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2012年3月11日 (日)

作品社の増刷の達人から学ぶ3つの教訓

ある店舗視察を終えてやれやれ…と思って丸善OAZO店に寄った。1Fに入ると新刊書の平積みがある。ここにはまさか無いだろうと思えば…



資本の<謎>』デヴィッド・ハーヴェイ著。どーんとあるじゃないですか、しかも滅茶苦茶目立つ店頭に。

ぼくはちょっと前に感想文を書いた。そんなPRは必要なしだった。この場所なら売れる。こんなカタイ本が既に二刷とはまさに謎(笑)であるが、それにはワケがある。「増刷の達人」が企画しているからだ。

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出版業界紙『新文化』で取りあげられた、作品社の編集者の内田眞人さんの仕掛け本である。彼が企画した本のほとんどが「二刷以上」。これは出版不況の中で相当珍しい。中には二十刷までいったジャック・アタリの『21世紀の歴史』お化け本もあった。石油が枯渇すると騒ぎたててくれた『ピークオイル』は商社マンが大挙して買った。当然だがまだ石油は無くなっていない。十一刷の『ヴァギナの文化史』という挿絵がエロ楽しかった本もあった。

なぜ彼が増刷ヒットを飛ばせるのか?彼のテーマは2つある。

【内田氏のもつ2つの資質】
まずグローバリズム。世界恐慌(21世紀の歴史、資本の謎、資本論入門)、資源問題(ピークオイル、ウォータービジネス)、非米国視点(ゲバラやマルクス本、戦争責任などの本)と話題をちょこっと先取りしてきた。

し かも多くは英語圏の本ではない。小さい出版社は、大手の翻訳本独占資本力には勝てない。ジョブズの自伝を億で落札して赤字なんてマネは講談社だからでき る。だから作品社は低コストの非英語圏のものを漁る。しかも話題は一歩先ではなく「半歩先」をねらう。一歩では話題になった頃、断裁されているからだ。

つまり半歩先はこれでしょ、という「世間の風を読む嗅覚」がある。

彼のもうひとつのテーマは人間がらみ。男性学入門、体位の文化史など心の問題本。タイトルはともかく体位の本もマジメで、マジメすぎてつまらなかった(笑)。

彼にはアナタ実はコレ読みたいでしょ、という「読者の心を読む選書家」が棲んでいる。

彼にはこの2つの資質が中学生の頃からあった。なぜ知っているか?ぼくは彼と中学以来の友人である。

【内田氏とのブンガクテキ出会い】
彼と会うまでぼくは推理小説読者に過ぎなかった。エラリィ・クィーンや刑事コロンボ、アガサ・クリスティは読破した。ブンガクもちっとは読んでいたが、良さをわからなかった。

そ こに彼は中原中也やアルチュール・ランボォなど詩人たち、どくとるマンボウや三島由紀夫や安部公房やカフカを読めとすすめてきた。他にもたくさんあったが 忘れた。彼は本をもってよく夜中にやってきた。彼が押し込んできたせいで読書欲ももりあがり、古典ブンガクにハマり、現代小説も読みかじりし、原書(英 語)で読みだした。

彼には当時から「本のキュレーター(情報の選択・おすすめ)」のセンスがあった。コイツ(ぼくのこと)はきっとこういうのを読みたいはず、読めと言えば読み出すと感じたのだろう。それは彼の読み通りだった。

彼は大学卒業後、編集者見習いの道に入り、今の増刷の達人に達するまで長い道のりをかけた。今それが開花した。さすがである。後は社長になるのみだ。

【3つの教訓】
一方ぼくは書きたいと思ったけれど一度挫折して、それから20年後にまた書き出した。半歩どころか50歩は遅れた。そこから教訓は幾つかある。乱暴に3つにまとめるとこうだ。

 三つ子の魂百までの資質は、誰にもある。
 自分の資質を開く人との出会いも、誰にもある。
 出会ったら、資質を知ったら、それを素直に続けよう。

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