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2009年5月10日 (日)

失われた体験のクライマックス

 昨日(09年5月9日)盟友kuramotoさんと、フラメンコ発表会の入場列に並んでいたときに見たシーン。ホールのエントランス・ウインドウの反射を利用して、若いダンサーたちが踊りの練習をしていた。賢いね、これならタダだ。踊りもけっこうイケていた。

 彼らのヒップポップな踊りを支えるスクラッチな音楽。それはなんと“ラジカセ”から流れていた。彼らの持ち込み機器でしょうが“カセットテープ”ですよ!それをkuramotoさんに言うと彼はこう切り返した。

 「ウチの娘のシンクロナイズドスイミングのクラスでも、なぜかカセットテープなんですよ。だから先日ラジカセ買いました」へえ?ひょっとしてカセット復活?そんなことはあるまい。でもこのカセットテープのアートはいい。

【Ghost in the Machine Series】 

3352282548_455ffabd8a  Bob Dylanです。

I am an artist who specializes in using non traditional media… old books, cassettes, playing cards, magazines, credit cards… whatever I can find. It feels great to work with strange, older materials. Things that have a mind of their own.  引用元

ボク(Iri5)は古本やカセットやトランプ、マガジン、クレジットカードなど、なじみが深いメディアで創作するアーチスト。え、こんなメディアでこんな表現が!という驚きを創りたいね」(心訳) 

3106069484_713974e66a  ジミヘンことJimi Hendrixです。 

Iri5はカセットテープをビヨ〜ンと伸ばして、くちゅくちゅしてコラージュアートにしちゃう。それがまたかなり迫真的だ。このポップアートをさらにおちょくった手法、わたし的にはかなり気に入りました。調べてみると地味変じゃないジミヘン作品は『NEW Jimi Hendrix Modern Cassette Art Urban iri5 Signed』としてebayに出品され、470ドルで落札された。 

3464237604_4d6b3e0879 これは映画撮影フィルム。 

 個人的にはオードリーがいい。こっちはカセットではなく映画フィルムのリサイクル。アイデアだけでなくデッサン力が伴っているのが素晴らしい。発表作品リストはこちら。K.Richardsを作ってくれたら衝動買いしそうだ(笑)。今なら清志郎を作ってヤフオクに出品すべきだ。高値がつくぜ。

 hmmなアドバイスすると、お客さんが所有するアナログテープで“テープデッサン”作品をオーダーアートする手もある。すると迫真性とノスタルジーが増すってものでさ。でも“子供のランドセルを解体して思い出にする”サービスに近づきますかね。

【the physical value of sound】
 さて5月16日までの会期で、スズキユウリさんの『the physical value of sound』が開かれている。この展示で特に興味を惹かれたのが、アナログレコードを環状に分解して“プラレール”のようにレールを組んで、電車のピックアップを走らせる“sound chaser”だ。 

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 彼は“これでもアナログは音が出るんだ”と語る。そう、レコードは溝と針の振動で音が出るのだ。だがCDにせよDVDにせよ、バーチャルに記録された録音メディアでは、生の音は実在しない。仮想データであり記号でしか存在しない。繰り返し聴く上でも、“ながら聴く”というリスニング体験にはデジタルは便利ではあるが。

【失われた体験のクライマックス】
 Iri5のアート作品、CDやDVDを切り刻んではできなかったと思う。切断技術云々ではなく、彼の創作は、音の軌跡が見えなければ表現にはならないからだ。効率的に切れるなら、レコード盤でのコラージュ創作はきっと喜んでするだろう。

 写真のネガフィルムでなら、ロバート・キャパの肖像を創れそうだが、デジカメのコンパクトフラッシュをバラすことはできない。アナログタッチを失ったというノスタルジーではなく、私たちは失くしていけないものを失くしてしまった。それは“体験のクライマックス”みたいなものじゃないだろうか。音・画像・映像への畏怖、尊敬、尊顔とも言える。

 デジタルだと取得も廃棄もかんたんすぎる。だから何事も軽く語られて、そして捨てられる。時計を逆回ししてあえて不便さをかこつのはムリでも、なんでもデジタルじゃつまらん。アナログタッチをどう残すか、そこにメディア(音楽・放送・印刷・Web)もアートもデザインも、大きな課題があるような気がする。今日は以上です。

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