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2009年11月 6日 (金)

深澤直人×藤井保『見えていない輪郭』展トークショー【その2】

今日は昨日に続いて、『THE OUTLINE 見えていない輪郭展』 オープニングトーク「2人に見えている輪郭」のメモリー、時間のほぼ半分を費やしたQ&Aセッションのモヨウで す。藤井保さんの率直でピュアな人がらに触れたのも大きな収穫だったトークショー、彼が2度ほど言ったことばが、思いのほか重かった。

「この人(深澤さん)は信用できる、と思った」

Photo 演台

深澤氏の仕事への姿勢、生きる姿勢を指しているのでしょう。そのストレートなことばが重い。「信用」とは、成功の尺度でも知名度でも肩書きでもない。どこま でちゃんと仕事をし遂げるか、どこまでこだわるか。世の中にはミリ単位どころかナノ単位で仕事にこだわる人もいるのに、自分のアバウトさを思って「ダメだ な」と自戒した。

鈴なりの聴衆から次々に質問が飛ぶ。やや手厳しい質問から。

【深澤デザイン、溶け込まないモノもある】
質問:空間に溶け込むというが、フォルムと色が特異なinfobar、使う人もモノもどこか目立ってませんか?
深澤:携帯を使う人は、じゃらじゃら付けたり(ストーンを)貼ったりして、目立たせようとしてる。infobarがねらったのは、シンプルなのにはっきりわかる。静かななくせにはっきり。背景とのコントラスト。最初は目立つけれど、使っているうちに溶け込んでゆくと思います。

質問:モノがあふれる世界。まだモノづくりは必要なのでしょうか?
深澤:そのことを考えない日は一日もない。でもモノをつくるのは人間のサガ。ちょうど『2001年宇宙の旅』で猿が骨を持ったようにね。今は、余計なものと必要なものを、みんなよく考えるようになった。三十年前、デザインがまだ実験で許された時代とちがって、今はもう失敗が許されない時代。

【後ろ姿に本質がある】
質問:撮影がむつかしかった深澤プロダクトはありますか?
藤井:(う〜んとしばし考えて)いつもむつかしい。プロダクトと向き合い、撮影前にスケッチをします。こう撮ろうと思って、プロダクトと響き合ってから撮るようにしている。
 照明のライティング環境なら安定して撮れる。でもこれは作業です。自然光の中で撮ろうとすると、自分が考えたことを超えた何かが起きる。それが楽しみ。答えになったかな(笑)。
(深澤氏が「藤井さんは気をつかってくれてるんだ」ととりなした)
 たとえば人を撮ろうとする。全身、顔、手、足など、普通の写真では強調するところを撮ろうとする。でもボクは後ろ姿をよく撮る。
 普通の工業製品ではそれはできないんだけど(後ろは適当に作っていて絵にならないから)、深澤さんの電話機は撮った。あれは後ろがよかった。ちゃんと作りこんでいる。人もプロダクトも同じで、後ろに本質がある。

37_2人もプロダクトも同じで、後ろに本質がある。

【深澤直人の仕事】
質問:深澤さんの仕事の範囲を教えてください。
深澤:プロダクトデザイン、ブランドづくり、そういう仕事もあるけれど、仕事のうちの50%はモノに到達しないで企業(クライアント)の問題を解決すること。人間の思考はすごく抽象的。だから問題を聴いて「あ、じゃあ、これだよね」というものを見せてあげるのがボクのデザインの仕事。むつかしいことを当たり前にすること。
 実は問題点はかなり明瞭なの。クライアントが語ってくれるから。それをひとつひとつ解決すればいい。でもそこには人間心理がある。ひとりひとりちがう。だから整理してつぶしていくっていうのが仕事の半分です。けっこうそれを楽しんでいます。

質問:デザイナーが担当するデザイン領域は、ハードからソフトまでというように広がっていますか?
深澤:ハードもソフトもすべてはインタラクション。一番たいせつなのは直観、intuitive。説明するようじゃダメなんだ。たとえば椅子なら、よい椅子のデザインはたくさんの人のお尻によって評価されている。ダメな椅子はお尻が座らない。お尻がプロダクトの輪郭を割り出している。

【藤井保の写真】
質問:今回の展示で一番優れた写真は?
深澤:オレンジ色のMAGISのチェアの写真ですね。あれはすごい。空間に染みだしている色が見える。プロダクトと空間が一体になっている。
藤井:トップから光を入れて自然光スタジオをつくったのですが、スケルトン・ライティングで骨格を撮るようにして、空間に溶け込ませることをねらった。

