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2012年7月 7日 (土)

忘れ物の一生

昨夜の電車は押し合いへし合いだった。雨で傘も手にしていた。押されるがママよ我。人いきれの中、隣に立つ女子が足元を見た。何かがあるようだが見えない。次の駅でまたギューッと押されて、別の人もそれをまたいだ。それは誰のモノでもないらしい、青いビニール袋。

そんなに嫌うなよ。サリンじゃないだろ。

そう思って、鞄と傘とiPhoneを持って手がふさがっていたけれど、かがんで取りあげた。ずしりと重い。なんだろう?むんずとつかんだまま2駅過ごして、途中駅でようやく空いた。思わぬことに座れたので、中身をあらためてみると…

可愛いカバー付きのペットボトルとじゃがりこ」だった。夏の限定品は食べかけで、さすがに食べるワケにもいかないし(笑)飲みかけのペットボトルも頂くのもナニなので、「忘れ物です」と駅員に渡した。きっと混雑で手から落ちてしまったのだろう。

ぼくも似た経験がある。

文庫本が電車内の混雑で手からもがれ、ヨソの人の間にまぎれていった。背中と背中の波間に見えては隠れた。きっと落ちてるだろう。だが空いた駅で床を見渡しても、ない。誰かが読んでくれたならいいのだけど…

忘れ物ではエコバッグがある。網棚に忘れたのをすぐに気づいて、

「さっきの電車の先頭から2両目の網棚にエコバッグを…」
「中身は何ですか?」と駅員。
ブロッコリーと茄子です

お昼のおかず用でした(笑)。片道20分かけて、身柄確保されたブロッコリーを引き取りにいった。「また会えたね」と育てた農民の気分でした。おおげさだ(笑)。

なくすことがあれば、拾うこともある。

DACKSのブランドモノの傘を拾った。正直に言おう。魔が差してネコババしてしまった。何しろ高い傘だから目がくらんだのだ。だが格子柄を楽しんだのもつかの間、拾った数日後になくした。

なくした人の呪いなのか。元の持ち主の無念の力が働いたようで、怖かった。

もう5年ほど、なくしもせず、修理しつつ使う傘がある。TOPKAPIの女性モノだが黒一色なので男もすなる傘。持ち手がサイコロ型なのが気に入っている。これは飯田橋の駅構内、遺失物セールのワゴンで見つけた。

遺失物セールには“おしゃべり”がある。“使ってよ”というモノたちの合唱である。「わかったわかった」と言いながら、気に入ったものを探す。骨董市やリサイクル店にもおしゃべりはあるが、彼らは「売られたモノ」である。嘆きはあっても売買契約が成立している。

だが遺失物セールは「はぐれたモノたち」であり、いわばモノの孤児院である。だからモノを買うというより、氏素性はわからないけど「育てよう」というマッチングの場なのだ。養子縁組のサイコロ傘は、育ての親に恵まれたとも言える。

遺失物はちゃんと預けよう。さもないと転々とする運命をさずけかねないから。

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