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2009年11月 5日 (木)

深澤直人X藤井保 『見えていない輪郭』 展トークショー 【その1】

良いデザインとは何か?――深澤直人のデザイン論
デザインイベントの展示から熱くなるものをなぜか感じられなかった筆者。しかし、プロダクトデザイナーの深澤直人氏と写真家の藤井保氏のトークショーを聴いていて、熱くなれなかった理由に気が付いた。続きはこちら

Outline同展サイトより。

今日はビジネスメディア誠で連載する“うふふマーケティング”のこぼれ話です。連載のタイトルは「論」ですが、ふたりのことばから感じたことをそのまま書きました。対談が終わり、帰途につく聴衆の口々から、「来て良かった」「録音しておきゃよかった」という“満足のアドレナリン”が溢れていました。その感動を書き留めておこうという趣旨で、わたしのブログでは、今日と明日、同展でメモ書きしたノートをまとめた内容をお伝えします。
※詳細な記録ですが、録音はなし、メモからのみです。

【深澤直人X藤井保 『見えていない輪郭』 展トークショー その1】

THE OUTLINE 見えていない輪郭展
オープニングトーク 「2人に見えている輪郭」

・2009年10月31日 14:00ー16:00
・出演:深澤直人・藤井保 

「アウトラインとはものの輪郭のことである」
「わたしの役割はその輪郭を割り出し、そこにぶれなく
はまるものをデザインすることである」ー深澤直人
(同展リーフレットより)

深澤直人氏も藤井保氏(天然モノのいい人でした)も、精魂こめてトークショーや対談をこなすのは、社会のため、後進のデザイナーや写真家のためだろう。このブログも来場された方にヴィヴィッドな想起になり、来場されなかった人には考えるきっかけとしてほしい。

【21_21 DESIGN SIGHT 会場に着いた。】
21_21デザインサイトの回廊でのトークショー。背景には藤井保氏撮影の「深澤直人氏の山小屋」の写真がかかる(タテ10m以上、ヨコ7~8mあろうか)。
観衆は着席はざっと60名、立ち見(聴き)はざっと150名。2人が出てくる。

深澤:「2時間って長いから疲れちゃうよ。ほらそこにも空きがある(と、通路やトークの演題の脇のスペースを指し)。ここに座れば」 藤井さんもゆっくり頷く。何名かがスペースに座る。それってかぶりつき?(笑) なごやかな雰囲気で始まる。

Outline_main

【まずはなれそめから。】
この企画展、雑誌『モダンリビング』での連載話しが起点だった。連載をオファーされた深澤さん、文やイヤ、写真なら、それも「藤井保さんならいいよ」と半ば冗談で言った。同誌の編集担当が藤井さんからOKをもらい、それじゃあということで、ひとつのプロダクトを3枚の写真に撮る連載が開始したのが約4年前。深澤さんにとって藤井さんは「憧れ」の存在だった。

藤井保さんは、無印良品の地平線や壁掛けCDプレーヤー、その他多くの商業写真で深澤プロダクトの撮影をしていた。ところが実際に会って話しをしたことはなかった。佐藤卓さん(当日会場にいらした)、原研哉さんといったデザイナーの作品についても同じで、作った人には会わずに、でもその真髄を撮ってきた藤井さんの眼に驚愕した。

【まずは深澤トークから】

深澤:デザインするとき、ボクは頭の中に描いている輪郭を思い浮かべる。実はクライアントを含めてみんなその輪郭を共有している。デザインとはそれを鮮明にさせ、導き出し、割り出す仕事。ジグソーパズルの最後のピースを埋める。モノは単独では存在しない。モノの周りにある存在空気、生活感があって、存在している。決して加工された世界ではなくてそのまま。あ、今日のトークショーの全部を語っちゃった(笑)。

37モノは単独では存在しない。モノの周りにある存在空気、生活感があって、存在している。決して加工された世界ではない。(深澤直人)

郷メモ:輪郭線の意味がぼんやり見えてきた。実は空間に溶け込んでいる、いや溶け込ませることがデザインであり、撮影なのだと。わかりかけてきた。

【天然な人。藤井保】

藤井:生活の中において深澤プロダクトの輪郭を撮る。
(一般的には)写真とは情報を消して誇張するものと思われている。それはちがう。その場の空気と一緒に撮ることが写真だと思う。モノの背景には生活がある。モノもそのアウトラインも、単独では存在しない。周りによって存在している。
・・・で何だっけ、とことばに詰る(聴衆はやさしい笑いに包まれた。深澤さんがことばを入れて、また語りだす)

藤井:モダンリビングの連載は、まるで手紙のやりとりのように続けた。写真の被写体が持っている一番チャーミングな部分を撮るわけだけど、それを一枚で表現するのではなく、3枚で刺激を与える。見る人が想像することで完成する。

37_2見る人が想像することで(写真は)完成する。(藤井保)

郷:ボケが入るところがまっすぐだし、ピュアな藤井さんが好きになった。想像、というところで鳥肌がたった。

【藤井保さんの自然光写真スタジオ】

深澤:藤井さんは約14年前、自然光が入るスタジオを作った。それは作品を自然光を通じて見るもので、いわばバルコニーに撮影場所があって、撮影者は部屋の中から外に向かって撮影する。商業撮影では普通は“影を作る”。しかし藤井さんの写真は影がない。影のない写真、つまり輪郭がない写真。(藤井保の写真スタジオを再現した展示“MAGISのスタッキングチェア”が展示会にあり)

藤井:光は反射する。その光を通して見ると、モノや光のカタチがわかる。またモノはそのもの自体が発光している。モノが発している内側からの光を撮るのが写真である。
世の中どんどん明るくなっていく。コンビ二もパチンコも明るい。明るいことが豊かであると思われてきた。

