ピッチの回遊魚 香川真司
負けはしたが、マンチェスターユナイテッドVS.エバートン戦、彼は回遊魚だった。どこでもボールをもらえる、奪われない、出せる、いや突破や決定的な瞬間に向かって、出せる。ひとつひとつのボールの受け渡しがシンプルでクレバーで、相手にイヤなものだった。
これまで欧州で活躍した日本人選手とはクオリティがちがう。
中 村俊輔の縦パスは魅力だったが、香川ほどピッチでの泳ぎが上手くなかった。長友佑都の走力や突破力は魅力だが、香川ほど変幻自在の位置取りはできるだろう か。長谷部誠はがんばり屋だが、本人はそれで満足なのか。ロシアリーグの本田圭介の突破力は魅力だが、香川ほどのクリエーションがあるだろうか。中田英寿 は傑出していたが、香川に比べるときょろきょろしていた。香川は何しろ見ていない。でも見えている。これが驚嘆である。
アジアという範囲で見れば、去年までマンチェスターユナイテッドにいた韓国の朴智星がいる。彼のサイドのスピードは超特急だった。スタミナも凄かった。そこには韓国人的な強靭さを感じた。
一方香川真司は、実に日本人らしい。俊敏さ、テクニック、視野の広さ、周りを活かす位置取り。忍者のような動き。さらに魅力的なのは日本人らしくないそのゴール数、決定力である。
要するに彼はサッカーの醍醐味を一身に背負ってる。おぉっという「希望へのビルドアップ」、やるねえの「創造的なセットアップ」、あっ決まる…「決定へのギアアップ」そして「決まったぁ!のカタルシス」。
彼のその特質がどこから出て来たのか?
彼の顔を見ればそれとなくわかる。「サッカー小僧」の顔しているの(笑)。いつもサッカーのことを考えて、ボールを蹴って、テレビ中継を見て、サッカーマガジンを買って…みたいな純粋さがある。
サッカー少年を欧州移籍へ道を拓いたのは、当時独でプレーしていた高原直泰が「香川という良い選手がいる」というひと言だった。彼はドルトムントの8万人の大観衆を見て「ここでやりたい」と感じた。
一方J1の平均入場者数は2万人に満たない。Jリーグ38クラブ中、約半分の18クラブが赤字(2011年度)で給料も安い。第2、第3の香川が出て来ても働く場所がない。「好選手を海外に供給する」のもミッションではあるが、「好選手が国内でも常に回遊するピッチ」をつくってほしい。それが香川というパイオニアへの感謝だと思う。
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