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2009年4月 1日 (水)

utteの仕事の本質は“額装”である 1/3

  「美術館は芸術作品の墓場だ」(ドイツの哲学者アドルノ)

 音楽評論家、作曲家でもあった哲学者アドルノ(1903―1969)のことば。これは小笠原尚司氏の好著『額縁への視線 額装というデザイン』にある。同感です。美術館にいるアート作品、見物・研究・興味・教養など、衆目の容赦ない視線を浴びてかわいそうだ。

 これってどこかゴルフのマスターズに17歳でチャレンジする石川遼選手の今の境遇に似ている。ギャラリーの衆目にさらされる絵画、(マスメディアや)ギャラリーに囲まれるゴルフ選手。同じですね。彼の受けているプレッシャーはでっかい。のっけから余談でした。

【hmm…なアドバイス357.utteの仕事の本質は“額装”である 1/3】
 今回のテーマ(utte*の仕事の本質)は3日連続で書きます。この本を読み、あるワークショップに参加し、日経のPrivの記事に共感しました。そのことを3回に分けて書きます。ちなみに明日のビジネスメディア誠のエッセイのテーマは“フォトを活かすワークショップ”です。ぜひご一読をば。
utteとは相棒cherryさん、noirさんとわたしが主体的に関わるアート&デザイン作品販売事業。

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 著者の小笠原さんも“墓場”ということばに同感され「そこは美術を鑑賞するための場所というよりも、埋葬する場所のように感じられてならなかったものです。」と書いています。暮らしの中で使われず、資料保存館にうやうやしく保存される=埋葬というイメージです。もっと暮らしの中で美術を楽しんでほしい、それがこの本の一貫したメッセ—ジ。

【額と額装のちがい】
 「額」と「額装」の違いを明らかにしよう。小笠原さんの定義では、額装とは『額による空間デザイン』と言っています。ヨーロッパの著名美術館での展示を観て、額と壁面の調和、絵画への柔らかい光、すべてを心地よく受けとめる絵画作品。額、壁、空間、そのトータルな環境づくりこそ額装であると言っています。

 つまり絵画があり、額があり、その外側全体に額装がある。

 わたしなりの解釈ですが、額とは、作品から発せられる“テーマやモチーフ”を際立たせる裏方でもあり親方でもある。一方額装とは、作品(額付きもよし、額無しもよし)のもつ価値をべースに、所有者のライフスタイルをリ・クリエイション(再創造)するもの

 このあたりのことを、著者はフランスと日本をくらべています。

【額をめぐる文化性】
パリの額縁店で額をオーダーで注文すると、その場で長いモールディングと呼ばれる竿を切り落とし、あっという間に四角に組んだかと思うと、サランラップのようなビニールにぐるぐるくる、はいどうぞと無造作に渡されます」(同書)

 パンの“バケット”を買うときと一緒ですね。くるっと紙を回しておわり。フランス人のアートと生活の密着度を感じさせるエピソードです。一方日本の美術販売、額をしっかりと“箱にいれて傷がつかないように引き渡す”のが額売り。良し悪しは別にして、その差異を著者が嘆かれているのを痛いほど感じます。

絵をうやうやしく壁に陳列する文化=日本
  →壁には余白があり、それを楽しむ国民性。

壁を何で埋めるか個性やセンスを競う文化=フランス
  →壁に余白があることは罪悪と感じる国民性。

 これは同書を読んでわたしなりにまとめたコントラストです。好対照ですよね。

【額装の楽しみとは】
 絵を“絵としてうやうやしく陳列する”のが一般的な日本人。絵を飾ろう、他のものはおいておいて。そんな意識が垣間見えます。言い換えれば“壁が殺風景だから絵でうめようか”、“この絵なら誰にもとやかく言われまい”という「世間体意識」もあるかもしれません。いずれにせよ、芸術を暮らしに取り入れることに成熟していないのではないか。

 一方フランスでは、絵を飾ることで“自分のセンスを研ぎすます” “知人を自宅に呼んでアピールし競う” それが壁面を埋める暮らしに密着した絵、絵と額を越えた額装の楽しみ、そんな感じがします。

 どちらが良い・悪いではありません。でも日本の家屋条件(狭いのに家具・家電が多すぎる)や、古来、装飾よりもむしろ何も存在させない“余白感”を楽しむ国民性から、多くの家庭で、額はおろか額装まで心が及ばないのが実情なのではないでしょうか。

 では額装とは何なのか?著者は『芸術作品を、見られるという開かれた社会的な行為へと結びつけてくれるのが「額」そして「額装」の役割』という。芸術家という“(時に)社会にアピールする行為をあまり考えない人びと”(そんな人以外の方もたくさんいます、誤解なきよう)と、買い手の楽しみを結びつけるのが“額装”と言ってもいいかもしれません。(続く) 

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コメント

Yukaさま
コメントありがとうございました。
わたしもデコデコは好きですよ。
日本人は一般的に、壁を飾るのは苦手だと思うの。
額装の本にもあったけれど、
「日本では壁はタブーだ」みたいな感じで、
美術館も白ければいいみたいな殺風景。
今日(3日)のブログではそこらがテーマです。

投稿: 郷/marketing-Art Déco | 2009年4月 3日 (金) 14時26分

お祝いメッセージありがとうございます~♪

郷さんとは全く対極な意見で恐縮ですが。
壁にコテコテ飾るの、とっても可愛いですが、
あの上に積もる埃と掃除の手間を考えると、
ゾっとした私でした。。。

こういうことできる「マメさ」見習いたいです。

投稿: YUKA | 2009年4月 3日 (金) 10時27分

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