でも人の目は暗闇に慣れていく。お寺や教会は暗いけれど、祈っているあいだに目が慣れてきて、仏像やキリストが暗闇から浮かび上がってくる。その祈りのプロセスがたいせつで、見ようという意志が大事なんですよ。だからこの展示会はかなり暗いのですが、わざと見えにくくしたものでもある。

深澤:見ようとしないと見えてこない。浮きただした輪郭で十分。見ようとすれば見える。モノの姿を消したい。最後のひとつのピースが埋まっていないジグソーパズルは、そこが埋まっていないから目立つ。だがひとたび埋まるとすべてのラインが消える。

藤井:深澤さんのプロダクトを撮影していて背景に見えるのは、深澤さんご自身。モノの後ろにあることが見えるからこそ写真が撮れる。

37_3人の目は暗闇に慣れていく。お寺や教会は暗いけれど、祈っているあいだに目が慣れてきて、仏像やキリストが暗闇から浮かび上がってくる。その祈りのプロセスがたいせつで、見ようという意志が大事なんですよ。(藤井保)

郷:考えなくなったのは“見えすぎるから” “情報が過多だから”。「ひと言で言って」「かんたんに言って」というのが当たりまえになったのはいつからだろうか。こんなにみんな考えなくなったのはいつからだろうか。お手軽・かんたんのテレビ番組、書籍やネット情報が氾濫しだしたからだろうか。すべて“見えすぎる”からいけない、それは卓見です。

【ヨーロッパと八ヶ岳で撮る深澤プロダクト】
藤井:ミラノでboffiのバスタブを撮ったが、アクリルボードを使って面光源で撮影。撮っているとわかるが深澤プロダクトは曲線が多い。曲面にはスポットよりも障子ごしの光がいい。
それでわかるんだけど、スポットライトは“西洋の反射する光”で、面光源はグラデーションが宿る“東洋の光”なんだ。庭の石にバウンスして障子にあたり、奥の仏像を照らす。

37_4曲面にはスポットよりも障子ごしの光がいい。スポットライトは“西洋の反射する光”で、面光源はグラデーションが宿る“東洋の光”なんだ。庭の石にバウンスして障子にあたり、奥の仏像を照らす。(藤井保)

深澤:この展示ではスポットを極力使用せず、光の方向性を消している。光に囲まれている感じを出そうとしているのもそれと同じです。

藤井:深澤さんの山小屋(八ヶ岳にあり、深澤さんご自身の自作の小屋)を撮影したいと思った。それは深澤さんにとってミラノは“ステージ”、東京は“仕事の場”、そして週末の山荘は書斎なんでしょう。それを撮りたかった。最初は山の教会のように見えた。でもゴシック建築のヨーロッパの教会とは対極にある存在感。

深澤:普通の写真だと山小屋だけを撮る。でも藤井さんの写真は、その周りの葉っぱのディティールまで撮っている。葉っぱの輪郭がくっきり浮かび上がっている。自我を捨てて見たままを撮る。メインコンテンツだけを撮らないですね。いつも見ているのに「ああこういうふうに見えるんだ」というのが藤井さんの写真で、くやしいくらい嬉しい。

37_5自我を捨てて見たままを撮る。メインコンテンツだけを撮らないですね。いつも見ているのに「ああこういうふうに見えるんだ」というのが藤井さんの写真で、くやしいくらい嬉しい。(深澤直人)

郷メモ:では照明デザインとは何なのだろう。コンテンツ(被写体)をいかに良く見せるかが仕事ではあるけれど、照らしかたではそのモノではなく、ちがう価値さえ加える。それが価値なのだろうか?

【アートとプロダクトのちがい】
藤井:アートとプロダクトのちがいって何ですか?

深澤:今、デザイナーのアート作品がブームだけどそれは2つポイントがある。ひとつは数をたくさんつくらないから、当然価値があがる。もうひとつはデザイナーアートは使えない。

藤井:板に釘を打っただけのハンガーが深澤プロダクトにあるけれど、あれの後ろを見ると、釘のカッティングが精密にやっている。プロダクトとしても十分に使える。壊れないものを作るのがプロであるわけですよね。それがよくわかりました。ところで、あれ、いくらですか?

深澤:30万円(笑)。アートだから仕方ないけれど、アートとマスプロダクトをいつも行ったり来たりしている。
ボクは、(自分がつくるものは)毎日使ってもらえるプロダクトであってほしい。自分のプロダクトが生活に溶け込むのが大事。
どんなモノも線でできていて、それはだいたい3Rから0.5Rのグラデーション。その間で、輪郭のシャープさが決まっている。四角いアメをなめると丸くなるけれど、その感覚(生活のなかに溶け込む)を大事にしたい。
藤井:そういえば、深澤さんはいつも何かに触っている(笑)。ボクまでそれが移ってしまって(笑)。

深澤:サムソンのノートパソコンでは“地球の表面をオフセット”した。
藤井:あれを見たとき砂でできたデューン(砂丘)に見えた。

郷メモ:わたしは最前列から2列目、ほぼ深澤氏の正面で聴講していたが、彼の手がもぞもぞと動くのに気づいていた。演台の角を何度も擦っていた(笑)。

サムソンのノートパソコンN310(グッドデザイン賞受賞)の展示現品と、藤井さんの写真を見くらべて、ああ砂丘!でした。その粒感を大量生産プロダクトとして表現できることに感動した。ところが日本のメディアは“抗菌作用”みたいな書き方、何にもわかっちゃいない。ひどい、と思った。

ここまで2人からの語りは終わり、質疑応答にうつる。その内容も素晴しかった。即興デザイン論の範疇をはるかに超えていた。

デザインで生きたいと思っている人、明日もこのブログを読んでください。血や骨にしてください。がんばろう!

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