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2011年9月20日 (火)

『罪追人』をひと足先に読んで

知人から一冊頂った本がある。『罪追人』、桃谷優希著。発売日は2011年9月25日だから、台風一過の週末には書店に並ぶのだろう。本のことを書くときはいつも半歩以上遅れているけれど、今日はひと足さきに本の感想を簡潔に書いてみたい。



愛する人を殺された被害者たちはどう生きるのか?
という点と点でつながる物語である。まず構成が面白い。

最初の方は全体の状況がつかめない。どういう物語なんだろう?とぎりぎりの情報を与えられる、読み進むうちに飲み込めてくる。そこからスピードが増す。一気に読める。なあるほど、登場人物を「つなぐ要素」に主題がある。それは“罪”であり“罰”なのである。

物 語には複数の殺人があり、複数の被害者の家族のショックもあるが、ばたくさい物語ではない。かといって心理描写に凝った、暗く沈む話でもない。構成の巧み さで、まるで時間差のある群像劇を読ませるように、物語は軽快に進む。いや軽快だと思わせておいて、その足取りには重い足かせがあることをだんだん気づか せる。そこも巧み。

表現の緻密さもいい。主人公(といっていいと思うが)秀喜の描写は一人称の心理が描かれず、淡々と行動が描かれる。その心理は、彼を心配する友人の伸樹の想いや行動、彼を理解しようとする元警官の“闇の探偵”佐伯らの行動で、想像できるだけだ。

彼に限らない。話にに出て来る登場人物が社会から消えていくうちに客観描写になり、だがある瞬間、生々しい生き物であることを、削いだ描写で突きつけてくる。はっとなる。そしてこう思う。

ぼくはこの物語のようにまっすぐ罪を追うだろうか?そのために生きられるだろうか?

わからない。そう逡巡させるのも、作者の計算づくだろう。文体にもところどころフフンと思わせる。わざと心にひっかかる“感字”づかいはぼくは好きだ。この物語をわずか23歳の女性が描くとはすごい。桃谷優希さんとはどんな人なのか知らないが、才能があることはわかった。



「人が人を裁けるのか?」「法治社会とは意味があるのか?」という疑問を考える社会小説としても読めるが、ぼくは人の業を読む物語だと思った。彼女には業を追える力がある。秋の夜長を短くする。

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