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2009年1月 7日 (水)

SAKURAの春【18】all you can eat Japan 2/7

 オーストラリア ブリスベンのダウンタウンの日本料理店『SAKURA』に漂着したふたりの若い日本人、コバヤシと後藤。SAKURA2号店をめぐって失意と熱意と成長を描く“マーケティング・エンターテイメント”。昨日の【17】に続いて18回目です。16回目までの全文掲載はこちら

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 ミセスTは鼻歌を歌いながら、冷蔵庫をパタンパタンと開けては閉め、次々に材料をとりだしていった。皮肉なことばは気に障るが、彼女は異国の地での日本女性少なさゆえの“おまけ”はなく、かなりの美人である。格闘家が美人好みなのか、美人が格闘家を好きになるのか。戦いを挑む男を好む女には美人が多い。格闘と美は、惹き合うのが世の常なのか。美醜の組み合わせが生まれるのは、強いことも勝利、美しいことも勝利という、格闘家特有の優越意識が響き合うからだろうか。

 調理着に包まれたミセスT。長い黒髪と色白の肌のコントラスト。キリっと仕立て上げた眉と切れ長の眼の位置どりの絶妙さ。長過ぎず高過ぎずの鼻梁、締まった鼻翼は上品な味わいがあり、紅い唇はいや応なく色白さを目立たせている。中年にさしかかりつつも、多くの女性の中でいぜん勝ち上がる美しさがある。そんな女性が日本から遠く離れた南半球の調理場で、なぜ働いているのだろうか。生活には苦労をしていないとはいえ、空手道場経営が傾いて、海外の地での“名士夫人”としてのステータスにも狂いが生じたはずだ。その運命を楽しんでいるのか、あるいは悲しんでいるのか。美しい仮面の下をのぞいてみたいと思った。

 「そういえばコバヤシさん」彼女は冷凍庫から魚の切り身を出しながら声をかけた。
 「何でしょうか」
 「Tは売上がもどらなかったら殴るって言ったそうだけど」冷凍食材を解凍するためにラップをパリパリと開けた。「なんであなたは逃げないの?」
 「さあ、なぜでしょうか」ストレートな問いにはあいまいに答えるしかないのだ。
 「さっと逃げちゃえばいいのに。でもつかまったらこんな切り身になっちゃうわよねぇ」魚の切り身をつかんでコツコツとテーブルを叩いた。「期待しているわ。コバヤシさんの切り身なんて、ちっとも美味しくなそうだし」
 彼女はそう言うとケラケラと笑いながら、また冷凍庫の扉をパタンパタンと開けて食材探しにかかった。わたしはうつむいて、研ぎ水の中の米を手のひらで一度握りしめた。

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引用元 

 「バラマンディ、幾つあるかしら」ステンレスのテーブルに並べたのは、ラップした切り身の食材のバラマンディだった。オーストラリアの北岸で穫れる、大きなものは2mにも達する白身魚だ。亜熱帯の海で棲息するこの魚、日本人も満足する繊細な味である。オーブンでローストして焼き魚の一品がメニューのひとつだ。疑似的な日本料理としては文句がない。
 「25枚か。ちょっと足りないけど、大きめの切り身を分けちゃいましょうね。ほうれん草とレモンのソースでいいわね」
 わたしは野菜庫にかけつけて、ほうれん草とレモンを数えた。どちらも計画どおりの量があるようだ。

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引用元 

 わたしは魚のロースト、寿司ネタと刺身の仕込み、それが終わったら味噌汁の具材にとかかった。ミセスTはサラダ、茶碗蒸しと味噌汁とそして、ふたりでコンビネーションよく仕込みが続いた。ことばが少ないが動きがある厨房。至福の時間だった。

          
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 「コバヤシよ、腕がナマっていただろう。ちょうどいいトレーニングになったよな」

 ピクリとして振り向くと、いつのまにかMr.Tがいた。背後をつかれた。口元には笑みをただよわせているが、例によって目は笑っていない。近づきざまに肩をぽんと叩かれた。痛かった。彼なりの感謝の表現ではあるのだろう。

 「だんだん寿司らしいカタチをつくれるようになったじゃないか。上等、上等」

 Mr.Tはわたしがつくった寿司を、頭をかしげて側面からもチェックした。まったく嫌らしいレストラン・ファイターだ。

 そろそろケータリング搬入の準備にかからないとならない。準備ができた料理にラップを二重三重にかけた。茶碗蒸しは番重(ばんじゅう=料理を運搬する容器)に入れた。取り皿や箸、ナイフとフォーク、カセットコンロなどはすでにMr.Tが会場に運んでいた。あとは料理を運べばいい。(続く)

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 Holden Commodore 引用元 

       
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 絵だけ載せて説明無しでした。Holdenとはオーストラリア唯一の自動車メーカーです。
GMのノックダウンの車に乗ったことがありますが、シュアなハンドリングだったなと記憶しています。

 さて相棒cherryさんに(こっぴどく?)怒られますが、今日はutteのオフィスで仕事してました。怒られる理由は“休日出勤”。utteは7日までお休みなんです。でも3足のワラジをつっかけるわたしは(=コンサルタント+モノ書き+準(純?)起業家)、すんなり休めなくて。ごめんなさい。

 今朝からビジネスメディア誠の原稿を入稿、utteのクリエイター登録準備、で早々と帰ろうと思えば、新しく登録していただくクリエイターさんから連絡が入り、サイト原稿調整&連絡文書づくり。明日来るまでcherryさん、“地ならし”しておきやしたぜ(笑)。今日は以上です。

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コメント

Yukaさん、コメントありがとう!
ちょっと屈折した想いの中で清涼剤の
コメントでした。ありがとう。
SAKURAの春は
わたしのライフワークのひとつだし、
独自料理だし(笑)、自分表現のオアシス。
自分を表現する場を持つことがどんなに
たいせつか、ストレスを感じるときに
身にしみます。

うんと、Cherryさんから生春巻きと
タイスキというメニュー案がでてきました。
これをutteで調理しつつ楽しもう!

投稿: 郷/marketing-屈折者 | 2009年1月 8日 (木) 22時37分

今日が仕事初めでしたか。
今年もご健闘をお祈り申し上げます♪♪

鍋パーティやりたく、オフィスにまたまた押しかけたいので、来週~1月末あたりでご都合の良い日程、お教えくださいm(^^)m

SAKURAの春、以前のバージョンよりお料理の描写が詳細になってますか?Cherryさんの監修でしょうか(笑

投稿: YUKA | 2009年1月 8日 (木) 10時28分

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