青空文庫と電子リーダーにありがとうを。
東京新聞の記事『増える書店ゼロの町』(町のどこにもリアルの本屋がないという町が増えている)と、藤村厚夫さんの2つのアップデート『iBookstore のランキング上位はアダルト小説ばかり』(読んで字のとごし)が気になった。
一日一店の割合で本屋が潰れているからさもありなん。それはネットのせいだけではなく、本屋の仕入れ力が失われた自滅もある。
ネットでエロと漫画しか売れないのは、車内でスマフォ観察をすればハハンだし、ぼくだってエロは好きだ。でもぼくのは「女子美術愛好」で、胸を張って言うが、女子の仕草や造形や表情の美を探求している。愛している。単なるエロは変態だが、美の本質の追求なのである。
と言い訳はともかく、cherryさんとぼくの最近の趣味は「古典読み」である。
cherryさんは電子リーダー『kobo』を購入して、ぼくはiPhoneアプリ『i文庫S』を購入して以来、青空文庫にハマっている。
正 岡子規の病床の散文に胸を突かれ、梶井基次郎の『檸檬』のカラフルさに驚嘆し、夢野久作ワールドに耽溺し、カフカの『変身』にニヤニヤし、若杉鳥子にプロ レタリア文学を越えた文章力を学んでいる。その読書欲は、埃をかむった書棚に飛び火して川端の『眠れる美女』を読んでぶっとばされた。cherryさんは 料理好きらしく魯山人を読んで学びまた痛快だという。
こんなに古典に浸ったのは二十歳の頃以来。あの頃の濫読と違って、今は「分かる」。社会を知り、人間を知り、文章のなんたるかを知ったから。だからおもしろい。
なぜ我々はハマったか?どうやら「タテ書き」である。
以前、青空文庫をiPadで読もうとして挫折した。それはヨコだった。タテ読みだけでなくこのi文庫Sは細部に渡ってよくできている。そういう意味ではiPhoneが大画面化するならKindleもkoboもいらんな、とも思う。ともかく、良質の読み物がBookoffでもなくiBookストアでもなく、ボランティアの運営する青空文庫にある。選書眼と現代仮名遣いの作業に、頭が下がりました。
感謝ついでに古典を盛り上げる愚策をふたつ。
まず本屋を盛り上げるため「古典はおもしろい」 運動を展開する。本屋店員が目利きでお奨めする「四季折々の古典」や、「イマドキの作家が学んだ古典」「古典と私エッセイコンテスト」「読み人おらずの万 葉集講座」「平成プアに捧げるプロレタリアート名作選」。秘術で古典を学び倒しているぼくなら「古典から学ぶ文章講座」で貢献できる。
もうひとつは古典にお金を払う仕掛けづくり。青空文庫がタダなんて申し訳ない。でも有料では読まれない。そこで「古典にお布施システム」 はどうか。iTunesカードのようなプリペイドか、Tポイントなどポイントカードから「チャリン」と払える仕組みを、青空文庫でもネット書店でもリアル 書店でも、作家遺族が本を直販するホームページでも払える。著作権切れだってタダじゃない。どっかで人手はかかっている。
ひどい風邪もひいて先は長くないと悟ったぼくは、残された読書時間をすべて古典に捧げたい。良薬は身体に苦し、良書はとっつきにくし。でも読む人を必ず豊かにする。
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