに、料理をホールに出すカウンターが入ってきた。その上に“ダルマ”があった。SAKURA本店からひとつ持って来たものだ。

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 ダルマ・・・手も足も出ない。それは事実だが、異国の人にはとてもへんてこなモノだろうな。

 と思ったとき、ひらめいた。日本料理というのは、ダルマを見て“わかる”か“わからない”か、自分の国の文化と異なる感じがあるかどうかなのだ。“異国のフード”か、“自国のフード”か。そのどちらか。それを図に書いてみた。

 最初の分類は“オージー”か“日本人”。これはこれでいい。ヨコは“異国フード”と“自国フード”。つまり“どんな注文をしているか”で整理ができないだろうか?

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 「オージー・異国フード」のお客さんは日本食好きで、日本に行ったことがあるかもしれない。日本食のヘルシー・ダイエットな良さに惹かれることもある。きっと日本文化にも興味があるだろう。次に「日本人・自国フード」は、どうしても日本食しか受け付けられない人や、現地食に飽きてたまには日本食を食べたい人。現地日系企業の駐在員とその家族、日本人だ。

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 SAKURA2号店の物語、ご読了ありがとうございます。

 まだ2ヶ月くらい前の勤め先を“古巣”といふのは変ですけれど、わたしと相棒Cherryさんの元同僚の方々が3名(rayさん、yukaさん、サトさん)、新事業の新オフィスに来ていただきました!ありがとう。

Pict1089  おみやげムシャムシャ。

 お菓子まで持って来てもらって。実は直前までCherryさんとふたりで、オフィスの巣作り(棚上げしていた棚づくり)を一気にヘコヘコしていて、実に体力消耗して、実に飢えていました。それでむしゃむしゃ(笑)。ありがとふ!今日は以上です。

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コメント

Yukaさん、コメントありがとふ。

返信が遅れてすみません。えと、想像できぬ
ほどの苦労はありません(笑)。

というか、Cherryさんから、
「ごうさん、眉間に皺寄ってます!」みたいに
怒られて(笑)。

温かくて、ゆったりできて、のほほんで、
笑いが多くて、寝る時は寝て(オフィスでも)、
でもしっかり&きちんとした関係を、
内部でも外部でも広げたい。

ちょくちょく遊びに来てください!
いついらしてもかまいませんが、
お見えになる、
ちょい前にメールを頂けると助かります。
(Cherryさんsaid)。

投稿: 郷/marketing-一服 | 2008年11月 1日 (土) 19時17分

ごーさん、さくらこさん(←ここで言うのも変ですね)

昨日はお忙しいのにお邪魔させて頂いてありがとうございました♪
こだわりがあるのにすっぽりはまって居心地のいいオフィスでしたので、つい長居してしまいました~~。

お二人とも、(私には想像も及ばない程の大きな不安や苦労があるとは思いますが、)何かから解放されたような爽やかさがあり、見ているこちらの心がウキウキしてきました。

みなさんハッピーにすごしましょうね♪♪

投稿: 元同僚YUKA | 2008年10月29日 (水) 16時58分

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