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2009年12月28日 (月)

ラッシュライフと小磯良平

 今日はいろいろなことがあった一日だった。目下の契約の仕事、これから契約する仕事、事業をどうすすめるかの思案と討論、たったふたりの忘年会。ひとつ ひとつ書き連ねることは、面倒だし不粋なのでやめるが、そのうちのひとつに、cherryさんが貸してくれた『ラッシュライフ』を読了したことがあった。 

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 著者の伊坂幸太郎さんの名前は聞いたことがあった。不覚にも読んだことがなくて、差し出されるままに読み出したら、ノンストップ。「うまい!」とはこの小説のことを言う。

【hmm…なアドバイス582.ラッシュライフと小磯良平】
泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場——。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。引用元 Amazon

4つの物語(5つとも言える)が並走しつつ、「あらこうしてつながっているの!」とだまし絵のからくりを解き明かしてゆくようなストーリー。読んだ方には冗長ですみませんが、4つの物語を圧縮しますと。 

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 映画化されたDVDより(キャスティングのイメージは私の思いとかなり異なる) 

黒澤 泥棒であるが、その用意周到さは探偵以上に探偵であり、美学の域。不意に出会った学友の佐々岡に、「カウンセラー」と言わしめる話させ上手でもある。

河原崎 父の自殺がトラウマとなり、新興宗教団体に入る画家志望者。教祖の正体の本質を追い求めて身近なところに“神”を見いだす。

豊田 リストラにあった後、40件連続で不採用で街をさまよう元サラリーマン。駅でコインロッカーのカギに向かって吠える犬と出会う。

老犬 なぜか豊田に目をかけてやり、つきまとうようにして離れない。ヤンキーに襲われる豊田を勇敢にも助けるが、彼らにふんづかまえられると、あんがい観念したようなところが実に可愛い。

京子 不倫相手のサッカー選手とともに、その妻の殺害計画をねだるカウンセラー。冷静な見通しで、優柔不断な選手をうまくけしかけるものの、予想外の死体との対面ですべて狂い出す。

 一見バラバラなのになぜつながっていくのか?読んでいただくしかないが、ちなみにcherryさんは「黒澤と犬」が好きだと。わたしも黒澤に1票。彼の語りはすばらしい。とくに「仕事ではプロといっても、みんな人生ではアマチュア。たった一度の体験で終えるしか無いからだ」が刺さった。そこで、アマチュアのリストラサラリーマン豊田に同情の1票をささげたい。

【群像小説と群像画】
 これらの一見無関係な登場人物の話は、並走して語られるが、進むにつれてバラバラ死体がひとつにまとまるかのように一体化してゆく。それを群像小説という。つながったときの爽快感は強い。逆の裏切り感も強い。群像小説の爽快さには、人物と人物、エピソードとエピソードの“つなぎ”が重要である。

 『ラッシュライフ』で「つなぎ」となるのはカネ生と死、そして。どれも重くて根源的で、どんな人にも解が出せない問題ばかりだ。だから考えさせる。響きあう。巧みなつなぎである。読みながらわたしは、絵画の世界の“群像画”を思い出していた。 

09y07m04mukai_007 『絵画』

 日本の洋画史の巨匠小磯良平氏が、晩年力を入れたのが“群像画”である。日経の記事(2009年12月27日)には、「群像画は人物の配置や描き分け、テーマ性などで画家の力量が最も問われる。いわば洋画の頂点」とある。群像画とは、この絵画のように、多くの人物(ここでは絵描きやモデル)がひとつの画におさまるもの。確かに世の大作といわれるもの、群像画が多い。

 群像画がむつかしいと言われるのはなぜか?

 ひとりの人物画は容易だ。だが複数になると焦点をあわせにくい。人物がおんなじように見えては鑑賞に耐えない。バラバラでは意味がない。違う人生を歩みながら、一枚のキャンバスの上でひとつになる。人生は偶然の積み重なりか、神のレシピか。そこを考える意味がある。味わいがある。それが群像画であり、群像小説である。

【hmm…なアドバイス】
 学校や会社、世間や家族、親類縁者、教会も各種団体もすべて群像に過ぎない。偶然なのか必然なのか?どんなつながりがあるのか?考えだすとエッシャーの無限階段を登るハメになる。 

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 ふと思うのだ。お客さまという、一見ばらばらで(業界用語ではセグメンテーション)、でも実は単純で同じような嗜好をもつ彼らも“群像”であると。マーケティングとは、それを読み抜いて、いかに再配置するかを競う“群像戦略”なのである。群像が一体化したとき、大きな事業となる。今日は以上です。

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