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2009年1月 1日 (木)

ウォーター・ビジネス/モード・バーロウ

 年末に編集者で旧友の内田さんから送られてきた2冊の本。“金融恐慌”のことも“株式の千載一隅のチャンス”のことも書いていないが、読み出してどちらも年末年始にふさわしい本かなと思った。

3  『ウォーター・ビジネス』 作品社

 執筆者Maude Barlowさんはカナダの評論家でありアクティヴィスト。『「水」戦争の世紀』(集英社新書)の翻訳もある彼女の最新刊。人のからだの60%は水。人が生きる上で欠かせないのが水。『ウォーター・ビジネス』から次の時代の動きがいくつか見えてきた。

【hmm・・・なアドバイス287.ウォーター・ビジネス/モード・バーロウ】
人は飲用や料理、衛生用などで毎日およそ50リットルを必要としている。北米の
人びとは、水を毎日平均で600ℓ近く使用している。アフリカでは、その量は平均
で6リットルである。北側の国々の新生児は、南側の国々の新生児の40〜70倍の
水量を消費している。
(同書 P23)

St330002  本書より。

南北問題とは“水の問題”でもある。著者は「失われる淡水」「汚染される表層水」「枯渇する地下水」そして「干上がる地球」という事実をあげつつ、“水に関することのわれわれの見方”を次々に覆してゆく。

【大きなダムは大きな温室効果ガスを、淡水化は有毒な塩水も放出する】
 見方を覆す事例を挙げよう。「大きなダムは大量の温暖化ガスを排出することで、淡水資源にとってもっても深刻な脅威の一つである地球温暖化を促進する」(P43)。水力発電ダムが、同量のエネルギーを生産する天然ガス工場よりも、はるかに多くの温室効果ガスを排出するという推測である。

 また海水の淡水化とは、海水から塩分を除去し飲用可能水をつくる技術で。シンガポールやアラブ諸国など、水不足に悩む国には福音の技術であり、わたしたち一般の人は“日本の膜技術が他国の水のためになっていいね”と思う。だが淡水化技術はとても高価で富裕な国以外は投資できない。淡水化に伴って温室効果ガスの排出量も増加し、さらに淡水化プラントから海中に排出されるのは、海洋の生態系を破壊する“有毒な高濃度塩水”だという。

 公共事業の民営化も良いことばかりではない。水道の民営化(企業による運営)が高料金や独占につながることを指摘するくだりでは、公共事業とは何なのだろうか?と考えさせられた。

【企業がリサイクルした水の所有権は誰にあるのか?】
 「ボトルウォーター産業は、地球環境をもっとも汚染している産業の一つでありながら、もっとも規制が行われていない産業の一つでもある」(P141)

 水を販売するPET容器。原油やフタル酢酸からつくられ、生産地から国境を越えて遠く輸出され、その過程でたっぷりCO2を発生させる。う〜ん、そのとおりですね。われわれはその1ℓ300円もする“高価な水”を何気なく飲んでいる。ウチはけっこう安いのを買いますが(そういう問題ではなさそうですが)。

 せめてボトルウォーターをなるべく買わないようにしよう。これは実践しています。でも、政府が水資源保護に本腰を入れるなら、“フードマイレッジ”だけでなく“ウォーターマイレッジ指標”もつくるべきだとを思った。

4

日本海学の『世界各国の人口とひとり当たり水消費量』のグラフをみると、米国、カナダ、イタリア、そして日本は第4位である。少ないとはいえない。日本は全国で834億立方メートル(国土交通省より)。

【水は戦略資源でもある】
 中国のチベット統治のねらいが実は“水にある”というのも卓見。10億人が生きるための水資源を確保するため、国境の外部から水資源を確保しようと動いている。それがチベット。チベットからは10の水源で毎年6000億立方メートルの淡水がアジア諸国(中国、インド、ネパール、パキスタン、バングラディッシュ、ベトナムなど)に流れている。だからこそ中国はチベットを虎視眈々とねらっているというのだ。

2  彼女は語り部だ。youtube 

ウォーターファンドのくだりも興味深い。今の市場下落では04年頃相当の運用成績を残していたようだが、今どきはどれも元本3〜4割減がフツーだ。長期的にみると原油よりも水という声も大きいそうだ。

【hmm・・・なアドバイス】
 本書の網羅性は、水の政治とビジネスを考えたい人には好適である。内田さんはずっとグローバリゼーションをテーマに本を出してきた。グローバリゼーションの問題とは、政治や経済の駆け引きだけではなく、資源・消費・労働・環境・知識・差別・戦争・革命と間口は広い。彼の出版意欲の源泉はジャンルを横断することだと思い当たった。

 また“ビジネス論理”と“公共使命”のバランスが、今こそ重要課題だ。大不況下で、公共投資型政府志向が強まる中、論点にすべきである。理想的には、“パブリックサーバント”はもっと大きな視点をもって、“アースサーバント/the earth servant”、地球に仕えるという視点を持つべきだ。正月ぽい大きな締めくくりだ(自画自賛_笑)。今日は以上です。

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