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2011年10月26日 (水)

どくとるマンボウに狂わされた青春期

今朝の訃報を聞いて、たくさんの昭和人が本棚から古い本をひっぱり出した。ぼくもそうした。探せば彼の著書は7〜8冊はあるはずだけど、最初に見つけた文庫本をつかんで仕事場に向かった。『どくとるマンボウ青春記』、北杜夫著、躁鬱まんぼう先生に合掌。

この文庫のカバーの写真、旧制松本高校当時のバンカラなボロ服いいなあ。当時からボロファッションの先端だった。奥付は昭和50年だから、ぼくは15才で 中学3年生。たぶん氏のオモシロ路線の本を最初に読んだのは、内田クン(作品社の内田編集長)が貸してくれたベストセラー『どくとるマンボウ航海記』だった。中学2年くらいかな。同じ頃にはマジメ路線の『夜と霧の隅で』も読んだ。どっちにもずいぶん感化されたなあ。

どくとるマンボウシリーズはどこから読んでもOKだ。『青春記』をびゅっと最初から開くと「珍しく沈んだ書きだし」という一編。終戦間際の暗い体験だが、ちっとも沈んでいない。軽妙で珍妙、あの時代のことをこんなふうに書けるなんて凄い。

父は疎開、兄は兵隊へ、工場労働で報酬をもらうが買う物がない。そこで「夢にまで見た旧制高校生の姿」になろうと決心した。帽子に白線を巻き(旧制高校の象徴)、醤油と油をぶっかけ古く見せる。下駄は友人から買い、鼻緒を直径4センチのものに改造する。それでのっしのっしと歩いた。

戦 後になり旧制松本高校に入る。そこで現れたのが上級生という生き物だ。もの凄く偉く見えた。北氏が名前しか知らないカントにもヘーゲルにもキエルキゴール にも直接習い、シェイクスピアやゲエテやドストイェーフスキーとは友人付き合いしているごとくの神々しさ。だが北氏も負けていない。カントを読んだら最大 限にびっくら仰天した。書いてあることがまったく理解できなかったからだ。そのくせ「カント曰く」と言って神々しくなっていった。以上「初めに空腹ありき」。

さらにバッとめくると「役立たずの日記のこと」には、卓球部に所属した頃のエピソードがある。インターハイでシングルスに出場したまんぼう氏、試合が拮抗したところで一計案じた。自分のサーブの番で、床にゴロンとなって仰向けに寝転がった。虚をついてすっくと起き上がり、別のラケットをつかみ「松校伝統サーブを受けてみよ!」と叫んで打ち込んだ。ポイントゲット(笑)。なにしろ応援団が、でっかいウチワで球をあおいで自校に有利にする時代。なんでもありでした。

これに感化されずにおられるものか。ぼくの青春にまんぼう氏は大影響を与えた。

都 立校に入るや下駄で登校して、廊下をカランコロン鳴らし、手にはアルチュール・ランボーや中原中也の詩集をかかさず持っていた。いつも青春を憂える苦い顔 をつくっていた。文化祭では廊下に畳を引き、裸電球を下げ、同人誌モドキを配った。その畳はわざわざ母校の中学から無断で借りて、リヤカーで運んだっけ。

卒業式では「雑誌から抜け出したようなモデルスタイル」ースリムなパンツ、キラキラシャツ、ゆるめのマフラー、帽子でキメて、壇上に上がって証書をいただいた。リヤカーもファッションも手伝ってくれた内田クン、ありがとう。

池 袋の洋菓子店タカセの店頭のメニューサンプルを白昼堂々失敬した。池袋パルコの5FのJUN/DOMON(ブティック)の店頭看板をひょいと持ち返った。 内田クンとは目白の椿山荘(今のフォーシーズンホテル)のプールに夜半過ぎに忍び込んで、ハダカで泳いだ。ホモダチではない。帰りに警官に職質されたとき はビビったぜ(笑)。

こんな文学バンカラをさせたのは、すべてどくとるマンボウのせいなのだ。

そもそも青春とは、いくらか狂った時代ではあるのではなかろうか(『青春記』P.19)

彼が『青春記』で狂った時代のことを書いたのは四十代になってから。ぼくもまだまだ狂える年ごろだ(笑)。成仏しろよ、まんぼう先生。



ふっふっふっ。このマンボウの本は学校の図書館から失敬したものだ(笑)。

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