質問:広告業で働いています。商業写真として藤井さんの作品に触れるのですが、たとえば無印良品、あるいは旭化成の写真ですが、そこに行ったことがないはずなのに既視感がある。それはなぜなのか?考えてみると、藤井さんは記憶の深いところにあるものを具体化されている。とても畏敬の念を感じています。
藤井:キミは・・・すごい(場内爆笑)。
 写真を撮るときに大事にしていることは、どこで誰にどう見られるか意識すること。たとえば本屋の店頭で表紙として並んだときどう見えるか。ビルボード(看板)になったらどう見えるか。無印良品の地平線の写真では、「東京には空が無いから、遠くまで見えるようにしよう」というイメージで撮った。目立たせようとして撮ると(逆に)埋没しちゃう。

【既視感=直感的操作】
深澤:ボクは客観写生というんだけど、人の目になって考える。自分の目と人の目を一致させようとする。既視感があるのは、(その写真やプロダクトが)輪郭を割り出しているから。人はわかっているから「ああ!」と声を上げるんだ。冗談も同じで、人はオチを言う前から笑い出す。わかっているからこそ冗談は通じるんですよ。

37_3既視感があるのは、(その写真やプロダクトが)輪郭を割り出しているから。人はわかっているから「ああ!」と声を上げるんだ。冗談も同じで、人はオチを言う前から笑い出す。わかっているからこそ冗談は通じるんですよ。

藤井:旭山動物園の話しをしていいですか?(いいよ、と深澤さん頷く)もう四度目だけど(笑)。
潰れかけていた旭山動物園、園長さんが立ち直らせたのだけど、そのキーワードは「行動展示」。動物には食糧を獲得する、安全を確保する、子孫を増やすというDNAがある。それがすることができない動物園で動物は不幸なの。旭山動物園ではエサを隠して獲得させることで、サルは探しまわり崖を登り、シロクマは飛び込み、つまり本来もっていた能力を出させた。深澤プロダクトの発想もそれと同じだと思う。人に(直感的に/本能的に)使わせるデザインがある。

【ささくれ】
質問:お互いのキャッチフレーズは何ですか?デザインとは何ですか?
深澤:藤井さんは天然、まじり気なし、ピュア。
藤井:深澤さんは触覚的な人。昆虫かな。
深澤:デザインとは調和。生体心理学の佐々木正人さんが言っているが、種の保存・淘汰という概念があり、目立ちすぎるとすぐに淘汰される。たとえばホタルが好い例で、ホタルは光を放って異性を近寄らせる。ならたくさん光を放てばいいじゃないか。ところが光を放つと目立ってしまって他の動物に食われる。目立たないことがデザインでもある。

質問:どうしたらよいデザインができるようになる?
深澤:「ささくれを探す」のがデザインでもある。どうでもいいような小さいこと、でもきっとみんなが何かを思っていること、それに気づけるようになること。破綻を修正するのがデザインでもある。

37_4「ささくれを探す」のがデザインでもある。どうでもいいような小さいこと、でもきっとみんなが何かを思っていること、それに気づけるようになること。

質問:経済の悪化の中で、デザイン商品はまだ売れるのか?
深澤:30%収入が減ったけれど、30%安くなった。ほんとの価値がないもの、よいものであったけれど価値(価格)が膨張していたものは売れなくなった。

質問:どうすれば(デザイナーや写真家として)成功できるのでしょうか?
藤井:こうしたら成功するなんて法則はきっとない。人によってちがう。自分に合ったことを探すしかない。
深澤:自分の今のレベルがこのくらいとして、高いレベルにハシゴをかける。高望みすること。デザインではそうするのがいいかな。

質問:『デザインの輪郭』という本(深澤氏ほか)で“モノは持たない方がいい”と言われているが、モノづくりの立場にいるのはなぜか?
深澤:満足してくれる、わかってくれる人の数だけ売れればいいと思っている。売れすぎるとどこかチグハグになる。

    +++++++++++++++++++++++++

いかがでしたでしょうか。わたしはこれから何度か反する機会がありそうです。デザイナーじゃない、ちがう世界の話し、ではもったい。普遍的なポイントがたくさんあったなと想います。

わたしにとって。わたしは「作文家」。その目線で考えると、「輪郭=読者との境界線」というメッセージを受け止めました。「声高に伝えようとするから伝わらない」「どう伝えようかせっせと考える目立ちたがりは、品がない」。トークから想いあわせると「どう読まれるか考え抜く」。それは、創る以上にたいへんな作業かもしれない。ぜひご自分の立場に置き換えて考えてみてください。今日は以上です。

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